錆の希望的生存理論   作:時雨オオカミ

58 / 138
No.14『失楽園』ー漫才2ー

「どうもー、モノクマでーす!」

「えっとぉ…… モノミ、でーちゅ……」

「二人合わせて〝 ザ・モノクマズ 〟でーす!」

 

 わりと王道な感じで二人…… 二匹? の漫才が始まった。

 その様子を見る皆はどことなく冷めた目をしているように思う。こんなライブ漫才があったら、観客席の反応のなさに芸人は泣きたくなるだろうね。クマとウサギだから関係ないだろうけど。

 

「では、さっそくですが、ボクが得意の読心術を披露しちゃおうかな!」

「えっ? できるのっ!?」

 

 モノクマって結構こちらの言おうとすることを先回りにしてくるし、あながち間違いでもないだろうね。いや、分析力が極端に高いだけだっけ?

 

「試しにオマエの好物を当ててやるよ。えっとねぇ…… オマエの好物はー」

「頑張って! ウサギといったらアレだよ!」

 

 勿体ぶって言うモノクマにモノミが手を胸の前で握り? ながら声をあげている。

 

「に、ん」

「そうそう」

「げ、ん!」

「食べないよ! 人間なんて食べないよ!」

「さてと次はモノミの番だな! ほら、なんか一発ネタやれよ!」

 

 彼女のツッコミを無視してモノクマは話を進めた。

 

「な、なに言ってんでちゅか! 無理に決まってるじゃないでちゅか!」

 

 あ、これ絶対アドリブだ。もういっそ全部アドリブでやってるんじゃないかと思い始めてきた。皆笑ってないし…… 〝 ニンゲン 〟とか、クマが言っているからシャレにならないよ。

 

「大丈夫だよ。心配するなって。ボクは笑いの神を降臨させる術を知ってるんだ。…… というわけで、生きたまま血を抜かれるのと、死んだ後で血を抜かれるのはどっちがいいと思う?」

「な、なんで、そんな残酷な質問するのっ!?」

 

 両方選択肢は死あるのみなのかとか、ヌイグルミに血なんてあるのかとか、色々ツッコミたいところはあるけれど、ピクリとも笑わない皆の空気に合わせてここは大人しくしていよう。

 

「笑いの神、ミラクルホリオン神を降臨させるには、大量の血液が必要なんだよ」

「笑いの神なのに血をほしがるんだ……」

「うっふーん! おねがーい!」

 

 わざとらしいクネクネをやめなさい! ちょっと可愛いとか思っちゃったじゃないか!

 

「色仕掛けで迫ってもダメ! 血なんて抜かせませんよーだ!」

 

 いや、だから元々血なんてないでしょうに。というよりあれは色仕掛けなのか? 色仕掛けと言えるのだろうか?

 

「モノミはすぐにそうやって怖い顔をするんだからなー。オマエラも気を付けてくださいね。モノミって本当は悪いヤツだからね。たとえば、少年漫画の、初期の敵くらいにね!」

「噛ませ犬じゃん!」

 

 味方フラグだけどね、それ。ついでに死亡フラグでもあるんだよね。

 

「でも、モノミが悪いヤツなのは本当だよ。だって、ここだけの話だけどね…… モノミって…… オマエラの記憶を勝手に奪っちゃったんだよ!」

「なんでやねん! …… って、あれ?」

 

 おっと、冷めた空気がもっと悪い空気になったぞ。

 そうやって不和を煽るからモノクマの追加した商品は売れないんだぞー。買ってやらないぞー。不買運動しちゃうぞー。いいのかなー? っと、心の中で煽っても仕方ないな。

 

「ほら、オマエラってさ、この島にどうやって来たのか誰も覚えてないでしょ? それはね、モノミがオマエラの記憶を奪ってしまったからなんだ!」

「きゅ、急に何を言い出すんでちゅか!?」

 

 モノミの焦りようからしてモノクマが本当のことを言っているのは皆にも分かってしまうだろう。モノミとモノクマが共謀して、そんな事実がないのにあるように見せかける演技をしていない限りはその線が濃く見える。

 

「ちなみに、こいつが奪った記憶ってのはね、この島に来るまでの経緯とか陳腐なモンじゃないよ。なんと、オマエラが希望ヶ峰学園で過ごした数年間の記憶を丸ごとなのでーす!」

「ほわわっ!」

「ふぅ…… 思い切って言ったらスッキリした。やっぱり、記憶喪失ネタなんて時代遅れですよね…… そんなネタを物語終盤まで引っ張ろうとするなんて、恥知らずな卑怯者のすることですよねー! 挙句に失敗しちゃったりして! やっぱり、大事なことは最初に二回言っとかないとね!」

 

 盛大な自虐ネタどうもありがとうございます。…… でもなんだか若干台詞が違うような気がするけれど…… 気のせいかな。

 

「も、もうやめてくだちゃいって!」

「うぷぷぷ。ビックリでしょ? 実は、オマエラは新入生なんかじゃないんだ。学園生活の記憶をなくしたオマエラが、勝手にそう思い込んでただけなんだよ! どこかで聞いたことがあるような斬新なパクリの設定だね! これでは賛否どころか、否だけしか残りませんよね!でも否しかないからといって缶は投げつけないでね! ボクはおひねりしか受け付けないから、そこのとこよろしく!」

 

 いよいよモノミの顔色が悪くなっていっている。

 皆に記憶喪失を伏せておくならばその反応が一番まずいのだが、いかんせんモノミは素直すぎる。バレバレもいいところだ。

 

「ほ、本当に色々とダメでちゅってー!」

「キミとはやってられんわー!」

「ぎゃあああああ! 突っ込みが激しすぎまちゅうううッ!」

 

 暢気な声でモノミのお腹へとキツイ一発を決めたモノクマが、なぜか誇らしげに胸を張っている。

 やりきった感を出しながら出てもいない汗を拭う仕草をするモノクマに、放心しきっていた皆がのろのろと遅れて反応を示した。

 

「……」

「…… は?」

「…… なんて?」

 

 モノクマが壇上から下りてくる時間があってもなお、未だ理解に追いつけない皆を置いてモノクマはどんどん話を進めていく。

 

「どうだった? 笑い取れてた? それとも笑いのレベルが高すぎた?」

 

 その中で選択するのなら、笑いの次元が違いすぎた…… のかな。その中って言っておきながら選択肢を無視してるのは、うん。モノクマには逆らいたいでしょ? 心の中だけでも。

 小心者なのは自覚済みだけれど、下手におしおきでもされたら嫌だからね。ルール違反さえしなければ大丈夫だとは分かっているけど、 「学園長への言葉の暴力はんたーい! 暴力は暴力だからおしおきしてやるー!」 とか言ってきそうだから油断ならない。人が死ねば死ぬほどモノクマにとって都合がいいのだから、そのくらいやってきそうだ。

 

「おい…… 今の話はなんだ?」

「今の話って…… あぁ、オマエラが〝 学園生活の記憶 〟をまるっと奪われちゃった件か!」

 

 …… うん、私は知ってたけどね。

 多分前の記憶がなくても、夢のエフェクトが全部揃っている時点で随分時間が経っていることは分かってしまうわけだし。

 しかしモノクマは全員がそれを知らないことを前提に話しているように思う。つまり、私の特殊な夢については知られていないということだ。それは重畳だが、〝 彼女 〟に隠し通せていることに違和感がある。いくら分析能力が高くたって限界はあると思うが、彼女相手では不安になってしまうのも仕方ない。

 知られていないのならいいのだ、いいはずなのだ。

 

「あは、あはは…… そんなわけないじゃないっすか…… だって、唯吹は希望ヶ峰学園に入学したばっかで、すぐにこの島に連れて来られたはずで……」

「それは、オマエラがそう思い込んでるだけだよ。モノミがオマエラの学園生活の記憶を消しちゃったせいでね……」

 

 愕然と、目を見開いている人物。

 家族の心配を口に出す人物。

 小さな体を震わせている、その人物が黙ったまま頭を抱えた。

 

「な、なに言ってんだ! そんなわけないだろっ!」

「いやぁ、あれから何年経ったんだろうね。オマエラが希望ヶ峰学園に入学してからさ…… 家族や友人はどうなったのかね?お世話になった人とかはどうなったのかね? 向こうも心配してるかもね? ね? ね? ねー?」

 

 〝 お世話になった人 〟で反応しちゃうなんて、私もまだまだだな。

 我慢しろ、私。ねー? と可愛らしく首を傾げてこちらを見上げて来るモノクマなんて無視しろ。〝 アレ 〟の煽りに乗ってはいけない。

 向こうが心配してようがなんだろうが、私に会うつもりはないのだからいいのだ。私といたほうがかえって危ないのだから。

 

「学園生活の記憶を丸ごと奪ったじゃと!? そんなバカげた話があるかいっ!」

「そうだ!オレがキオク喪失なわけねーだろ!」

「ダ、ダメでちゅ…… そんなヤツの言うことなんて聞いちゃダメでちゅ……」

 

 そんな言葉を聞き流しながら、私はただ一人の人物に注目し続けた。

 

「ぼくはそんなの信じてないからね。うん、大丈夫だよ…… 信じてない…… 大丈夫だよ…… そう、だよね……」

 

 それは十神クンも同じ。彼と一緒に黙ったまま傍観し続けた。少なくとも彼は衝撃の事実に驚く素振りや苦々しい表情を見せているが、私は…… 知っている話だからか寝不足が少し響いてきている。先程から目を擦ってばかりだ。さりげなくやっているだけなのもあるし、皆がモノクマに夢中になっているおかげで〝空気読めない奴だな〟という視線には晒されずに済んでいる。

 本来のおねむキャラである七海さんは真剣な顔をしているし、こんなときに眠気に負けそうとかふざけてるよなぁ。

 

「ううん、ウソじゃないよ。だって…… もしウソならあれはなんだったのさ? 希望ヶ峰学園に足を踏み入れたときに、オマエラ全員が経験した〝 妙な眩暈 〟はさ……」

「なっ…… !?」

 

 その言葉で、日向クンが息をのんだ。

 …… なんでキミがそんなこと知ってるんだよ。モノミがやったことならなんでモノクマが知っているのか分からないし、胡散臭すぎる。混乱に乗じて言われると思考停止して違和感に気づけないだろうが、すべて知っている私はその言葉に引っかかりを覚えることができた。

 冷静に物事を見て、聞いて、判断するような人物ならばこれに引っかかりを覚えるだろうが、十神クンも結構内心は焦ってそうだし気づいてるかなぁ。どうだろうなぁ。

 少なくとも、腕組みをしてモノクマの言葉を整理しているだろう彼の顔を見る限りでは焦っているようにはとても見えないが…… 表情などいくらでも取り繕えるのだから本心は分からない。

 

「うぷぷ…… あそこが〝 記憶の結合点 〟だったわけですよ。オマエラはあそこからの記憶がすっっぽりと抜け落ち、そして今に至るというわけなのです」

 

「な、なんだよそれ!」

 

 目を見開いた日向クンがそう叫び、だんだんと呼吸を荒くしていく。

 

「本当は…… あれから凄い時間が経ってるってことですかぁ?」

「そんなことって!」

 

 愕然とする人。絶望的な顔をする人…… 罪木さんの叫びに呼応するようにあり得ない、嘘だとそれを否定する声があがっていった。

 

「信じたくないだけでしょ? でも安心して…… 親切なボクが、オマエラの記憶を元に戻してあげるからさ!」

「ほえっ!?」

「ただし…… それには交換条件があるんだよね」

 

 誘導が上手いな。

 ハッとした七海さんが目を細めながら 「まさか交換条件って……」 と恐る恐る切り出した。

 

「うぷぷ、察しちゃった? そう、オマエラがコロシアイをすること! それがボクの提示する交換条件でーす!」

「ほわわっ!?」

「オマエラは知りたいんでしょ? 奪われた学園生活の記憶を知りたいんでしょ? だったら殺しちゃいなヨ! ヘイユー、殺して記憶を取り戻しちゃいなヨ!」

 

 再び冷静さを失い始めた皆に、十神クンが動き出そうとしている。

 ここで、私は昔感じた疑問をそのまま口に出すことにした。皆が沈静化することを願って。

 そのためにわざと挑発的に、そして不機嫌さを装って声を出した。

 

「…… で?」

「あらら? どうしたの? 激おこぷんぷん丸なの? ボクは親切心で動機を与えてやったってのに」

「記憶喪失が嘘か本当かはおいておいて…… キミが言うには記憶喪失はモノミのせいなんでしょ。なのになんで、どこが結合点だったとか、そんなことまで知ってるの? それとも、そんなことを知ってるキミ自身が記憶を取り上げたのかな? モノミがなんにも教えてくれないから出まかせなのか、本当のことなのかは分からないけれど…… それでもね、胡散臭いキミの言葉なんて信用できない。私は、私の記憶を信じる。そうするしかないんだよ」

 

 周囲を見渡すと、チラホラと同意の意見があがっていた。よしよし…… 反論の糸口を見つけて皆の目に光が戻った。やっぱり、絶望的な目よりも希望のある目の方がいいに決まってるよね。

 私は私の記憶を信じる……皆にとってこの発言は記憶喪失を信じていないように聞こえているだろうが、実は逆なのだ。私には夢という根拠があるのだから、記憶喪失を信じている。でも、その根拠を言うわけにはいかないからこうして勘違いしやすい言葉を選ぶのだ。

 

「そもそもね、その記憶喪失だって信じてないんだから!」

「けど、それ以上に信じられないのはお互いのことでしょ?」

「どういう意味よ! 」

 

 小泉さんへのやたらと鋭い切り返しに、モノクマの本気を感じた。いや、本気でもないのかもしれない。あれが通常運転なのだったら、それはそれで末恐ろしいが。

 

「オマエラはお互いのことをなにもしらない。だからこそ、裏切者が紛れ込んでるのに、まるで気づけないんでしょ?」

 

 裏切者か。それってどういう意味なんだろうか。私たちにとっての裏切者なのだろうか、それともモノクマにとって? モノクマにとっての裏切者なら、私たちの仲間だろう。そうやって曖昧な言葉でこちらの認識を誘導してくるのだから、アイツは質が悪い。

 

「ねぇ、オマエラはどうして16人もいるのかね? この島に来る予定の希望ヶ峰学園の生徒は、全部で15人だったはずなのに。そっか! きっとオマエラの中に、ボクも知らない裏切者が紛れ込んでいるせいだ! …… なんちゃって」

 

 おちゃらけて、首を傾げて、役者のような、道化師のような仕草でクルクルと表情を変えるモノクマに底知れない恐ろしさを感じる。

 ゲームプレイをしているときは、こういう胡散臭いキャラクターが好きだったがこうも目の前にするとやはり怖い。関わりたくない。そういうものだと理解していても、気持ち悪い。

 

「な、なに言ってやがんだ。裏切者とか…… 意味分かんねーぞ!」

「…… デタラメに決まっている」

 

 九頭龍クンと辺古山さんがそう言うが、ますます増長したモノクマが話を続ける。

 

「だからさぁ、どうして言い切れるのかって。お互いのことをなにも知らないクセに。お互いの本性をなにも知らないクセに。だから、誰かが殺しを企んでいたとしても、オマエラがそれに気づくことは不可能なんだよ」

 

 モノクマの視線が心なしこちらを向いているような気がする。気のせいだと思いたいが、色々と準備を進めているのがバレているのだろうか。

 

 まあ、それはそれとして。

 

「それ以上不和を煽るのやめてくれないかな? 昨日知り合った仲だとしても、こうやって対面して話したりして…… 少しだけお互いのことは知れてるんだ。機械越しに煽るだけのヤツがどんなお人かは全く分からないけれど、ね。どっちを信用するかって言ったら、やっぱりコロシアイを薦めるキミよりもお互いでしょ?」

 

 対面で話もしない臆病者なんか信用できないよ、と言外に匂わせつつモノクマを煽る。絶対的な権力を持っている相手に言われてしまうとつい疑心暗鬼になってしまうものだが、それもこうやってちゃんと話せば皆も気づいてくれるだろう。

「でもね、キミたちがお互いに信用してないのは確かでしょ? 互いが何を思ってるのか分からないクセに、疑心暗鬼になってるクセに、なにをしてくるのかも分からないクセに、本当に安心して暮らせるとでも思ってるの? 世の中はね、隣人が殺人鬼だったってこともあるんだよ! ほらっ、先制攻撃あるのみだよ! 勝者総取りの早い者勝ちだよ! …… 生き残りたければ、自分が殺される前に相手を殺さないとね…… アーッハッハッハッハ!」

 

 まったくその通りではあるけれど、勘違いで殺しちゃったらこっちが悪者になるじゃないか。やっぱり過剰防衛ぐらいじゃないと犯罪になっちゃうし。

 高笑いしながら黙った私の周りを一通りグルグル周って、煽りに煽ったモノクマはその場から立ち去ってしまった。

 

 あまりに煽ったら自分が見せしめのおしおきをされてしまうかもしれないと、少し冷や冷やしていたのだが、無事危機は去ったようだ。

 しかし、去るモノクマの背中を見送りながら誰もが引き留めもせず、質問責めにもせず、立ち尽くしたままになっている。

 呆然とした、魂が抜けたような状態の皆に 「あんなヤツのいうことなんて、信じちゃダメだよ」 と言葉を零した。

 

「そ、そうですよねぇ…… 裏切者なんて…… いるわけないですよねぇ……わ、私は違いますよぉ? 怪しいかもしれないですけど、違いますよぉ! だ、だ、だから…… ひぅぅ……」

 

 「殺さないで」 言葉にならなかったそんな言葉が頭に響く。

 罪木さんも不安なんだろう。私のことだってロクに知りもしないのだから、わたしの言葉にさえ、信用していいのか分からない。そんな切実な気持ちが震える声から伝わって来た。

 

「裏切者っていうのが本当におるんなら、さっさと名乗り出んかい! 後になるほどロクな目に遭わんぞぉ!」

「…… やめろ、裏切者などいるわけがないだろう。いるわけがないんだ…… あんなバカげた話を論ずる意味すらない」

「とにかく、〝 いないかもしれない 〟って思っておいた方がいいよね」

 

 希望的観測、皆よくやるだろうに。どうしてこういうときにはできないのだろう。人間の心理って不思議なものだね。

 

「そうだ、一応訊くけど…… モノミはなにか知ってる?」

 

 形式的なものだが、一応念のために。訊いても無駄かもしれないが、無より有の方が推理の足しになることは確かだからね。

 

「ほえっ!? えっと…… ミナサンに必要なのは〝 未来 〟だけでちゅ…… だから、ミナサンは過去など振り返らずに…… 未来だけを見据えて、せ、精一杯生きていきましょう!」

「あ、逃げやがった!」

 

 その言葉を言うと、モノミはすぐにどこかへ行ってしまった。

 それを終里さんが叫んで追おうとしたが、弐大クンのガッシリした手で引き留められ、不満そうに口を膨らませた。

 皆がそうやって、その場で話し合いだか、不安のぶつけ合いだかをしている間に時刻は10時を回り、モノクマからの時報が入る。

 

〝 お互いの本性も知らないクセに 〟

 

 その言葉に少しだけ罪悪感を覚えたが、私はそれを見ない振りをしてやり過ごす。

立ち尽くしたままで移動も何もしない皆に、ぽつりと七海さんが言った。

 

「ねえ、これからどうしよっか」

「とりあえず、今日は解散したほうがよさそうだ。一晩じっくり寝て、少し思考を落ち着かせたほうがいいだろう」

「それも…… そうだね」

 

 そう言う十神クン自身も混乱しているだろうに、皆を落ち着かせる対応をするのはリーダーを引き受けた人間としての責任感か、それとも素なのか。素だったとしたら、大した人だ。本当…… 尊敬するよ。

 

「念のために言っておくが、決して余計なことは考えるなよ。これはリーダー命令だ。明日の朝…… 例のモノクマアナウンスの後で、レストランに集合するぞ」

「とんだ吸った揉んだでしたね……」

「その字って合ってる?」

「仕方ねーだろ、外国の方なんだからよ……」

 

 十神クンの格好良い言葉に、ソニアさん、花村クン、左右田クンの漫才でオチがついたが気にしてはいけない。

 

 そのまま流れで一人、二人とホテルの方向へと帰って行き、最終的には私だけが残った。

 暫く漫才のためだけに用意された舞台セットを眺め、空を見上げてみる。相変わらず、作り物のような綺麗な星空だ。

 

「…… 七海さんじゃないけど、ねみぃ」

 

 話が終わった途端に一気に眠気が私を襲う。

 朦朧とした視界と覚束ない足取りで中央の島から出ようと試みる。

 途中で床板が抜けそうになってヒヤリとしたり、まあいろいろあったが強い眠気にはどうしても勝てず、なにも考えずにひたすら歩いた。

 うーん、なにかやらなきゃいけないことがあったような気がするけれど…… まあ、思い出せないのなら大したことではないのかな。

 

 コテージに帰った私はそうしてベッドにダイビングしたわけだが…… 翌朝、愕然とすることになったのである。

 

 

 

 

 

「ああっ! 十神クンに脅迫状出すの忘れてたぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 なにやろうとしてるんだ、とか、そんなことは言ってはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・そうやって曖昧な言葉でこちらの認識を誘導してくるのだから、アイツは質が悪い。
 >>こうして勘違いしやすい言葉を選ぶのだ
 なんというお前が言うな


・「やっぱり過剰防衛ぐらいじゃないと犯罪になっちゃうし」
 ※ 過剰防衛でも殺したら犯罪です



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。