「いぇ、無理なんかしてません…宮守様はお二人がお嫌いなようですが、私たちはみんなお二人が好きです」
「仕方ないわ。私たちは宮国人だもの…差別されても」
「私は嫌です!だって嶺国人だろうと宮国人だろうとみんなおんなじシムーン・シュヴィラじゃないですか」
「そうね~…民族とか、国とか、身分とか、なぜ人は人を差別するんでしょうね。バルザミーネとネルケも随分悩んでいたわ」
「大丈夫ですよ。今は二人ともすっかり打ち解けています。これもお二人のお陰です」
「今度の任務は大変そうね。私も経験あるけどレギーナって責任重いから…困った事があったら何でも話してちょうだい」
「実はそうなんですよ~…ラクリマ鉄橋の橋脚は二つあって、引き受けた責任上一つは私が爆撃しますが、後の一つを誰に頼んだらいいか悩んでいます」
「いいわよハイデ…私たちが爆弾を積んで行くわ」
「いぇ、とんでもないっ!爆弾を積んだら動きが鈍る上に敵地の真っ只中でしょ…とてもお二人にそんな危険を背負わせる訳にはいきません」
「大丈夫よ。シムーンに輸送コンテナを吊り下げて兵士を運んだ事もあるんだから」
「でも、本当はお二人とも戦いたくはないんでしょ?」
「あなただってそうじゃない?…神に仕える巫女が人を殺すなんておかしいと思ってるでしょ」
「正直言えばそうです。私が大好きだった神託の巫女・ガルトルートも言ってました『神と人のために祈る巫女』だって…戦いで亡くなりましたが」
「そうね…さぞ立派な神託の巫女だったんでしょうね。戦争はそんな人の命まで奪ってしまう」
ハイデローゼは、自分たちを守るために死んだガルトルートを思い出すと涙が出そうになった。
「お二人ともありがとうございました。危険な役割を押し付けてすみません…ではこれで」
そう言ってハイデローゼは、目頭を押さえながらアーエルとネヴィリルの部屋から出て行った。
大聖堂のエアポートに、ずんぐりした大きなシムーンが舞い降りてきた。
二つの胴体を持つ双胴のシムーンは、それぞれ縦にヘリカル・モートレスがついていて、中央のシュヴィラが乗るコクピット・ナセルにも一つ、合わせて三つのヘリカル・モートレスを備えていた。
二つの胴体とコクピットナセルは翼で連結され その双胴の胴体からは連射式の戦車砲が砲口をのぞかせていた。
それは、今までに見たどのシムーンよりもはるかに大きなものだった。
宮守・エルフリンデは、タラップから降りてきた二人の少女をコール・ブルーメのメンバーに紹介した。
「こちらの二人が、今回の作戦であなた方を夜間誘導するために本国からきたプランケとアルラウネです」
「コール・ブルーメのレギーナ・ハイデローゼです。よろしくお願いします」
ハイデローゼはエルフリンデに紹介された二人に握手を求めたが、プランケとアルラウネはそっぽを向いた。
「すっごく大きなシムーンだわ…胴体が二つにヘリカル・モートレスが三つもあるなんて」
「パワーのありそうなシムーンね~…でも、こんなに大きな機体をどうやって操縦するのかしら?」
「大砲まで積んでるんだね…このシムーンなら礁国の飛空船でも撃ち落せそうだ」
コール・ブルーメの少女たちは、双胴のシムーンに興味津々になってプランケとアルラウネを質問責めにした。
だが、二人は「私たちは、あなたたちを夜間誘導するように命令されてきただけだから」と言ってさっさと立ち去っていった。
~続く~