「あら、あんたも貴族だったの?」カメリアが聞いた。
「一応、士爵だけど…でも、もうそんなのはどうでもいいよ~っ!」ファイルヒェンはとうとう泣き出した。
「あんまりだ~っ!あんまりだよぉ~!…これじゃぁ、バルザミーネとネルケが可哀そうだ~」ナルテッセも泣き叫んだ。
少女たちはみんな声を上げて泣いていた。泣いて…泣いて…泣きじゃくった。
都合のいいように使われて、あげくの果てに祖国に裏切られて死んだバルザミーネとネルケを悼んで。
「もう信用できないっ!…国家も、貴族も、大人たち全部がっ!」オルヒデが少女たちの心を代弁して言った。
「アーエルとネヴィリルの暗殺を企んでいるなら、また何か仕掛けて来るかも知れない」イリスが疑って言った。
「そんな事させないっ!絶対に私たちでアーエルとネヴィリルを守るっ!」
ディステルは、そう言ってみんなの気持ちをアーエルとネヴィリルに伝えた。
「ありがとう…みんな」アーエルとネヴィリルは、少女たちの気持ちがうれしかった。
「大事な仲間だもん…シムーン・シュヴィラだもん」ファイルヒェンが小さなで二人を抱いた。
少女たちは堅く心に誓った!何があってもアーエルとネヴィリルを守ると…結束した心ほど強いものはない。
すでに日は昇って、辺りは明るくなってきていた。
礁国のシミレが空を飛ぶ爆音が少女たちの耳に聞こえて来た。空の上には黒い航跡が見えた。
「敵のシミレが飛んでいる…きっと私たちを探しているんだわ」ハイデローゼが言った。
「ラクリマ鉄橋が爆撃された報告が届いたんだろうね…早く逃げなきゃまずいな」イリスが警告した。
「でも、バルザミーネとネルケはどうするの?」キルシュは二人の遺体が気掛かりだった。。
「もう、埋めてやる暇も墓を作ってやる暇もない」イリスは切ない思いを振り払うように言った。
「こんな所に置き去りにしたままで可哀そうじゃない」カメリアは二人の遺体をそのままにしておけなかった。。
「ごめんよ…バルザミーネ。ネルケ。でも私たちは行くしか仕方がないんだ」アーエルが痛む心を抑えて言った
「さようなら…バルザミーネ。ネルケ」ネヴィリルはそう言いながら、二人の遺体を愛おしそうに撫でた。
アーエルとネヴィリルは二人の遺体から、血に染まったアニムスのロザリオを形見に取り外した。
少女たちはみんなで涙を流しながら、有り合わせの布でバルザミーネとネルケの遺体を覆った。
そうして、バルザミーネとネルケを失った少女たちは涙を拭ってラクリマの谷から飛び立っていった。
貧しくとも、懸命に美しく咲こうとしていた『鳳仙花』と『なでしこ』の花は、こうして無残にも散った。
少女たちは生涯忘れる事はないだろう…葬られる事もなく死んだバルザミーネとネルケを…悲劇のラクリマ=涙の谷を。
それからは、二度と使われる事のない二人のベッドの上に、いつも鳳仙花となでしこの花が飾られるようになったそうだ。
~続く~