D,C,Ⅱ to リリカルなのは ~理想と願い~ 作:ゆーじ1121
彼の者は闘った世界の平行世界に当たる世界の日本。
四国付近に存在する三日月型の奇妙な形をした島…初音島。季節を問わずに桜が咲き乱れることで有名なこの島、その中心付近にある大きな公園。正式な名前はなく、近くの住民からは『桜公園』と呼ばれている公園。そのあまり人の訪れない場所で、彼は眼を覚ました。
桜の木に身を寄りかかるように、座っている所で眼を覚ました。
「・・・ここは?」
辺りを見回すが、満開近くにまで花びらを咲かせている桜の木しか見えない。
そんな状態に、思わず舌打ちをもらし、起きあがろうとして、体の異変に気付いた。
「―――体が…」
体が縮んでしまっているからだ。
彼が死ぬ前、彼の身長が180に届くか、届かないかというところだったが、いまは130cmほどしかない。
これでは、小学生くらいなものだ。
だが、いま気にしても仕方ない。溜息一つですぐに気分を切り替えると立ち上がる。
「・・・まあ、文句を言っても仕方ないな」
なにかが、彼の額に張り付く。
手でそれを取ってみると
「これは・・・桜?」
それは、桜の花びらだった。
そして、同時に風が吹き、肌を刺すそうな寒さが彼を襲う。
「寒いな…」
すこしでも寒さを凌ぐために手をポケットにいれる。
すると、なにか手に当たる感触を覚えた。
「・・・これは、メモか?」
なにか、メモのような紙切れが入っていた。
それを丁寧に広げていくと
『これを見てるってことは無事に転生できたみたいね』
と、達筆な文字でかかれていた。
『転生できた』なんて、書ける奴は彼を転生させたあの少女しかない。
「・・・あいつか」
自分に幸せになれとほざいた神を思い出す。やはり彼女の仕業らしい。
下に、目を走らせて見ると、まだ続きがあった。
『まず、君の近くにトランクがあるはずだけど見つかる?』
「・・・トランク?」
メモの内容に従い、辺りをキョロキョロと探すと、メモに書かれたとおりに、ソレはすぐに見つかった。
「あったな」
彼が寄りかかっていた木とニ、三本、離れた位置に生えている木の根元に、キャスターのついたトランクがあった。
歩み寄ってみると、使い古した味のある革製のトランクがあった。そして、それには彼は見覚えがある。それは当然だ。
これは、彼が前世で道具を詰め込め、使っていたソレなのだから。
「僕のトランクだ…」
手馴れた様子鍵穴にかけた封印魔術を解いて、なぜか、ポケットにあった鍵を指すと、案の定、開いた。
そして、中を覗き込んでみると
「これは・・・」
いくつかの宝石と外套、彼の仕事道具が入っていた。
どれも、彼が特注した対化物用の武器だ。
『中には、君の使っていた道具を入れておいたよ。あとは、体にいろいろ追加したから解析してみることをお勧めするよ』
再び、手元のメモに目を走らせると、そんなことも書かれていた。
「・・・なにしやがった」
彼を転生させた少女に対する文句を呻きつつ、体内に存在する魔術回路を起動させ、体に魔力を流し、体の状態を解析する。
彼の行使できる数少ない魔術の一つ『解析』だ。
―――肉体異常なし
―――内臓系異常なし
―――魔術回路1000本(内五百本に封印)
―――リンカーコア 異常なし
―――魔術刻印 異常なし
―――写輪眼 使用可能
―――王の財宝 リンク正常
「―――」
出た解析結果に、悠二は瞠目を隠せなかった。
体に異常が無いのは、頗る良い。魔術回路がいいのもいい。
だが、最後のほうの二つの項は彼を冷や汗に流すには十分だった。
王の財宝―――とは、バビロンの英雄王が所持している己の財の全てを収めた倉庫が宝具化したものだ。
さらに、後者の魔眼は空想の産物で、通常の魔眼なんて目じゃないほどの力がある。
ハァと、思わず右手で顔を覆って、深く溜息を吐き出す。
六歳の子供が、まるで疲れたサラリーマンのような溜息を吐きしているのは非常にシュールな光景だ。
―――それはともかく、悠二はさらに項があるのに気付いた。
―――注意
―――容姿の変化を確認。
―――金髪 碧眼へと変化。
―――原因不明
最後の原因不明というところが、妙に気になったが、いま考えても仕方ないと頭を切り替えて、今の現状のことで頭をめぐらせる。
此処はどこか?いつなのか?確認すべきことは後を絶たない。
―――だが
「―――しかし、寒いな」
冬に寒さに体温を奪われ思考を妨げてしまう。
「やれやれ、たしか戦闘用のコートが入っていたはず…」
ガサゴソとトランクのなかをあさり、中から赤い線の入ったロングコートを発見した。
だが、これは彼が前世のときのサイズだ。
「---」
着てみるが、ダボダボもいいところだった。
「仕方ない、たしか、布ならあったはずだよな?」
ガサゴソとさらにトランクの中をあさると、まるで血のように真っ赤な一反の布が出てきた。
それをみて、ニンマリと笑みを浮かべると、魔術回路を起動させる。
すると、バチバチと光を上げて、布はあっという間に彼のサイズにぴったりのコートへと形を変えていた。
「久しぶりの錬成だが、上手く言ったな」
―――《錬成》
それが、彼の得意とする魔術だ。
物体を把握し、分解、再構築する彼だけの魔術。戦闘にも、生活にも利用できる非常に汎用性のある魔術。ちなみに、彼自身の固有魔術でもなる。
材料さえあれば、コートを作ることくらいわけない。
ちなみに、錬成した材料は聖骸布。贋作だが、それでも十分な坑魔力はある。
「―――しかし、春にしては寒いな」
桜が咲いていることからの判断だが、いまは間違いだ。
しかし、いまの彼にそれを確かめる術はないため、仕方ないだろう。
「さて、市街地はどっちかな…?」
トランクを手に、歩き出そうとするが突然の出来事に足を止める。
「―――子供!?」
突然、背後から声がしたためだった。
振り向いてみると、そこには白と黒のシンプルな服装の上から、魔法使いが被るようなローブを纏った、彼と同じ金髪をツーサイドアップにした少女。
その蒼い瞳が、驚愕を湛えて、悠二を見ていた。
(コイツは…)
そして、その瞳に見た瞬間、悠二は長年の勘と経験から察した。
こんな目をしている奴は決まってそうだ。人の温かみやつながりを飢えている。
そんな存在だということが。
*
「んっ・・・」
悠二が眼を覚ました場所から、すこし離れた位置にそこだけ周囲に気はなく、あるのは主といわんばかりの巨大な枝垂桜。
そして、その太い根元には魔法使いのようなローブを纏った金髪の少女が幹に手を当てて、立っていた。
いや、彼女だけではない。
彼女のすこし横には六歳ほどの黒い髪の少年が少女を見上げるように立っている。
少女は少年を見て、顔を綻ばせると、すぐに眉を潜めて、顎に手を当てると何かを考える。
「はじめまして、う~んと・・」
しばらく唸っていると、やがて目を見開くと少年に言った。
「桜内、義之」
『桜内義之』
まるで、母親が自分の息子に名づけるように、彼女は少年にそう言った。
「???」
少年はわかっていないようで首をかしげる。
だが、少女は朗らかな笑みを浮かべたまま、母親のように言った。
「君の名前だよ♪」
「・・うん」
彼女が言うと、租借するように頷くとたしかに笑った。
その笑顔を見て、少女の胸が暖かくなるのを感じて、さらに笑みを深めた。
すると、突然驚愕を顔に浮かべ、辺りを見回した。
「―――ごめんね、ちょっと待っていてね」
「うん」
不意に、真剣な表情を浮かべて、少年にそういうと義之を待たせるように言って少女は駆ける。
顔には嫌な汗が光る。
「たしか、この辺・・・っ!?」
そして、少女は見つけた。
大きな枝垂桜の場所からすこし離れた位置にそれは感じた。そして、再び顔に驚愕を浮かべることになる。
「子供!?」
そう、そこにいたのは雪とは対照的な真っ赤なコートを来た六歳ほどの少年だったのだから。
髪は彼女と同じ金髪、瞳は蒼。来ているコートからは微かな魔力を感じる。
「…誰?」
不意に、彼はゆっくりと振り向くその蒼い瞳で彼女を見上げて聞いた。
それが芳乃さくらと彼のはじめての出会いだった。
―――これが、物語を大きく変えることになる。