りん子姉さんの言う自由ってなんだろうな。足を失う以前の彼女もあまり出歩くことはなかったが、それでも中庭に行ったり、病院から出ることがないにしてもかなり行動派だったはずなのだ。あの人は自由に憧れることを諦めてしまったのだろうか。
暗い瞳には諦観すら、浮かんでいなかったけれど。
「忘れてたぁ」
また扉のあるエントランスホールで目が覚めて、夢を見てしまう事実をすっかり忘れていたことを自覚する。
しかし今の時点でできることは既にやってしまっていたし、走っても追いかけキャラ(コピー達に会ったので出現してるかもしれない)に勝てるわけがないし、さてどうしよう。
そういえば、原作でいう義足子であるりん子ちゃんが出てきたことだし、エフェクトの〝 機械 〟は取れるのではないか。それに私の解釈通りなら〝 潜水服 〟や〝 内蔵 〟、〝 スライム 〟に〝 植物 〟なんかも出現していてもおかしくはない。
ちなみに内蔵の解釈は母親から自分が生まれたことの現れだ。でもそうすると私達は皆あの人を少しずつ殺しながら生まれているってことになるんだよね。あ、なんだか言い知れぬ罪悪感が。
植物は病気の象徴とされることが多いけれど、メイ子さんにもらったアネモネが切欠になってエフェクトが増えているかもしれないし、私はスライム状になった〝 私 〟も見た。思えば嫌なエフェクトばっかり増えるなぁ。こう、猫とか増えてくれてもいいのよ? はあ、この調子だとサイケデリックも増えてる可能性があるし、探索あるのみだね。
「うえぇ」
場所は足跡通路。床一面に人間の足跡や、肉球の足跡が散らばっている不思議な部屋である。それらは連続的に続いていて、なにか得体の知れないものが通った跡であることをありありと表現していて、どこか不気味な印象を受ける。
何回も連続で弄り続けると確率で別の所へ通じるギミックのある場所は、気にはなるが今回関係ないのでスルー。一番奥に突き進む。
目の前には真っ赤な球体に幾つもの黄色い目玉という生理的嫌悪感を煽る不気味な触手の塊。そしてなによりそこらじゅうに生えている赤い触手の大元だ。かなりの巨体である。
こいつを私は少し似ているな、という思いからモルボルなどと呼称している。こいつに関しては呼び方が人それぞれなので、こう呼んでいるのは私だけかもしれないが。
そりゃあさびつきを丸呑みしちゃうくらいだから大きくないと意味がないのだろうけど、こいつはちょっと度が過ぎている。やはり原作のさびちゃんは中学生か高校生くらいだったのだろうか。今の私に奴は大きすぎる。それに、触手はちょっと……。
…… 小説の窓付きがタコ(仮)に捕まったときエロいとか思ってごめんなさい。これは、怖いわぁ。行かなきゃだめ? だめかな? ですよねー。いつまでたってもエフェクト集まらないから仕方ない。で、でも今回はちょっと…… うう、女は根性!
「ひぃぃぃぃぃ!」
触手が巻きつく! 笑ってるし! 変態! このロリコンどもめ!
「はぁ……」
私もうお嫁にいけない。
私に酷いことする気でしょう! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに! なんて冗談のような気持ちで潜り抜けた瞬間喉の奥から思い切り触手で引っ張られて放り出されました。
聞いてないよこんなの! うん、さびちゃんは凄い。あれを平然と何度も行ったり来たりするなんて私には無理だ。気のせいだと思いたいが服は少し湿っている。よだれ? いいや、気のせいだ。そうに決まっている。
そしてやってきたのは黄色いビームのようなものが此方に向かって飛んでくる弾幕通路。一本道の直線で、私は弾幕に逆らいながら進む。
飛び交うビームっぽいものには夢の中とはいえ、傷つくのは嫌なので手を出せなかった。
幸い箒はあるから空飛ぶイベントができたけれど、ゆめにっき本家のように青空を飛ぶわけじゃなかったから全然気持ちよくなかった。風もないし空気は生温いし最悪な気分だ。
箒? もう一度同じ道を辿ってみたらちゃんと
あと、ガラス回廊改め、雲タイル通路。前に案外綺麗かもとか思っていた自分を殴りたい。あのときは盲目的にFC世界に向かっていたから周りをよく見ていなかったのだ。原作のように浮いている通路のはずなのに周りに血痕とかが散らばっていました。地面があるかのように点滴スタンドがあるのに、そちら側にはいけないのだから不思議だ。踏み出してみようとしたら危うく落ちかけてしまった。危ない危ない。
もう一つの癒しスポットな猫さんはまだいない…… ちくせう。勿論.flowはやりこんでるからワープ場所くらい分かる。この先にサイケデリックがあるが鉄パイプがないからあのわかりにくいジッパーを壊して移動することもできない。
それに、今行ってもラブホ街、もとい歓楽街はきっとまだない。あったとしたらそれは前世の記憶に関することだ。また自分が死ぬ瞬間は見たくない。目を覚ます寸前に目が合う少女のことは気になるけれど、仕方がないだろう。
と、いうことで向かう先は機械か、植物のあるところか。しかし今、私がいるところとは正直正反対の場所である。とりあえず、箒での飛行は達成したので元に戻ろう。
こういうときに〝 腕 〟があると楽なのだが残念ながらそれも反対側である。具体的に言うと最初のエントランスホールで私は上に進んでここに辿り着いたが、それらがあるのはエントランスから下に抜けた場所なのだ。実に遠い。
腕というのは頭や肩から腕が生え、それらと共に自分を抱き締めるとエントランスホールに戻れるという便利なエフェクトだ。エントランスホールには自力で戻るか、一度夢から覚めてまた眠るしか戻る方法がない。ゲームでは何度も寝たり覚めたりできるが、現実では面倒だし、基本1日に一回しか寝る機会はないので一方通行の多い夢の中では重宝するだろう。ゆめにっき本家のキャラクターであるモノ子ちゃんに似ている姿になるのがポイント高いし、可愛いから私はこのエフェクトが大好きだ。
丁度モルボルさんは一方通行だし、記憶がまだ幼いので(決して私が幼いだとか、そういうのではなく)どこがどこに繋がってるか見当もつかないのだ。まだ経験していないことは夢には現れない。だから歓楽街もまだないだろうし、学校だってない。本来アパートがある場所に病院があったのがいい例だ。と、いうわけで本日の冒険は終了である。
「経験なんて、これからもしたくないのに」
経験しないなら重畳。しかしそれは叶わないのだろう。逃避の場のはずなのに現実をまざまざと見せつける心象風景を背に、私は