錆の希望的生存理論   作:時雨オオカミ

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〝 友人はあなたのためでなく、自分の利益のために忠告するのだ 〟



No.13『楽園』ー砂浜ー

 ボーッとしていると、日向クンが呻き声をあげながら薄く目を開けた。

 それに反応して微睡んでいた私は目を開き、座り込んだまま彼の顔を覗き込む。

 

「あ、起きた?」

「……」

 

 あれ、反応がない?

 目を開いたまま彼がこちらを向いたが返事は返ってこない。

 

「ねえ、聞こえる…… ?」

 

 あまりにも反応が薄いのでちゃんと私の声が届いているかも怪しい。枯れ草色のその瞳は虚空を見つめているようで、一点を見つめているようで、どこにも向けていないようで、周りが何も見えていないように思えた。

 

「ねぇ、本当に大丈夫?」

 

 尚も考え込むように沈黙を決め込む日向クンに一抹の不安を覚えた私は彼の頭上で手をヒラヒラと動かし、 「私のこと見える? 耳聞こえてる?」 と矢継ぎ早に質問した。

 

「あ、ぁ」

 

 ゆっくりと頷いて、咽に小骨が刺さってしまったかのような、不可解な表情をした彼は小さな声で 「ここ、どこだ」 と呟いた。

 独り言に近いそれは頭の中の整理をするために発せられた言葉だとすぐに私は分かった。私の一挙一動に目を動かすこともなく、ただ虚空を見つめているのみでこちらを見ていないことは明らかだったからだ。

 

「うーん、大分参っちゃってるんだね。でもそれは私だって、他の皆だってそうだよ。だってほら、いきなりこんな変なことに巻き込まれちゃったんだし」

 

 反応がないことを分かっていながら、そっと彼の額に手を置いてみる。

 日陰にいたといってもここは常夏の国、南国の砂浜だ。少し火照った彼の顔は熱を持ち始めていて、これでは適当についた熱中症という嘘が本当になってしまうかもしれない。

 

「ねぇってば、いつまでも寝てたら熱中症になっちゃうよ?」

 

 そう言って顔を覗き込んだとき、額に乗せていた手が振り払われ、彼は唐突に体を起こした。

 

「おっと…… 大丈夫?」

「…… 放っておいてくれ」

 

 一人忙しなく周囲の観察を始めた彼に続き、私もスカートについた砂を払い、立ち上がる。

 

「そんな青い顔した人を放置しておく訳にはいかないよ」

 

 溜息を吐いて、自分の顔を指さすようにすれば彼も無意識にか自分の顔に手をやっていた。そんなに青い顔をしているだろうか、と相変わらず青褪めた顔で確かめている。熱中症になりかけて赤くなったり、目が覚めたと思ったら青くなったり、まったく忙しいものだ。

 

「南の島だって、言ってたよな……」

「うん、そうだね」

 

 唐突に、日向クンが確かめるように言った。私はすぐにそれが何を指して言っているのかを理解して返事をする。

 周囲の光景があれば十分確認可能だと思うが確信の言葉が欲しいのだろう。いや、本当は否定してほしいのかもしれないが、周りはあまりにも南の島に相応しい光景が広がっている。否定するにも無理があるだろう。これが舞台のセットだとでも言えば少しは安心するかもしれないが、私にそんな不毛な嘘を並べ立てる理由はない。

 そもそも、彼が倒れたときだって正直にキャパオーバーの知恵熱だろうねって言っても良かったのだが、それではなんだか可哀想な気がしたのだ。異常事態でからかう人間なんて…… 一人思いついたがまあ、かねそんなことをする人はあんまりいないだろう。

 しかし、そんなことを暴露されたと知ってしまったらきっと恥ずかしくって死にたくなるに違いない。私だったら恥ずかしくって暫く皆に顔向けできない。

 

 今回のことは嘘を吐いたとしてもすぐに嘘が嘘だとバレてしまう。無駄に希望を持たせるようなことをするより、現実を見てもらった方が良いだろう。…… って、私が言うとなんだか変な感じだな。

 

 彼は周りにあるものを順に観察して行っているみたいだ。そうして自分を落ち着かせようとしているのかもしれない。

 

「ああ、そのモニターどこから電源が繋がってるか不思議だよね」

「……」

 

 ヤシの木につけられた液晶モニターを見ているので一声かける。これは私の正直な感想だ。

 

「それ、あんまり近寄らない方がいいよ。ヤシの実って意外と重くて痛いんだ」

「……」

 

 次いでふらりとヤシの木に近づこうとしたので一応注意をしておく。

 勿論、体験談だ。

 

「私は泳ぐの得意じゃないんだよね。海は綺麗だけど、なにがいるか分からないし、やっぱり貸しプールが一番安全だよ」

 

 目線が海、または地平線を見つめだしたので正直な感想を漏らす。

 まったく、せめて一言くらいなにか言ってくれてもいいと思うよ。「やかましい」とかでもいいからさ。あんまり薄い反応をされちゃうとボケ甲斐もないし、なんだか寂しい。

 

「ん? これってカメラだよな…… 監視カメラ? まさか、これで俺達を監視してるのか!?」

 

 私よりも監視カメラに夢中になるんだね、そうなんだね。悲しくなんてないよ。

 

「監視というよりも、私たちに危険がないように見張ってくれてるんだと思うよ。まさにライフセーバーいらずだよね! あ、どっちにしろこの島には私たちしかいないんだっけ?」

「……」

 

 先生、日向クンが冷たいです! これじゃあ希望のカケラなんていつまで経っても集まらないよ!

ウサミ先生だったらこういうボケ反応してくれるんじゃないかな?

 

 まったく、いくら混乱してるからといって無視はないんじゃないかな無視は。

 

「ねぇ、そろそろ落ち着いてきた? いきなり変な事に巻き込まれて、混乱するなとは言わないけどさ…… でも、まずは自己紹介くらいしておこうよ」

「自己紹介?」

 

 ああやっと彼の口から名前を訊ける。

 

 いつまでも自己紹介なしにやってたら、心の声がうっかり漏れて、なんで知ってるんだって詰め寄られるかもしれなかったから早めに自己紹介はしておきたかった。

 日向クンと七海さんはいくら探しても掲示板に乗ってないし、辺古山さんは探しても見つかりづらい。後者二人は挨拶済みで問題はないし、あとのメンバーは私が知っていてもおかしくない人ばかりだから大丈夫だが、一番の不安要素は日向クンの名前をうっかり呼んでしまわないかだった。ボロを出す前に自己紹介にこぎつけられて良かった。

 

「ほら、同じ新入生同士だけどまだ自己紹介してなかったよね? よろしく、私は狛枝凪。恐れ多くも抽選に当たって超高校級の幸運として招いてもらったちょっとした有名人だよ」

 

 有名人。この言葉に反応がなければ日向クンはスレッドやネットには関係のない人物だと断定できる。

 私自身は時事ネタとして今もスレッドでは有名だし、パソコンを多くやっていれば私のことはすぐ分かる。なんせ、白い髪なんていう特徴的な目印があるからね。テレビのニュースでも三回くらい映ったことがあるし、知ってる人は知っているだろう。

 

「なんだよ、ちょっとした有名人って」

 

 良かった。知られてなくて。

 ちょっぴり安心して息を吐く。知らないほうがいいこと、知ってほしくないことなんて、世の中には幾つもある。一人の人間に秘密の一つや二つ、あったっていいだろう。初対面なら尚更だ。

 

「今年の幸運枠に必ず選ばれるだろうって噂が立つくらいの幸運なんだよ、私は」

「…… いきなり何言ってんだ?」

「いや、冗談とかじゃないよ。希望ヶ峰学園は、全国の一般的な高校生の中から抽選で選んだ一人だけを 〝 超高校級の幸運 〟 として入学させているんだって。それに必ず当たると言われた女子高生。それが私ってこと。実際に当たっちゃってるしね」

 

 暑苦しくて有名なあの人が海外に行っていると日本の気温が下がる。そんな噂と同程度の有名さといえばいいだろうか。

 実際、私には 〝 超高校級の死神 〟 だなんていう不名誉なあだ名もあるが、それと同時にあそこまで幸運ならば希望ヶ峰に行くだろうという噂もあった。彼に嘘は吐いてないし、意図的な漏れを作るくらい別にいいよね。

 

「超高校級の…… 幸運?」

「学園は不確定な運について研究してるみたいでさ、毎年一人だけ選ばれるんだって。見えないものの才能を見つけだすために日々向上するのがどうとか?」

 

 多分、同じく目に見えない才能である 〝 超高校級の希望 〟 を見つけ出すための前段階として研究をしているのだろう。実際に〝超高校級の幸運〟の一人が希望になったわけだし、研究の方向性はあながち間違っていなかったのかもしれないな。

 

 幸運という不確定な要素が才能として選ばれている。そんな学園の事情に複雑そうな、悲しそうな、愕然とするような、そんな顔をして日向クンは俯いてしまった。

 

「さて、これで私の自己紹介は終わり。次はキミの番だね」

 

 ネガティブキャンペーンは現在取り扱っておりません。流石に原作の狛枝クンほど私はネガティブこじらせてるわけじゃないし、長々と自分語りをして日向クンを困らせるわけにもいかないだろう。よくあそこまで自分を卑下できるもんだと思うよ。自分のことをゴミクズと呼ぶなんて、私にはとてもできない。まあ、そこが好きだったんだけれども…… 私はいたって普通(・・)の女子高生だからね。

 

 ここはサクッと自己紹介を終わらせて日向クンの話を訊こう。

 

 私が自己紹介を促すと、彼は戸惑いつつも自己紹介を始めた。

 

「あぁ…… 俺の名前は日向創だよ」

 

 そこで途切れる言葉に一旦間を置き、私からも口を開く。

 

「日向クンだね。じゃあ、ちょっと質問なんだけど、キミの才能を教えてくれる? 他の皆のことならネットで少し調べたんだけど、最後まで見ないうちに眩暈に襲われちゃったからキミのことは分からないんだよね」

 

 別に私は才能に特別関心があるわけではないが、ここは口に出しておくべきだろう。でないと、彼は才能が思い出せないということを後々知ることになる。一人で悩ませるよりはちょっとしたフォローを入れてバランスを保っておくほうが良い。

 

「えっと、俺は…… お、おれ、は……」

 

 口を開きかけた状態で、停止。

 唖然として、みるみる青褪めていく表情を見て思わず「大丈夫?」と言う声が出たものの、青い通り越して真っ白になっていく顔に、思っていたよりもすごい衝撃を受けた。

 

「あ、れ…… ?」

 

 日向クンが自身の体を抱きしめながら体を震わせている。カチカチと、なにか恐ろしいものを見たような表情で、知らなくていいことを知ってしまったようなその表情。いやむしろ、これは分からないことへの恐怖。古今東西、分からないことは怖いと相場が決まっている。だからこそ、ウサミ先生の不十分な説明で皆が混乱したのだし、今それと同じことがまた日向クンに起こっているのだ。

 

「日向クン、どうしたの? 大丈夫?」

 

 またぶっ倒れでもしたら大変だと近寄っておく。

 そして、一番最初にやったように顔の前で手をヒラヒラ。指を一本立てて尚も振る。

 

「ほらほら、この指何本?」

「えっと、一本だろ? じゃなくって、まだ色々と、混乱してるみたいだな…… なんか上手く思い出せないんだ」

「まあ、記憶が混乱するのも無理ないよね。落ち着いたらすぐに思い出すんじゃないかな? だからさ、そんなに思いつめる必要ないと思うよ?」

「そう、だよな」

 

 思いつめたように声を詰まらせる彼に 「 これからもよろしくね 」 と締めの言葉を告げる。そして皆に挨拶に行こうか、と提案をするまえに互いの懐から明るい電子音が鳴り響いた。

 

「おい、なんか鳴ったぞ!? 変な音がっ、しかもっ!」

 

 慌てた様子で日向クンはポケットに手を突っ込み、電子生徒手帳を取り出した。

 彼は不思議そうな顔で手帳を横から見てみたり、ひっくり返してみたりと念入りに調べている。まるで初めての物をちょいちょいと触る猫のようだ。警戒心剥き出しで恐る恐る触っているあたりがそっくり。

 

「な、なんだこれ? PDAとかスマートフォンみたいな…… こ、こんな物が、どうして俺のポケットの中に入ってるんだ?」

 

 電子生徒手帳を渡され、ポケットに入れてすぐに倒れたからか幾分か記憶が飛んでいるようだ。そんなメンタルで大丈夫か? 一番いい日向クンを頼む…… じゃなくって説明しなくちゃね。

 

「さっきウサミ先生から配られたでしょって、そっか…… 日向クンはあの時から呆然自失って感じだったもんね」

「そ、そういえば、受け取った気がしないでもないけど。で、これはなんなんだ?」

 

 そこで私が説明を始めるよりも先に背後から声があがった。

 

「てんてるてーん! それは〝 電子生徒手帳 〟でちゅよ!」

「うわっ! お、お前、どこから出て来たんだ!?」

「あ、っと、なんだ先生か」

 

 なまじ背が低いだけに出て来るまで気づけないんだよね、ウサミ先生のことは。

 ゲームみたいに出て来るとき特有の効果音が鳴っているわけでもないし、死角から視界に入って来るから心臓に悪い。

 

「あぁ、驚かせちゃった? だったら、ごめんなちゃいでちゅ。えへへ、あちしって素直にごめんなちゃいが言える子なんだー! …… ところで、それってカッコイイよねー? この修学旅行には欠かせない必需品だから、なくさないようにしてくだちゃいね!」

 

 とりあえずウサミ先生が説明をしてくれるみたいだし、黙っておこう。ただでさえ少ないウサミ(・・・)先生の出番がなくなっちゃっても困るし。それに彼女の台詞を少し聴いていたいという思いもある。可愛らしい舌足らずな口調は聴いててなんだか和む。

 警戒心剥き出し状態の日向クンを見るのも、なんだか野良猫を観察しているようで微笑ましくなってきてしまう。おもしろいよなー、日向クン。主に反応が、だけど。

 

「こ、この機械が?」

「ミナサンには、その電子生徒手帳を使って、〝 希望のカケラ 〟を集める事をお願いしてるんでちゅ!」

 

日向クンが小さく 「希望のカケラ?」 と疑問の声をあげると素早くウサミ先生が私たちにした説明と似たことを言った。

 

「あのね、この島では仲間同士で仲良くなると、〝 希望のカケラ 〟というのが手に入るんでちゅ。〝 希望のカケラ 〟は、ミナサンが仲良くなればなるほどどんどん集まっていきまちゅ。そうやって〝 希望のカケラ 〟を集めてって、満開の希望を花開かせる事こそが、この修学旅行の目的なのでーちゅ! らーぶ! らーぶ!」

 

 そして、言うだけ言ってウサミ先生は満足したのか、ピンク色のエフェクトとともに姿を消していった。

 

「どんなマジックなんだろうね」

「いや、それよりも希望のカケラを集めろってどういうつもりなんだ? まるでお遊び気分じゃないか」

「うーん、きっと、新入生同士の親睦を深めるためのサプライズなんだよ。流石希望ヶ峰学園だよね。やることが大規模だ。それに、ただの旅行なら危険なことなんてないだろうし安心できると思わない?」

「そ、そうかもしれないけどさ」

 

 警戒心が人一倍強いだけあってなかなか頑固だ。日向クンってサプライズとかはあまり好きそうじゃないね。終始混乱して終わりそうだ。そういう私も心臓に悪いからサプライズは好きじゃない。

 私でサプライズと言ったら、不運なことばっかり思い浮かぶのは仕方ないだろう。今の人生で起きたサプライズなんて嫌な思い出ばっかりだよ。

 

「それに、皆の希望のカケラを全部集めたら目的達成でこの島ともオサラバらしいよ」

「それは本当か!?」

 

 先程から希望的観測の濃い私の意見は華麗にスルーしてくれていたが、オサラバのオサの部分で勢いよく日向クンが私の話題に食いついた。どんだけ帰りたいのこの子。

 滅多に来れない南国の島なんだし、貰えるものだけ遠慮なく貰う精神で楽しもうとは思わないのだろうか。それとも、私が暢気すぎるだけなのだろうか。危機感の感覚も少し皆とはズレているのかもしれない。まあ、いろんな目にあってるんだし、このくらいの小さな不運は些末な出来事だよね。

 

「そこも覚えてないんだね。本当のことだよ。皆が仲良くなればこの修学旅行もお終い。ね、少しは安心した? 私たちが普通に過ごしていれば、案外簡単に帰れるかもしれないよ」

「だ、だとしてもだ。そんなことをさせる理由はなんだ? わざわざこんな島に連れて来て仲良く過ごせだなんて、意味不明すぎるだろ」

 

 理由。理由か。確かに現時点では真実に辿り着くための証拠や証言がないわけだから分からないのは当たり前だけれど…… 今ある材料だけで出せる結論はやはり二つだけだな。

 

「さっきも言ったけど、これはきっと学園側からのサプライズなんだよ。だからちょっとは肩の力を抜いておこうよ。いつまでも緊張しっぱなしじゃあせっかくの旅行が台無しになっちゃうよ」

 

 サプライズ説と、何らかの陰謀があるという説だ。もしかしたら希望ヶ峰学園クオリティなんてこともあるかもしれないし、あんまり深く考え込んでも日向クンがまた知恵熱で倒れちゃうんじゃないかな。

 

「ところで、日向クンは私以外の誰とも自己紹介してないよね? 仲良くなる第一歩は自己紹介からって言うし、一度はしておいたほうがいいと思うよ」

「そりゃあ、そうかもしれないけど…… 肝心の皆はどこに行ったんだ?」

 

 日向クンが目覚めるのをずっと待ってるわけにはいかないから手分けして島の探索に行った。嘘偽りのない真実だが今の彼には少々重い事実だろう。自分が重荷になっていることを知らされたらますます思いつめそうだし、ここはさっきも使った、嘘は言わないけど意図的に漏らしがある戦法で行くか。

 

「この島で過ごせって言われてるけど、疑問だらけでしょ? この島に名前はあるんだろうかとか、脱出手段は他に何かないのかとか、そもそも暮らすのに必要な食糧やらはちゃんとあるのかとかね」

「まあ、そうだな」

「だから今は手分けして探索してるんだよ。その生徒手帳には地図もあるし、現在いる場所がそれぞれ表示されてるみたいだからそれを追って行けばすぐに見つけられると思うよ。私も島を見て回るついでに日向クンに付き合うからさ、自己紹介行脚の旅に出かけようよ!」

 

 おっと、難しい顔をしてらっしゃる。彼のことだからなんで私がこんなに親切にするのかとか、初対面なのにとか、疑心暗鬼にでもなっていそうだ。正直、私もなんで初対面なのにこんなに打ち解けてるのかよく分からないけれど、昔からある私のミーハー魂がそうさせているのかもしれない。まったく、何度も火傷するはめになっているというのに、どうしてこうも首を突っ込みたくなるんだろうね。

 

「どうしたの? 日向クン。早く行こう」

「あ、あぁ分かったよ」

 

 こういうとき私が男だったら躊躇いもなく日向クンの手を引っ張っていけるんだけどな。ちょっとした触れ合いも女子同士なら簡単にできるのに、仮にも男の子相手だから遠慮しちゃうよね。

 ちょいちょいと手招きをして 「どっちから回ろうか」 なんて話をする。

 

「さて、どうする?」

「と言ってもな、こっちは広いし、空港も遠くにあるみたいだな」

 

 実は空港まで中央の島へ行くのと同じ距離あるのだ。

 ここは現実。島がそう単純に円周になっているわけでもなく、空港は端の方にあり、逆に中央の島への橋は砂浜からほど近い場所にある。マーケットはホテルの近くにあり、マーケットから空港へも遠い。牧場は近い所にあるがとてつもなく広そうだ。ホテルの近くに森もあるみたいだし、なかなか判断し難い。

 

「よし、じゃあこの枝の、葉がついてる部分が倒れた方向に進むとかどう?」

「はぁ?」

 

 私だったらこっちの方法のほうが手早く済む。反対意見は求めてません。日向クンが私を残念な目で見ている間に済ませちゃおう。

 

「いや、都合よく左右に倒れるわけないだろ」

「そいや!」

 

 そして拾った木の枝を勢いよく頭上に投げた。想定着地点は自分たちの少し前。楽に島を回れますように。

 

「ってイタァ!?」

 

 ほら見ろと言わんばかりの視線で日向クンがこちらを見つめてくるが、ちゃんと成功したのだから別にいいだろう。確かに、頭の上に落ちてくることは想定してなかったけど、もう少し前に投げたつもりだったけど、ちゃんと枝葉は私たちから見て右の方向へ向かって倒れている。

 

「牧場のほうからだね」

「そ、それでいいのか?」

 

 日向クンが若干引き気味なのは気のせいだろうか。

 

「うん、だって幸運だからね」

「…… 行くか」

 

 木の枝が思い切り脳天にぶち当たった場面を見られているせいか、なんだか哀れみの目を向けられているような気がする。いや、気がするだけだきっと。

 

 静かに移動することを呟いた日向クンに、私は「う、うん」とぎこちなく返事をしながら大人しく後をついて行くのだった。

 

 

 

 

 




・周回の仕方
 皆さんはどうしていますか? 私は基本的に十神を最後にするので基本飛行場の方からなのですが、今回は特別に神へ判断を委ねました。すなわち、「どちらにしようかな」に幾分か適当な言葉を混ぜ、結果が分からないようにし実行しています。

・ボケ
 誰か!超高校級のツッコミさんを呼んで来て!

・私はいたって普通の女子高生だからね。
 ミナサン、ここウィークポイントですよ。

・微妙に上からっぽいさび枝
 狛枝ですから(真顔)
 驚きまくっている日向クンのことを、臆病なネコかなにかを観察している気分になって見ているようです。

 暫く場所毎の自己紹介パートです。あの人登場以降は原作沿いとは言えなくなると思いますが、面影は残す予定。ハッピーエンド前提()ですから。
 自由行動は感想か活動報告のほうで要望があった人や、予定済みの人を選ぶことが多いでしょう。一概に読者様の意見を優先するとは限らないので悪しからず。
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