「……」
皆が寝静まった夜。とある客室に黒服の人間が大勢詰めかけていた。
「……」
「……」
「……」
ヒソヒソと話す一派のうち1人が前に出て、布団にくるまった誰かにナイフを向ける。
超高校級の探偵。その人を亡き者にしようとやってきた彼らはまるで周りの不自然さに気がついていない。
「御免!」
その手が布団にかかったとき、彼らの背後で叫び声が上がる。
その声に動揺した最前列の男も布団から飛び出した背の低い高校生の持つドスの柄で腹を打ち込まれ、倒れる。
私もベッドの下から鉄パイプで足払いをかけ、その腹を打って気絶させる。
後ろから辺古山さんが10人ほどのしてくれたので随分と楽勝だった。
布団から出てきた九頭龍クンは辺古山さんに気絶した人間を縛りあげるように頼むと、黒服スーツたちの懐を探り始める。
次々と出てくる白い粉たちに辟易としながら、回収作業を行い眠い目を擦る。
まさか本当に最原クンを囮にするわけにはいかないから、こうするしかなかった。九頭龍クンも極道なだけあり、辺古山さんとまではいかないがドスの扱いには慣れているらしい。
2人は別口で乗船していることもあり、武器も持ち込んでいたのだ。大丈夫か、この船のセキュリティ。
私は資材置き場から普通の鉄パイプを拝借してきたから持っている。さすがに一般人枠ではバレて警察行きだ。
「最原クンのほうは大丈夫だった?」
「う、うん……」
囮捜査のために最原クンは客室を追い出されていたため、赤松さんの部屋に行っていたのだ。そちらも護衛で豚神クンがスタッフを装いながら巡回していたが、真っ赤な顔で頷かれるとねえ……
「超高校級の御曹司、十神白夜から告げる。探偵から話があるため事件関係者は甲板に集まるように。野次は好きにしろ。以上」
船内放送で十神クンが告げ、私たちも移動を始める。
「オレたちはここでこいつらを転がしてるから、テメーらはさっさと事件解決してこい」
「お前たちがこの船にいてくれてとても助かった…… 頼んだぞ」
九頭龍クンと辺古山さんはこの客室で見張りを行うようだ。
あくまで彼らは裏方。裏の世界のことは触れないようにしなければならない。
信頼し背中を預け合っている彼らを置いて甲板に上がると、既に明るくなってきていた。
大切なクリスマスを台無しにしてたまるか。
そんな思いで、集まってきていた容疑者たちを眺める。
心の中でだけ学級裁判に想いを馳せながら、そのつもりで向かい合う。
犯人は、無事な最原クンの姿を見ると苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
野次馬には一般人と、それに近い人物たち、それと上から命令されたであろう使用人などが集まっていた。
「まずは、自己紹介から…… なのかな」
帽子を探して彷徨わせた手を下ろして、最原クンが言う。
さすがに大勢の目線に晒されるのはまだ慣れていないらしい。彼のトラウマもなかなか根深い。
「僕は最原終一…… です。超高校級の探偵です」
「自己紹介が必要なのはあとは罪木ちゃんくらいかな?」
「な、なんでですかぁ!?」
「素性も知れない子が検死したって言っても信用されないでしょ」
検死の言葉にざわつく野次馬を無視して罪木ちゃんが一歩前に出る。
「ちょ、超高校級の保健委員の…… 罪木蜜柑ですぅ……」
彼女の言葉が言い終わる前に 「なんだ! ただの保健委員じゃないか!」 という心無い発言がバーテンダーから上がる。
やはり委員系だとナメられるよね。
「保健委員って言っても、この子は大学病院への研修も行っている、実績ももちろんある規格外だよ。ただ怪我を処置するだけじゃない。超高校級に選ばれた才能がその程度なわけないでしょ? 調べれば分かることだよ」
ヘイト役は私が引き受け、最原クンの話を促す。
すごくやりにくそうだが、一般人の前で推理劇をするということはこういうことだ。
こんなのを霧切さんはやっているのかなあ。すごいなあ。
「まずは罪木さんから検死結果をお願いするよ」
「はい! 死亡推定時刻は23時から0時頃までですぅ! 死因は背面の傷で、凶器は直径5㎜ほど、長さは推定20㎝くらいの細くて鋭利な凶器ですぅ! あと、被害者の梶野さんは即死ではなかったので、しばらく意識はあったはずですよぉ」
罪木ちゃんが言い終えると、少し疑いの目を向けていた吉野バーテンダーが次々と彼女に質問する。
死亡推定時刻の特定方法やら、凶器の特定方法など、なぜ即死でなかったかの判断。とにかく疑ってかかってきた。
罪木ちゃんはそれら全てに丁寧に、それはもう丁寧に専門用語連発しながら説明したものだから、最終的には全員納得させていた。
医学的なことを説明するときの罪木ちゃんは妥協しないし、目を瞑って必死に説明したため口をつぐむ暇がなかったのもある。
「これらを前提に僕たちは推理することになりました」
「あら、事件発生から1時間前くらいまでのアリバイを訊いてきたのはその情報を聞く前ではありませんでしたか?」
セレスさんが横槍を入れると、恋人だった木立さんが 「確かに!」 と声をあげる。
それに最原クンは 「罪木さんほどじゃないけど、探偵でもある程度検死できるよ」 と答えて話の続きをする。
「僕が皆さんの証言を聞いている間は、こっちの十神君と狛枝さんが現場の捜査をしてくれていました」
そう言いながら、彼は1枚の写真を取り出す。
それは、客の中からインスタントカメラを持っている人物を探して撮影した豚神クンから渡された1枚だ。
あの、ダイイングメッセージと思われるトランプを映したもので、これが少しだけ犯人追求へのヒントになった。
「よく見てみろ。カジノのディーラーは毎回新品のトランプを開封して勝負を行う。このトランプも真新しいものだが、抜けているのが分かるだろう」
十神クンがその写真を手に話す。
この数字はディーラー側から見て、左からダイヤの5、クラブの1、ハートの7が抜けている。
「517、ですか」
「そ、そうだわ! きっと部屋の番号よ! 私は435号室だから違うわ!」
「俺は、196号室だ……」
2人の容疑者の視線がセレスさんに注がれる。
するとセレスさんはいつものポーカーフェイスで手を胸の前で組み、 「わたくしが517号室ですわね」 となんでもないことのように言った。
その言葉はこちらへの信頼が透けているようで、少し微笑む。
糾弾と追求の言葉を笑顔で受け流しながら、彼女は 「お可哀想に」 とクスクス笑った。
絶対アレ、〝 頭が 〟って言葉が上につくよね。さすがセレスさん真っ黒黒すけだ。
「…… なにを勘違いしている?」
十神クンのよく通る声で心底馬鹿にしたように言われ、セレスさんを糾弾していた人たちの注目が一気にこちら側へ戻る。
「もしかして、これダイイングメッセージじゃなかったの?」
赤松さんが疑問を口にすると、罪木ちゃんも 「え、えっ、そうなんですかぁ? 私はてっきり誰かがセレスさんの変装でもしていたのだと思っていましたぁ」 なんて言っている。
そしてその発言に、それまでなにを言われても涼しい顔をしていたセレスさんがものすごく怖い顔で睨んだものだから 「ごめんなさぁぁぁい!」 と涙まじりの悲鳴があがった。
「これは犯人が作ったダミーのダイイングメッセージなんだよ」
私が言った言葉に最原クンが頷いて白手袋をつけてから、ポケットに入っていた油性ペンを取り出す。
私たちに向けて喋っているからか、普段通りの喋り方がフェードインしてきている。本人は気づいてないし、まあいいか。
「これは被害者の梶野さんが右手に握っていた油性ペンだよ。上半身がうつ伏せになっていたから、その下敷きになっていたんだ。そして、被害者ができたのはきっとトランプを開封して文字を書くことだけだったはずだ。フタがされていなかったから、被害者の下にあるテーブルは黒いインクの跡が残っていたし確実だ。もし、被害者が自分でトランプを広げて1部を抜かしたのなら、この油性ペンは必要ないんだよ。それに、こんなあからさまなダイイングメッセージを犯人が見逃すはずがない」
でも油性ペンが残されていて、さらにフタも空いていた。
ディーラーさんと少しの間過ごした私でも、思い起こせば彼が右利きたったことがなんとなく思い出せる。
左手でトランプを広げることはあるかもしれないが、利き手にペンを持っているとなるとやりたかったことは明白だろう。
犯人が油性ペンを現場に残してしまったのは、きっと被害者が握りしめたまま体で覆い隠してしまったからだ。どかすにも、手を開かせるのにも力はいるし、証拠が残りやすいから断念したのだろう。
「じゃあダイイングメッセージは別にあるのかしら?」
恋人の木立さんが訊く。
吉野バーテンダーは信じられないものを見るように、最原クンを睨みつけていた。
最原クンはそれに気づきながらも 「はい」 と答え、同じく証拠品として持ってきていた現場のトランプを取り出す。
「これを見てください」
綺麗に重ねられたトランプの側面には雑な文字で 「ヨシノ」 と書かれている。
明らかな証拠だった。
「きっと犯人はダミーのダイイングメッセージを残すことで、容疑を逸らそうとしたんだ」
「そっか、被害者の背後から手を出してトランプを並べて細工をしたから、不自然に下敷きになった右手にも体の下に隠された油性ペンにも気づけなかったんだね」
「気づけたとしても、どうしようもなかったと思うよ」
勘のいい赤松さんが答えをすらすらと口に出すと、件の暫定クロさんこと吉野十蔵バーテンダーが 「逆だ!」 と叫ぶ。
「愚民、発言を許可した覚えはないぞ」
「うるせぇっ、御曹司がなんだ! ただのボンボンだろぅがァ!?」
「なっ、なっ、なっ、貴様っ」
十神クンのうろたえ方に笑いそうになりながら、彼の言い分を聞く態勢をとる。
「普通に考えたら逆だろ!? そっちの文字がダミーで、それに気づいたアイツが本当の犯人を示そうとしたに違いねぇ! そもそも、どっちが先にあったかなんて分からないだろぅが!」
なるほど、一理ある。
でも残念ながらそれは考慮済みだ。
「ところで、皆さん彼を死に至らしめた凶器はご存知なのかな?」
長らく黙っていた私がそう言うと、赤松さんと最原クンは 「え?」 という顔になる。そうだよね、キミらにはなにも言ってないもの。
「罪木ちゃんには分かる?」
「え、えっとぉ…… 断定はできませんよぉ…… キリ、とかすごく細い針のようなものとしか……」
最原クンと罪木ちゃんの言葉に驚いたのは容疑者たちだ。
「うそ!? だってアイスピックだって聞いたのに…… なんであなたたちが分からないの!?」
「そ、そうだよ! 一体どういうことだ!?」
「やっぱりそうでしたのね……」
セレスさんはあのとき、瞬時に気づいてくれたから助かったよ。
「そう、私たちも凶器は分かっていなかったんだよ」
「ね、ねえ狛枝さん。どういうこと? 僕たちに内緒でなにかやってたの?」
「うん、まあね」
そう言って、私は野次馬の奥に向かって手を振る。
そうすると、太ったスタッフが前に歩み出てきてお辞儀した。
「あ、そ、そいつだ! そいつが初めに〝 アイスピック 〟だって口走ったんだ! 凶器を知ってたんだからそいつが犯人だ!」
その反応も想定内。
「実はね、キミたちがあの会話をする前に既にトランプのダイイングメッセージは解けてたんだよ。だからちょっと引っ掛けさせてもらったんだ。なんせ、凶器は未だに見つかっていない。今も犯人が持ってるはずなんだ…… ね? 黒うさぎクン」
豚神クンは観念したようにその名前を受け入れた。
詐欺師って言わなかっただけ配慮してるんだから、もう黒うさぎのあだ名くらい広めちゃおうよってことだ。
「ああ……」
彼が自身の顔を掴んでベリベリと剥がすと、その下にあったのはいつも通りの偽十神クンの顔。
「なっ、貴様その顔で出てくるのはやめろとあれほど言っただろう!」
別の顔をいったい何枚貼り付けているんだか…… 痩せてるほうの十神クンはご愁傷様です。
「吉野バーテンダー。あなたは氷を削るとき、随分と長いアイスピックを使っていた。だから私が罪木ちゃんの検死結果を聞いたときに浮かんだのはそのことだったんだよ」
「最原や罪木には悪いことをした。黙っていて悪かったな。だが、探偵役が知っていると先ほどの反応は引き出せなかったはずだ」
最原クンは眉を下げて 「結果的にうまく行ったみたいだから気にしないで」 とお許しをくれた。
私が言うのもなんだけど、甘々だなあ。もう少し単独行動を厳しく糾弾されても仕方ないと思っていたのだけれど。さすがに出しゃばりすぎだしね…… 情報を持ったまま探偵役に共有せずにいるとか死亡フラグでもあるし。今度からはもうやらない。
「俺も希望ヶ峰学園の生徒だ。超高校級の影武者とでも思っていろ」
あ、うさぎクンったらさらっと嘘を…… まあ詐欺師が素性バラすわけにはいかないよね。
「だから、あのとき〝 アイスピック 〟といううさぎクンの言葉を違和感なく受け入れた人物こそが犯人だということだよ」
「えっ、わ、私なんて言ったっけ!?」
「お、俺じゃない! この女だ! 痴情のもつれで……」
言い合っているうちに手の中に弄んでいた機械をいじり、起動する。
「災難でしたね、皆様」
「ああ、まったくだ」
「こんなことになるなら、会いになんて来るんじゃなかったわ」
「まさかアイスピックで殺人なんて…… 恐ろしいことですね」
「そうそう、あんな長いモンいったいどこから手に入れたんだか」
「あら、どうりで細い傷跡だとおもいました。あんなに傷もできてお可哀想に」
「探偵さんから滅多刺しって聞いたわ。凶器ってアイスピックなのね、怖いわ」
あのときの会話が流れる。
その音声に青ざめたのはただ1人。吉野十蔵バーテンダーその人だった。
「アイスピックに疑問を持たないどころか、長さまで言及しているのなんて、あなただけですね」
最原クンがキッと彼を見つめると、クロとなった彼はズリズリと後退りを始める。
そして、ふっと見たところにいた十神クンに向かって走って行く。
どこからか、取り出した長いアイスピックを振りかぶって、突き出す。
けれど、少し驚いた様子だった十神クンがその腕を掴み、綺麗に一本背負いを決めたことで凶器を取り落とした。
「えっ、十神クンそんなことができたの…… ?」
「ッチ、でないと超高校級の完璧など名乗らん」
ちょっと見直した。
思い切りダミーのダイイングメッセージに引っかかっていたのは心のうちに秘めておこう。
「それでこそ、俺が憧れた十神白夜だな……」
「…… ふんっ」
感慨深く呟いたうさぎクンから顔を逸らす十神クンは、いったいどんな顔をしているのだろう。きっと見てはいけない一面なんだろう。腐川さんにデレる十神クンぐらい見ちゃいけないものだろうから、そっと私も目を逸らす。
男手に取り押さえられた吉野バーテンダーは思い切り最原クンを睨みつけていて、やはり彼のトラウマを抉っている。
けれど、最原クンを庇うように赤松さんが前に立ち 「上手く言えないんだけどね」 と前置きして彼の手を握る。
「殺人なんてするなら、バレることくらい少しは想定するべきだと思うよ。前に最原君が言ってたけどね、犯人に事情があったとしても…… 被害者が極悪非道だったとしても、殺しは殺しなんだよ。なら、捕まるのも、罰せられるのも覚悟していないといけないんじゃないかな…… だって、復讐して罰から逃げたらその極悪人と同じになるだけなんだもん。今回の人がどうだかなんて、私には分からないけど…… 真実を追求する最原君は格好いいと思うよ」
そうだね。詳しい話は聞いてないけれど、聞く限りは赤松さんに同意する。
極悪人を復讐で殺したって、その罪から逃げたら同じただの犯罪者に成り下がってしまう。そもそも、復讐を完遂したらあとなら別に捕まろうがなんだろうが満足なものだろうけれど、人間というのは欲が出るからね。
最原クンがそんな逆恨みに負い目を覚える必要なんてない。
でも、今の彼には赤松さんがいるから大丈夫そうだ。入学当初みたいな帽子はやはり必要ないだろう。
「事件発生から急いで港に向かってるはずだけど、あとどのくらいで着くかな……」
「えっとぉ、でももう港が見えてきてますよぉ」
「おお、パトカーがいっぱい……」
遠くに見える港には、ずらっとパトカーが並んでいる。
復活した警備員やら警察関係者、それと九頭龍クンに辺古山さんが犯人一味を見張っている間に船内の内部調査も終了する。
結局一味が持っている物以外にも、かなりの数の麻薬が船内に隠されていたようだ。
尋問によると、犯人の吉野バーテンダーは麻薬の売人で、船内にそれを隠していたところ正義感の強い梶野被害者に勘づかれ手放すように説得されていたらしい。
しかし、それを強請りだと勝手に勘違いしたバーテンダーがこの機会に彼を殺害。ついでに日本の売人組織に麻薬を大量に売りつけようとしていたとか。
九頭龍クンたちは一気に臭い部分を叩き出せたことでご満悦だそうだ。
そして後日、犯人である吉野バーテンダーは警察での尋問後、失踪したそうだが今頃冷たい深海にでも投棄されているのだろうか…… いや、九頭龍クンがいくら極道だからってそんなことをするかは分からないけれど。
訊いても教えてくれそうにないので諦める。
「結局クリスマスっぽくならなかったね。ごめんね罪木ちゃん」
まさかクリスマスに殺人事件が起きる不運とは…… 過ぎてしまったことだが、残念だ。
「大丈夫ですよぉ」
隣を歩く彼女はぽえぽえと笑いながら私の謝罪を受け取る。
あーあ、せっかく楽しめると思ったんだけどなあ。
なんだか騒がしい両隣のクラスを横目に教室に入ると、パンと目の前でクラッカーが弾ける音がした。
「メリークリスマス!」
教室の中には〝 見学中 〟の文字をぶら下げた日向クンを含め、全員が揃っていた。
「…… へ?」
「おいおい最後かよ! あ、ソニアさんこれオレからのプレゼントなんですけど」
「御手洗さんも今日はいらっしゃっています! 脱法ロックです!」
「いや、脱稿だから……」
「ソニアさん!?」
「蜜柑ちゃんも凪ちゃんもこっちこっち!」
「豪華客船に負けない料理を提供するよ。ハートでね!」
皆、小学生か中学生のように机をくっつけて大きなテーブルを作っている。
それに用意されているのはザ・クリスマスパーティーといった料理の数々と、その前に胸を張って立つ花村クン。
「なんで皆知って…… !?」
「おねえはまた〝 死神 〟っぷりを発揮してきたんでしょー?」
「いや、狛枝は関係ねーよ。こっちの事情だからな」
「しかし坊ちゃん、2人で行動するより随分と楽になりました」
「…… ああ、仲間っていいな。ペコ」
「ねえねえイルカ見てないんすか!? イルカイルカ!」
「あ、ごめん見てないや」
澪田さんに謝りつつ周りをぐるっと見ると、思い思いに食事をしていて教室内には律儀にクリスマスツリーまで飾ってある。しかも皆の可愛らしいデフォルメ人形付きだ。
「あれ、クリスマス過ぎてるよね…… ?」
「全員が集まるのが今日だと分かっていたからです!」
「え、でも皆それぞれ用事があったりなんだり……」
「そこは先生だもの! 16人分の予定くらい把握してないと家政婦なんてできないわ」
雪染先生が関係していたか……
「なあなあ! 美味いモン食ってきたんだろ!? どんなだった? バトルはしたのか?」
「ガッハッハ、犯人との一騎打ちかぁ!」
「してませんよぉ!」
一騎打ちしたのは十神クンだね、と呟くと全員がいっせいに黒うさぎクンに注目する。
「俺ではないぞ」
視線が再び戻ってきたので 「なんと、痩せてるほうの十神クンが犯人に一本背負い決めたんだよ!」 と言うが、皆 「ハイ解散っ」 といった雰囲気になってしまった。
「ンな嘘ついてんじゃねーよ! オメー、また王馬のやつになんか吹き込まれたのか?」
「いやいやいや! 王馬クンの嘘に騙されたことなんてないからね!?」
「偽りに身を固めるか地獄からの使者よ…… それも良いだろう。今宵の宴の良い供物になるだろうからな!」
クリスマスパーティーで話すいいネタになるってこと?
だから嘘じゃないってのに…… どれだけ侮られてるんだよ痩せてるほうの十神クン。
「とにかく、狛枝さんも罪木さんもこっちに来て…… ほしいな」
七海さんに手招きされて入り口から移動する。
「はい、これ、クリスマスツリーのどこかにつけてきてね」
渡されたのはツリーの飾り2つ。
どうやら全員が1つ以上ツリーに飾りをつけることになっているらしい。私は渡された丸い飾りを真ん中辺りにつけて、罪木ちゃんが渡されたレースをぐるっと巻きつける。
「ところで、なんで予備学科がいるのかな?」
いつもの言葉。
「友達だから、だろ」
いつもの返答。
「クリスマス、七海さんとデートできた?」
「してきたよ。町一周ゲーセン巡りの旅!」
「ちょ、おい、七海!」
楽しそうでなにより。
クリスマス当日は散々だったけれど、今年も楽しいイベントを過ごせるのはキミたちのおかげだよ
……ねえ、そうでしょう?
だから、大好きな〝 みんな 〟に贈る「メリークリスマス」!
「狛枝さぁん?」
「ん?」
「いえ…」
「私は〝 皆 〟といれて幸せだよ」
「そうですかぁ…… えへへへ」
・梶野正義
被害者。もちろん、命名は 「カジノ」 と 「正義感」 から。
・木立イオ
恋人。 「木」 材で出来たバ 「イオ」 リンから。
梶野さんがこの船に拘っていたのは、吉野のきな臭さを察知して色々探っていたからと知ってからは、気づけなかった自分を責め続けている。
・吉野十蔵
バーテンダー。吉野はそう言う名前のカクテルがあることから。
・アイスピック
かなり長さに種類があって驚いた。
・赤松の演奏曲
気になったら是非とも聴いてみましょう!
作者としては子犬のワルツがかなり好きです。
さて、読者の皆様。犯人当てクイズにご参加くださり、感謝いたします!
それでは正解者の皆様を発表させていただきますね。
最果ての地様、181Aの電流様、紅蓮様、繰り園様
おめでとうございます!
それでは皆様、錆理論の方ではまた1月1日にお会いしましょう。
良いお年を!