※ ヤンデレ注意
サプライズ? アニメ見終わったのでそれを絡めつつゆめにっき派生の考察。凪入学後のうろつき。時系列は絶望編7〜10中のどこかです。あ、本編の方は予定通りです。
「織月」
愛しい人が私の名前を呼ぶ。
その動作、仕草、声、目線。全てが私にとって特別で暖かで、そして私が手に入れたもの。手放したもの。
でもね、いいんだ。だって、受け入れたから全部。
あの日壊れた心はつぎはぎに修繕されて、彼が生身の私の横にいない事実に酔いしれて、絶望して、そして…… それが永遠であればいいと渇望した。
「それでねー、凪ちゃんったらあんなに嫌がってたのにすっかり学校生活を楽しんじゃってるらしいんだよねー」
ベッドのそばにある椅子に座り、足をぷらぷらとしながら今日の報告だ。
緑色の髪をした大好きな彼がそこにいる。それだけでこんなにも私は幸せになれる。
「ふーん、でもどうしてそんなに嫌がっていたんだろうね。ボクは外の世界を見れないから分からないな」
「そりゃあそうだよー! だって私もあの学園のことはよく分かんないし」
確かに、国からの支援もあるというのに資金のためだけに予備学科なんてものを設立してしまった学園には不信感が浮かぶ。
しかし、そんな方針を取るのはなにもあの学園だけではない。誰でも思いつくような商法だ。私だって思いつく。それを実行して隠し通せるかどうかはまた別だけれど。
「私でも凪ちゃんの言葉だけじゃ信じられなかったもん。この目で、この体で、偶然人体実験に選ばれた予備学科生の夢に入り込まなきゃとてもね。それくらいあの学園ったら秘密を隠すのが上手いんだよ」
「予備学科生?」
「そうそう、名前は知らないけどね。なんていうか、コンプレックス持ってるからかごちゃごちゃしてて、ゲームと勉強道具と卵の多い夢だったね。大方、変身願望でも持ってたんじゃない?」
私がそう言うとアキラは首を傾げて 「それだけでどんな人か、内容が分かったんだね」 と言った。
だから私は得意気にふふんっ、と声をあげて大好きな彼に今までの努力を自慢するんだ。
「夢の分析だったらもうお手の物よ! 何人、何百、何千人もの夢をこの人生で見てきたんだからさ! 才能が夢を渡り歩くだけだって言っても、それが成長しないわけじゃないんだよね。心理の分析は分かんないけど夢で心理を判断することなんてちょちょいのちょいだよ!」
「へえ、意外に努力してるんだね織月は」
「じゃないと危なくて凪ちゃんと遊びに出かけられないからさ」
自分の身は自分で守る。時に理不尽な幸運を受け流す術を得る。
それが彼女と親しくなるために必要なことだった。壁を打ち払うためには彼女にとっての、〝 失われない希望 〟になる必要があったのだから。
「動機はさておき、いろいろ便利なんだよ? 寝てちょっと散歩するだけで身近にある危機を夢を介して知ったり、本物の予知夢を見た人のおこぼれに預かったりね。彼女と旅行に行く前日までに夢の遠出をすれば危険かどうか分かるんだよ」
「はは、そこまでするなんて好きなんだね、彼女のこと」
一瞬なにを言われたのか分からず硬直する。
「え、や、やだぁアキラったら嫉妬? だいじょーぶだよ。後にも先にも、愛してるのはキミだけだよ」
「別に嫉妬じゃないよ。ただ、キミにそうやって友達ができたことが嬉しくてさ」
分かっている。そんなことは分かっている。
友達はキミだけだなんて、もう言えない。大切なものができた。自由にさせてあげるのではなく、一緒に縛られ、前を向いて歩く大切な友達だ。
だってアキラは私の好きな人だもの。もう友達ではない。
「ふふふ、私ったら恵まれてるね。さて、そろそろ今日は帰るよ」
「…… また来るかい?」
「毎日会いに来るよ」
「ボクに会う気はないの?」
「まだ会いには行けないなぁ」
そんな矛盾した問答をして一呼吸。
「だって私にとって、
罪はなくならないけれど、私は前に進まなくちゃいけない。
私の友達ともう1度遊べる日が来れるように。どこかにいる同士に会うために。そして、アキラの分まで長生きするために。
「希望の反対言葉は絶望。光と影みたいなものだよね。どちらもなくなることなんてない。私はキミの死を背にして視界に入れることは許されない。なーんて、絶望的」
「だから、ここにボクがいるんだろう?」
彼は私の精神が作り出した幻。そんなことは分かっている。
だけれど彼もまた、私が私であるために必要な存在なのだ。きっと彼がいなければ私は狂ってしまうから。
「それじゃあまた明日」
手を頭上に掲げる。
現れたのは、腕が思わず下がりそうになるくらい重たい本物のチェーンソー。
「また明日、織月」
「うん……
「何度だって言ってあげるよ織月。ボクも、好きだ」
そしてチェーンソーで彼の腹を貫いた。
無慈悲な機械音が彼の腹の中身をぐちゃぐちゃに掻き回して溢れ出す。しかし彼は、アキラはただ1つの悲鳴もあげることなく微笑んだまま薄っすらと空気に溶けるように消えていく。
音の出ない口の動きは 「愛してる」 の5文字を表していた。
「キミは永遠に私のもの。だけれどもう永遠に会えない…… ふふふ、なんて悲劇的なんだろうね。でも、だからこそ素敵なんだよね」
世界中を絶望に染め上げた女の子の気持ちも少しは理解できる。
でも、共感はできそうにない。だって彼女が愛しているのは絶望という名の〝 未知 〟だもの。
私には全部が分かってしまう神様の瞳はないし、世界はまだまだ未知に溢れている。唯一私を絶望させられるのは彼だけ。そう、未来のない過去の存在である彼こそ私の愛する絶望であり、希望でもある。
なんて矛盾。なんておぞましい。
今でも鮮明に思い出せる最期の言葉と表情は確かに私を愛してくれた人のものだ。
「あとは誰に会いに行こうかなぁ……」
彼の消えた病室で考える。
本当は彼を殺さずとも頬を抓ってまた眠れば夢遊することができる。でもそれはしない。それは逃げるということだから。
昔の私は逃げて逃げて、彼に会いたくても最後は殺すしかない夢に絶望していつも頬を抓っていた。でもそれでは彼は応えてくれなかった。私の中で死んだままだった。
ある日絶望に暮れて全てを受け入れてみた。
開き直っただとか、悟ったとか、いろいろ言い方はあるけれど、確かに私はあのとき絶望していた。
作業のように話さない彼に向かってその日あったことを語ってチェーンソーで殺す日々。ときに腕を切り落としてみたり縦に真っ二つにしてみたり、横一線に振り抜いてみたり、首を切り落としてみたり…… 思い思いのやり方で殺した。
そうしたら急にストン、と腑に落ちたのだ。
彼が死んだ事実から目を逸らして逃げてしまったら、なんのためにアキラは死を受け入れた?
それに気がついた日から私は自分の愛情表現を彼を斬ることに見出した。同時に、記憶の中にある会話しかしなかった彼は次第に知らないことを喋るようになり、会話が噛み合うようになり、そしてあの日のように毎日の死を微笑んで受け入れるようになった。
罪悪感など初めからない。
遊園地で人柱になった日も、サーカスショーで殺戮をした日も、強制的に脳が覚醒するような出来事があっても、毎日通って毎日話して毎日殺した。
ゲームの配管工が崖下で積み上がっているようにこの病室に何度緑色の血が流れたか分からず、彼の死体が積み上がっているかも分からない。
そんな狂った世界が私の日常であり、全てだった。
私は
それらはひとえに凪ちゃんの存在が大きい。
誰よりも絶望している彼女がああして幸せを掴んでいるのだ。だから私も希望でありたいと思えた。
彼女が残したマンションや荷物、そこに住むことになった同士の存在も私を縛る楔になる。
沢山の人が私を形作っているのだ。その沢山の人が私を希望側だと思うのならば希望でありたいと思う。それが私の行動理由。
だって私は、人の夢が寄り集まった〝
◆◇◆
「ふう……」
とりあえず目玉爆弾のエフェクトを使い、扉の部屋へと戻って独りごちる。
「どれに…… ん?」
いつ見ても沢山ある扉達を眺め、その先にある誰かの夢を夢想していると1つだけ見覚えのない夢への扉があることに気がついた。
それは水色と白色のパステルカラーの扉。どこかメイドさんの服に似たそれは今夜現れた初めての扉だ。
「ふーん」
なにも考えずとも先に手が動いていた。
金色の取っ手を回し、押し開く。中は広大な青空のような場所だった。パステルカラーの眩しい、優しげな世界だ。雄大な空と、淡い色彩。それは頼もしさと優しさの同居した人物を表す。
空がどこまでも広がっているので度量も大きい。
エフェクト〝 バイク 〟に跨り、意味もなくもう1つ〝 オオカミ 〟を発動する。頭上でピクリと動く犬耳はなんとなくお気に入りなのだ。
いつも夢の中を探索するときのように斜めに段階的に移動しながらしらみつぶしに青空の中を泳ぐ。
するとすぐに石造りの階段のようなものを見つけ、中に入った。
中は暗かったので〝カンテラ〟で照らしながら進み、1番奥にあったのはビデオテープのようなもの。
『ZV.』
そんな文字が書かれたテープだ。
カンテラを消し、いつでも逃げられるようバイクをその場に現してからそのテープを手に取ってみる。すると、一瞬だけなにか映像のようなものが脳裏に無無理矢理入ってきた。
どこかの教室、始まる殺し合い、疑心暗鬼、心配、愛による逃避、妬み、長い黒髪の男と、チェンンソーを得物にした男の最期。
「あーあ、チェーンソーは片手で使うものじゃないのに」
自業自得。勉強不足だね、と独り言を言ったのだけれど……
「そうですね。素人が使っていいものではありません」
抑揚のない声がその場に響き、私は素早く後ろに下がってから振り返った。
「不思議なところですね。ここはいったいどこなのでしょう。該当する情報がないですが」
先程脳内に流し込まれた映像にいた長い黒髪の男だった。
それと同時に、彼が以前見た予備学科生の成れの果てだと知る。
髪の長さや色こそ違うが、顔つきや声、身長はまったく変わっていないからだ。
「ここは夢の中。キミは夢の中にいるんだよ。いわゆる、人の深層真理の中だ」
「夢…… 深層真理…… なるほど、理解しました。あなたがこの才能の持ち主ですね」
驚いた。学園側には私の才能は漏れていないし、幸運や希望という強い概念でさえ発掘に苦労しているあちら側が私のような個人で完結している才能を見つけ出せるとも思えない。
しかし、この人は理解している。なるほど、あのとき夢に見た人体実験はこういうことなのか。
それは間違いなく成功している。
なにせ、学園側が知らないはずの才能まで彼は持ち合わせているのだ。概念が曖昧すぎて再現など不可能なはずなのに。
「希望ヶ峰学園風に言うなら、さながら〝 超高校級の夢遊病 〟かな? 残念ながら学園の人は私に気がついてないみたいだけどね」
「そうですか…… この夢は雪染ちさの夢ですね。単純すぎて分かりやすい。ツマラナイ」
「そう。ならさっさと夢から覚めちゃいなよ。頬を抓るだけで済むからね」
名前の特定まで簡単にできるとは、既に何年もかけて私が習得した技術までできているし、まったく学園はなんて化け物を生み出してくれたんだ。
「ところで、さっきの映像を見ててちょっと試したいことができたんだよね」
「……」
ぐにっ、と真顔で自分の頬を抓ろうとする彼に向かって走り出す。
「やっぱりこれは、反撃されちゃうのかな!」
下からスイングするように腕を振るい、その手の中にチェーンソーが現れ、振り抜く瞬間だけ両手で持った。
「ツマラナイ」
その腕を引き寄せられ遠心力でグルンと回る。
腕は制御が効かず、回転の動きに従って私の首へと向かってくる。
「あーあ」
「……」
負けちゃった。
そう思った瞬間には視界が大きくぶれ、息ができなくなった。
ブイイイン、と無機質な音が私の意思を離れても鳴り続け、飛んだ生首で見た光景は、首の断面に上から降るようにチェンソーが刺さっている姿。
クビチョンパの上、傷口からチェーンソーが暴走し上半身がぐちゃぐちゃになる。
―― 相変わらずの真顔が私を見つめていた。
私が現実で起きることができたとき、私は本物の夢遊病患者のように台所まで移動しており、自身の首を包丁でかっ切ろうとしているところだった。
危なく、夢と現実、両方で殺されるところだったと気づいて冷や汗が流れる。
いや、自業自得だけどね。
「おっかないなぁ」
それ以来だ。私の夢にもう1つ、強制起床が追加されたのは。
もう2度と黒い羊には手を出さない。トラウマがまた1つ、増えた。
・ヤンデレ
死は希望になっちゃうから生きるよ!という謎理論。
・夢が寄り集まって〜云々。
ゆめ2っきは唯一誰でも作ることに携われるゆめにっき派生です。皆の理想のゆめにっきであり、皆の願望がどんどん反映されていく世界の主人公である彼女は、間違いなくゆめにっかーの〝 希望 〟なんです。ある意味人工的に作られた黒服の人と似ているかもしれない。
作中、彼女が言っていた言葉は上記の意味ですが本人はメタ発言しているわけじゃないです。そういう概念だとなんとなく理解している程度。
・長い黒髪の人
一体誰なんだ(棒)
・強制起床イベント
黒い羊さんを殺そうとすると反撃にあい逆に首を跳ねられた上断面にチェーンソーぶっ刺されて死にます。羊さんは数少ない無敵キャラですね。絶望編7話を見て黒服の人= 黒い羊( トラウマ )の考察を思いつきました。
・うろちゃん高スペック
ただし遊園地とサーカスにひどいトラウマがあるためおしおきは簡単に思いつくという堕ちやすそうな子である。
うろちゃんのおしおきは遊園地の人柱 (物理) イベントか、サーカスショー (を成功させたver) でしょうね。気になる人は 『ゆめ2っき イベント』 で調べて強制起床イベントまとめ動画を見ましょう!