超兵器より非戦闘艦の方が超兵器だった件について。 作:maisen
Warning! Warning!
これはWルートでもJルートでもGルートでもなくEXTRAルートである!
渋い中ボス枠の軍人が孤島でカラオケしてたりノラ戦艦やノラ空母がでたり、3人の副官が争ったりイカがラスボスだったりするルートの「ソレ」であり、スタッフの悪ふざけが極まったルートの「ソレ」である! ラスボスが神輿に乗って「次は超神輿だ」とか言ってるルートからの混線である!
Warning! Warning!
―3、僕らはみんな生きている―
「ふーふふん♪ ふーふふん♪ ふーふふーふふーふふーん♪」
今日はとても良い天気で、折角なので洗濯と布団干しをいっぺんに済ませる事にしたのだが、手伝いに着いて来てくれた電の鼻歌が気になってしょうがない。向こうでスーさんと一緒に布団干し用の物干し竿を持っている大和も気になっているようで、ちらちらと電を見ながらスーさんが持ってきたドラム缶の上に乗せた46cm3連装砲の砲身に物干し竿を突っ込んでいる。
お前それ虫干ししてる自分の艤装の砲塔だぞ、と思い大丈夫なのか聞くと、大和は不思議そうに布団を物干し竿にひっかけて干しはじめた。こいつ気付いてねぇ、こんなん草生えるわ。
「~~~♪」
「なかなか電は鼻歌が上手いのー」
こっちはこっちで何事も無かったように電が持ってきた洗濯籠の中からシーツを取り出すと、隣に立って干し始める。
「ワロス」
「? 提督、急に何を仰ってるんですか」
「大和、それ干し終わるまで物干し竿動かすの禁止な」
そう言って物干し竿が生える根元を指さすと、大和はガチンと動きを止めた。気を逸らしてるからそうなるのだ。
「家事とは戦争なのだよ…」
「一斉射で物干し竿が3本飛んでいくのか、胸が熱くなるの」
「スっ、スーさんが持ってきたんじゃないですかぁ! 酷いですよ、私の主砲ぅ~!」
はいはいどうせ戦闘も無いし大丈夫だって。近隣の敵は全部大和によって駆逐済みである。よっぽど出撃し放題、砲撃し放題が嬉しかったのか、朝から晩までご飯食べたら出撃、おやつ食べたら出撃、お風呂の前に出撃、お休み前に出撃と。
「お前はどこぞの空の魔王か。艤装の妖精さんがサボテンダー見たいになってたんやぞ! 少し休みんさい、休ましてあげなさい!」
「見てみいこの惨状を…」
そう言ってスーさんは一人の妖精を差しだした。小さいベッドに寝かされた妖精の腕には小さい点滴が刺さっており、その目は開いていながらも虚ろで、まるでブラック鎮守府でオリョクル開始後休みなし2週間目終了した位の潜水艦娘達の様な、とても濁った色をしていた。傍らでカルテらしきものに書き込みしていた白衣を着た妖精さんは、スーさんと俺を見ると肩をすくめた。
・ワ・<3日くらいやすませてあげてほしいです?
「うむ、感謝するぞ妖精どの。所で見かけぬ顔じゃが何処の所属…もうおらん」
「さぼてんだー? 加古ってんだー…じゃなくて! 妖精さんが干からびて何か細くなってるんですけれど! ごっ、ごめんなさい妖精さん!」
まぁ此処まで連続での出撃も無かったから、そのギャップにやられている所もあるのだろうけれど。所で白衣と病院のベッドを見るとなんだか手の震えが止まらないんだがこれ何だと思う?
「ほほほほらみろよよよてて手がフル震え震えてててて」
「いかん発作だ! …ほれーもう大丈夫じゃぞー、舌打ちする怖い看護婦達も、一言も話さんし目も合わせん医者ももう居らんぞー大きく息を吸ってー吐いてー」
「提督の顔色が白を超えてどす黒く!? いったいどれだけトラウマになってるんですか!」
なってねーし! 泣いてねーし! もうぜんっぜん平気だし! もう医者なんか怖かねぇ! やろうぶっ○○○やる!
とどったんばったん何時の間にか洗濯物干しをそっちのけで騒いでいた俺達であったが、その動きを一瞬で止める衝撃的な音声が流れてきた。
「ふーふふん♪ ふーふふん♪ いなーづまのよーおな♪」
この瞬間、俺とスーちゃんの顎は尖っていたに間違いない。電、何と言う、何と言う…!
「あやつ、歌詞の主人公の名前をさらっと自分の名前と入れ替えおったぞ…!」
「え? え?」
全く意味が分かっていない大和を余所に、ドック艦スキズブラズニルは今日も大海原を行く。俺と、電と、大和を乗せて。
「あ、そろそろスコール来そうな気がするから艦旗をてるてる坊主に変えといてー」
「了解なのじゃー」
「だから私を置いてけぼりにしないで下さいよぅ。それに、艦旗にてるてる坊主って大丈夫なんでしょうか…?」
海賊旗にペナントに大売り出し、鯉のぼりに若葉マークまであるでよ。
「別に誰も見てませんし、気にするだけ無駄なのです」
「お、電ありがとな。もう干し終わったのか」
「むぅ…素早いながらも細やかで皺一本も見当たらぬ匠の技…!」
シーツがぱたぱたとはためく光景を背に空になった籠だけを持って戻ってきた電。その表情は穏やかで、さっき鼻歌で主人公の地位を奪っていたとは思えない綺麗な笑顔だ。
「あ、ちょっと直してくるのです」
と今度は大和が干していた洗濯物へとてとてと駆け寄ると手早くさっさとちょっと歪んでいた肩のラインを正し、少し残っていた洗濯物をテキパキと干し直し始める。
「ああっ、ごめんなさい電ちゃん、私が至らないばっかりに」
「いえ、良いのです。大和さんも多分自分で気付かないうちに疲れがたまっているのです。私は、なるべくなら戦いたくはありませんから、寧ろ私こそ大和さんには何時もお世話になっているのです」
「電ちゃん…!」
ちょっと感動してる風だけど、今の台詞、大和がバトルジャンキー的な扱いになってるような。隣のスーさんを横目で見ると、丁度視線が合った彼女は肩を竦めて苦笑い。言うべきか言わぬべきか迷っていると、大和の視界から少し外れた電の影から、ピカっと錨が光を反射して俺とスーさんの目を灼いた。無論、電がわざとやったのだ。
「「……」」
俺とスーさんは大和の背後で、無言でお口にチャックのジェスチャーを電に向かってするのだった。
―4、生きているから、腹も減る―
提督室に集まった4人。その表情は揃って暗い。何故かと言うと。
「という訳で、食料が尽きたのです…」
「どうしてこうなった! どうしてこうなった!」
「くぅくぅお腹が空きました…」
「腹が減っては戦が出来ぬと宮本=将司が書いた古事記にも載っておろうが…!」
載ってません(バッサリ)。ともあれ泣いても笑っても踊っても、スーさんの食料庫にはもう米粒一つ無い訳で。まぁどうしてこうなったかと言えば。
「それもこれも大和が敵が居ないってんでどんどん遠くに遠くに行こうっていうから!」
「そっ、それを言うなら提督だって、羅針盤が頼れないからーとか言っちゃって、人生げーむのるーれっと使って進む方角を決めてたじゃないですか!」
「スーさんも結構ノリノリだったのです」
「電こそダーツ決めるのです、とか言って『ぱじぇろ! ぱじぇろ!』と謎の呪文となえておったじゃろうが!」
何だ皆悪いんじゃないか。つまりトリガーハッピーになってた大和が敵が居なくなったと文句を言うからイケイケどんどんで、ルーレットとダーツの神様が言うとおりに先に進んだ結果、日本からの補給船とまともに合流できずこの様な訳か。
「…よしわかった! まぁ落ち着きたまえ」
そう言って俺はラムネを提督室備え付けの冷蔵庫から取り出し、3人の前にそっと出した。
「落ち着いたのです」
「凄く落ち着いたのじゃ」
良い笑顔だ。
「こ、これ私のラムネじゃないですか…! 何時の間に」
「お前んとこの妖精さんにちょろっと合言葉を言えばくれるんよ」
ギンバエ!ギンバエ!ギンバエ!
「あんきも!あんきも!あんきも!」
俺が放った合言葉に脱力し崩れ落ちる大和と、何が琴線に触れたのか非常に良い表情で謎の呪文を唱えるスーさん。
「どっちもクソなのです」
上手いね電、下品だけどそう言うの結構好きだぜ、俺は。座布団一枚。
「なのです!」
俺が差し出した座布団の上に笑顔で飛び乗る電。そのまま正座でラムネを飲み始めた。こうして見てるとほんま天使なんだけどなぁ。直前の発言さえ無ければ。
実際せっぱつまった状況なのだが、結局いつものようにごちゃごちゃになるのは何故なんだろうね?
「大体はあなたのせいです!」
「じゃの」「なのですー」
君達は一体何を言っているのか、僕には訳が分からないよ。
「という訳で俺と契約してこの釣竿で魚釣りをしながらグリーフ・フィッシュを集めましょう」
「おい妙なのが混線しとるぞ。そのクッソ不愉快な気配をさっさと追い出すんじゃ」
すまん、すまん。腹が減ってると電波を受信しやすくなって困る。
「皆! 釣竿は持ったな!」
「あったぞ提督! タモとバケツじゃ!」
「でかした!」
「もう、そういうの良いから早く行きましょうよー…」
「うー…。ラムネじゃ一時的にお腹が膨れてもすぐぺこぺこなのです…」
ラムネの糖分のお陰でちょっとテンションが戻った俺とスーさんを余所に、大和と電は揃ってお腹を押さえて静かにエネルギーを使わないように俺達を置いて甲板へと先に歩いて行くのだった。
天気は快晴。波も穏やか。風は南南西よりやや湿り気あり。日差しは強いのでパラソルを設置し日射病対策も万全である。であるのに。
「釣れねぇ…」
「こっちは外ればっかりですねー…よっ、と。あら、またペンギン」
「こっちはまた不法投棄された九六式艦上戦闘機なのです…」
烈風が出てくるまで21型が45機と52型が32機。一緒に山ほど出てくるからね、仕方ないね。きっとこの海流の向こうには空母の装備を整え始めたばっかりの提督が居るんだろうなぁ。まるでボトルメールでも見てるみたいだ。なんて、一緒に漂流してた妖精さんの荒んだ目がなけりゃもっと想像を楽しめたんだろうけどな!
「すっかり拗ねてもうてまぁ。ちゃんと廃棄手続きもせんと適当に捨てるからこうなるんじゃ」
「お陰で提督ってだけで俺がクッソ睨まれてるんですが! 濡れ衣だよ!」
俺じゃないのに坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって感じで睨まれてます。辛いです…。辛いです…。辛いです…。
「腹立った。妖精さんに捨てられた鎮守府確認して。俺だと噛みつかれそうだし」
「別にええがの…聞いてどうするんじゃ?」
「巡航ミサイルで物理的に人誅したろかなと」
鎮守府も泊地も皆吹っ飛べばいいんだよ。そうすりゃスッキリするだろ、なぁ? って感じで人生で一番の笑顔で妖精さんに言うと今度はガタガタ震えてスーさんの後ろに隠れたんだが。Why?
「提督何か恨みでもあるんですか…?」
「一番最初に着任した鎮守府を追い出されて、しかもその時に半分くらい自業自得とは言え、扱いが悪くてPTSDを拗らせちゃってるのです…」
そこ、ボソボソ言わない、言いたい事があったらはっきり言いなさい!
ともあれ、妖精さん達が其処までせんでもええやん、みたいに止めてきたので、人誅(爆☆殺)はいったん中止とする。だがこのままこの愚行を許しては妖精さんにも環境にも迷惑極まりないので。
「炸薬抜いて、コピーしたお手紙入れて、ホイ」
「ロックオン! なのです!」
「発射ァ!」
「発射!」
しゅごー、っと煙を吐きながら飛んで行った多弾頭ミサイルの着弾地点は彼の提督の執務室にセットしたので、問題なく着弾してくれるだろう。ついで着弾地点近くのあちらこちらに高速で突っ込んで中身の手紙をばら撒いてくれるだろう。反省してくれることを望む。巻き込まれた艦娘や提督には申し訳ないが、これもこの事実が握り潰され妖精さん達が虐げられ続ける事を防ぐための苦肉の策なのだ。仕方ないのだ、俺だってこんな事ほんとはやりたくねェ! 俺だって苦しいんだ! だが命を大事にしない奴は死ねぇ!
俺の指示に従って、電が背負っていた艤装からミサイルが一本打ち出された。それは見る間に空へ空へと高く上り、そして見送る俺達の視界から徐々に小さくなって消えて行く。
「いやァー、スゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のようによォ〜ッ」
「さっき俺だって苦しいんだとか言ってませんでしたか…?」
「何か言ったか大和」
ジトっとした視線で此方を見てくる大和だったが、俺が笑顔を崩さず視線も逸らさずにいると、やがて諦めたのか頭痛を堪えるような仕草をしながら、再度海に釣り針を投げ込み始めたのだった。
―5、ミミズだって、オケラだって、天城だって―
「駆逐イ級は食えると思う人ッ! はいっ!」
「無理です、捨ててください」
「メッですよ、司令官さん。ポイッしてください!」
「鉄と油と火薬の味がするそうじゃて、一応人間のお主は食わんがええぞ」
だって魚釣れねぇんだもんよぉぉぉぉ。まさか最終手段の魚雷投下によるダイナマイト漁が失敗するとは思ってなかったからなぁ。魚も居たかも知れんが爆音を聞いた深海棲艦が周辺海域からアホほど集まってきて、そこからまさかの2時間連続戦闘だもんよ。もうお腹減り過ぎて空腹の感覚がないんだよ。
「謎の装置η凄いですね」
「それほどでもない」
美乳を強調するように胸を張るスーさんである。艤装背負って立ってるだけで全武装が近寄ってくる敵を自動で正確に攻撃してくれるようになる不思議な装置であるからして、開発後は一度装備したらもう手放せなくなるほどには凄いのだ。これを大和さんに装備させると、砲塔がそれぞれ独立してあっちこっち向いて射程内に入った敵をバンバン撃って全弾命中させて終了である。実際、えげつない。
「『ミンチメーカーさん』と『えげつないさん』とどっちが良い?」
「女の子につけるあだ名じゃないですよね?」
「…『肉団子さ――謝るからマジ謝るからほんとスンマセンだからその俺の頭が入りそうなくらい大きな砲口を向けるのやめて心臓に悪いから」
「敵と認識した物を自動で攻撃するので、装備中は下手にからかわない方が良いですよ。艤装を停止するのがちょっと遅かったら骨も残りませんでしたね」
真顔で言うの止めてくんない? ちょっと漏れ(自粛)
「あっちの世界では仲の悪い艦長が乗ってた二隻の船が同士討ちしたとかで、試験装備から秘匿装備…つまり、謎の装置に名称変更し封印されたという実しやかな噂があってじゃのう」
ぼっち専用装備ですか? いいえどちらかと言うと鉄砲玉専用装備です本当にありがとうございました。
で、一応全部片付いてから釣りを再開したんだが、釣れたのが大和が吹き飛ばしたであろうイ級の下顎部分だけとはこれいかに。
「もぉぉぉぉ腹減ったんだよもおおおおおおお!」
「叫んでも余計なカロリー使うだけな゛の゛です!」
「電がプラズマってるんだがおい、おいどうしたの彼女」
「等身がちっちゃいからエネルギー節約になるんじゃないかのー。後、誰でも腹が減れば気持ちが荒むからそのせいであろ」
返答を返すスーさんもやっぱり元気が無くなってる訳で。巨体が故に戦闘ではほぼ役立たずであるが、短い期間で世界一周出来る程度には速力もあるので、さっきまで大和が無双していた戦闘区域から電を護衛に離れる位はできたのだ。
当然、エネルギー消費量としては、ただ逃げていたスーさん<護衛で多少の戦闘もあった電<大和無双、となる訳だが。
「………」
大和? 向こうで灰になってるよ。只でさえエンゲル係数が天元突破する食事量の持ち主なのに、さっきの戦闘で『やまだ!』してたからなー。肉体的、装備品的には損傷ゼロだけど、あれは精神的に空腹で追い詰められて限界を超えた末に意識があっちに行ってますわ。
「いやマジどーすっかなぁ」
弱り果てるものの糸の先の浮きはピクリとも動かない。こうなったら一端本土に取って返して適当な鎮守府でも襲って食料強奪しようか、と空腹でヒャッハー思考になって作戦まで考え始めた俺の耳に、潮騒に紛れながら微かにこの場にいる3人以外の声が聞こえてきた。
「すいませーん! ウィルキア移動鎮守府の方、どなたかいらっしゃいませんかー!」
ひょい、と甲板から海面まで伸びている梯子を昇って誰か、というか艦娘が上がってきた。最初に見えた丸いつけ耳のようなパーツが電探だろうか、此方を見つけた時の屈託のない笑顔に白い歯が眩しい。眩し過ぎる。
「あ、良かった! 誰かいました! 貴方が天城司令官ですか?」
「お、おう」
「輸送船団の護衛任務で参りました、雪風です! 物資受領印をお願いしまーす!」
そう言ってニコニコしながら連装砲なんだか鞄なんだかよく分からん腰に下げたモノの中から一枚の紙を取り出すと、ペンと一緒にずいっと差し出してきたので思わず受け取る。
「あれ、物資多くね?」
「はい! 昨今の多大なる戦果に応じて、補給物資と食料の増量で答えたとの事ですよ。実際、この鎮守府が通った後にはペンペン草ならぬ海藻の一本も残らないって結構有名な話です。特にここの戦艦さんが阿修羅か鬼神かと大暴れしてるってもっぱらの噂ですよ! きっと凄い錬度の高い艦隊なんでしょうねぇ~、今はいらっしゃらないみたいですけど見てみたかったなぁ~」
キラキラした目で空っぽのドックを見下ろす雪風を余所に、ふーん、と言いながら大和がさっきまでいた場所を見ると、何時の間にかぷらずまを小脇に抱えて艤装を身につけたままコソコソと甲板にある施設の向こう側に隠れようとしていた。俺の視線を感じて、ちょっと一瞬肩を振わせていたが、そのまま無言で壁の向こうに隠れた大和、艤装がはみ出てんぞ。
それにしても本当に好きなだけ暴れやがったなこ奴め! ハハハ! だが我が鎮守府の暗部(ぷらずま的な意味で)を隠したのは英断なので怒らず褒めておこう。俺は褒めて伸ばすタイプなのだ。だが褒める機会が少な過ぎんよォ!
しかし、その噂が何処まで広がっているのか知らんが、補給が充実したってことは大本営まで伝わったのだろうか。ほぼバトルジャンキーと化した大和単艦の戦果だと言って信用してもらえる気がしない。
「――はい、どうもありがとうございます!」
サインが終わった書類を返すと、笑顔で敬礼してくる雪風に答礼する。その背後で汽笛の音がしたかと思うと、結構大きめの輸送艦が次々ドックに入ってきた。4,5隻はあるが、よくこの場所が分かったもんだなぁ。疑問に感じて尋ねてみると。
「はい! どうしても連絡がつかなくって今まで何度も補給任務失敗してたらしいんですが、私も移動鎮守府だけあってちょっと困っちゃいました! でも、残骸を追いかけてたら大きな音がしたので直ぐ合流できたのでラッキーでした」
「幸運艦ぱねぇな!」
この広い広い海を、残骸と言っても大きいのは沈むだろうし小さなゴミとかを追いかけながら、しかも無傷で到達したのか。幸運の女神のキスってレベルじゃねぇぞ! 多分錬度もクッソ高い。
あとそっちで思いっきり「しまった!」みたいな顔してるスーさんは後で吊るす。連絡方法忘れてたなあの顔は…!
「そうかそうか。それならお礼にちょっと装備を整えて行くと良い。帰りも空荷とはいえ危ない場所もあるだろうしな。あとスーさん絶許」
「そうじゃの、チャフと無限装填装置位なら直ぐに詰めるじゃろ。あと勘忍してつかーさい」
「向こうの角から壁に爪を立ててこっちをレイプ目で見てる二人に聞いてみろや」
雪風を設計室に背中を押して連れて行く俺の背後で、スーさんの〆られる寸前の鶏を思い出す悲鳴がか細く響いた。
その後、今まで誰も成功しなかった輸送任務の成功率100%という事でウィルキア移動鎮守府へと移籍になり、連絡役と補給を担当する事になった雪風であった。
小耳に挟んだ噂話だが、とある鎮守府防衛戦で、艦娘達の防衛線が崩れようとする正にその瞬間、たまたま其処に居たとある面倒な任務を押しつけられて左遷された扱いだった、たった一人の駆逐艦が、敵深海棲艦隊のど真ん中を白銀の輝き(チャフ)に包まれながら(チャフを連射すると敵の照準が外れるのは仕様です)駆け抜け、回転しながら明らかに積める数以上(無限装填装置)の魚雷を敵集団の真中で何度も360度投射し(どこの士魂号複座型かと)、一撃も当たらず一隻で100隻に及ぶ敵船団を大混乱に陥れ、しかも無傷で戻ってくると言う軍神を通りこして非現実的な光景を顕現させたらしい。見ていた敵味方全員が『アイエエエ!?』『ニンジャ!? ニンジャナンデ!?』『コワイ!』『ゴボボーッ!』とショック症状を見せたとか何とか。
「そこんとこどうよ?」
「雪風、また生還しました! 司令のおかげですねっ」
なにこの笑顔まじてんすですわぁ。超和む。あとこんなてんすに面倒だからと仕事押し付けて放り出したのに、逆に助けられてしょんぼりしながらお礼の通信入れた提督が居たらしい。ざまぁである。でもこのてんすは多分敵対したり粗雑に扱った相手がどんどこ不幸に落ちて行くタイプですわ。実際コワイ!
「でもてんすだから良いのだ。ざまぁである!」
「良く分かりませんけど、皆さんの助けになれてよかったです。あそこに私が居た事に、幸運の女神のキスを感じちゃいます!」
そんなこんなで鎮守府にてんすが一人増えました。