人間で在りたい神殺し 作:鎌鼬
「ふぃ~…………やっと夜か」
自販機で買ったコーヒーを飲みながら夜空に浮かぶ月を眺める。夜まで時間が空いて暇だったのでルナと一緒に町巡りをして時間を潰していた。俺からすれば見慣れた物しか無かったがルナからしたら見慣れない物ばかりだったらしく、気になる物を見つけると目をキラキラさせながらそれを注目していた。
「ーーーーーーーーーー済まんな龍紀よ、妾の巫女が世話になった」
「あぁ、神様か。もう出てきて大丈夫なのか?」
「問題ない。妾は闇を司る神でもあるから夜は呪力が僅かではあるが回復する。貴方こそ大丈夫か?妾の巫女の付き添いで疲れていると思うが」
「こっちも問題ねぇよ。元々夜行性の生き方してるし、それに頼りたくはないが神殺し特有の高揚感もあるからな」
神殺しはまつろわぬ神と戦う存在、だからか近くにまつろわぬ神がいると気分が否応なしに高揚し体調が回復するという特性がある。大きな怪我をしている時は兎も角、風邪や疲れ程度ならば戦闘にはなんら問題ないのだ。
「そうか…………しかし、本当に良かったのか?神殺しである貴方がまつろわぬ神である妾に手を貸すなど」
「いーのいーの。人生満喫するにはやりたいことがないといけないからな。で、今の俺は神様の元の姿を見てみたいんだ。その為に頑張って何が悪い?それに手を貸すことも大した問題にはならねぇよ。俺の知り合いの神殺しのじいさんなんてわざわざまつろわぬ神呼び出して戦うようなバーサーカーだしよ?しかもわざわざ呼び出したはいいけど他の神殺しに取られてやんの。笑うしかねぇよな!!ハハハハッ!!」
「…………なら良いのだが」
う~ん…………始めに会った時から思っていたんだが…………この神様、やたら人間らしいな。まつろわぬ神っていうのは神話から生まれた存在、だから神話にある通りにあろうとする。少なくとも俺の会った神様ってのはそういうのばっかりだったが…………この神様は神話に対して執着していないように見えるな。
「…………龍紀、今貴方は妾のことを神らしくないと考えたか?」
「顔に出てたか?…………あぁ、確かにそう考えてたよ。あんたは今まで会ったまつろわぬ神とは違っているってな」
「確かに、妾は神話より生まれ出でたまつろわぬ神である…………しかしだ、妾の巫女と接している内に考えた。妾たちまつろわぬ神は神話より生まれ出でた存在ではあるが、所詮は神話の写し身に過ぎないのではないかとな」
「ようは神話こそが本物で、まつろわぬ神は神話を元にした偽物だってことか?」
「そうだ。皮肉だとは思わないか?見下している人間にその事を気付かされるとは…………まぁ、そう言うことだ。神話は神話、妾は妾として考えて動いている。神らしくないと思われるかもしれないがそれが今の妾、改めるつもりはない」
へぇ、なかなか面白いことを考えてるな。神話通りにあろうとするまつろわぬ神と神話を見限ってあろうとする神様…………自分の出自を否定しているとしか思えないことをこの神様はやってのけている。神話通りにあろうとする存在をまつろわぬ神と定義するなら…………この神様はまつろわぬ神ではない別の存在に成ってるかもしれないな。
「神様の考えを否定するつもりなんて無いから安心しろよ…………そう言えば、あの石板取り戻して元の姿に戻ったらどうするつもりなんだ?そこで終わりって訳じゃないだろ?」
「考えてなかった…………そうだ、世界を見て回るのも良いかもしれない。神の管理から離れた人の世を、この目で見てみたい」
夜に煌々と光る人工的な明かりを見ながら神様はそう言った。それはそれはなんとも在り来たりで、平凡で…………素敵な願いだな。
「そうか…………だったら、取り戻しに行きますか。神様の半身とやらをな」
「あぁ、では行こう」
バイクに跨がりエンジンをかける。そして神様が俺の後ろに乗ったことを確認してからバイクを走らせ、神様の半身の置いてある七雄神社に向かった。
夜の帳が落ち、空に月が輝く七雄神社に四人の人影があった。
一人は金髪の少女、『赤銅黒十字』に所属している
一人は黒髪の少女、『武蔵野』に所属している『姫巫女』
一人は金髪の少年、まつろわぬ神を殺し、その権能を簒奪した羅刹の君と呼ばれる神殺し
一人は黒髪の少年、坂上王理と同じく神殺しを成し遂げ…………そして、日本にまつろわぬ神を招いた原因の一端を担う
彼らは護堂がイタリアの魔術師たちによって渡されて持ち込んだ神代の遺物である『ゴルゴネイオン』という石板に引き寄せられているまつろわぬ神を撃退するためにこの場に集まっていた。
引き寄せられるまつろわぬ神の名は祐理の霊視によって判明している。神の名は『アテナ』、ギリシャ神話に登場する女神。アテナはゼウスの娘で目を合わせた者を石に変えるという魔眼を持ったメデューサを倒したペルセウスにメデューサを討ち取るための道具を与え、そして闘争と知恵を兼ね備えた女神として有名である。
そのアテナが何故敵である蛇の絵が描かれている『ゴルゴネイオン』を求めているのかは分からない。エリカから口付けをすることで魔術として教えさせる『教授』を受けた護堂なら分かるかもしれないが祐理は聞くつもりはなかった。理由としては羅刹の君である護堂に聞くのは恐ろしいからというのが半分。もう半分は…………彼のせいで日本にまつろわぬ神が現れたというのに、それが自分の責任であるという自覚が感じられないからだ。
まつろわぬ神というのは天災に等しい。その力を振るい大きな被害をもたらすところはまさしくそれだ。そんな存在を呼び寄せる『ゴルゴネイオン』をこの国に持ってきておきながら責任転嫁、護堂の愛人を自称するエリカはイタリアの神殺しであるサルバトーレ・ドニが護堂との戦闘で負傷して不在なために頼れそうな神殺しである護堂に『ゴルゴネイオン』を任せたと理由の説明と謝罪を受けたが…………護堂から来たのは誠意の感じられないうわべだけの謝罪。昼間にあった神殺しと思わしき少年が好き勝手言っていたことも理解できる。
エリカはそこが護堂の良いところだと寛容的だったが裕理からすればそうはいかない。本堂でいちゃついている護堂とエリカから逃げるようにして裕理は本堂の裏手にへと回った。
するとそこにはもう一人の神殺しである坂上王理の姿があった。裕理の懐く王理のイメージはまさしく王そのもの。日本を自らの国と言い張り、やってくるアテナの撃退の為に原因である護堂と手を組みこの国を守ろうとしている。
その少年は今…………
「あぁ…………あぁ…………そうだ、お兄ちゃんは今日帰るのが遅くなるから…………うん、ご飯は冷蔵庫に入れてあるからレンジでチンして、残さずに食べるんだぞ…………ダメダメ、野菜もちゃんと食べないと大きくなれないぞ…………アイス食べてもいいけど食べ過ぎるとお腹壊すから少しだけにしておくんだぞ…………うん…………あとは歯磨き忘れないように…………大丈夫だって…………分かった分かった、明日は一緒にご飯食べて学校に連れていってやるから…………うん…………」
さっきまでの威圧を感じさせない雰囲気で誰かと電話をしていた。まさしく王という風格を漂わせていただけに今の王理とではギャップが酷い。裕理は本当にこの人物が神殺しの王理と同一人物なのか怪しくなってきた。
「じゃ、少しはやいけど、お休みな」
電話を切って王理が顔を上げると…………裕理と目があった。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙が訪れる。こんなときにこそ空気を読まない護堂がいてくれれば良いのだが肝心の本人はエリカに捕まっていてこの場にいない。
「…………今の…………聞いた?」
「えっと…………はい…………」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………」
嘘をつくという選択肢の思い付かなかった裕理は正直に言ってしまい、今の会話を聞かれたと分かった王理は金髪をくしゃくしゃと掻きながらしゃがみこんだ。
「に、二重人格でしょうか!?」
「とっさに出たのがそれ?…………違うよ、あの偉そうな態度の俺も今の俺も同じだから」
バレてしまったからなのか、王理は観念した様子でそう言った。
「あの偉そうな態度は演技だよ…………護堂みたいな感じだと若僧だと嘗められるのは分かりきってたから倒した神様の真似してたの。そのお陰で近づいてくる魔術師たちは一歩引いた対応してくれてたのに…………まさか今日知り合った奴にバレるなんて…………」
「あ、あの~…………そ、そうだ!!さっきの電話は家族にですか!?羨ましいですね!!私機械がダメで携帯電話も使えなくて…………」
「…………それは女子高生としてどうなのさ?」
携帯電話が使えないというカミングアウトをしてきた裕理だが話を反らそうとしてくれたのはありがたかったので素直に乗ることにする。
「妹だよ、
「す、すいません…………無神経なことを聞いてしまって…………」
「いいよ、確かにカンピオーネとかいう訳の分からないものになってしまったけどそのお陰で生きていられると考えられるし」
踏み込んだことを聞いてしまって慌てて謝罪する裕理だが王理は笑ってそれを許した。
そしてその時、神社の明かりがすべて消えた。
「っ!?これは!?」
「ーーーーーーーーーー来たか」
裕理は混乱するものの、王理は王としての風格を漂わせながら敵が来たことを悟った。裏手から表に駆け付けるとそこには空を見上げて身構えている護堂とエリカ、そして護堂たちが見上げる空には翼を生やした少女が数多くのフクロウを従えながらこちらのことを見下していた。
「こんばんわ、異国の神殺したちとそれに仕える者たち」
「っ!!アテナ!?」
「その通り、妾はアテナ。今宵ここに来たのは妾の半身である《蛇》を受け取りに来た」
この少女こそ、まつろわぬ神であり、護堂が日本に持ち込んだ『ゴルゴネイオン』を求めるアテナだった。アテナは『ゴルゴネイオン』の返却を求めていて戦意は感じられないが誰もアテナに対しての警戒は解かない…………ある一人を除いては。
「さぁ、大人しく『ゴルゴネイオン』を渡せ、そうすれば和するも良しと妾は考えている」
「そりゃありがたい話だが…………『ゴルゴネイオン』は渡せない!!」
「では…………争うか?」
「それも困る。出来ればこのまま帰ってもらえないか?無益な戦いでお互いを傷つけ合いたくは無い」
護堂だ。護堂がアテナと会話を始め、神にしては意外と理性的に見えるとアテナに対する警戒心を緩めてしまった。本当ならば問答無用で決着をつけるべきなのに護堂は話し合いで何とか妥協点を見出せば戦わないですむかもしれないと考えてしまった。
アテナの目的はただ一つ、ゴルゴネイオンを取り戻して元の姿に戻るということなのに。
「交渉決裂のようだな…………仕方無い。ならば、奪わせてもらおう」
「
アテナのものではない男の声が聞こえ、じゃらじゃらと金属が擦れ合う音と共に鎖が伸びる。
「なっ!?」
「キャァ!?」
「ヌゥ!?」
「草薙さん!?エリカさん!?坂上さん!?」
護堂、エリカ、王理が鎖に捕らわれる。月明かりで僅かに照らされている錆びだらけの鎖には明らかに錆びとは別の赤いシミが着いている。
「人の物を盗ってはいけませんって、教わらなかったか?お前ら。今回は神様のだけどな」
木の影から鎖を握った少年が現れる。その少年をここにいる全員が見たことがあった。なぜならその少年は昼間にここに参拝に来たと言い張っていた神殺しらしき人物だったからだ。
「鎖…………?いや、拷問器具の生成…………それが貴方の権能か、龍紀よ」
柊龍紀、神殺しでありながらアテナに手を貸している神殺しが現れた。
「う~ん三十点ってところだな、こいつは俺が殺した神様が別のやつから奪った物らしい。ってか、そんなこと気にしてる暇があるならさっさと『蛇』とやら取り返して来たらどうだ?」
「それもそうだな」
「っ!!貴様ぁ!!何故神殺しでありながらまつろわぬ神に手を貸している!?」
鎖に縛られながらも王理は威厳を崩すことなく、怒気に満ちた目で龍紀を睨んでいた。一般人なら見ただけで殺してしまえそうなほどの怒気を浴びながらも龍紀は態度を崩さない。
「なんでって、ただの好奇心だよ。神様の元の姿とやらが見てみたいと思ってな。まぁ安心しろや、どこかの無責任野郎とは違ってキチンと自分の尻拭いはやるからよ」
「古の『蛇』…………ようやく見つけた」
アテナが本堂の中に納められていた『ゴルゴネイオン』を見つけた。それはつまりーーーーーーーーーー
「これで妾はかつてのアテナ…………まつろわぬアテナへと戻れる…………!!」
未完であったアテナが、本来のアテナにへと戻ることを意味する。
王理が踏み台だと思ったか?残念!!踏み台(演技)でした!!あの態度はカンピオーネがへりくだった態度だと嘗められるからという理由でしているだけで本当の王理は優しいお兄ちゃんなのです。
ロリ神様の正体がやっと出せた…………ロリ神様は原作と違って現界から死にかけているので色々と考え方が違っています。そしてロリ神様の大人なキスシーンはカットです。
龍紀にみんな大好き足引きBBAの形成を使わせました。権能の名称としては『
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