感謝感激の限りでございます。これからも精進します。
それでは本編をどうぞ。
結局のところティアナは自分の行動を変えなかったようだ。
ようだと言うのはあの後いろいろと忙しく、訓練以外でティアナと顔を合わせることが少なく、顔を合わせても話すことはほとんどなかったからだ。
ちなみに、今日はスターズ、ライトニングの両分隊の模擬戦が行われている。
スターズはなのは、ライトニングはフェイトがそれぞれ相手だ。
順番はスターズが先であり、俺やフェイト、ヴィータにライトニングの二人はそれを遠巻きに見ている。
見ているのだが……。
「チッ……。アホどもが……。」
ティアナとスバルを見つめる俺は怒りを抑えきれず、拳を握りしめながら呟いた。
なのはの方へ目を向けるとなよはは俯いている為表情ははっきりとは分からない。
なにせ、あの二人は自分が教えたことなど全く無視をして戦っているのだから。
二人の動きは悪く言えば初めて会った時よりも酷いかもしれない。
自分の負担とダメージを顧みず一直線に突っ込むスバルに意表を突いて自分が接近戦を仕掛ける作戦を企てたティアナ。
普段の訓練ではそんなこと教えていない。
いや、そんな危険な行為をあのなのはが教える筈がないのだ。
そして、その二人は今なのはに捕らえられている。
スバルは拳を、ティアナはクロスミラージュの銃口から伸ばした魔力の刃を
「……二人ともどうしちゃったのかな?」
少しの静寂の後なのはが口を開いた。
その表情は暗く、怒りよりも悲しみが見て取れた。
「がんばってるのは分かるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ。練習の時だけ言うこと聞いて本番でこんな危険な無茶するなら、練習の意味ないじゃない。」
ゆっくりとしかしはっきりとした声で言葉を紡ぐ。
なのははティアナとスバルへと視線を移しながら言葉を続ける。
「わたしの言ってること、わたしの訓練。そんなに間違ってる?」
間違っていない。
間違っていてたまるものか。
誰かを何かを守る為に力を振るうなら先ずは自分の命がなければならない。
それを危険に晒す行為など以ての外だ。
なのははそれを身を以て知っている。
だから、なのはがそれを教えることなど絶対にありえないのだ。
「ッ!」
なのはの目を見てたじろいだティアナは後方のウイングロードへと飛び退いた。
そして銃口をなのはの方へと向けて、魔力を収束させる。
「わたしは! もう誰も傷つけたくないから! 失いたくないから!」
目に涙を溜めながら絞り出すように叫んだ言葉はきっとティアナの真意なのだろう。
だけど、錯乱しているのか銃口の先はなのはに延いてはそばにいるスバルに向いている。
「少し、頭冷やそうか……。」
なのははそれを見据えつつ指先をティアナへと向けて手の周りに六つの魔力弾を生み出す。
「クロスファイヤー……。」
「ファントムブレイ……!」
「シュート。」
ティアナの魔法を遮るように放たれた砲撃は真っ直ぐ一直線にティアナへと飛び、被弾した。
砲撃を中心に大きく爆風が広がり、ティアナの姿が見えなくなる。
スバルはティアナの方を向いて驚愕していたが、ティアナの方へ向かおうとしたところでなのはにバインドで縛られ身動きできなくされる。
「じっとして、そこで見てなさい。」
なのはは冷徹に言い放ち魔力を収束させる。
狙いはもちろん先の砲撃を受け、脱力しているティアナだ。
「な、なのはさん!?」
再び放たれた二度目の砲撃はティアナに直撃し、ティアナは下方のウイングロードへと落ちて行った。
「ティアあああああああああああああ!!」
スバルは叫び声をあげながらピクリとも動かないティアナへと向かって行く。
しかし、スバルの叫びも虚しくティアナは意識を失ったまま動かない。
「ッ!」
後方に降り立ったなのはをスバルはキッ睨みつける。
なのはは表情を崩すことく、スバルとティアナを見つめていた。
◇
訓練は終わり、解散になった後俺は医務室に来ていた。
目的は言うまでもない、ティアナの様子を見に来たのだ。
「……。」
しかし、医務室に入ろうと扉を開けようとしたところで俺は立ち尽くす。
(もし、今入って行ってティアナが起きていたらどうする? なんて声をかければいいんだ? いや、声をかけたところで俺の言葉なんて彼女には届かないのかもしれない。)
そんなことばかりが頭に浮かんで、俺は入るのを躊躇ってしまった。
なのはの教導もその意味も間違ってはいない。
それはなのはの経験から来る彼女の信念が篭ったものであり、間違いなどと言う人間は事情を知る者ならば誰もいないだろう。
しかし、それを彼女達は理解していなかった。
いや、内容が内容なだけに話せなかったというのもあるだろうが、理由を話していない時点で察しろと言っても不可能だったのだろう。
だが、それを鑑みてもティアナの取った行為は許されるものではない。
もしこれが実戦だったのなら処罰で済まされるかどうか分からない。
(分かってた。こうなる予兆はあった。それに気づいてたのに、止められなかった。)
そう、前々から予感はしていた。
もし俺がもっと必死になってティアナを止めていたら、なのはにティアナの無茶を伝えていたら、こうはならなかったのかもしれない。
「クソッ!」
自分の後悔を払拭する為に扉に背を向けて後方の壁に力一杯握りしめた拳を突き立てる。
バァン!という大きな音が響いて拳を中心にその周囲の壁が拳圧でめり込む。
もちろん魔力で防御なんかされていない為壁と接触していた部分がジワジワと痛み出す。
今となってはその後悔も後の祭りだ。
現に危惧していた事態は起こり、なのはとスターズの二人に深い溝を作った。
(俺は……。俺は三人に何をしてやれる?)
拳を引っ込めた俺は考える。
今出来ることは考えることだけだ。
それ以外に何もすることはない、できない。
(もし俺に魔力が、魔法があったら少しはこの状況も違ってたのかな?)
出血した右手を見ながら俺は一人自身に問いかけるが答えは出ない。
何故ならそれはもしもの場合であり、今現在の俺にはありえないことなのだから俺では答えを出すことはできない。
「ちょっと! 何してるの!?」
俺が自問していると後方から声をかけられる。
ここは医務室の前、相手はもちろんシャマルさんだ。
「怪我してるじゃない。大きな音がしたと思って出て来て見れば……ってその壁どうしたの!? いや、だいたい予想はつくけど。」
「シャマルさん……、俺……。」
「はい、ストップ。不安そうな目を向けるより先ずは中に入って治療から。長い話でもちゃんと聞くから。」
「……俺そんな不安そうな表情してた?」
「してたわよ。まあ、それはいいから中に入って。ティアナはまだ寝てるから。」
シャマルさんの言葉に俺は言葉を詰まらせ、大人しく従って中に入ることにした。
◇
静寂の中でティアナの寝息だけが木霊する。
シャマルさんのクラールヴィントに右手を治療されながら、俺は黙っていた。
なんと切り出せばいいのか分からなかったというのもあるが、寝ているティアナを起こすのも憚られたからだ。
「それで、なんであんなことしたの? ちゃんとした理由がないとはやてちゃんに怒られるわよ?」
「いや、なんと言うか止められたかもしれないことを気づいていて止められなかった自分に嫌気がさして……。」
「それで壁を殴ったと……。……始末書ね。」
「ですよね。」
ご最もな意見である。
むしろそれで許されるのだから知り合いが部隊長というのはありがたい。
いや、本当はそんなことをしてはいけないというのは重々承知だが。
「あの、シャマルさん。」
「ん? どうかした?」
再び訪れた静寂から逃れるように俺は口を開いた。
問いかける内容はただ一つ、先程の自問だ。
真剣な俺の表情を見て、シャマルさんも真剣に俺の言葉を聞いてくれる。
「もし、もしも俺が魔法が使えたら今回のことは止められたと思いますか?」
「そうねぇ止められたかもしれないし、止められなかったかもしれない。正直に言うと、それは今この場所にいるわたし達には分からないなのよ。」
どうやらシャマルさんも俺と同じ考えらしい。
そんなifの話など俺達は知らないし、考えたところで答えなど出る筈もない。
出たとしてもそれは自分の都合のいい答えであり、事実とは違うかもしれない。
「後悔してるの?」
「してますよ。止められたかもしれないのに……。」
「そうじゃなくて。いや、そっちもそうだけど、自分の魔力を
シャマルさんの言葉に俺は再び口を紡いだ。
暫く考え込んだ後に俺は漸く口を開いた。
「正直言って、少し後悔してます。またifの話ですけど、魔力が魔法があれば、この状況や今の自分は変わってたのかなって思うことがあるんです。」
俺の絞り出すような言葉に今度はシャマルさんが考え込む。
俺は視線を少し横に移してティアナの方を見る。
あれ程の砲撃を受けたというのになんと気持ち良さそうに寝ているものか。
元気そうな姿を眺め、少し安心して苦笑した後視線をシャマルさんの方へと戻す。
「そうねぇ。……フェイトちゃんはなんて言うと思う?」
「……どうしてそこでフェイトが出てくるんですか?」
「わたしの答えはたぶんフェイトちゃんと同じだからよ。」
「……。」
笑顔で語るシャマルさんを見て、思わず黙り込む。
(フェイトならなんて言うのだろう?)
頭の中であれやこれやと考えてみるも一向に答えは出ない。
考えても考えても答えは出ず、思考は堂々巡りだ。
「迷ってるわねぇ。」
「俺はフェイトじゃないですし、分かるわけないじゃないですか。」
「あれだけ一緒にいるんだから少しくらい予想とかないの?」
「予想はできてもそれら答えじゃないでしょう?」
「少し難しく考え過ぎじゃないかしら。まあ、フェイトちゃんの考えが分かるなら今頃二人は付き合ってるか。はい、治療は終わり!」
何気に酷いことを言う人だ。
暗に俺が鈍感だと言いたいのだろうか?
それより治療が終わったなら早く答えを教えてくれないだろうか。
「……それで答えは?」
「自分でフェイトちゃんに聞きなさい。」
「……ですよね。」
シャマルさんのいたずらっぽい微笑みに項垂れながらも俺はため息を吐いて立ち上がる。
(フェイトには……、また今度聞いてみよう。)
自分のヘタレっぷりに再び大きなため息を吐きながら俺は医務室を出た。
読了ありがとうございます。
第六話です。
本当は前後編に分けたくなかったんや……。一つに纏めたかったんや……。
まあ、長くなり過ぎるということで許してください。
戦闘描写はオリ主が戦う時にがんばるんで待ってください。(難しいから書くの敬遠してるなんて言えない……。)
そして、オリ主に関する情報がさり気なくほんの少し出てきましたね。
まあ、それについては次話かその次で明かされると思うんでお楽しみに。
それでは次回もよろしくお願いします。
あ、Twitterはじめました。
一応更新情報とか呟くかもですよ。
@jyou12touking