錆の希望的生存理論   作:時雨オオカミ

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 ※説明文章などが多いかもしれません。


No.14『失楽園』ー夜散歩ー

 ルールその6

 生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、全員参加の義務付けられる『学級裁判』が行われます

 

 ルールその7

 学級裁判で正しいクロを指摘された場合は、『クロだけが処刑』されます

 

 ルールその8

 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は校則違反とみなして残りの生徒は『全員処刑』されます

 

 ルールその9

 生き残ったクロは特別措置として罪が免除され、『島からの帰還』が許可されます

 

 ルールその10

 3人以上の人間が死体を最初に発見した際に、それを知らせる『死体発見アナウンス』が流れます

 

 ルールその11

 監視カメラやモニターをはじめ、島に設置された物を許可なく破壊することを禁じます

 

 ルールその12

 この島について調べるのは『自由』です。

 特に行動に制限は課せられません

 

 注意

 なお、修学旅行のルールは、学園長の都合により順次増えていく場合があります。

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

 コテージに戻り、ふわふわのベッドをゴロゴロしながらしばし堪能した私は、仰向けに寝転がって電子生徒手帳を確認していた。

 生徒手帳の項目には特に変化は見受けれらなかったが、ルールの項目内に変化が起きていた。

 それが、ウサミ先生の定めたルールの後に追加された、6から12までのルールだ。内容はかね、あのモノクマの言う通りである。

 モノクマは変更すると言っていたがウサミ先生の作ったルールに穴が開けられたわけでもないし、コロシアイをしなければ島から出られないのかという小泉さんの質問に曖昧に答えたこともある。

 希望的観測をするならば、ウサミ先生の提示した「仲良くすれば帰れる」というのもまだ有効なのかもしれない。

 島からの帰還というのも、脱出する権利というのも明確な帰還方法が明示されていないから不安が残る。そこら辺を考慮すると、やはり平穏維持が無難だろうか。

 

「なにをするにしても、備えあれば憂いなしって言うよね」

 

 黒い手帳を開き、ルールについての疑問を纏めておく。字が汚いのはご愛敬。人に見せる前提の白い手帳とは違い、私しか見ないのだから多少力を抜いても良いというものだ。

習字でも習っておけば違ったのだろうが、日記の早書きのせいで昔よりも字が汚くなった気がする。

 ま、それはそれとして…… あと懸念があるとすれば、私の哀れな日記帳を誰が持って行ったかだ。

 左右田クンの熱烈な告発に夢中で、ひと時でも目を離した私が悪いが、さすがに不気味である。大したことは書いていないが、私生活が覗かれるようでいい気分とは言えない。 寝起きで書いている上に、たまに怖い夢を見てパニックになっていることもある。黒い手帳が目でないほどに取り乱した文字もあるので人によってはSAN値が削れるかもしれないくらいだ。殆ど読めなくなっているだろうが、できれば解読せずに捨てて欲しい所だね。

 

 

「背中を押されて動きそうな人物は、思ったよりもいる印象だな」

 

 そして私は、観察した結果一覧を自分で眺め、自嘲気味に笑った。

 不安定で精神力の弱い人物は誰かが背中を一押しするだけで転がり落ちていく。知識があるとは言っても死人をなるべく出すつもりはないから、論理的に説明できるようにしておかなければならない。

 やるやらないは置いておいて、十神クンが思ったよりも冷静なのがやりづらい。いやむしろやりやすい…… のかな。警告をばら撒いて彼が巻き込まれないようにするのもいいが、かえって危険な気もする。だからと言って不発弾を放置しておく道理もない。

 原作で第一の殺人が起きた理由は間違いなく狛枝(わたし)だが、私は行動理由が違う。自分が死ぬ可能性のある殺人事件を、それも意図的に起こすメリットなんてないのだ。

 しかし、あそこで爆発した人物をいつまでも放っておくわけにもいかない。いつ、どこで私に牙を剥いてくるか分かったもんじゃないからだ。生き残った未来のクロが未確定のシーンに進むのは得策とは言えない。

 なにかをして誰かが死んでしまったら、信用ガタ落ちどころか恨まれて殺される可能性も出て来る。それではいけない。

 

 さて、どう動こうか…… 自身の生存確率を少しでも100に近づける努力でもすればいいか。

 

「ま、それはあとにして…… この部屋を私好みにしよう」

 

 ベースは全員同じコテージなのだから少しは趣向を凝らしたい。

 なら観葉植物でも持ってこようか。でもあれって重いだろうし、カートごと持ってくるのもありだろうか。いや、花瓶でもいいか。とりあえず、カタログは片っ端から貰って本棚に収めておこう。空だとなんだか寂しいし。

 カーテンも変えてしまおうか。いや、いっそ壁紙ごと変えてみるか? 橙子ちゃんの部屋みたいに一面綺麗な夕焼け色っていうのもありかもしれない。よし、そうしようかな。ポスターでもいいけれど、一面木造が丸出しになってるのも味気ないよね。

 カーペットは白だな。私の色と橙子ちゃんの色。いいよね。

 それとも木の壁はそのままで小物だけオレンジにしようか。よくよく考えればオレンジの壁ってかなり派手な感じするし、品がないよね。橙子ちゃんの部屋は子供だったからこそだし。

 …… そういえばかなり遊び道具もあったんだっけか。日向クンサバゲーとかやらないかな? やったことはないけれど、興味はあるんだよね。左右田クンも…… やったことはなさそうだけど、いや、そもそも私は嫌われてるからダメだな。

 日向クンも青い顔のまま黙って行っちゃったし、 「遊んでる場合じゃないだろ!」 って怒られそうだ。

 まあ、飾るだけならいいだろう。恰好良いし。

 

 それにスーパーの商品リストも作らないといけないんだよね。

 

「えーと、希望ヶ峰学園修学旅行実行委員会が、お知らせします。ただいま、午後10時になりました」

 

 学校のチャイム音が鳴り響き、部屋のモニターの電源が勝手に入った。

 

「夜は人を惑わせる…… 夜中に出歩いて、うっかり殺人鬼と出くわしたらエライことになりますよ! それが心配で寝られないというオマエラのために、ホテル内に各自のコテージを用意しておきました。それぞれ、自分の部屋で、ゆっくりとお休みくださいませ。ただし……」

 

 モニターにはどこかで豪華な椅子に座り、優雅にトロピカルジュースを嗜むモノクマの姿が映っている。

 なんて羨ましい。

 

「就寝の際にはしっかりと部屋に鍵をかけることを強くお勧めします。どこの誰が人殺しを目論んでるか、分かったもんじゃないからねー! うぷぷっ、ばいならっ!」

 

 ブヅン、と途切れたモニターを暫く見つめ、ベッドから体を起こす。

 

「煽るね、まったく。でも、皆が出てこないだろう今の方が散歩には最適かな」

 

 白い手帳と財布、コテージのキーをポケットに確認して伸びをする。

 眠くないわけではないが、リスト作りにはかなりの時間が必要になるから昼間より夜に行動した方が良い。あんなことがあったその夜に出歩くほど肝の据わった人がいるとも思えない。

 モノクマにからかわれたとしても、そのときはそのときだ。

 

「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 向かい側のコテージから随分と暴れまわるような音が聞こえて来る。日向クン、波の音が聞こえるくらい安普請(やすぶしん)な作りなのにそんなことしたらバレバレだよ。

 ご近所迷惑で尋ねて脅かしてあげてもいいかな。いや、警戒されるだけか。大人しく聞かなかったフリをしてスーパーマーケットに行こう。

 

 頭上に広がっている空は、星を一面に敷き詰めたような素晴らしいものだった。

 超高校級の天文学部なんて人物がいれば星の位置で場所の特定もできたかもしれないが、生憎私にそんな便利な才能が備わっているわけでもない。まるでプラネタリウムのようだ、といった月並みな感想しか出てこないのだから。

 

 遠くから聞こえるはずの波の音は、美しい夜の雰囲気をぶち壊す日向クンによって遮られている。

 …… いつまで絶叫しているんだ、あの人は。

 

 カツ、カツ、と石畳に響く自身の靴音を聞きながら、閉まっている門を開け、道路に出る。

 無人島だからいいのだが、こういうときに車が突っ込んで来たリすることもあるから手つきは慎重だ。ゆっくりと歩きだし、スーパーマーケットに向かった。

 

「お、開いてる」

 

 当然のことながらマーケットには店員がいない。だから夜中は店仕舞いをしている可能性も考えていたが、どうやら24時間営業のようだ。

 看板は落ちてこない。よかった。

 

「カタログは片っ端から貰ったし…… 家具に目を付けておこうかな」

 

 欲しいのは夕ご飯と花瓶、観葉植物、オレンジ色のカーペットに小物ラック。あとはクッションなんかがあれば嬉しいな。暑いから冷蔵庫も欲しいし、生活用品を先に運んでから大きな家具を運ぶ方がいいよね。

 

 目星だけつけてリスト作りにとりかかろう。

 

 食糧品は澪田さんが言っていたように、食べたいものを探せば出て来ると言えるほどに豊富な品揃えだ。野菜、肉、原料、調味料、加工食品までかなりの数が揃っている。

 一品一品名前を確認してリストにするのは時間がかかりすぎるから大まかに分けて書いておこう。そんなんじゃリストにならないって言われたとしても人力でやっているのだから仕方ない。

 料理のレシピ本もあるみたいだね。これがあればとりあえず知らない料理でも作れそうだ。

 花村クンがいるから必要ないかもしれないけど、もしかしたら彼の料理を食べられなくなるかもしれないし、みんなバラバラに食べようってことにも成り得るかもしれない。あって損はないよね。

 

 商品リスト「食糧」

 備考 肉野菜などの生ものから加工食品まで様々。加工品の大きさはアメリカ基準である。

 

 こんなものだろうか。

 次は種類の多そうな生活用品。

 洗濯洗剤や柔軟剤、リンスやシャンプー、石鹸。女性にも男性にも嬉しいドライヤーまである。化粧品もあるみたいだし、簡単なヘアゴムもある。

 調理器具もこのカテゴリに入っているようだ。花村クンが良く使うかもしれないからだろうか。しかし、包丁のカタログはそっと添えてあるが包丁自体は扱っていない。包丁が欲しくなったらモノミかモノクマに要請する必要があるということか。

 

「あれあれー? こーんな夜中に狛枝さんはなにをしているのかな? うぷぷ、殺る気満々だねぇ。ボク、積極的な人は大好きだよ!」

「っわ、モノクマ…… 背後から出てこないでよ、ビックリするから」

「狛枝さんは包丁がほしいのかな? それともナイフ? ま、まさかのまさか! 肉切り包丁かな!? いいところに目を付けるね!」

 

 厄介なのに絡まれた。ただでさえ夜中で眠たいのに、これは疲労マシマシだね。

 これ、今日寝られるかなぁ。

 

「凶器を買うつもりなんてさらさらないよ。…… どっか行ってくれないかな?」

「なーんだ、がっかりー!」

 

 いやまてよ、これ、質問攻めするチャンスなんじゃないかな。

 

「そうだ、モノクマ。訊きたいことがあるんだけど」

「なんですかな? 殺害方法は自分で考えてくれないと面白くないから嫌ですよ?」

「いや、そうじゃなくってさ…… 私この島から出るつもりなんてさらさらないし」

「ふーん? へえー? ほーう? うぷぷぷぷ、そっかぁ」

 

 なんだかムカツク言い方だな。

 質問と言ったら…… 結構いっぱいあるけれど、気になるところを一つずつ訊いていくしかないかな。

 

「無料じゃない商品を日常的に使う場合があったら、メダルが足りなくなると思うんだけど…… そういうときってどうするの?」

「ティッシュペーパーかな? ナニに使うんですかね、はあ、はあ……」

 

 身をよじりながら息を荒げるモノクマからそっと視線を外す。滑らかな動きが逆になんか気持ち悪かったんだ。

 

「いや、それは違うよ。 ほら、コピー用紙とか娯楽用品のほうにあるでしょ? 皆の分の地図でも書こうかと思ったんだけど、あれも買わなきゃだめかなって」

 

 ただでさえ薄い手帳を使うのはちょっとと思っていたが、メダルの消費は抑えたいし、今訊けるなら訊いといたほうがいいだろう。後で困るかもしれないし。

 

「5人以上から要望があれば生活用品カテゴリーにしてもいいよ。要望は纏めて出して来てもいいし、個別に要望があったときでもオッケー! でも今日は特別に狛枝さんのために無料にしてあげてもいいよ。睡眠時間を削って頑張っちゃってる狛枝さんが面白いからね!」

「…… で、条件は?」

「やっだなー、今言った通りだよー!」

 

 胡散臭い。煽りに乗る気はさらさらないが、なんだかすごく胡散臭い。

 ここで無条件に舞い上がってはいけない気もするが…… ここは好意を素直に受けないと、無理難題が課されそうなきもする。無料(タダ)より怖いものはないけれど、仕方ないかな。

 

「じゃあ、ありがたく使わせてもらおうかな。それとルールのことなんだけど、モノクマは変更って言ってたけど、ウサミ先生が作ったルールはそのままになってるよね? これって仲良くなって脱出もまだありえるってこと?」

「さあ、どうでしょうね。この島に永住したい狛枝さんには関係ないことなんじゃないの?」

 

 はぐらかす、か。ならこれは保留。

 

「そう…… じゃあこれも躱されそうだけど、脱出する許可っていうのは?」

「そのまんまだよ? それ以上でもそれ以下でもない…… ここから帰れるってことだね!」

 

 これも曖昧。いや、わりとそのままなのだろうか。

 やっぱり脱出する手段については言及がないし、これを判断材料にして話すことができるようになったし、収穫ありってことでいいかな。

 

「この島を調べるのは自由って書いてあったけど、今日の朝は別の島に行けなくなってたよね? あれって解除されたの?」

「明日になれば分かるよ! って言いたいとことだけど、まあ、行けないよね。モノケモノがガーディアンとして橋を守っているのです!」

「え、なんで?」

 

 まあそこは予想通り。でも本当は知らないはずの情報だし、言わない。

 モノクマ相手だとやりにくいなぁ。ボロ出せないし、日向クンと違ってなんか話しにくい。

 

「最初から全部調べられるのは面白くないでしょー? だから制限を入れてみたのです!」

「コロシアイが起きたら解放されるってところかな…… ?」

「さぁ、どうでしょうねー? うぷぷぷ」

 

 教える気はなさそうかな。なら、今日話せることはここまでだ。まだ食品しかリストも作れてないし、本当に徹夜することになっちゃう。それは嫌だ。断じてごめんだ。

 モノクマも、もしかしたら寝るように催促しに来ているのかもしれないが、構うもんか。

 

「ああそう、教える気がないのは分かったからさっさとどっか行ってよ。集中できないでしょ」

「うぷぷぷ、健気だねぇ。こわぁい狼に食べられないように、気を付けるんだよ? じゃ、バイナラー!」

 

 モノクマには心配されたくないな。

 いつの間にかまたいなくなっちゃっているし、どこから湧いて出て来るんだろうか。

 さて、さっきの質問で生活用品も大雑把にまとめることができたし、次は近くの娯楽品にしようか。

 

 商品リスト「生活」

 洗剤やリンス、シャンプー、入浴剤、石鹸、ドライヤー、簡単なヘアゴムなど、使う機会の多い商品がここに入る。包丁以外の調理器具もここ。

 理由付きで5人以上が申請すれば、他のカテゴリーの商品もここに入れることができるようになるようだ。

 

 娯楽品はかなり雑多としている印象だ。南の島らしく海水浴に使うボールや浮輪、乗り物系(フロート)もある。イルカやシャチの定番なフロートにモノクマ型フロート。皆がどちらを選ぶかは明白だろうな。

 そっとモノクマフロートから目を逸らし、細々とした商品を見る。

 トランプや人生ゲームなどのボードゲーム、チェスがあるのはソニアさん用だろうか。

 初めてここに来たときから異彩を放っていたミリタリーグッズはリアルな様相になっていて、水鉄砲だと傍から見て分からないくらいだ。男の子が好きそうなラインナップである。

 切羽詰まった精神で、暫く買う人がいないかもしれないがちゃんとこれもリストにしておかないとね。

 

 商品リスト「娯楽」

 海水浴品やトランプ、ボードゲーム類のポピュラーな物からミリタリーグッズなどのなぜあるか分からない物まで完備。

 ナイフは手品などにも使う刃が伸縮する玩具で、銃器は水鉄砲タイプとモデルガンタイプ・エアガンタイプなどがある。無駄にリアル。

 

 その隣のコーナーは少し小さいが、どうやら服飾関係のようだ。パジャマや靴、部屋着用と思わしき服が並んでいる。あと目立つのは小物系統だろうか。

 アクセサリーもあるようだが、種類は少ない。ウサギとクマをモチーフとしたアクセサリーしかないのでお察しである。モノクマはモノミと張り合いでもしているのだろうか。

 

 少なくとも幾つか私の好みに合う洋服が見つかるので、全員の好みを踏んで品に出されている可能性がある。なにもかかっていない所には 「水着入荷予定」 の文字があるのでウサミ先生の言っていた通りだ。

 男性、女性それぞれに個別のカタログがあったのでそれを覗いてみると、下着用のカタログだった。プライベートなところだからだろう。女性用のほうだけポケットに入れ、次の場所へと移動する。

 

 商品リスト「服飾」

 女性陣、男性陣の好みを押えた素晴らしいラインナップ(仮定)。

 各部屋に元々着ていた物と同じ着替えがあるので、マーケットにある物は気分転換のための商品である。

 水着入荷予定とのこと。

 

 最後は一番奥まった場所にある家具売り場だ。

 机、椅子、カーペットや壁紙、観葉植物なんかもここにあるようだ。好きに選んで部屋に置けばいいということだろうか。冷蔵庫は小さめなのを説明書と一緒に購入したいところである。

 花瓶もあるが、島の自然と共存というルールがある以上使い道がない。しかし、そのためなのか、色んな種類の造花が品出しされているようだ。

 ポップには要望があれば追加することもできると書いてある。誕生花や花言葉の本も売っているのは、モノミの趣味だろうか。

 嫌がらせのように置かれた黒系統の不吉な花言葉を持つ造花もあるが、こっちはモノクマの趣味だろう。

 やっぱり商品で張り合ってるのだろうか。

 

 商品リスト「家具」

 陶器、プラスチックの花瓶や観葉植物などもこれに該当。

 置物系統から、壁紙やカーペット、普通のタンスやら様々。部屋を自由にカスタマイズできるようになっている。

 造花は要望で種類を増やすことができるようだ。電気製品は説明書付きである。

 

 入り口近くにある自動販売機はほとんどの物が無料で手に入るようだが、雑誌など飲食物以外はどうやらメダルが必要なようである。

 雑誌も私とは縁のないものが殆どであるが、暇つぶしくらいにはなるだろうか。私は読めるなら学術書でも読む乱読派だし、メダルに余裕があれば買うことも検討しようと思う。

 

 商品リスト「特殊自動販売機」

 簡単な飲食物から雑誌までを取り扱っている。飲食物はともかく、雑誌にはメダルが必要である。

 

「こんなものかな……」

 

 白い手帳をパラパラと捲り、内容を確認。人に見せるものなので字はなるべく丁寧に書いた。その分時間が余計にかかってしまったが、まあいいだろう。

 誤字脱字がないかをひとしきり確認したあとに、ページが残り少なくなってしまっているのを認識して溜め息を吐いた。日記帳もなくなってしまったし、まったくツイてないね。

 

 そしてすっぱりと忘れていた腕時計に目をやると、とてつもない時間が経っていた。ゆうに3時間は経っているだろう。もうすっかり夜中だ。

 これは寝不足に苦しむだろうな、と予想しつつもマーケットの奥にある台車を使おうかと近づく。

 まあ、小さめの冷蔵庫と小さなインテリアくらいなら運べるだろう。

 

「お前、こんな時間になにをしている?」

 

 台車の取っ手に触れた指がビクリと震える。

 しかし、怯える必要もない覚えのある声に平静を装ってから振り向く。

 そこにはでっぷりとした腹の肉を張り、腕を組む十神クンがいたのだ。

 胸を張っているつもりだろうか。強調されたお肉に目をやり、それから視線を合わせるようにして片手をあげ、分からないといったようなポーズをする。

 

「家具の調達と商品リスト作りだよ…… キミこそ、なんでここにいるの?」

「夜食だ」

 

 でしょうね。

 わざとらしく呆れたように 「ああ、そう……」 と吐き捨てて台車を押して冷蔵庫の隣まで移動する。

 なんだか彼と話すと皮肉合戦になってしまいそうになる。逆らいたくなるというか、なんだろう。腑に落ちない。

 

「お前はいいところに目をつけるな」

 

 小型冷蔵庫を乗せようと力を入れるが僅かしか持ち上がらない。こういうときに自分の非力さが嫌になるんだよね。

 

「フン、もやしめ」

 

 罵倒しながらひょいと冷蔵庫を持ち上げた十神クンが台車に置く。こちらを見下ろして誇らしげな顔をしていたので礼を言うと、思いがけない提案をされた。

 

「これは俺が持って行ってやろう。その代わりに先程言っていた商品リストやらを頂くぞ。…… ああ、当然コピーでいい」

 

 私が不可解な顔をしていたからか、十神クンが最後に言葉を付け足した。

 これは…… ありがたく要望を受けようか。立ってるものは親でも使えと言うし、どちらにせよ商品リストは皆に配る予定だった。

 

「なら食品は私が持つよ。商品リストは明日皆に渡すつもりだったからね」

「そうか、ならこれを頼むぞ」

 

 そう言って手渡されたビニール袋が軋んだ。冗談とかではなく、本気で。

 重い。とてつもなく重い。どれだけの食品を入れたのだ、これは。中を覗くと、店頭にあったあの大きなコカコーラがしっかり収まっているのが菓子に紛れてチラりと見えた。冗談じゃない。

 しかし十神は台車を二台利用して冷蔵庫も二台…… 二台?

 

「あれ、なんで増えてるの?」

「俺も使うに決まっているだろう」

「そ、そう…… なんかゴメン」

 

 結局冷蔵庫だけを運び、その日の夜は泥のように眠り込んだのだった。

 

 

 

 

 

 




・カーペット
 嫌いなものに白色が入っているのに白を選ぼうとするのは、橙子ちゃんと隣り合う自分を連想するからです。オレンジ色のない所に好んで白を使うことはないでしょう。

・超高校級の天文学部
 星を見て時間を、月を見て場所が分かるんですよ、きっと。大学生?なんのことでしょう。

・十神
 さび枝と舌戦を交わしたりしますが嫌いなわけではないです。むしろ好きなキャラです。
 なんだかんだ面倒見が良かったり、色々と聡かったり、原作では日向、狛枝、七海がトライアルポイントゲッターズとして有名ですが、私は彼が生きていたらその中に入っていたと思っています。
 日向にとっての狛枝や七海のような……そんな存在になればいいなぁ。

 ついでに希望のカケラを手に入れています。 
 十神クンはこれで2/6


・消費メダル
 花瓶5つ メダル3枚。(陶器製一つ1枚。プラスチック製は2つで1枚)
 造花セット 6種類メダル3枚(2種類でメダル1枚)
 冷蔵庫 メダル2枚
 合計8枚

 残りメダル32枚

 あなたさまは〝 左右田クンの熱烈な告発 〟を〝 告白 〟と読み間違えたことでしょう…… 「俺の占いは3割当たる!」
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