人間で在りたい神殺し   作:鎌鼬

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まつろわぬゼウス

 

ゼウス、それはギリシャ神話における主神。ギリシャ神話に登場する神々のほとんどの父であるゼウスが極東とも言える日本に姿を現していた。

 

 

「ゼウスゥ!!貴様何故ここに!?」

「何故だと?知れたことを。貴様を求めてきたのだ、アテナよ」

 

 

怨みの籠ったアテナの声を気にすること無くゼウスはそう返した。アテナとゼウスの関係は親子である。が、アテナの母であるメティスはアテナを孕んだときに『生まれる子が男ならばゼウスの地位を脅かす』と予言されたゼウスに飲み込まれるという逸話がある。つまりアテナにとってゼウスは父親などではなく、母親の仇に等しい存在である。

 

 

「その為にわざわざこの極東に足を運んだのだ」

 

 

ゼウスが腕を一振りする。それだけでアテナたちを打った雷が再び落ちる。これがゼウスの権能、主神たるゼウスは罪人に裁きとして雷を落とす。

 

 

雷を落とすだけと言ってしまえばそれだけか?と疑問に思うかもしれない。だが、考えてほしい。雷とは電気、それが光と速度で落ちてくる。シンプルであるが故に回避不能な一撃は例えまつろわぬ神であるアテナであろうとも避けることはできない。

 

 

「ァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

二度雷に打たれ、アテナは叫びをあげる。支えにしていた鎌が手からこぼれ落ち、アテナは地面に倒れ伏した。それを見たゼウスは満足げな表情になり、倒れているアテナに向かって手を伸ばす。それだけでアテナの体は地面から離れ、ゼウスの側に引き寄せられた。

 

 

「ククク…………アテナよ、お前は母に似て美しい。ならば、その味は如何なる物かな?アッハッハッハッハ!!!!!」

 

 

目的であるアテナを手に入れたゼウスは上機嫌に笑いながら園内から立ち去っていった。

 

 

草薙護堂は死に、王理は雷に打たれてまだ息はあるものの死に体の状態。いかに神殺しであろうとも地面を這うことしか出来ない存在などゼウスは気にも止めなかった。

 

 

「ーーーーーーーーーー」

 

 

その園内で、雷が落ちたことで出来た砂煙の中から龍紀が現れる。ゼウスの雷を受けたことでその体はボロボロ、上着は役に立たないほどに損傷しているものの、王理に比べればその傷はあまりにも軽すぎた。

 

 

「ゼウスの後を追うのですか?龍紀殿」

 

 

その龍紀の背後に現れたのは悪魔と呼ばれた男メフィスト。始めに現れた頃の怪しい言葉遣いではなく、真剣な面差しで龍紀に尋ねていた。

 

 

「止めるつもりかよ、オッサン」

「いえいえ、その様なことはしませんよ。しかし…………何故追うのか、それだけを教えていただきたい」

「やられたまま泣き寝入りするほど俺はお利口じゃないんでな…………それに、これから口説こうかと思ってた女横から拐われたんだ。助けに行って何が悪い?」

 

 

メフィストの疑問に答えるように龍紀の口から理由が出された。それは神殺しやまつろわぬ神などの関係を無視すればあり得ないことではないだろう。

 

 

良いと思っていた女性を拐われたから助けに行く。

 

 

それだけの理由で、龍紀はギリシャ神話の主神であるゼウスに立ち向かうつもりなのだ。

 

 

「ーーーーーーーーーークックック…………!!そうかそうか!!それだけの理由でまつろわぬゼウスと戦おうとするのか!!やはり貴方は面白いな!!龍紀殿!!」

「なんだ、悪いか?あぁん?」

「そうは言ってませんよ…………ゼウスとの戦いに邪魔が入らぬように致しましょう。その代わり、『全力で』戦っていただけますか?」

「…………相変わらず悪趣味だな、オッサン」

「この身は悪魔なものデスので」

 

 

ゼウスに戦いを挑もうとする龍紀に『全力で』戦うように告げて、メフィストは姿を消した。それはつまり…………草薙護堂との戦いは全力ではなかったということだ。

 

 

崩れた髪を手で掻き上げる。その一動で、龍紀の姿は変わっていた。

 

 

女性物の着物を着崩し、

 

顔の横に鬼の面を付け、

 

黒く染まった目に赤い瞳孔を輝かせて、

 

ゼウスが去っていった方角を見据える。

 

 

『ーーーーーーーーーークハッ』

 

 

一笑、それだけを行った龍紀は地面を蹴り、虚空を駆けてゼウスの後を追い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アテナを連れ去ったゼウスは海の上にいた。ゼウスの頭の中にあるのは如何様にしてアテナを犯そうか、それだけで満たされていた。神話のゼウスは嫉妬深いヘラをめとりながら様々な女に手を出して子を成してきた。まつろわぬ神として顕現したゼウスも同じである。一度犯したメティスの子であるアテナを犯すことを心の底から楽しみにしていた。

 

 

だが、アテナがみすみす犯される訳がない。雷の影響から完全にとはいかぬが幾分か回復した体を強引に動かして漆黒で染まった鎌を振るいゼウスの首を切り落とそうとする。

 

 

「ふむ、目覚めたか」

 

 

しかしその一撃をゼウスは片手で受け止めた。無造作に鎌の刃を握っているが、アテナの鎌はゼウスの薄皮すら斬ることが叶わない。王理との戦いとゼウスの不意討ちを受けたアテナの力では、ゼウスにかすり傷すら付けることは出来なかった。

 

 

「ゼウス…………!!ゼウスゥ…………!!」

「獣のように吠えるな、知恵の女神の名が泣くぞ」

 

 

力の差を理解しながらもアテナの目からゼウスに対する憎しみは無くならない。母であるメティスを殺したゼウスに対する憎しみは、力の差などでは抑えられないほどに膨れ上がっていた。

 

 

「暴れる貴様を犯すもの一興だが…………面倒だ、躾るか」

 

 

ゼウスが腕を挙げる。その一動で雲が集まり雷鳴が轟く。

 

 

「加減は苦手なものでな…………死んでくれるなよ?」

 

 

そしてゼウスの腕が振り下ろされ、アテナに向かって雷が落ちた。

 

 

光の速さで落ちる雷を、アテナははっきりと視認することが出来た。複雑な軌道を描きながら落ちる雷。しかし叶うのは見ることだけ、アテナの体は意思に反して動くことはない。

 

 

「すまない…………」

 

 

雷に打たれる未来を確信したアテナは母であるメティスに向けて謝罪の言葉を口にする。そして…………何故か神殺しでありながら、自分の力になってくれた少年のことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーー何?」

 

 

アテナを穿ったと確信したゼウスだったが…………現実は違っていた。アテナに向かって落ちる雷を防ぐ存在があったからだ。

 

 

それはゼウスの雷を受けーーーーーーーーーーーその身に一切の傷を負っていなかった。

 

 

『おいおい神様よぉ、誰に向けて言ったのかは知らないが諦めるのは早いんじゃねぇか?』

 

 

ノイズ掛かった聞き取りづらい声でそれはアテナに向かって話しかけた。アテナはその声に心当たりがあった。

 

 

「その声…………龍紀か?」

『なんだよ、俺のこともう忘れたのか?悲しいねぇ、あんたの為に頑張ったって言うのに』

「いや…………その姿は」

 

 

アテナが疑問に思ったのも無理はない。今の龍紀の姿はアテナが知る龍紀の姿とあまりにも変わりすぎていたのだから。

 

 

女性物の着物をその役割を果たさないほどに着崩し、

 

ずらした鬼の面を側頭部に付け、

 

黒く染まった目に赤い瞳孔を輝かせ、

 

そしてその身から溢れ出す神威は…………神殺しではなくまつろわぬ神のそれに近かった。

 

 

「失礼」

「なッ!?」

 

 

アテナの背後から前触れ無くメフィストが現れて肩に触れる。それだけのことで次の瞬間には龍紀とゼウスがいる場所から遠く離れた場所に移動していた。

 

 

「何のつもりだ?」

「彼の邪魔にならないようにの配慮ですよ。彼の力は我々にとって致命的ですからね」

 

 

アテナはメフィストの言っていることが理解できなかった。龍紀の持つ権能といえば拷問器具の精製。他にまつろわぬ神から簒奪した権能があるのかと考えていたアテナだったが…………メフィストの言葉が正しかったとすぐに思い知らされることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………おい老害、あいつ拐って何するつもりだった?』

 

 

ゼウスと対峙する龍紀はノイズ掛かった声をゼウスに向ける。ゼウスは老害という自身の呼び方が気に食わなかったのか僅かに眉を潜めたが律儀に龍紀の疑問に答えた。

 

 

「何を?美しい女を見つけたらすることなど決まっているだろう?…………味わうのだ。処女神であるアテナのあの穢れなき体を存分に汚す…………考えただけでいきり立つ!!」

『あぁ、強姦趣味ね。そんなん一部の好き者しか支持されねぇよ…………そいでもう一つだ。お前、人間をどう思う?』

「人間など我ら神々の玩具に過ぎぬ。あぁそうだ…………アテナの体を存分に味わった後で再び我が人間を支配するのも良いかもしれぬな…………」

『あぁ…………あぁ…………!!そういうことね…………勘違いするなよ、老害。人には人の領分があるように神には神の領分がある。カビ生えるほどに古ぼけた存在で今を生きる人間の世界を壊そうとするんじゃねぇよ』

 

 

この問答で龍紀は完全にゼウスに見限りを付けた。このまつろわぬ神は人間を脅かす存在である、故に…………人間に害を及ぼす前に消す。

 

 

『

 

アセトアミノフェン アルガトロバン アレビアチン エビリファイ クラビット クラリシッド グルコバイ

 

ザイロリック ジェイゾロフト セフゾン テオドール

 

』

 

 

それは人に生を、死を与える存在。

 

 

『

 

テガフール テグレトール デパス デパケン トレドミン ニューロタン ノルバスク

 

レンドルミン リピトール リウマトレック エリテマ トーデス

 

』

 

 

人を生かす薬と、人を殺す病魔の名称。

 

 

『

 

ファルマナント ヘパタイティス パルマナリー ファ イブロシス オートイミューン ディズィーズ

 

アクワイアド インミューノー デフィシエンスィー シンドローム

 

』

 

 

己が神の玩具として創られた存在であるということへの憤り。己は一個の人間であって、神などに振り回されていないという矜持。そこから転じた、神と神に依存する者を否定する渇望、神からの自立と解放を求める願い。

 

 

誰よりも人という存在に憧れたまつろわぬ神が抱いた覇道。それをそのまつろわぬ神が人間だと認め、その権能を受け継いだ龍紀が歌い上げる。

 

 

 

 

『

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー太・極

 

』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『

 

悪性腫瘍・(マリグナント チューマー)自滅因子(アポトーシス)ゥゥゥ!!!!!!!!!!

 

』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、太極(せかい)が展開された。

 

 

 




ギリシャ神話で色々とヤらかしてくれている有名なまつろわぬゼウス登場!!目的はアテナ、それも体狙い。近親とはこれまた業が深い…………でも神話だと普通にヤってるんですよね。

アテナとゼウスの関係が杜撰かもしれませんが作者にはこれが精一杯でした。

龍紀、変☆身!!格好はどこからどう見ても宿儺。銃は出していないだけで使えます。

そして皆様お待ちかねの太極発動!!まつろわぬゼウスは太極を乗り越えられるのか!?(ゲス顔)


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