久しぶりにみんなでそろって飲むお茶は格別の味がした…ネヴィリルは沈んでいた気持ちがほぐされる思いがした。
幼いネヴィリルはもうすっかりアーエルになついてしまって、手を引っ張っては庭で遊びたがっていた。
アーエルの子守のうまさは天性のものだろうか?…ネヴィリルは嶺国で過ごした日々の出来事を思い出していた。
気持ちが癒されるようなひと時を過ごしたアーエルとネヴィリルは、ワーポーリフのヘリカル車に乗って大聖堂に帰ってきた。
「あっ!あれを見てネヴィリル」ふいにアーエルが空を指差して言った。
「あれはっ!…田園のリ・マージョン」ネヴィリルの胸には熱いものがこみ上げて来た。
大聖堂の空には、死んだ友を追悼するための田園のリ・マージョンの航跡が輝いていた。
ネルケから話を聞いたコール・ブルーメの少女たちが、アヌビトゥフを弔うために全員でリ・マージョンを描いたのだった。
悲しい事も、苦しい事も、シムーン・シュヴィラの少女たちはみんなで分かち合う事を知っていた。
アルハイト総督は、宮守・エルフリンデの部屋に集まったコール・ブルーメの少女たちに言った。
「今日から君たちを嶺国の正式なシムーン・コールとする。立派な戦果も立てた事だしな」
少女たちは一様に驚いた。まだ訓練は完全に終わってはいない。
ここしばらくは、ブリュンヒルデたちを手伝うのに忙しくて訓練どころではなかったのだ。
しかし、そんな少女たちの事情などお構いなしにアルハイト総督は言った。
「レギーナはハイデローゼとする。イラでの要人救出の功績もあるし、以前にレギーナの経験もあるからな…異議はないな」
(責任感も強いし、リ・マージョンも一番うまい…異議はないけど、でもアーエルとネヴィリルはどうなるんだろう?)
少女たちはみんなハイデローゼを見て思った…だが、真っ先にそのハイデローゼがアルハイトに異議を唱えた。
「ちょっと待って下さい。私たちコール・ブルーメにはレギーナに相応しいアーエルとネヴィリルがいます」
「君たちは嶺国の正式なコールとなったのだ。宮国人をレギーナにする訳にはいかんよ」
「でも、私たちは訓練コールです…今は事情があって首都防空隊を援護していますが、本来は戦場には出ないはずでは」
「確かに宮国の二人はそう言う約束で教官に任命しました。でも、あなたたちは嶺国の国民です。国家の戦争には参加する義務があります」
エルフリンデにそう言われると、コール・ブルーメの少女たちは否応なしに従わざるを得なかった。
アーエルとネヴィリルはただ黙って話を聞いていた…二人は自分たちの立場よりも少女たちの今後の身の上を案じていた。
「じゃぁ、アーエルとネヴィリルはどうなるんですか。解任されるんですか?それとも?」ハイデローゼは尋ねた。
「宮国の二人が傭兵としてあなたたちと戦うか、戦わないかは本人たちの自由です。何ならシムーンを降りて泉で還俗してもらっても構わないのよ」
「そんな無茶なっ!アーエルとネヴィリルにシムーン・シュヴィラをやめろって言うんですか?宮守様は」
(アーエルとネヴィリルには、何があっても一緒にいてもらいたい)ハイデローゼは二人の事が気掛かりだった。
~続く~