アーエルとネヴィリルを乗せたワポーリフのヘリカル車は、なだらかな丘を下って小さな牧場に着いた。
あれ以来、塞ぎ込んだままのネヴィリルを心配したアーエルがワポーリフの牧場に連れてきたのだった。
「景色もいいし穏やかな場所ね~…とっても戦争をしてるとは思えないほど」ネヴィリルはほっとしたように言った。
「いい所でしょ…元はワウフの牧場だったんですが、彼が南部に行く時に譲ってくれたんですよ。子供を育てるには絶好の環境だからって」
ワポーリフはそう言うと、アーエルとネヴィリルをヘリカル車から降ろして一緒に牧場の中に入った。
「お帰り~っ…パパ~」たちまち幼い子とお腹の大きなモリナスが、赤ん坊を抱いて家の中から出て来た。
「お帰りなさいワポーリフ。元気だった?…あらっ!アーエルとネヴィリルが一緒なのね」
モリナスは二人を見ると、うれしそうに側に寄ってきて五年ぶりの再会を喜んだ。
「久しぶりね~モリナス。すっかりいいお母さんになっちゃって…まぁ~とっても可愛い赤ん坊」
ネヴィリルはそう言いながら、モリナスが抱いている赤ん坊をうれしそうに見た。
「可愛いでしょ~…この子アーエルって言うのよ」
「アーエル?」
「そう、上の子はネヴィリル…今お腹の中にいる子はパライエッタにしようかなって」
「まァ~、モリナスったら…コール・テンペストでも作るつもり」
「そうね…ワポーリフがう~んとがんばってくれたらね」
モリナスはワポーリフを見ていたずらっぽく笑った。
「おぃおぃ、モリナス…僕はそんなに体力は」
ワポーリフは、足にまつわりついて甘えてくる幼いネヴィリルをあやしながら照れ笑いした。
「久しぶりだからみんなでお茶にしましょうよ」モリナスはそう言って赤ん坊を抱えたまま台所に向かった
「私も手伝うわ」ネヴィリルはそう言いながらモリナスの後を追って家の中に入った
その間にワポーリフは幼いネヴィリルをアーエルに預けて庭に出すテーブルと椅子を取りにいった。
台所では、モリナスとネヴィリルがお茶の準備をしながらコール・テンペスト時代の懐かしい思い出話をしていた。
だが、その話題がアヌビトゥフの話になったとたんに、急にネヴィリルの顔が暗くなってしまった。
「どうしたの…何かあったの?」怪訝に思ったモリナスはネヴィリルに尋ねた。
ネヴィリルは、悲しそうに戦いの渦中でアヌビトゥフを殺してしまったいきさつを話した。
「命ってはかないものね~…だから人は子供を残そうとするのね」モリナスはポツリと言った。
「そうね…あっけないものね」ネヴィリルは悲しそうにつぶやいた。
「私はもう空を飛べないけど、子供たちが大きくなったらきっと私の代わりに空を飛んでくれるの」
「そうなるといいわね~」
「誰かが空を飛んで…その人がいなくなったらまた次の人が空を飛んで…そうやって永遠に続いていくの」
「永遠に続く事を祈りたいけど、今の空は擦り切れてしまってるから」*(シムーン主題曲『美しければそれでいい』から引用)
「アヌビトゥフが死んでしまっても、きっと誰かが彼のように空を飛ぶのよ」
「………」
「だから、誰かがこの空を…世界の平和を守らなくっちゃ~ね…その人には悲しい事や辛い事がたくさんあるだろうけど」
そう言いながらモリナスはそっとネヴィリルを抱いた…ネヴィリルはモリナスの胸にすがって泣いた。
~続く~