執務官と元復讐者   作:jyou

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どうも、じょうです。

更新遅れてすいません。
言い訳になりますが、リアルが忙しかったです。
あと、地味に今回長いです。

それでは本編をどうぞ。


04. ホテル・アグスタにて 後編

 

 

 

「いらっしゃいませ。」

 

スーツ姿の男はオークション会場の入口で客のチェックをしていた。

止めどなく続く長蛇の列から渡されるパスを受け取り、さっさと次のパスを受け取る。一連の流れ作業の中でも礼儀は必要なようで、しっかりと挨拶をしている。

 

「いらっしゃいま……ふぇ!?」

 

と、そんなところで男がおかしな声を上げる。

まあ、それも仕方がないことだろう。

何故なら、三人の見目麗しい女性が。

 

「どうも、機動六課です。」

 

ドヤ顔で局員証をパス代わりにしているのだから。

 

三人とも容姿は優れているしこの場にあったドレスコードをしているのだからもう少し、お淑やかにできないものだろうか。流石にドヤ顔はちょっと……。

 

ちなみに、俺はシャマルさんに無理矢理(・・・・)タキシードを着せられ三人の後ろに並ばされた。

 

着替えるまでに随分と時間がかかったのだが、まあ、どうでもいいだろう。女の子に秘密があるように男の子にだって言いたくないことくらいはある。

 

 

 

 

 

 

結局、男は我に返って俺達を通してくれた。

まあ、通さなかったら通さなかったで管理局にしょっ引かれる未来が待っている為、彼に選択肢など無かったのだろう。

というか、機動六課が会場警備するって下っ端にまで情報伝えといてくれませんかねぇ! 受付の彼が心底惨めに思える。

 

「さて、ほんならわたしとなのはちゃんは会場内を見に行こか。フェイトちゃんと空くんは主催者に話を伺いに行くってことで。」

 

「うん。」

 

「OK。」

 

「はいよ。」

 

既にシャマルとの格闘で疲弊している為、気怠げに答える。

 

「……と、その前に!」

 

「は? おい!?」

 

主催者の元へと移動を開始しようとしたところでなのはに背を押されてフェイトの目の前に立たされる。

いったい何をしようと言うのか。いや、実際には分かっているが、恥ずかしくて死にそうになるから言いたくない。

 

「ほら! 何か言うことないの?」

 

「何か。」

 

「そうじゃないよ!」

 

「じゃあ、何か? ナニの話をしろと言うのか? こんな公衆の面前で世間一般で言う健全な管理局員を捕まえてナニの話をさせようと言うのか?」

 

「いったいなんの話をしているのか分からないけど、今は何よりも大切なことがあるでしょ!」

 

「セクハラしながら流れるように話逸らすんやめえや。」

 

チッ。はやてまで加勢したか。

なのはに加えてはやてまで加勢し、俺はフェイトの前へとグイグイ押し出されていく。

 

「……。」

 

「……。」

 

やめようよ……。いじめ良くないよ……。フェイトも顔赤くしてるしさ……。

……赤くなってんのは俺のせいか。

 

「ほら。もう、ちゃんと言わないと分からないよ?」

 

フェイトに聞かれないようになのはが俺に耳打ちする。

そんなことは分かっている。言わないんじゃない言いたくないんだ。

 

「うぅ……。」

 

耳打ちする為に俺の耳元に接近したなのはを見て、フェイトは嫉妬するわけでもなく、ただ不安そうに眉尻を下げている。

先日なのはが言っていたことだが、フェイトは自分に魅力がないと思い込んでおり、絶賛自信を無くしてしまっているらしい。

 

正直、それだけの魅力的な容姿をしていて自信が無いなど世の中の女性に喧嘩を売っているのだろうかと思う。

まあ、俺が言えた筋ではないか。

なのはから言わせれば、俺は世の中の恋する女性を敵に回しているらしい。知らん。

 

「……だぁ! もう、仕事するぞ! 新人達に仕事させといて俺らが仕事しないんじゃ上司として示しがつかんだろ!」

 

「なんや逃げるんか。ほんまにヘタレやなぁ。」

 

「ヘタレだね。」

 

「「やーい、やーい、ヘタレー!」」

 

「いじめとかほんと良くないと思うのぉ!」

 

屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ……。

 

仮にもお前ら俺の上司だろ。そんなんでいいのか、機動六課?

誰とは言わないが、そんなことだから悪魔とか言われるんじゃないですかね。誰とは言わないが。

 

「はぁ……。もう知らん。お前ら一生やってろ。」

 

「あ、空。待ってよ。」

 

未だヘタレと指さして連呼しているなのはとはやてを尻目に俺はその場を離れる。

二人を見て苦笑していたフェイトも俺の後を続いて歩き始めた。

 

 

 

「……ここらへんでいいか。」

 

「? 空?」

 

暫く歩き続けてから、適当なところで立ち止まる。

周囲に人がいないことを確認する為にキョロキョロしている俺をフェイトが小首を傾げて不思議そうに見ている。

 

「いや、なんでもない。」

 

「? そう。じゃあ、行こう? 早く主催者さんから話を聞かないと。」

 

「おう。まあ、そうなんだが。その……。なんと言うか……。」

 

これから口にしようと思う言葉に俺は思わず言い淀む。

フェイトは先程よりも不思議そうに頭に『?』を浮かべて首を傾げている。

 

「その……さ。気取ったセリフは言えないけどさ。……その服、似合ってる。すごく綺麗だ。」

 

「ふえ?」

 

フェイトは意表を突かれて、一瞬目を見開いて驚いた後。

 

「えへへ……。」

 

ふにゃりと頬を緩めた。

見ると僅かに顔が赤く染まっているのが分かる。

めちゃくちゃかわいい。

 

「ありがとう。」

 

「……おう。」

 

「えへへ……。」

 

「……。」

 

「えへへ……。」

 

「ああ、もう! 俺は行くぞ! 主催者に会うまでにその顔なんとかしとけよ!」

 

いつまでも頬を綻ばせて本当に嬉しそうに喜んでいるフェイトを見て俺は耐え切れなくなり、早足でその場を後にした。

少しばかり俺の顔が熱くなっていることに気づかれていなければいいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ましたか? なのはちゃん。」

 

「見ましたよ? はやてちゃん。」

 

廊下の角から顔だけをひょこっと出した二人は早足で過ぎ去って行く二人を見ながら顔を見合わせ。

 

「「うふふふふふふふふふふふふふ。」」

 

気品の欠片も見られない程意地汚い笑顔で笑いあっていた。

 

この後暫くの間このネタで弄られ続けたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

それから暫く時間が経って、フェイトとホテルの廊下を歩いている。

主催者との話を終え、はやて達のところへ向かっている最中だ。

 

「とりあえず、はやて達と合流するか。」

 

「うん。オークション開始までにもうそこまで時間がないから、少し急ごうか。」

 

と、ホテル内をカツカツと早足で歩いていると通信が入った。

 

『敵、ガジェットドローン複数接近中! フォワード四人は防衛、シグナム、ヴィータちゃん、ザフィーラは迎撃に向かって!』

 

案の定、ガジェットの襲撃。予想はしていたが、これはめんどくさい。

とは言っても守護騎士が対応するだろうが、その分こちらの防衛が薄くなるのは否めない。

 

「フェイト、お前はもう一回主催者のところ行ってオークションの中止できないか確認して来てくれ。」

 

「了解。空は?」

 

「シグナム達がいなくなって薄くなった地下に行って来る。シャマルさんに伝えといてくれ。」

 

このオークションは密輸の隠れ蓑にもなっている。

オークションに出品されているものの中にレリックが無かったとしても、密輸品の中にはあるかもしれない。

俺の意図に気付いたのかフェイトは頷く。

 

「分かった。音声通信はいつでもできるように通信機耳に当てといて。」

 

「あいよ。こういう時に魔法がつかえりゃいいのにって思うがな。」

 

「……。」

 

「……すまん。」

 

うん。あれだ、こんな重苦しい空気になったのは、少し前に昔のことを思い出したせいだ。

これも全部スカリエッティのせいだ! そうに違いない!

スカリエッティ許すまじ!

 

「……じゃあ。行って来るな。」

 

「……うん。……気を付けてね。」

 

フェイトの不安そうな、悲しそうな顔に見送られて俺は走り出した。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、ガリュー。そのままドクターのところへ届けてあげて。」

 

ホテル・アグスタから離れた山中の一角で、少女ーールーテシア・アルピーノーーは自分の召喚虫であるガリューへと指示を出す。

 

つい先程、彼女がドクターと呼ぶ人物、ジェイル・スカリエッティより協力を求められ、それを了承した彼女は自身の使役する召喚虫を以って起動六課を撹乱、スカリエッティの望む物を回収することに成功した。

 

「中身はなんだったのだ?」

 

「分かんない。」

 

フード付きの外套を渡されながら、長身でガッチリとしたガタイの男、ゼスト・グランガイツの問いかけに答える。

スカリエッティが欲しがる物に対して多少の興味はあるが、彼女が探し求めるレリックではない為、深く追求することはしない。

 

「戦況ももう終わりを迎える。前線の騎士達が力を尽くしたのだろう。」

 

そう言ってゼストはホテルの方へと目を向ける。

彼もまたルーテシアと同様にある目的の為に行動しているのだが、今回はその目的に関わりがなかった為戦闘には参加しなかった。

もし、彼が加わっていたのなら、戦況はどちらに傾いていたのか分からないだろう。

 

「……ッ!?」

 

「どうした?」

 

「ガリューが……。」

 

突然目を見開いて自身の右手にあるアスクレピオスを見るルーテシアにゼストは問いかける。

その問いかけにルーテシアは少しの焦りを孕んだ声でゆっくりと口を開いた。

 

「ガリューが……襲われてる?」

 

 

 

 

 

 

ホテルの中を走り抜け、ようやく地下へとたどり着いた。

 

「広過ぎだろ。」

 

そう俺が悪態をついたのも仕方がないことだろう。

無駄に広過ぎるせいで方向音痴でもなんでもないのに少し迷いかけてしまった。

 

ここに来るまでの道中、通信機から流れてきた情報によればもうそろそろ状況は終わりを迎える。

しかし、こういった終わりが近い状況こそ油断が生まれ危険性が増しているのだ。

召喚士もいるし、ガジェットも有人制御に切り替わってるし、用心するに越したことはない。

 

「さてと……。……ん?」

 

駐車場を見渡し、ガジェットや何か他の侵入者がいないか注意を払う。

すると、何かが出入口から外へと飛び出した気配がした。

何かと言うのはその気配が素早く移動した為、一瞬しか感じ取ることができなかったからだ。

 

「……追ってみるか。」

 

僅かに感じた気配を追って、俺は駐車場を後にした。

 

 

 

駐車場を取り出した直後、俺は走り出した。

何かが異常な速度で走っていることに気が付いたからだ。

感覚を研ぎ澄ませてみると、その気配はやはり先程一瞬感じた気配と同じものだった。

 

「……見えねえ。」

 

気配は感じられるが目には見えない。

ひょっとしたら何か魔法で姿を隠蔽しているのかもしれないが、良く目を凝らして見れば、草木は揺れ地面を蹴る音がする。

俺はそれらの音と気配を追いかける。

 

「起動六課だ! 誰かいるなら大人しく出てこい!」

 

後方、その気配の真後ろを捉えながら忠告をする。

しかし、俺の注意勧告も虚しく、それでもスピードを緩めずに、むしろ俺を振り切ろうと更にスピードを上げる。

 

「ッ! この野郎! 忠告はしたぞ!」

 

こうなったらこっちもヤケだ。

逃げるからには何かしら後ろめたいことがある筈。

それがレリック絡みだろうとそうでなかろうと話を聞くに越したことはない。

 

俺は力強く一歩踏み込み、走る。

姿は見えなくても、ある程度どのくらいの距離にいるのかはもう分かった。

後はそこに向かって、思いっきり全力で、最短距離を走るだけだ。

 

「おぉ……!」

 

今持てる力全てを走ることにのみ集中させる。

その何かの距離を詰め、手を伸ばし、背を掴む。

そして、引っ張り地面に転ばせようとしたところで。

 

「はぁ!?」

 

掴んでいる筈の手から突然その何かが離れる。

引っ張り倒そうとしてその場で踏ん張っていた俺は後方へと少しよろめくが、すぐに体勢を整え追いかける。

しかし。

 

「……逃げられたか。」

 

その一瞬間に気配はみるみる遠くなっていき、現状では追いつくことはできない程離れ、やがて俺の感知範囲から消失した。

 

「……ちくしょう。」

 

俺は先程まで何かを掴んでいた右手を見ながらため息混じりにそう呟いた。

何処か甲殻類にも似たような硬さだったが、姿形は見えなかった為にその正体までは分からない。

流石に俺一人ではこれ以上の追跡は不可能だ。

一先ずはシャマルさんに通信を入れてフェイト達の元へと戻ることにしよう。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、エリオ、キャロ、ティアナ何かしたのか? さっきなのはと一緒にどっか行ったけど。」

 

謎の生物との鬼ごっこを終え、シャマル達にことの顛末を報告した俺は、ガジェットによってめちゃくちゃにされたホテル周辺の現場検証を行っていた。

そこで、一緒にいたエリオとキャロに気になっていることを聞いてみる。

 

「えっと、その……。」

 

「ティアさん、任務中にミスショットして。それでスバルさんも危うく撃っちゃうところだったんです。」

 

「それで、ヴィータ副隊長に怒られて……。」

 

二人が言い淀みながら、何があったのかを説明する。

 

「なるほど……。まあ、前々からあいつはどっか焦っているような感じしたからなぁ。」

 

「「えっ?」」

 

「いや、なんでもない。」

 

俺が呟くように出した言葉に二人が頭に疑問符を浮かべて首を傾げる。

以前からティアナの様子には気付いていた。

古い付き合いのスバルが少しは緩和していたのだろうが、溜まりに溜まったその焦燥を抑えきれなくなりついに爆発してしまったのだろう。

 

ティアナのあの姿は見たことがある。

もちろんティアナとはこの六課で会った時が初対面だ。

だが、あの焦燥する姿は、必死に自身の力を振るうあの姿は昔の自分と重なるところがあった。

 

「まあ、なのはがいるなら大丈夫か。」

 

そう誰に聞かせるわけでもなく、一人でに呟いた。

 

その後、オークションに商品の解説として来ていた我らが友人ユーノ・スクライアと話をしていたフェイトが戻り、四人で現場検証を続行した。

 

 

 

 

 

仕事に集中しながらも俺の心の片隅ではまたジワリジワリ、と黒い感情が湧き上がってくるのを俺は自覚していた。

 

 




読了ありがとうございます。

四話です。

改めて更新遅れてすいません。
今週は少し学業が忙しかった為、あまり執筆時間が取れなかったのが原因です。申し訳ありません。

今回、実はオリ主を戦わせようかとも思ったんですが、やめておきました。
だって見えないし、見えないものと戦えるとかそれただのチートになっちゃうので。

まあ、ほとんど戦わないって書いてあるんでそれでいいかなーって思いました。許してください(笑)

よろしければ、感想など心待ちしております。

それでは次回もよろしくお願いします。
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