ハイマ。   作:とう

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曖昧な生涯を送ってきました。
何の意志も持たず。
何かを決断することもなく。
ただ、ただ、曖昧に生きてきました。
それでも生きていけました。
人並みの常識も、幸せもありました。
さて。
それが××××のは、いつだったか。


Understood?

 巨体は止まることなく進み続ける。

 凄まじいスピードで移動しているそれは、もうすぐ山間にある集落を覆いつくさんとしていた。

 

「、止まってください! スーマン!」

 

 幾ら呼びかけた所で、一向に彼から返事が返ってくる様子はない。まるで心の抜け切った体だけの抜け殻のようだ。

 だのに、口からは絶えず鮮血と共に「呪われろ」の言葉ばかりが繰り返される。

 譫言のようだ。彼の心が見えない。アレンは心臓に位置する箇所から生え出たつのの様な物にしがみ付きつつ、何度も呼びかけた。

 止まれ。止まってくれ。あなたの命が尽きてしまう。

 けれどやはり、反応はないまま。

 

 このままでは彼は、咎落ちになってしまったスーマンはきっとこの小さな村落を破壊してしまう。

 そんなことをすれば、イノセンスの意思に背いてしまった彼がどうなるか。その顛末は火を見るよりも明らかだった。

 現に、今も、こんなに、血が。

 

「──ッ、スーマンっ!」

 

 ごぽりと彼が再び大量の鮮血を吐き出す光景に、アレンは悲鳴をあげた。

 本来ならば彼に力を与え、千年伯爵を倒す糸口となる筈の神の結晶はしかし確実に、そして着実にスーマンの命を蝕みつつある。

 

 イノセンスとは、現在の神が地上に降りかかる災厄に対抗する為、人類に与えた最後の手段。

 イノセンスの意思は、神の意思と同等なのだ。AKUMAや千年伯爵らを破壊せんというイノセンスの志向に背き逃避しようとするのはそれ即ち、神の志向に逆らうのと同じである。

 そしてそのような考えに至った者は反逆者紛いと見なされ、まるで「お前はもう必要ない」とばかりにその体は内側から結晶に蝕まれ、そして──。

 

 呪われろ、と頻りに苦し気に吐き出すスーマンを見て、アレンは思う。

 人間は傲慢だ。人類は強欲だ。怠惰的で、気が短く、色欲や食欲もさることながら、執念も深く嫉妬も深い。

 全ての人類が、一つの例外なく兼ね揃えている罪だ。どんなに無垢な赤子でも欲はあるし、どんなに年老いた翁でも怒りの感情はある。

 ──けれどそれは、自分たちを創り出した神自身も、これら全ての”罪”を負っているからではないのか。

 自分たちは結局、神の創った、神の一部でしかないのだから。

 

 己の思考が負の方向に向かっていることにハッとして、アレンは慌てて首を左右に振った。

 いけない。

 自分まで闇に飲まれてしまっては、誰がスーマンを救うというのだ。

 気を取り直し、呼びかけ続けるアレンの脳裏にふと、一人の顔が浮かんだ。

 

 彼なら、こんな時、どうしただろうか。

 

 

 ・・・

 

 

「、ッしゃおらぁ……! 先に着いてやったぜこんちくしょうめ……!」

 

 あまりの安堵に思わず数世代前のヤンキーのような声が出たが、そこは一旦保留とする。

 無我夢中で全力疾走した結果、無事何とか巨大生物より早く、山間の集落に辿り着くことができた。まさに奇跡である。

 人間、極限状態まで追いつめられると力量以上の力を発揮するって本当なんだね。

 火事ではない(寧ろ火事なんかよりよっぽど悲劇的な結末を迎えそうな現状である)が、「火事場の馬鹿力」という言葉の意味が、今をもってして漸く本当に理解できた気がした。

 

 唐突に森の中から飛び出した俺に、たまたま側にいた何人かの集落の住民たちが目を丸くして驚いていた。それもそうだろう。

 普段の生活をしていた所に、突如空飛ぶ白い巨人(胴体オンリー)に襲撃され、見知らぬ黒ずくめの男に突撃されてみろ。俺だってビビるわ。

 事情説明は、申し訳ないが後々に回しておくとして、今はあのデカ物をどう対処すべきかである。

 

 目を閉じて、一度情報の整理に徹してみることにした。

 ここに辿り着くまでに使った血液、総量約500ミリリットルといった所だろうか。

 どこで聞いたのかはっきりとは覚えていないが、確か人間の失血致死量が全身の血液の大体半分である2リットルだと聞いたことがある。

 

「残り1.5、ね……」

 

 尤も、後500ミリも使えばふらふらになることは確実だが。

 漸く息も整ってきて、最後に一度深呼吸をしてから瞼を上げる。

 幸い、今朝方出発前に指に作った傷はまだ塞がっていない。

 背に広がる集落を一瞥して、その広さを見極めた。山間の小さな集落といえど、四方系に例えれば恐らく一辺600メートル近くはある。

 

「500ミリ……足りてくれよ」

 

 流石に厳密な量までは把握できない。

 けれど、仮にも自分の中にあった血液だ。おおよその量が塊となって宙に浮かんでいるのをイメージすれば、噛んだ親指の傷口からどろりとそれが流れ出す。

 背後から「ひっ」と押し殺した悲鳴が聞こえてきてちょっと焦った。

 そういえばそうだった。後ろに一般人控えてるんだった。

 さて。この人たちは本日、普段の生活をしていた所に、突如空飛ぶ白い巨人(胴体オンリー)に襲撃され、見知らぬ黒ずくめの男に突撃され……挙句その男の生き血が空中浮遊している所を目撃した訳だ。

 今日は厄日のようだな村人さん。ごめんなさい。

 

「──『守れ(プロテクト)』!」

 

 でも、貴方たちは俺が守るから、許してね。

 

 声と共に、抽き出した血の塊が薄い壁をかたどり、集落と巨体の間に浮かぶ。

 この範囲全てを守るには、それだけ大きな障壁を作る必要がある。たったの500ミリリットルで作る巨大な防壁は極端に薄っぺらで、肉眼での目視は難しい。俺から見ても、精々「あれ? なんか景色微妙に赤っぽくね?」と疑問を持つ程度だ。

 けれど、そこにあるという事実は変わらない。

 俺の守りは固いんだよ。

 

 いよいよ迫った巨大生物の本体が障壁にぶつかろうという時、そいつの様子に異変があった。

 ずっと動いていたその巨体が、不意に移動をやめたのだ。

 あれ? と首を傾げていると、四肢をなくした胴体のような見てくれをしているその肩口の断面から、ひねり踊る鞭のようなものが生成される。

 僅かに光っているように見えるそれが、うねうねとしたまま後ろに振り上げられる。

 壁に叩きつける気だ。

 

「……っていうかなにあれ、触手!? 気色悪っ!」

 

 俺はというと、驚きから一周回ってドン引きしていた。

 だって触手だぞ……? ぼんやり白く発光してるし、首の断面(よくよく考えるとホラーだ)の上には天使の輪のようなものもある。頭と四肢と柔らかそうな羽根さえ付け足せば完璧なエンジェルだ。サイズの問題や、天使にしては体付きがごつ過ぎる件については取り敢えずスルーする。

 こうもあからさまな「神聖なものですよ」アピールをしている本体の見て呉れに対して、何をトチ狂ったのか、触手。テンタクル。

 意味がわからない。

 

 ビュッ、と巨体に似合わぬ速さで鞭が振り下ろされる。それが防壁に当たるタイミングに合わせて、俺は息を詰めて意識を集中させた。

 頑丈な壁を作るには、イメージを固めるのが一番手っ取り早い。

 いっそ恐ろしいほどの衝撃に、地面が微かに揺れた。おい地層以外からも地震が発生するなんざ聞いたことねえぞ。

 ズドォオ、という轟音と共に硬化した触手の重みが血液中のイノセンスを通じて、自分の肩に伝達される。自分の腕で重い荷物を押し上げているような感覚は以前より守れ(プロテクト)で攻撃を受ける際にも感じてはいた。

 AKUMAの攻撃然り、ロードの殺人キャンドル然り。

 けれど、これは。

 

「おっも……!?」

 

 予想していた何十倍もの攻撃の重さに、思わず言葉が喉に詰まりかける。慌てて一方の脳でより硬い障壁のイメージを浮かべつつ、もう一方では事の分析を始めた。

 

 イノセンスは、AKUMAたちを形造るダークマターとは、いわば正反対の物質だ。殺戮兵器たちの弾丸が人間にとっての猛毒であるのと同様に、この神の結晶も彼らにとっては劇毒に等しい。

 俺の作る障壁が、彼らの攻撃を受け止められるだけ強くできるのも、それが要因の一つだ。

 イノセンスの混じった俺の血液に触れた瞬間、AKUMAたちの放つ毒素は少なからず浄化される。神の物質の意思に背くのあの攻撃も同様だ。

 

 だけど、その壁が毒に接触し清浄化すると同時に、その障壁にも少しではあるが毒素が移る。ただ、こちらの浄化力のが向こうのそれを上回っているから、こちらが押し勝っているようなものなのだ。

 これが原因で、俺が一度作った障壁や武器は、一度使用の使い捨てなのである。

 剣や刀なんかの武器は多少多めにイノセンスを込めた血を使っているため毒気の浸食が遅いが、いずれ限界はくるのだ。

 

 まあつまり何が言いたいのかというと、AKUMAやノアの攻撃は、俺の地に触れた時点で威力が軽減されているようなもの。

 そのため、ここまでの衝撃が俺自身に伝わるのは、ほぼ不可能だと言っていい。

 

 なら、こいつは一体、何だ?

 

「……、まさか……」

 

 はたり、と以前アレンたちと交わした会話が脳裏を掠めた。

 あれは確か、俺がどうにか神田に少しでも反応を見せて貰おうと孤軍奮闘四苦八苦していて、あまりの手応えの無さに三人に泣き付いた時だったと思う。

 

『もうやだ……神田なんて相変わらず「ふん」とか舌打ちとか無視とかばっか……コムイの嘘吐き……バカあほ巻き毛……』

 

『これは、重症さ……』

 

『ははは……』

 

『き、気にし過ぎちゃダメよ璃兎くん。神田は誰にでもあんな感じだし、ね?』

 

『けどみんなとはせめて会話してるじゃんか……? 俺なんか徹底無視だよ……?』

 

『あぁもう、泣かないでくださいよ璃兎……』

 

『男がこれぐらいで泣いちゃダメだろ!』

 

『俺の心は以外と繊細だから……硝子どころか雪だから……触ったら即溶けるから……』

 

『それもうどうしようもないじゃないですか』

 

『うぅぅ……』

 

『あはは……うーんでも、そう言えばそうね』

 

『? 何が?』

 

『よく考えてみると、アレンくんと会った時だって、神田は不機嫌だったわ。でも、会話を一切合切拒んでる訳じゃないでしょう?』

 

『まあ、言葉のキャッチボールが成り立たない時も多々ありますが』

 

『アレン、背後に黒いの見えてるさ……』

 

『ふふ。そう言えばアレンくん、あの時神田の六幻で左腕に傷作っちゃったのよね』

 

『……え、イノセンスでイノセンスが切れるのか?』

 

『んー、まあ同等の力が二つ、ぶつかり合ってるようなもんだからな。壊そうと思えば壊せる、的な?』

 

『僕、腕を傷付けられたのってあれが初めてですよ……』

 

『えっ、そうだったの? 私てっきり、クロス元帥との旅の途中で経験してたものかと……』

 

『いえ、あれが初でした。……今思っても屈辱的ですよ……』

 

『あ、ほんとだ後ろに黒いの見える……』

 

『だろー!?』

 

 アレンのイノセンスである腕は、俺の作る防御壁と同じようにAKUMAの弾丸を受けても基本弾き返してしまう。

 そんな頑丈な武器が、神田のイノセンスである六幻にいとも簡単に切り裂かれたとなると。

 目の前のこの白いデカ物が、まさかイノセンスだとでも言うのだろうか。

 何? 例のイノセンスによる怪奇現象ってこんなのもアリなの……? じゃあ八尺様の都市伝説もこれで説明つくんじゃないの……?

 訳がわからなくなってきた。

 

「っつ……!」

 

「ひ、ひぃっ……な、なんなんだ!」

 

「っ早くここから離れてください!」

 

 腰を抜かしていたらしい男性が後ろで引きつった悲鳴をあげ、漸くその存在に気付く。抜かった。逃げ遅れていたのか。

 ドォオオン! と爆音を上げ、再びその腕が激突する。

 肩にかかる重みに、流石にこの薄さでは無理があったのかとマイナス思考が脳を巡った。

 声をかけたことが功を成したのか、男性は慌てて立ち上がり、集落の奥へと走って行った。贅沢を言うならみんなまとめて避難して欲しい所だが、恐らくそれをする余裕もつもりも、ここの人たちにはないだろう。

 だって、この住居が破壊されれば、彼らは居場所を失うことになるのだから。

 

「だからこそ守らなきゃ、だよなぁ……!」

 

「──璃兎くん!?」

 

「ふぁッ!?」

 

 気合いを入れ直して、今も暴れている巨体を睨みつけたまさにその直後。

 聞き覚えのある声で名前を呼ばれ、意図せず素っ頓狂な声が喉から漏れる。こ、腰抜けるかと思った。

 意識の半分は防壁の維持に向け、もう半分で体に指示を出しばっと振り返る。

 結んでいた髪が解けでもしてしまったのだろうか。案の定そこにいたのは、よく見知った顔──リナリーだった。

 よく見ると小さな傷が幾つか目立っている。戦闘があったのだろうか。

 感動の再会、というには些か緊迫感が過ぎる現状。どうせならもうちょっと平和な所で合流したかったなぁ、と叶わぬことを思う。

 目を丸くしてこちらを見つめるリナリーに対し、俺も幾らか驚愕していた。

 

「リナリー……!? どうして、ここに」

 

「それは私の台詞よ! 璃兎くんこそ、どうしてっ」

 

「ティエドール元帥を保護した後、お前たちを追ったんだ! 他にすることもなかったし、元帥もオッケーくれたし。というかなんでリナリーは一人? 他のみんなは」

 

「っ、みんなは、船で悪魔の大群と戦闘中……でも、アレンくんが」

 

「アレンがどうかしたのか?」

 

「アレンくんが、あそこにっ……スーマンを助けようとしてるの……!」

 

「……はあ!?」

 

 もう意味も訳も何もわかんねぇ。

 なんなんだこの超展開。

 

 上手く状況の整理が追いつかず、何やら今にも泣き出しそうな様子のリナリーに向く。

 スーマン、という名は科学班のジョニーから何度か聞いたことがある。

 俺自身が、彼本人に会ったことはない。けれど黒の教団に所属する寄生型イノセンスを扱うエクソシストの一人で、良くチェスの相手をして貰うのだと、ジョニーが自慢気に話していたことは覚えている。

 リナリーは今、間違いなくスーマンと言った筈。

 え? と巨大な疑問符を頭に浮かべて、リナリーがあそこ、と示していた方向に視線を戻す。

 白い巨体。輝く触手。

 微妙に赤い視界。

 

 ……スーマンさんどこよ!?

 

 脳内のはてなの隣にビックリマークが追加された所で、ハッと頭の中の電球が灯った。

 目の前に展開した防御壁は、イノセンスである俺の血液でできていて、推測ではあるが恐らくイノセンス以外では現状のように劣勢を強いられることはない。

 スーマンは黒の教団に所属するエクソシストであり、彼の右腕にはイノセンスが宿っている。

 リナリーは今、「スーマン」と言ってデカ物の方向を示した。

 そしてあのデカ物の攻撃に、俺は押されている。

 

 結論。

 デカ物=スーマンさん。

 ……。

 

「何それ……? え、俺も将来的にああなるってこと……? 数年後にはみんな謎の巨大生物なの……? 世界蹂躙しちゃうの……? 怖……」

 

「り、璃兎くん……?」

 

 導き出された恐ろしい結論に、遠い目をしてブツブツと何かを呟く俺と、その尋常でない様子を不安そうに見守るリナリーという奇妙な光景が出来上がった。

 うん。仕方ないと思う。

 最早何もわかりたくない。

 

「あ、だめだ貧血で目眩が……今日の夕食は鉄分多めに取らないと……レバー食べよう……後ほうれん草も……ふふ、ふふふ……」

 

 俺がお決まりの現実逃避を始めた、その時。

 突然視界が明るくなって、現実に引き戻された意識に何事かと上を向く。

 案の定光っていたのはあの謎の巨大生物で、どうやら元々放っていた淡い輝きの光度が更に増したらしい。

 今度は何をする気だ。

 徐々に眩さを上げていく巨体に完全に意識を持って行かれた俺は、頭の中にあった防壁の想像を疎かにしてしまっていた。そうすると、当然というべきか。

 

 ピキッ、

 

「しま……っ」

 

 甲高い音を立て、薄い壁に大きく亀裂が走る。今慌ててももう遅かった。

 障壁は使い捨てだ。一度ヒビの入ってしまったものを修復し、再度利用することは叶わない。

 ピシ、ピシ、と続けざまに音を鳴らし広がっていく綻び。それに比例して、奴はどんどん眩しくなっていく。

 何をしようとしているのかはわからないが、今からもう一度壁を作り直すのでは、時間が圧倒的に足りていない。血を出して、防御壁を精製するのは一瞬。けれどそれをする前に脳内のイメージを揺るがぬ、確たるものにする必要がある。時間がかかるのは寧ろそっちだ。

 

 とうとう臨界点を超え始めた明るさに、ほぼ本能的に目を瞑った。

 パリンッ、と高い音が響いて、防壁が完全に砕け散ったことを知らされる。

 いけない、完全に視界を閉ざしてしまっては、状況の把握ができなくなる。それ則ち、対応も遅れるということだ。この集落に住まう人々の命を委ねられている以上、それは許されない。

 決死でなんとか薄く瞼を押し上げて、腕で目を庇いつつなんとかそいつを見上げる。

 そして巨体は、より一層強く光り輝いたかと思うと、

 

「──……は?」

 

 ヒュン、と跡形もなく消えていった。

 途端に映る山間の美しい青い空と、赤がかっていない視界に、ぽかんと口を開けて絶句する。

 現実よ、そろそろ俺の常識を超越するのはやめないか。

 デカ物が浮かんでいたはずの空中に、何か黒い影を一つ見つけた。地面に向かって落下しているそれが一体何なのか、確認しようにも遠い上に小さすぎてよくわからない。

 けれど、俺と同じくそれを見たらしいリナリーがあげた悲鳴に、その疑問はいとも簡単に解消された。

 

「アレンくん!」

 

「……嘘っ、あれアレンか! っておいこらリナリー待って!」

 

「ッ離して璃兎くん!! 早くアレンくんとスーマンを見つけないとっ」

 

「気持ちはわかる、一旦冷静になれ」

 

 私は十分冷静よ! と言い返してくるがリナリー、その尋常でない激情の仕方は冷静とは言わないよ。

 駆け出しそうになっていたリナリーの手首を掴み、振りほどかれないよう力を込める。痛くしてしまいたくはないので、あくまでほんの少しだけだ。

 けれど流石リナリーというべきか、それだけで振り返った時の凄まじい剣幕から一転、ハッとしたように息を飲み足を止めた。

 よし。この子ならわかっている筈だ。こういう状況での焦燥や高ぶった感情は、死に直結しかねないことくらい、嫌という程に。

 

 取り乱してしまったことを恥じているのか、しゅんと項垂れてしまったリナリーがなんだか年下の妹のように見えてしまう。

 投影される何かの影を誤魔化すように、笑ってその頭に手を伸ばした。驚いたように目を丸くしたリナリーの顔を覗き込み、諭すようにゆっくりとした口調で話す。

 

「リナリーにはここに残って村の人たちを安心させて欲しい。訳の分からない状況の連続で、きっとビビりまくってると思う。アレンたちの捜索は、俺に任せてよ」

 

「っ、でもっ……!」

 

「でもは却下」

 

 食い下がるリナリーに強い口調で言い切ると、彼女は押し黙る。

 今にも涙が溢れ出しそうに揺れているその目を見て、俺は場違いにも少し安心していた。

 ああ、こんな凄惨な戦場に身を置いていても、どんなに気高に振舞っていても、この子はやっぱり女の子だ。

 あいつと同じ、女の子なんだな、と。

 乗っけていた手をそのまま使いリナリーの頭をほんの少し近付けると、あいつにやっているとき同様、目を閉じて自分の額と向こうのそれを軽くくっつけた。

 俺とリナリーの身長は、歴然なさはないとはいえやはり俺の方が数センチほど高い。軽く屈むようにしてその体制を取ると、すぐ側でリナリーが息を呑んだのがわかった。

 

「俺が必ず、二人を連れて帰るから」

 

 約束する。

 

 そう言いながら額を離して瞼を開くと、目の前のリナリーがとうとう泣き出してしまったもんだから、ちょっと焦った。

 

 

 

 

 

 Understood? ▼

 

(知ったことか)




シリアスクラッシャー璃兎くん、見☆参。
どうもお久しぶりです。お待たせして本当に申し訳ないです(というか待ってくれてる人いる、のか……?)。
遅ればせながら、クリスマスおめでとうございました(ん?)。そしてアレンくんお誕生日おめでとう!(過去)
皆様良い年越しを。

そしてDグレアニメ再開しますね!!!!!!!!
個人的には常日頃よりH×Hやフルメタみたいにもう一回作画を直して放送してくれないかなーとか思っていたのですが、まさかの新シーズンが発表されて戸惑いと狂喜の間を行ったり来たりしてます。
星野先生愛してる!!!!!!!!(どうでもいい告白)

というか、またしても異様に長くなったんですがこれはあれか? 神田の話題が上がったからですか? 私ユウくんに呪われてるの?
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