それでは本編をお楽しみください。
風呂に入って班の全員に説明して説教を食らって終わった時にはすっかり空は黒く染まっていた。
そして俺たちがいるのは野外である。
「さあこの時がようやくやってきたぜー!!」
「テンション高ぇな」
「そういうお前はテンション低いじゃねえか!もっとテンション上げてこーぜ!!」
俺はテンションMAXの狩生にどうでもいいように言う。すると狩生はバンバンと俺の背中を叩いてくる。いや痛ぇよ。
「さて、みんな揃ってるな。今から肝試しを始める。女子からくじを引いてもらう。さっさと引けよ面倒くさいから」
この学校の肝試しは女子、男子という順でくじを引き、同じ番号がペアになるというなんとも面倒なことをする。
「ハイ次男子。さっさと引きに来いよー」
とそんなことを思っているとジョン女子が引き終わったらしい。確か出席番号順だからそんなに遅くなかったはず。
てか俺は一人でいいから。肝試しとか心底どうでもいい……。
「おいこら神野。さっさと取りに来い」
「あ、はい」
ですよねー。分かってた。
そして俺はくじを引く。番号は五番。辺りを見回していると亜麻色のショートカットの髪を揺らしながら女子が目の前に来る。
「お〜、神野君五番なんだ〜。奇遇だね〜、私も五番〜♪」
「い、井崎か……」
よかった、ペアが知っている人で。
こうして肝試しは幕を開けた。
□■□■□■□(ここから三月目線)
私の番号は十一番。さっきから同じ番号の人を探しているのに全く見つからない。
すると肩をポンと叩かれる。その拍子で後ろを向くと、そこには同じ班の茶髪の人がいた。
「東雲さん何番?」
「え、十一番だけど……」
「おお奇遇だな〜、俺も十一だ」
「へ、へぇ〜よろしく茶髪の人」
私がそういうとやっぱり文句があったようで、
「あのさ、さすがに茶髪の人はやめてくれない?俺は篠宮英太、って言ったよな?」
「さあ?なら篠宮「英太でいい」………じゃあ英太、私も三月でいいよ」
「東雲さんでいい。女子を名前で呼ぶのはあまり柄じゃない」
「あっそ」
自分は名前でいいのに女子の名前呼ぶのが柄じゃないってどんな人なのよ……あ、目の前にいたわ。
「さてと、それはそうと東雲さんとペアになれてよかったよ」
「えっ!?」
ちょ、いきなり何を……!?
「うん?神野のことについて聞きたかったんだよ」
なんだ司のことか……。
私は肩を落とす。まあそんなことはないよねアハハ……。
「で、司の何を聞きたいの?」
「具体的には、どうしてあんなに人を避けるかだな」
英太の目が穏やかだったのに私の質問を答える時に鋭くなる。まるで、私の心を覗かれているみたいな感覚に襲われる。
「じゃあ肝試しの時歩きながらでいい?こんな人いるところじゃできないのもあるから」
「分かった。って言ってたら俺らの番だぜ」
すっかり話し込んでいて私達の番はすぐに来た。私達はスタート地点につき、すぐにスタートする。少しして森林の暗がりが妙な怪しさを醸し出している。まあ別に怖くないけどね。
「さて、ならまずはあいつが人を避け始めた時のことから聞かせてくれ」
「人を避け始めた時……確か小三の時からかな?正確には分かんない」
「はぁ?なんで正確に分かんないんだよ」
「私と司は四六時中一緒にいたわけじゃないんだ。しかも、小三から小六まではろくに話すらしてないんだよ。クラスも一度も一緒になったことなくて、中学生になって同じクラスになって話しかけたら、なんかその……前と違くて態度が冷たくなってた……」
私は司に何があったのかは知らないが何からあるなら言って欲しいって言った時なんて酷いこと言われたっけ。なんだったか忘れたけど、あれで泣きじゃくったのだけは覚えている。
「なるほど……つまりそこから……」
「次は私が聞いてもいい?」
「あ?どうぞ」
「英太は、司の何を知ってるの?」
私は単刀直入に聞いた。まどろっこしいのは嫌いなんだ。
「聞きたいか?」
瑛太が真剣な表情で言ってくる。私は少し聞くことをためらう。だけど、
「聞かせて。司が何を抱えてるのかは知らないけど、司には私が、私には司が必要だから」
「ふーん、ならいいだろう、教えてやる。その代わり覚悟はしとけよ。少しきつい話になるかもしれないから。それとこれは俺の憶測だから」
そうして英太は話し始めた。司が抱えているかもしれないことを。
□■□■□■□
英太の話によると司は入学当時からいじめにあっている可能性が高いということだった。そして私が話したことから推測するに、小三の頃からいじめを受けていた可能性が高いとも聞いた。その原因になっているのがわからないとも聞いた。
「つまり……司はずっと隠してたってこと……?」
「大方そんなところだろう。人と距離をとるってそうそうないぞ?しかも誰にでも冷たくとか、何か知られたくないことがあるからしかないだろ」
それはそうだと思う。なら司はずっと一人で……。そう思っただけで罪悪感と後悔で一杯になる。目眩がする。酷く気持ち悪い。
「私は……それに気づかずのうのうと暮らしてたの……?」
「さっきも言ったがこれは俺の憶測だ。まだ本当のことと決まったわけではない。何より証拠がない。これじゃ、神野に言ってもあしらわれるだけだし」
「なら………」
「ということで少しあいつの体弄ってみない?」
「ま、弄る!?」
「傷とか痣とかあるだろうし」
イジメを受けているならそれはありえるかもしれないが、万一違うということもあるかもしれない。それに私は英太に話していないことがある。もう一つの可能性、というやつを。
「なあ東雲さん」
「なに?」
「隠し事があるなら早く言ったほうがいいよ。手遅れになる前に」
途端心臓の鼓動が跳ね上がる。なんで、どうして、顔には出していないはずなのに、訳がわからない、そういうことで頭が埋め尽くされる。
「俺はな、一度イジメられてるんだわ」
突然のカミングアウトに私は声が出ない。
「俺には少し特別な事情があってな。まあそれをからかわれてさ。それがどんどんエスカレートしていった訳よ」
なら、なんで英太はそのことをなんとも思っていないのだろう?
「ま、一回ブチギレて笑顔でボッコボコにしてやったけどね。十人ぐらい一斉に。いや〜あれは気持ちよかった!」
…………え?笑顔で十人を一斉にボッコボコ……………?
「す、凄いねえ………」
す、凄いじゃない。怖い、超怖い!なんなの!?普通そんなのできないよ!?貴方何者!?どこから暗殺者かなんかですか!?
「凄くないよ。中学の時なんて一人で不良グループぶっ潰したぐらいで」
「………ちなみにそのグループの人数は?」
「一日で潰したからあんまり覚えてないけど、確か百人ぐらい?」
もうこの人、人間じゃないでしょ………。
「あれも楽しかったな〜。まあでも傷一つで済んだし、まあまあ骨のあるやつだったけど」
えーと、この人は百人を一気に相手にしたにもかかわらず、傷一つだけおってその不良グループを壊滅させたの?……………もう人間超越しちゃってんじゃない?
「まあそんなことがあってさ、俺はそれで友人を数人無くした。俺を恐れるものもいたし、俺を気持ち悪がるやつもいた。早めに相談してりゃ、そういうことにはならずに済んだかもしれないのにな。で、その憂さ晴らしに不良グループを壊滅させた訳」
憂さ晴らしのレベルじゃないよそれ………。
「ともかくだ、隠してることがあるなら言え。手遅れになる前にな」
「うん、分かった。てかさ、これ私たち何してるんだっけ?」
「え?肝試し?」
その割には誰も出てきてないような気がするんだけど。まあ空気を読んでくれているってことでいいよね!
そう思いつつ、私達はスタート地点に戻ることにした。
□■□■□■□
その頃のお化け役。
(((((出るタイミングが図れなかった………!!!)))))
そう思いながら膝と手をついているのを三月達は気づくこともなかったのは別の話。
□■□■□■□
その頃の司。
「うぇーん。怖かったよぉ〜!!!」
「な、泣くなって……おいこらお前ら。俺が泣かせたんじゃない。お化け役が怖がらせて泣いたんだよ。だからそんな目をこっちに向けんなよ」
「うわぁーーん!!」
「頼むから泣き止んでくれー!!!」
泣きじゃくりしがみついてる井崎優をあやしているのだった。
□■□■□■□
「ぐー、がーー」
宿の一部屋から響くイビキ。そこにいたのは、肝試しに参加していなかった狩生春樹だった。そして狩生が帰ってきた班のメンバーと先生に怒られたのはまた別の話。
どうでしたか?肝試しなんてなかったんだ……。
この2人の組み合わせは前々からやってみたかったんですよ。
ということで次回は普通の学園に戻ります。林間学校三日目?帰宅中のバス内のことになりますけど、ものすごくつまらないですよ?という聞くのが難しすぎですよ?
ということで次回から林間学校から普通?の学園生活に戻りたいと思います。
それではここまで読んでくださりありがとうございました。
次回もお楽しみに!