シムーン第二章 ~乙女達の祈り~   作:佐渡 譲

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シムーン第二章 第6話 【陰謀】 その7

 ラクリマ渓谷をさかのぼっていく内に、夜がしらじらと明けて来た。

 その日の出前の狭い谷間を、コール・ブルーメは上流に向かってひたすらに突き進んだ。

 ふいに少女たちの行く手に大きな橋が見えて来た。

 切り立った崖に打ち込まれた二本の橋脚…間違いなくラクリマ鉄橋だった。

 ディステルとファイルヒェンがふわっ!と上に上がって、爆弾を積んだシムーンに道を開けた。

 ハイデローゼとイリス、アーエルとネヴィリルのシムーンが開いた道の前に出た。 

「アーエル。ネヴィリル。両名は左の橋脚をお願いします。私たちは右を狙います」

「了解よ…あなたたちと同時に爆撃するわね」

「さぁ、行くわよっ!イリス…しっかり照準を合わせてね」

「OK、ハイデ。任せといてっ!」

 2機のシムーンが呼吸を合わせて、同時にラクリマ鉄橋の橋脚を目掛けて突っ込んでいった。

 未明の奇襲に驚いた鉄橋の警備兵が、対空機関砲に飛びついた時はもうすでに遅かった。

 ドッガァ~ン!…と爆発音が谷間に轟いた。

 ハイデローゼとイリス、アーエルとネヴィリルが放った爆弾は見事に左右の橋脚に命中した。

 たちまち橋脚は崩れ、支えを失ったラクリマ鉄橋は、グァラ!グァラ~!と言う音とともに谷底に落ちて行った。

 

「よしっ!やった~」

「爆撃成功っ!」

「さぁ!すぐに撤退しましょ…敵に見つからない内に」

 ハイデローゼは爆撃の成果を見届けると、ただちにコール・ブルーメに撤退の指示を出した。

 少女たちは再びシムーンの編隊を組み直すと、その場から全速力で脱出した。

 まだ油断はできなかったが、ラクリマ渓谷の中流までくると、少し谷間も開けてシムーンの飛行も楽になってきた。

 少ばかり緊張が解けて気が緩んだのか、少女たちは思い思いに自分たちが成し遂げた戦果を喜び合っていた。

(よかった~…一人も犠牲者を出さずに任務を遂行できて)ハイデローゼは、何よりもみんなが無事だった事がうれしかった。

(もう少しばかりラクリマ渓谷を下れば、方角を転じて敵地から抜けられる…このまま何事もなければ)

 

 だが、そんなハイデローゼの願いは、瞬く間に無残に打ち砕かれてしまった。

 突如、上空から舞い降りてきた大きな影がアーエルとネヴィリルのシムーンに襲い掛かったのだ。

 その瞬間、最後尾にいたバルザミーネとネルケのシムーンが、躍り出るように間に割って入った。

 すべてがあっ!と言う間の出来事だった。

 急降下して来た双胴のシムーンから発射された戦車砲の砲弾が、バルザミーネとネルケの古代シムーンを直撃した。

 さすがに頑丈な古代シムーンと言えども、戦車砲を食らってはひとたまりもない。

 少女たちにはとっさの事で、何が何やらまったく分からなかった。

 バルザミーネとネルケのシムーンの胴体は、一瞬にして裂け、竹とんぼのようにきりもみしながら谷底に落ちて行った。

「あぁっ!バルザミーネとネルケがぁ~!」ハイデローゼは叫んだ。

 バルザミーネとネルケのシムーンを撃った双胴のシムーンは、そのまま飛び去ってどこかに姿をくらませてしまった。

 

~続く~

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