憑依者過去録   作:夜明けの月

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どうも夜明けの月です。
不定期ですが頑張ります。
それでは、本編をお楽しみください。


一章 色褪せた生活
始まりー色褪せた世界ー


カーテンから朝日が差し込む。鳥のさえずりが心地よく響く。頭をふらふらさせながら体を起こす。

 

「…………面倒クセェ」

 

俺、神野 司(かみの つかさ)は頭をガシガシと掻いて一階に下りる。そこには誰もおらず書き置きがあった。

 

『司君へ

朝ごはんは机の上にあるから。それと司君、もう高校生だね。頑張れ!

遥華より』

 

俺が暮らす孤児院の経営者であり、俺の育ての親の楯宮 遥華(たてみや はるか)が書いたメモだった。

 

高校生……か………。それに、

 

「頑張る必要なんてねえよ……」

 

俺はそう呟き一人で朝食を済ませ、着替えて準備を済ませて玄関で靴を履く。

 

「…………行ってきます」

 

俺はそう呟き外に出る。少しは景色が変わるのだろうか、などと思っていたがそんなことはなかった。以前と変わらず色褪せていた。俺はこの光景を十年近く見ている。

 

世界が色褪せ始めたのはあの時だった。幼馴染みを守るために自分の人生を捨てると決めたあの時。

 

「…………俺に」

 

幸せなんていらない、そう思いながら足を進めた。

 

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

授業終了のチャイムが鳴り、一限目が終わる。数学だったが初歩的なことだった。

 

「お前さっきの授業わかった?」

 

隣のやつが馴れ馴れしく話しかけてくる。何故こうも見知らぬ奴に話しかけられるのかわからない。どういう神経してんだよ。

 

「あんなの、初歩の初歩だろう?」

 

「嘘だろ!?俺少しわからなかったんだけど!?」

 

「教科書見直せ。それじゃあな」

 

とりあえず俺はこの場を離れることにした。理由は隣のやつと話すのが面倒だからだ。

 

「おう、ありがとな!あと俺、篠宮英太って言うんだ。よろしく!」

 

「自己紹介なんていらない。どうせもう話すことなんてないんだから」

 

そう言い残し俺はその場を去る。

 

これが俺の運命を変えた出会いだった。

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

小学校三年生の時、俺たちの両親や知り合いが誰かによって殺されたことがクラスの全員に知れ渡った。それで、何故かは知らないが幼馴染みの東雲 三月(しののめ みつき)に対するイジメが始まった。俺ではなく三月にだ。それは酷いものだった。靴を隠す、机に落書きをする、悪口を言われる、挙げ句の果てには暴力だ。俺はそんな姿を見てはいられなかった。ある時、俺は三月をかばいイジメグループのリーダーに歯向かった。三月をイジメから救い出すため。そして、その対象を俺に移すために。

 

案の定、俺へのイジメが始まった。それは三月より酷いものだった。イジメなんてものじゃない。多人数での俺への暴力。そんなことが毎日のように続いた。俺は、反発することなくそれを受け入れた。それで三月が救われるなら、だったら自分の人生なんてどうでもいいと、そう思った。そう思ってしまった。

 

「その時からか………」

 

俺は屋上に寝そべりそんなことを思い出していた。次の授業はサボるつもりだ。受けたところで意味なんてない。

 

「どうすることもできねえよこんなの…………」

 

俺は一人でそう呟いた。色褪せた世界が俺を嘲笑ったような気がした。壊したかったこの世界が俺を嘲笑っているそんな気が。

 

もし、もし俺にこの腐って色褪せた世界を壊す力があったなら。俺はどうするんだろうな。

 

そんなばかなことを考えながら俺は目を閉じた。

 

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

 

気がつくと放課後だった。空は夕焼け色に染まっていた。少し肌寒い。

 

「……………帰るか」

 

俺は寝ぼけた頭をどうにか起こし教室に歩いて行った。

 

教室に着くと五人の男子の喋り声が聞こえてきた。俺には関係ないが。

 

ガラッと教室のドアを開けると同時に喋り声がやむ。俺が帰る準備をしていると五人の男子の中心でいる男子生徒がこっちを見て言った。

 

「高校初日からサボりなんていい度胸ですねぇ〜。さぞ頭がいいんでしょうね〜」

 

途端笑い声が教室を包む。鬱陶しくて相手にするのも面倒くさい。

 

「無視かよ。なんとか言えよ、なぁ!!」

 

バンッ!と机を叩き脅そうとしたのか知らないが、それで脅しになると思うなよ。俺が教室を出ようとすると目の前を一人の男子生徒が道を塞ぐ。

 

「なんか喋れよ。次はないぞ?」

 

………またか。結局俺はこうなる運命なんだな。

 

「五月蝿えよ。少しは黙れないのか」

 

「………いい度胸じゃねえか、このッ!!」

 

その男子生徒は堪えきれなかったのか、俺の腹を殴る。俺は後ろに飛ばされ尻餅をつく。

 

「ハハハッ、いい気味だなぁ!お前らもやってやれよ!」

 

リーダー思われる男子生徒の言葉で俺は胸ぐらを目の前にいる奴に掴みあげられ頬を殴られる。俺は抵抗もせずになすがままにされ床に倒れる。それ見た他の奴らは間髪入れず俺の腹や背中を蹴る。で、また掴みあげられて殴られる。

 

「そろそろ行こうぜ〜。明日からもよろしくなぁ〜、優等生君。ハハハハハ!!」

 

廊下にその笑い声が反響し、聞こえてくる。

 

殴られ、蹴られたところが痛むが俺は立ち上がり埃を払う。

 

「帰ろ…………」

 

痛みを堪え、ふらふらとした足取りで俺は帰路につく。こんな日常がまた始まるのかと思うと憂鬱で、面倒くさくて仕方なかった。

 

これが続いても遥華さんにだけは、いや今の家族にだけは迷惑かけないようにしないとな。

 

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

 

家に帰ると誰もいなかった。遥華さんは夜勤、もう一人いるが部活だろう。

 

俺は早足で自分の部屋がある二階へと駆け上がり自分の部屋に入るとベッドに飛び込む。

 

また俺に対するイジメが明日から始まる。そう思うと生きるのも辛くなってくる。

 

「…………………こんな世界」

 

こんな世界壊れてしまえばいいのに。そんなことを思って俺は眠りに落ちた。





結構暗くなってしまった……。
と言ってもしばらくはこんな感じです。たまに視点が変わります。基本司視点です。
それでは次回もお楽しみに。
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