10月31日の
秋の収穫祭
忘れていいわけはない
あの 秋の収穫祭を
(絶望前の小休止。ハロウィーン話なので、実際には冬に起こった「白黒」よりももっと前のお話です)
「メイってばどこからこんなものを持ってくるの?」
「お嬢様がお望みでしたから」
大きな袋の中を覗き込みながら彼女に問うが返ってくるのは答えではない。はぐらかされているようで思わず目を
「じゃあメイにはこれね」
何故か入っていた黒白スタンダードなメイド服にガスマスクはないから13日の金曜日のホッケーマスク。いつもの格好もメイドっぽいが今日は白衣を脱いでいるし、いつもよりも短いスカートを履いている。これで銀の盆にケーキかパイを乗せてたら完璧だ。
「お嬢様はこういうご趣味で?」
「違うよ。腹いせにおかしな組み合わせを選んだだけ」
白い巻きスカートに白いシャツ。白い髪はトップで結って真っ白な猫耳カチューシャ。スカートの下にスパッツと白い猫の尻尾を付けられていきなりパーティをしようだなんて言われても困るだけなんだもの。まっしろしろすけな状態でカボチャのケーキでも食べたら汚しちゃいそうで怖いよ。
格好が未だ出現していないエフェクト〝ねこ〟に似ているのは気にしない方向で。
「アンタは似合ってるからいいじゃない! 目隠しに魔女だなんて似合わないわ……」
「私は長いスカートで義足が隠れるから丁度いいけどね。黒いのが好きだから悪魔もなかなか気に入ってるよ」
「ところでなんで私が天使? 魚系とかじゃなくていいの?」
上から順番にヒイラギ姉さん、りん子姉さん、橙子ちゃんだ。今回はヘルメットを被った上にいつもの服の上からダボっとした天使の恰好をしているから病室から出ている。体調も良いらしいし、低脂肪のカボチャケーキやあっさり系の料理が並ぶので参加している。恰好は勿論私の趣味である。天使だよ天使。病院だと若干縁起悪いかもしれないが、ハロウィーンの仮装は病院でやると大体縁起悪くなるから皆一緒だ。
ヒイラギ姉さんは前髪と帽子で大きな目を隠し、俯き気味に足をもじもじと動かしている。短めのスカートだからか恥ずかしいのかもしれない。黒系の衣装が良く似合う。グッドチョイスだね、メイ子さん。
りん子姉さんは長めのスカートだが少しスリットが入っていたり、透かしのフリルが入っていたり控えめな露出が効いている小悪魔だ。黒い巻き角もよく似合っているし、ワンポイントアクセサリーの真っ赤なネクタイも似合っている。少し露出があろうと本人は義足が隠れるから嬉しそうだ。
「メイドさんもさ、もっと可愛いのくっつけようよ!」
「えっ、あの、それはその…… 橙子様…… お、お嬢様お助けを!」
そう言って橙子ちゃんが袋から出してきたのはなんと、ウサ耳。それもバニーガール使用の派手で片耳が折れているやつ。これは、これはもう笑うしかないよね。ホッケーマスクにメイド服に真っ白なウサ耳。なんだろう、このミスマッチな感じ。助けを求める声がメイ子さんから思わず漏れたみたいだけれど私は助ける気なんてさらさらない。噴き出して親指を立てながら笑い転げる。あ、笑い過ぎて涙が。
「っふ、ふふ、橙子ちゃんナイスチョイスだねっ…… ぶはっ、だめだっ、ごめんメイっ、むり!」
「ほう、これはなかなか」
「え? …… ふふっ、あ、ごめんなさいっでもっ、あははは!」
りん子姉さんは静観する体制になっているし、ヒイラギ姉さんは俯いた体勢から軽く見上げ、すぐに笑いを抑えるように口を塞いだ。でもやっぱり抑えきれなかったみたいだ。
「さ、早く料理を頂きましょう! ですから手を止めてください。手を止めてくださいませ。橙子様お手をっ」
テンパってるテンパってる。そんなに嫌かな、ウサ耳。まあそんなこと口が裂けても言えないけど。なぜって、後で報復に同じ格好させられるかもしれないからだ。今はそっとしておいて空気になろう、そうしよう。早く忘れてくれることを願う。
「おじょうさまぁ!」
珍しく年相応に恥ずかしがるメイ子さんを眺めながらその日一日を過ごしていくのでした。
投稿日が丁度ハロウィーンだったので絶望前の癒し要素をお茶請けに選びました。
・前書き
マザーグースの一節。日付と収穫祭の所が実際には11月5日のガイ・フォークス・デーで書かれている。