梅雨。幻想郷のほとんどが外に出る事を嫌がり、人通りが極端に少なくなる。
梅雨の時期が始まり一週間が経った頃、私霊夢は、この人気の無い神社にて掃除をしている。
と言っても、雨の当たらない所のみなんだけどね。
掃除をしていると、何処からか声が聞こえる。
「…………、………!……………‼︎」
声を発している事はわかるのだけれど、雨の音にかき消され、喋っている内容までは聞き取れなかった。
「ま、気のせいかしらね……」
〜一週間後〜
まだ雨は止まない。
今日は掃除が早く終わったから、縁側にてお茶を啜っていると、上空に空飛ぶ箒と白黒の何かが飛んで来た。
「どうしたの?箒とその他白黒」
「遊びに来t……酷くね⁉︎流石の私でも傷つくぜ霊夢!」
「んで?今日はどうしたの?」
「いや、クッキー焼いたからお裾分けに来ただけだぜ」
「そう。じゃ、一緒に食べましょうか」
「おう!」
魔理沙と一緒に縁側でクッキーを食べていて何分か経った時、魔理沙がちょっとした異変に気付く。
「あれ?何かさっきより少なくなってね?このクッキー」
「そりゃ私もあんたも食べているから当たり前でしょう」
「いや、そうじゃ無くて、なんか、明らかに私とお前が食べてる量と釣り合わない気がするんだぜ」
確かにそうだ。
私と魔理沙のクッキーを食べる速度は大体同じくらいで、どちらも遅いからこんな30近くあったクッキーが10を切るなんて普通有り得ない。
となると、考えられるのは魔理沙が2、3枚重ねて食べたか、他の何かが食べているかのどちらかね。
「魔理沙、あんたクッキーを重ねて食べてないでしょうね?」
「私がそんな大食いに見えるか?」
「いや、全く」
となると、やはり誰かが食べているのか。
クッキーを食べた犯人について考えを巡らせていると、何処からか声が聞こえてきた。
「…………‼︎……!……………‼︎」
だがやはり、その声は雨の音にかき消されてしまう。
「………やっぱり気のせいじゃ無いのかしら?」
結局、クッキーの犯人は分からなかった。
〜更に一週間後〜
梅雨の時期も半分を通り過ぎた。
今日は珍しく晴れている。
雨が止んでいる隙に境内の掃除を急ごうとしていると、何処からか声が聞こえてくる。
「霊夢さん‼︎…が!…が終わってしまいます‼︎」
ん?誰の声かしら?あと、肝心な所が聞こえてないわね。
「あなたは誰?」
質問の回答は帰って来ず、それ以降この日は声が聞こえなかった。
〜更に一週間後〜
雨が降っている。今日は少しだらけてから掃除を始めようとして縁側から神社の中に入ると、チルノが汗だくでだらけていた。
「あ、霊夢!おかえり!」
「おかえり!じゃ無いわよ。なんであんたが居るのよ」
「んー…?なんでだろう?な何か分からん奴に呼ばれた気がするんだ」
「そう。ありがとう。ゆっくりしていってね」
「うん!」
どうやらいつも聞こえる声の主は妖精らしい。
まぁ種族が分かった所でどうしようもないんだけどね。
〜更に一週間後〜
梅雨も残す所あと一週間と一日になった。今日は珍しく晴れていた。
今日こそは掃除をしようと箒を取り出し、石畳の土埃を掃く。
掃除をしていると、空から飛行系女子が飛んで来た。
「おーい霊夢ー」
「どうしたの?飛行系女子」
「何その新しいジャンル⁉︎」
飛行系女子の正体は何と、魔理沙だった。
「今日は久しぶりに晴れたし、お前とガールズトークに花咲かせに来たんだぜ!」
「あんたがガールズトーク?ッは、片腹痛いわ」
「酷くない⁉︎最近私に対しての当たり酷くないか霊夢ぅ‼︎⁉︎」
「え、そうだった?」
「自覚を持て!」
「そうね。気をつけるわ」
「そうだ霊夢!もうすぐ夏だぜ!夏といえば海だよな!海行きてえ海!」
「私は白玉楼ね」
「あぁ…涼しいからか…」
「うん」
そんなこんなで喋る事一時間。
魔理沙は
「研究しなきゃだから帰るぜ!」
と言って、飛んで帰って行った。
そういえば、今日は声が聞こえなかった。
結局あの妖精は何を言おうとしたのだろう。
いや、もう私は気付いている。あの妖精、『リリーホワイト』が何を言っていたか。
あの妖精は春が終わる事を嘆いていた。
魔理沙は夏が始まる事を楽しみにしていた。
私は春が終わる事を嘆くべきか、夏が始まる事を楽しみにすべきか分からない。