錆の希望的生存理論   作:時雨オオカミ

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 無理矢理纏めてしまったので分かりづらいかもしれません。
 分からない部分はドシドシご指摘ください。後から足していきます。あと、完全に趣味に走っていますごめんなさい。
 でも絶望編10話を見ていたら、2人のゲームする場面を書きたくなってしまって…… それに、今後必要な描写も混ぜていますので。





ーAddicted or Darkness?ー
No.21 『入院』ー見舞ー


 

 

 

 〝 やみつき? それともくらやみ? 〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がつくと、私は村の中にいた。

 そう判断したのは、周囲が木々に覆われており、木でできた寂しい家屋が並んでいることからだ。

 田んぼは泥臭く、そして、稲は腐ったような…… 夢特有なのかは分からないが、いやに色鮮やかな青色をしている。

 私は怪我で気絶してしまったはずなので、きっとここは夢の中なんだろうと思う。でないと、南国の島からいきなりこんな辺境っぽい場所に来れるはずがない。

 乾いた風が吹き、真っ青な稲が揺れる…… そんな場所に佇んでいると、背後から声がかけられた。

 

「凪」

 

 覚えのある声、りん子姉さんだった。

 

「姉さん?」

 

 なぜ、こうも〝 悪夢 〟を見るときは姉さんが出てくるのだろうか。 彼女は私にとって恐怖の象徴かなにかなのだろうか。それとも、罪悪感の象徴だろうか。

 しかし、先に忘れるはずの声をこうして覚えていられることには感謝している。忘れてはならない思い出を、声を、夢の中だけだとしても感じられるのは嬉しいことだ。

 

 彼女は機械の足を器用に踏み鳴らし、こちらにやってくる。

 

「気をつけなさい。ここでは、転ぶと死んで……」

「あ……」

 

 そう言うがいなや、彼女は足元の石に躓いて転んでしまった。機械の足では躓いても感覚がないので、気づくことができなかったのだ。

姉さんの顔は驚きと失意に暮れ、そして、その体が地面にベシャリと倒れてしまう。

 私は目をそらすことができなかった。

 彼女の腹が、手が、顔が、転んで地面に接した部分から青ざめていき、その目玉がドロリと腐り落ちた。

 

「ひっ」

 

 なんでいつもいつも、姉さんが死んでしまうのだ。

 これではまるで私が姉さんを殺しているようではないか。

 …… いや、事実私が殺したようなものか。だから、きっと彼女が…… 彼女たちが死んでいくのだ。夢の中でさえもそれは変わらない。

 

「……」

 

 次に気がついたのは私を見つめる、虚ろな目。

 ボロボロの白衣に裂けた口元。その手にはあのときのように鋏を持っていて、どうしようもなく恐怖を煽られる。そんな目玉がギョロリとこちらを向く。

 私を捉える、大嫌いな父親の目。

 それは私の知っている狂った目だ。そう、私はその目しか知らない。私は、父さんの昔を知らない。母さんが愛したはずの、父さんを知ることができない。

 だから、きっと、彼は怪物としてしか出てきてくれないんだろう。

 

 私は、その場から動くことができずにいた。ただ父さんが鋏を構えて向かってくるのを見つめ続けることしかできない。

 動こうと思っても、転んでしまうのではないかという恐怖で思うように足が動いてくれないのだ。これでは動けたとしても足をもつれさせてしまうのは目に見えている。

 

「う、あ……」

 

 まるでパレードのときのような巻き返し。

 しかし、隣に私を守ってくれる大好きなメイドはいない。私はどうすればいい? 父さんは、私を殺したいほど憎んでいるのか?

 いや、違う。あれは私の中のイメージでしかないはずだ。だって、私と出会う前の父さんのことなんか、知らないのだから。

 優しかったのか、どんな風に怒るのか、母さんとどう過ごしていたのか、私を…… 子を愛してくれていたのかさえ、分からない。

 そうこう悩んでいるうちにも父さんはゆっくりと近づいて来て、私を捕らえようとしてくるのだ。

 

「やっぱり馬鹿だろ、お前」

 

 …… そのとき、背後から聞こえた言葉に反射的に振り返ろうとして、しかし両頬に添えられた誰かの手に阻止されてしまう。

 

「お前はもっと後に死ねって、言っただろ」

「…… っかい……」

 

 名前のない、彼を呼ぼうとして視界が反転していく。

 どうやら父さんに襲われる前に、足を掬われて転ばされてしまったようだった。

 一瞬だけ見えた彼の真っ白な髪と、僅かばかり細められた赤い瞳だけが、閉じる意識の中に刻み込まれていった。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

「ここ、は…… ?」

 

 目を開くと、そこには真っ白な天井が広がっていた。

 ああ、大嫌いな天井だ。まるで私が生まれ育った、あの病院のように。大嫌いな景色。しかし、思い出の一杯詰まった景色だ。

 

「狛枝さぁん! 目が覚めたんですねぇ!」

 

 薄っすらと開けた目で、声が聞こえた方向に目を向ける。

 同時に体を動かすと、頭がずきりと痛んだ。動けなくなるほど酷くはないので、少し休めば普通に過ごせるようになれるだろうか。

 

「罪木、ちゃん……」

 

 私の目の前には、泣きそうな…… いや、泣きじゃくる罪木ちゃんの姿があった。寝ている私に抱きつきながら泣く彼女のせいで、着せられた病衣はどんどん湿ってくる。

 そっか、そんなに心配させちゃったのか。まったく、仕方ないなぁ。

 

「狛枝さん…… よかったでちゅ…… あちし、ミナサンを呼んできまちゅね!」

 

 空気を読んでか、後ろで涙ぐんでいたモノミも扉を開けてとてとてと走り去ってしまう。

 あ、しまった! 罪木〝 ちゃん 〟って言ってるところを聞かれちゃったか。でも、まあ、モノミならいいかな。そう思えるくらいには彼女を信用している。

 

「罪木ちゃん…… 大丈夫だから、私は大丈夫だから……」

 

 控えめに肩を押して彼女を離れさせると、一旦私は頭痛を覚えながらも体を起こした。

 

「よかったですぅ…… ! よかったですぅ…… ! 治療が間に合ってよかったですぅ!」

 

 それって間に合ってなかったらもしかして…… いや、考えるのはやめておこう。確かに出血多量とか、ショックとかで逝きそうな気はしたが…… うん、やっぱりやめておこう。

 …… でも、罪木ちゃんが 「必ず生かしてみせる」 という約束を守ってくれたのは理解した。

 

「ありがとう……」

「あ…… ど、どういたしまして、ですぅ…… !」

 

 泣いている彼女の頭を撫でながら、暫くそのまま微睡む。少し眠いが、これ以上寝ているわけにもいかないだろう。

 

 そうして一息ついたとき、病室の外から大音量の足音が聴こえてきた。まるで漫画のようにドドドドと音を立てながら向かってくる複数の足音。その中でも一際大きな足音がドンッ、と廊下で響き渡り、唐突に扉が開かれた。

 

「目が覚めたというのは、本当らしいな」

 

 足音から察しはついていたが、そにいたのは勿論十神クンだ。入ってきた瞬間にブルンと震えたお腹が、走ってきたことを表していた。

 

「本当だよ。ところで、複数の足音が……」

 

 そう言いかけたとき、次々と病室に人が雪崩れ込んで来る姿が目に入った。

 

「なぎっちゃぁぁぁん! よかったっすぅぅぅぅ!」

「な、凪ちゃん! 目が覚めたって! よかった、よかったぁ!」

「ちょっと偽善者女! こ、こ、小泉おねぇ助けてくれたって…… だから無事でよかったって…… ああああもう!」

「心配していました…… よきにはからえ!」

「ソニアさーん…… それはちょっと違うような……」

「だ、だから全員で入ったら、パンパンになっちゃいますよぉ!」

 

 最初にダイブしてきたのは澪田さん。お腹は平気とはいえ、頭を揺らされてちょっとグラっときた。

 小泉さんは控えめにやって来たが、目元が赤く、泣き腫らした跡があることが分かる。まったく、女の子がそんなやつれた顔してちゃあだめだよ。ハンカチ…… はないよね。まあ、泣いた後すぐに顔を洗うなりしないと目元の赤みは防げないし、仕方ないか。

 西園寺さんの貴重な初デレはやっぱり小泉さん関連だったみたいだね。あはは、なんだかくすぐったい。

ソニアさんは相変わらず、微妙に使い方の間違った日本語を使っているし、左右田クンが控えめに指摘している。

 罪木ちゃんの台詞は、間に〝病室〟が入らないと危ない発言になりそうだ…… さすが罪木ちゃん。今度注意しておこう。

 

「狛枝さん…… 皆で、お見舞いに来た…… んだよ?」

「ああ…… 皆でな」

 

 後ろからひょっこりと顔を出したのは七海さん。そして…… ゆっくりと誰かを先導してくるように日向クンがやって来た。

 

「……」

「……」

 

 無言で互いに顔を逸らしながら…… しかし距離が近い、九頭龍クンと辺古山さんだ。九頭龍クンが僅かに前へ出て、辺古山さんを庇うようにしている。辺古山さんは、そんな彼の前に出て行こうとしているが、その度に袖を引っ張られて止められている。

 互いに互いを庇おうとしているように見られる。

 これは、私に糾弾される、または危害を加えられるとでも思っているのかな?

 

「…… 怒ってはいるよ」

 

 目線を上げ、ベッドに座ったまま彼女たちを見つめる。

 辺古山さんはどうやら覚悟の気持ちが強いようだが、九頭龍クンはどちらかというと、彼女を守る方に集中しているのかな?

 彼女が危険に晒されようとしたことで反省はしたようだが、それよりも彼女の身の安全優先かな。

 あくまで彼女を優先するとは…… うん。そういうの、嫌いじゃないよ。

 

「…… さて、どうしてあげようかな?」

 

 にやりと顔を歪める。

 とりあえず狛枝らしく掻き回してみようかな?

 怒っているのは確かだし、でも報復で殺す気はないんだよね。私がやるのは正当防衛だけだもん。

 それに、この2人のことは好きだし、ギスギスしたいわけじゃあない。させたいわけでもないし、日向クンの方もなにか言いたそうにしているから、それを聞いてからでもいいかな。

 

「なあ狛枝…… 九頭龍も辺古山も自分から名乗り出たんだ。だからさ……」

「ん、まあ予想はついていたし、討論にならないように小泉さんを逃したのは私だけれどさ。害意はないから安心しなよ…… 次はないけど」

 

 最後だけ低めの声で言うのは忘れない。念のためね。

 

「とりあえず…… お見舞いありがとう」

「こま…… えだ……」

 

 辺古山さんが苦しげに言う。

 

「すまなかった…… !」

「俺も、すまねぇ! お前も、十神もこんなことにならねーようにああしたってのに…… 動揺しちまって……」

「まあ、呼び出すのなら全員一緒にしてくれていたほうが良かったよね。1人ずつ呼び出すなんて、殺そうとしてるしか思えないし…… 疑心暗鬼になってたなら、尚更十神クンとかにも相談して欲しかったな」

 

 苦笑すると、九頭龍クンが土下座し始め、辺古山さんがそれに続いて…… と連鎖的に極道流謝罪が始まりそうだったので、十神クンに立上らさせてもらった。

 だって、あのままだと原作通り切腹しだしそうだったし。それに2人だから辺古山さんまでケジメつけようとしたら、お世話するの罪木ちゃんだし…… 2人してベッドに並ぶことになるのはちょっとね。

 

「さて、キミたちモノミからペナルティは貰った?」

「まだ…… だが」

「じゃあ、私が決めてもいいかな?」

 

 ほらほら、そんなに顔を青ざめさせないでよ。

別に、辺古山さんの見てる前で九頭龍クンに切腹させたりなんてゲスな考えは持っていないんだからさ。

 チラリと日向クン、それに七海さんの顔を見る。

 

「?」

 

 疑問気にする2人は同時に首を傾げた。

お見舞いに来てくれた皆でできることといえばなんだろう? そんなの、1つしかないよね。

 だいぶ頭痛も治ってきたし、包帯は取れないだろうけれど座ってする遊びくらいならできるだろう。

 病室じゃなくて、この病院の2階には会議室もあるし、玄関は待合室になっているから広くできているだろうし、全員1つの部屋に入ってなにかすることもできるはずだ。

 

「それじゃあ、ゲームをやろうか」

「……は、はあ?」

 

 険しい顔をしていた九頭龍クンは、拍子抜けしたように目を丸くした。辺古山さんも驚いており、他の皆も呆気に取られている。

 目を輝かせているのは七海さんだけだ。

 

「疑心暗鬼になるのはお互いのことをよく知らないからだよ。そうでしょ? ゲームでもしながら親睦を深めて、ゆっくり皆のことを知ればいい。…… ね? 七海さん」

「…… うん、うん! 私いっぱいゲーム持って来る! モノミちゃんにもお願いして用意する!」

 

 あ、モノミ〝 ちゃん 〟って言っちゃってる。

 まだ親しいことは隠しておきたいだろうし、そこは追及せずにいようかな。

 

「あ、えっと、なら2階の会議室を使いましょう! あそこなら皆さん全員入れますぅ!」

「お、ならオレは電気街で大型テレビ調達してくるわ。十神、弐大、手伝ってくれよ」

「いいだろう」

「応、勿論じゃあ!」

「なら、わたくしと七海さんはモノミさんにお願いしに行きましょう!」

「いいの…… あるといいなぁ」

 

 この流れるような行動力だよ。まったく、凄いな……

 これだけでもう、皆が輝いて見える。なんだか狛枝クンの気持ちが分かる気がする。こんなに綺麗ならもっと綺麗なのを見たいよね。

 でも希望も、絶望も人数分しか存在しない有限資源だ。それをわざわざ減らしてまで質の良いものを用意するってのは、やっぱり理解できないけれど、希望も悪くないなあなんて思うんだ。

 

 その後、2時間ほどで戻ってきた左右田クンたちは超大型テレビを会議室まで運び、モノミ…… とついでにモノクマが用意してきたゲームのラインナップを確認することになった。

 

「パソコンのフリーゲームも用意してみまちた!」

「フリゲーもテレビでできるように改造してあるぜ!」

 

 ナイス左右田クン!

 じゃあ、テレビの調整が終わる前に、某有名な狩りゲーでも先に行ってみよう!

 

 

 

……

…………

………………

 

 

 

「ふっ、俺様の華麗な技で魅せてやろう! ふっ、はぁっ!」

「どぉりゃあああ! スタンとったぞぉい!」

「って、なんで男子だけなんだよ!」

「んふふ、上手に料理してあげようじゃあないかぁ!」

「花村は肉焼いてないで早く来いよ!」

 

 今日もツッコミはツッコミだった。

 ちなみに田中クンが太刀で弐大クンがハンマー。左右田クンは格好つけて大剣。花村クンがボウガンだ。

 左右田クンが大剣の慣れない操作に戸惑って何回か華麗に撃沈したけれど、無事に赤い熊は倒せた。

 それにぐぬぬとなっているモノクマを見学しながら女子は女子で高難易度に挑む。

 今回はイビルモンドだ。例のあいつだが、なぜか生前に知っている別のモンスターと混ざって頭がリーゼント風になっている。顎だけじゃなくてリーゼントまであるだなんて、なんて凶悪なんだ……

 

「あ、やった。激運と金運がついてる。次に来る不運が怖いね……」

 

 猫さんの料理にはある程度種類によって絞られるが、食べるとランダムな効果が現れる。

 今回は猫の激運と金運、それに悪運がついているものを発見し、さらに全部発動することができた。激運は手に入るアイテムの数が増えやすくなるし、金運は文字通り報酬が上がる。ラッキーだね。

 1つ不安があるとすれば悪運まで発動しちゃったことだ。悪運はクエスト開始時に不幸なことが起こる。それがなにになるかで変わるが、まあ私だしなんとかなるだろう。

 

「クエスト開始…… だよ」

「ソニア、行きまーす!」

「唯吹に任せるっす!」

「あ、目の前」

 

 勿論、上位のクエストなので開始時の位置はランダムだ。

 そして、私はイビルモンドの目の前。それに加え悪運の効果によりスタミナは最低値。逃げるにしても絶望的。

 ああ、不運だね! これがさっきの幸運の反動なんだね、ぬるい、ぬるいよ! そんなこともあろうかといっつももどり玉を所持している私に死角はないのだ!

 

 そんなこんなでひと段落させて次に移る。

 男子の方ではキレた左右田クンが、華麗な爆弾祭りをして味方を巻き込んでいる。一体なにがあったし。

 ああ、剥ぎ取り中に田中クンが演出で小タル爆弾を……邪魔されて怒ったんだね。結局全員で爆弾祭りしてるけど。

 

 

 

 

 

「俺がプレイヤーか?」

「そうそう、頑張ってね」

 

 そう、日向クン。一番平凡だからこそキミのプレイングが見たいんだ…… リアクションのために。

 

 次に始めたのはフリーゲーム 「魔女の館」 だ。

 魔女の館の前から物語が始まり、巨大なバラが出口を塞いで出られないので、館に入ってバラを枯らすためのものを探すゲームだね。

 黒猫が意味深なアドバイスをしてきたり、こちらの精神を抉るような仕掛けが多いゲームだ。

 あれ、これって結局絶望エンドが最良…… っていうか、真実のエンディングは絶望しかないよね? 日向クンたちにやらせていいのかな。

 

「うぷぷぷ、楽しんでいってね!」

 

 なるほど、選んだのはモノクマか。

 そう思うとあの黒猫(あくま)の台詞がモノクマの台詞に見えてくるから不思議だ。

 

【やつははらをすかせている】

 

「カエル…… こんな、こんなことってないだろ! な、なあ七海、狛枝……」

 

 私たちは揃って目を逸らした。

 上げて落とす。カエルと仲良くさせておいて道中に犠牲を余儀なくさせる仕掛けを用意するだなんて、このゲームの中でもよくできた部分だと思うよ。1番はトゥルーエンドの演出だけど。

 結局、私がカエルを大蛇の部屋に押し込む操作をした。慣れてるし、皆が軽く絶望してるけれど、それくらいは乗り越えられるよね?

 あとあとオタマジャクシから 「おとうさん、しんじゃった」 「おまえがころした」 なんて追い打ちが来るけど、耐えられるよね?

 

「わあ、可愛い……」

 

 次は、ユートピア。西園寺さんも納得の綺麗な舞台だ。モノミチョイスだね、さすが。

 ユートピアは、植物状態の少女の、夢の中にある病院が舞台だ。ゆめにっきと違う点は、少女と同じ病室に偶然入院することになった主人公が、その夢の中に入り込んでしまうことか。

 白いシルエットの魚が背景の白と青に溶けて美しい雰囲気のゲームだね。

 これは最終的に希望に繋がる良いゲームだし、絵も綺麗、雰囲気もいい良作だ。植物状態の少女が、主人公と一緒に折った鶴を頼りに前に進む。…… 直接描写はされていないけれど、きっと植物状態から復帰することになるのだろう。

 まさに希望に終わる物語。最後の方の難易度が高いけれどやっておいて損はない。

 こちらはさくさくと進み、魔女の館ほど絶望感がないからかすぐにクリアできた。

 まさか日向クンがあそこまで操作が上手いとは。火の手から逃げるアクションはなかなか難しいから、正直1発クリアできるとは思っていなかったよ。

 

 その次は、またモノクマか。

 アリスメア。どうあがいても犠牲が出る絶望ゲームだ。

 最初から最後まで、一人称とテンションがコロコロ変わるチェシャ猫(あくま)に翻弄されたまま終わることも多い。先に進むためには1人1人絶望させていかなくちゃいけないのも、なかなか辛いね。

 主人公に全員助ける条件として、甘い言葉を囁くところはどこかモノクマ…… の中の人に似ている。そんなキャラクター(チェシャ猫)が好きだったのだが、今現実にモノクマがいることを考えると、こいつも現実と化したらなんて最悪なんだろうかと思ってしまう。

 

「大丈夫、ダイジョウブ、ダイジョウブ……」

 

 先生のおまじない。これ、好きなんだよなぁ。

 某アニメの 「絶対大丈夫だよ」 に匹敵するくらい好きだ。

 

 お次はモノミ。

 クロナのレクイエム。ううーん、才能の有無で葛藤するような物語だから日向クンには少し辛いんじゃないかと思うけど、モノミにもなにか意図があるんだろうし、まあ…… いいのかな?

 あ、でも番外編の 「con amore」 まであるし、憎しみに打ち勝つのは愛というテーマだからモノミにはピッタリかな。

 

 この物語は、大きな屋敷から家出した天才ヴァイオリニストの少年が辻馬車で適当な場所まで出かけることから始まる。

 呪われた屋敷。そこで呪いを祓ってほしいとお願いを受けて、同じく呪いを持っている主人公が立ち向かっていく。

 このゲームでの呪いっていうのはようは 「絶望した心」 そのもののことだ。呪いは侵食し、そしてついには自我まで食いつぶして、最後には理性のない化け物が残されてしまう。

 そんな呪いになってしまったクロナを助けるのが目的だ。

実は主人公も、天才ヴァイオリニストである自分と、そして秀才でしかない弟との関係でいろいろあって呪いを持っている。

 

「あなたの呪いが愛に変わり、浄化されますように……」

 

 黒猫と、人間、2人のクロナから言われてそれぞれの愛する人を救った言葉だ。

 うん、やっぱりこの言葉も名言だなぁ。感慨深いものだ。

 これには、恐らく才能のない妹を持つ九頭龍クンもじっくりと読み込んでプレイしていた。

 モノミの最後の言葉にも通じる気がするし……

 

 そう考えてモノミを見る。

 皆と一緒にゲーム画面を見ながらところどころヒントを出したり、一緒に感動したり、くるくると表情を変えている。

 

「あ、日向くん…… そっちじゃなくて……」

「ん、待ってくれ、考えるから…… 花札だから……」

 

 現在やっているゲームは物の世界だ。

 花札を使ったギミックがあるので、あらゆるゲームに詳しい七海さんが指導しているんだろう。

 それにしても、日向クンと七海さんがゲームをしているのを見ると、思ってしまう。

 もう少し、こんな時間が続けばいいのになぁ。

 

 

 

 

 

「……で、なんで人狼することになったんだっけ?」

 

 全員で卓を囲み、自身の持つカードを見ながら言う。

 私の役職は猫又。狼…… クロに咬まれると咬んだ狼を道連れにし、投票で処刑されると自身に投票した人物の中から、ランダムで道連れにする役職だ。村役職の中でも処刑されにくく、進行役になることもある。処刑されても爪痕を残していく…… 実に私らしい役職だね。

 

「おいおい、コロシアイ修学旅行中に人狼ゲームってやばくねーか?」

「…… え? 現実は現実、ゲームはゲームだよ…… 疑心暗鬼になるからといって、騙し合いのゲームで本気を出さないのは、ゲームに失礼…… だと思うよ?」

「あ、ああそうだよな…… 遊ぶなら全力で、か」

 

 左右田クンが不安要素を挙げたが、七海さんと日向クンがそれを止める。最もなことであるし、騙し合いで皆がどう行動するのかというのも興味がある。パターンが分かれば対処法も…… って、だめだな。こんなことを考えてちゃ皆のことを信じてないみたいじゃないか。

 ついつい、いざというときのことを考えてしまう。

 今はただ普通に遊べばいい。そう、猫又が進行役をやる必要ないよね? だって互いにシロだと分かっている 「共有者」 がいるんだから。

 引っ掻き回して傷跡を残して、なるべく狼側に被害を受けてもらわないと。猫は村側なのだし、村の勝利を狙おう。

 そうして順調にゲームは進み4日目。

 最初にゲームマスター(GM)をやろうとしていたモノミは第一犠牲者役となり、霊界という名の仮眠室で待機。

 ちなみに吊り…… つまり処刑のことは皆で 「追放」 と言っている。GMがモノクマなので、念のためにだ。

 

「4日目昼時間開始だクマー! なんと! ゲロゲロに平和な朝だよ! やったね!」

 

 モノクマは 「うぷぷぷ」 と笑いながら、夜時間に人が咬まれなかったことを告げた。

 この場合、狼に咬まれても死なない 「狐」 を咬んでしまったか、もしくは狩人の守る人を襲撃対象にしていて襲撃が失敗したかのどちらかだけれど、どうだろう?

 3日目は共有者の片方として罪木ちゃんが名乗り出ていたが、未だにもう片方は出てこない。しかし、やたらと罪木ちゃんにアドバイスしていた七海さんや、気にかけていた日向クンあたりがもう片方だと当たりはつけている。

 とりあえずどちらにも対応できるようにしておこうか。

 私は役職を持っていることをバラさないようにしながら潜伏しているので、いつ追放されるか分からない。だができれば狼に咬まれて道連れにしていきたいところだ。

 

「…… 共有CO(カミングアウト)相方生存、だよ」

「あ、相方合ってますぅ……」

 

 ほう、七海さんと罪木ちゃんが共有者ね。なら、こうすれば狼の標的になりやすいかな?

 

「ああ、やっぱり七海さんだったんだね」

 

 こういう発言をしておけば、もし平和が狩人の護衛成功だった場合、それも七海さんが3日目夜の標的だった場合、狩人候補に私がなるということだ。

 狼の襲撃を防ぐ狩人は見つかれば咬まれる確率がぐんと上がる。これで本物の狩人さんが隠れられるのなら良し。ついでに狼が食らいついてきて道連れにできれば万々歳だ。

 まあ、なんとなく視線を感じる気がするから私が咬まれるだろうな。

 よし、じゃあ引っ掻き回していかないとね。

 投票時間ギリギリに……

 

「あとは頼んだよ、罪木さん」

「え?」

 

投票が終わって私ではなく、ギリギリ弐大クンが追放されたようだ。

これで、あとは咬まれてお仕事終了かな。

 

【狛枝凪さんの死体が発見されました】

【十神白夜さんの死体が発見されました】

 

「はいはい、さっさと仮眠室に行った行った!」

「……」

「……」

 

 黙ったまま十神クンと顔を合わせる。

眉を少しだけしかめた彼は、やられたな、といった表情でため息を吐くとそっぽを向いてしまった。

 ふふふ、彼相手に勝つだなんてね。

 なんだか嬉しくてガッツポーズをしていたら、その分厚くて大きな手が頭の上にドスンと乗せられた。

 …… 痛い。けれど、なんだかあたたかい。

 

「今度は引っかかってくれたね?」

「偶然だ」

 

 1回目の学級闘論では、ことごとく読まれてしまっていた。それがあったので、今回こうして騙されてくれたことを嬉しく思うのだ。

 彼の本当の才能のことを鑑みると、これって凄いことだよね?

 

 なおも激しくかき混ぜられる髪の毛が跳ねる。

元々寝癖がひどいというのに、これでは直らないじゃないか。

 

「こんな感じが、続けばいいなぁ」

 

私の漏らした独り言は拾われない。しかし無言の彼もなんとなく同意しているのが感じられて、やはり私は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 




・転ぶと死ぬ村
 人間、人生に一度は見る夢らしいですね。ですがご安心ください。夢を見た人の誰も、転んだ人はいないらしいですから……

・モ○ハン
 わりとよくあること。イビルモンドが言いたかっただけというか……

・フリーホラーゲーム
 ほとんど名前は変わっていませんが、英語をカタカナにしていたり、微妙に名前を変えています。これなら…… 大丈夫だよね?

・ゲーム
 絶望編10話の、 「もっと日向くんとゲームしたかった」 があまりにも胸にきたのです。キツイなら見るなという話ですが、リピートが止まらないんですよ…… (おめめグルグル)

・人狼ゲーム
 コロシアイ強制されてるのに人狼ゲームやる度胸ですよ。
 ちなみに提案は凪で、それに七海さんが乗った形になります。ルールは16D猫村ですね。

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