どうぞ
部長は必要以上に触れてくるライザーと、結婚しないだの純潔悪魔がどうだのと、俺からしたらどうでもいいことを言い争っていた。
「あなたとは結婚しないわ、ライザー。私は私が良いと思った人と結婚する。家柄があろうと、これぐらいの権利はあるわ!」
その言葉を聞いたライザーが不機嫌になった。
「……俺もな、リアス。フェニックス家の看板背負ってんだ、その名前にドロを塗るわけにはいかなんだよ。こんな狭くてボロい人間界なんて来たくなかったんだ。それにな、俺は人間界はあまり好きじゃないんだ。この世界の炎と風は汚い。炎と風を司る悪魔としては、耐え難いんだよ!」
直後、ライザーのまわりに炎が上がる。
「リアス、俺は君の眷属を全部燃やし尽くしてでもキミを連れ帰るぞ」
ライザーが殺気が部屋中に広がる。イッセーとアーシアは震えているが、他のみんなは臨海体制に入っている。部長も紅のオーラを全身から発し始めていた。
一触即発の中、それを止める人物がいた。
ーーーーグレイフィアさんだ。
「お嬢さま、ライザーさま。落ち着いてください。これ以上やるのでしたら、私も黙って見ているわけにはいきません。私はサーゼクスさまの名誉のため遠慮などしないつもりです」
「……最強の『女王』と称されるあなたにこう言われては引くしかないな。流石に怖い」
流石がグレイフィアさん。今の一触即発の空気を一言で変えたよ。
「こうなることは旦那様もサーゼクスさまもフェニックス家の方々も重々承知でした。今回が最後の話合いでした。そして、これで決まらなければ、『レーティングゲーム』にて決着をつけてはいかがでしょうか?」
それには、部長もライザーも頷き、『レーティングゲーム』で、決着をつけることに決定した。
「なあ、リアス。ここにいる面子が君の眷属か?」
「だとしたらなに?」
ライザーはクスクスと笑う。
「これじゃ話にならん。キミの『女王』の『雷光の巫女』しか俺の可愛い下僕に対抗できないじゃないか」
そう言いライザーは、指を鳴らす。すると、魔法陣が浮かび上がり、そこには15人の少女、女性が佇んでいた。
「これが俺の可愛い下僕たちだ」
おれはそれを見て即座にイッセーのを見た。
案の定、イッセーは泣いていた。ライザーを見ながら。
「お、おいリアス。君の下僕くん、俺を見ながら号泣してるぞ」
「その子の夢はハーレムなの。きっと、ライザーの下僕たちを見て感動しているんだわ」
「きもーい」
「ライザーさま、気持ち悪いです」
ライザーの眷属の子たちから心底気持ち悪がられていた。
………可哀想なイッセー。
なんて思っているとーーー
ライザーは自分の眷属の一人とディープなキスをし始めた。
うわっ!気持ち悪ッ!今すぐぶっ飛ばしたいぐらいだ。婚約者の前で違う女のキスするなんて………まじか。そんなことを思っていると、イッセーがキレていた。
「お前みたいな女たらしと、部長が釣り合うわけねぇーだろ!」
ブーステットギアを発動させ、イッセーがライザーへ殴りかかる。
「おい、イッセー!行くな!」
完全に頭に血が上っているため、イッセーは俺を無視し、突っ込んだ。そして、ライザーの眷属の一人に吹っ飛ばされていた。
はぁ〜、だから言わんこっちゃない。今のお前じゃ誰にも勝てないのに。
それにしても俺、こういう人嫌いなんだよな〜。誰かを見下すやつ。それにこういう奴って自分の力を過信しすぎる雑魚タイプだし、すぐやられるキャラだな。
「おい、貴様………。今なんと言った?」
ん?あいつは誰に言っているんだ?
「貴様だ!そこの人間!今、俺のことを力を過信してる単なる雑魚と言ったな!ただの人間の……ゴミの分際で、よくも言ってくれたな!」
ライザーはそう言い、炎を燃え上がらせた。
あれ〜、もしかして口に出てた?
ライザーの炎が力を増す。すごい形相だ。
どうやら口に出ていたらしい。今度から気をつけなければ………それにしても、さっきからクソ暑い。この炎消してもいいよな?熱いし。
俺は未だに上がっている炎を消しとばした。
「「「「「「…ッ!!」」」」」」
グレイフィアさん以外の者全員が驚いていた。特にライザーは、自分の炎が、消されたことに唖然とし、そして怒りで顔を真っ赤に染めた。
「何をした!人間風情が、俺の炎をどうやって消した!」
俺はその問いに答えないでそっぽを向いていた。それを見てライザーは余計に激昂したが、すぐに冷静になり、俺へ言った。
「おい、人間!お前も今回の『レーティングゲーム』に参加しろ!そこで、お前を殺してやる!」
その言葉に、俺の正体を知っている部長たちは、驚いた顔をした。
俺は困った顔でグレイフィアさんを見た。やはりと言うか、グレイフィアさんも戸惑っていた。
だが、グレイフィアさんが魔王様に言っておくといい、俺の参加は保留で終わった。そして、ゲームは十日後に決まった。
………ライザーよ、俺が参加してもいいのかい?
♢
その日の晩。俺の携帯に電話がかかってきた。相手はわかりきっている。
「もしもし」
「やあ、こんばんは龍夜くん」
「何の用だ?」
「分かっているんだろ?レーティングゲームのことさ、キミが出るってグレイフィアから聞いて驚いたよ」
「ああ、まさか俺もゲームに出ろ!なんて言われるとは思ってもみなかったからな」
「うん。その事なんだけどね。キミのゲーム参加が認められたよ」
「は!?認められたのか!俺が戦えばライザーなんて瞬殺なんだが?ゲームにすらならないんだが?」
本当に俺が参加するとすぐにゲームが終わるんだが?どうすんだ?サーゼクスのやつ。
「認められたと言っても、龍夜くんが英雄とは誰も知らないからね。人間がいようといまいと関係ないからいい。とのことらしい。だが、私から言っておくが、龍夜くんには制限つきで戦ってもらう。まず、「大剣の守護者」としての力を使うことは禁止だ。それに、力は全て中級悪魔程度に抑えてくれ」
「やっぱりそうなるよな。うん、わかった」
そうだよな、《鏖殺公》なんて使えばいくらフェニックスといえど一撃で殺してしまうからな。それなら【叢雲】で戦うか。
サーゼクスとの電話を切り、俺は眠りについた。
♢
そして次の日の朝。
オカルト研究部のみんなで修行するため山に向かった。
「ひー、ひー」
イッセーの背中には尋常じゃない荷物が背負わされている。自分の身長より遥かに大きい荷物。普通なら持てるはずがない。だが、悪魔になった今では、身体能力はかなり上がっており、持つことができる。できるのだが、やはり重いものは重い。今もイッセーは死にかけている。
「ほら、イッセー。遅いわよ」
先に進んでいた部長に檄をとばされる。
途中、木場くんが山菜を採ったり、小猫ちゃんがイッセーの倍はある荷物を軽々と背負っていたり、アーシアがイッセーに「私も手伝います」と、健気に言ったりしていた。
本当にええ子やな、アーシアは。
え?俺はどうしたって?そんなのイッセーために荷物の上に座っているよ。別に怠いから上に乗ってるわけじゃない。これはイッセーを思ってのことだ。決して怠いからじゃない。
♢
やっとの思いで、別荘にたどり着いたイッセーは、着くなりその場に寝転がってしまった。途中、俺が荷物の上に座っていることに対してすっげぇ怒ってたが、まあ、問題ないだろう。
とりあえず、修行を始めるためにジャージに着替える必要がある。女性陣は二階へ着替えに行った。
「僕も着替えてくるね」
木場くんもジャージをもって浴室へ向かう。
「覗かないでね」
「ふざけんな!なんで俺が野郎の着替えなんざ覗かなきゃなんねぇんだよ!ぶっ飛ばすぞ!」
あら〜、イッセーがマジギレしてるよ。ま、そりゃ男の着替えを覗くやつと、誤解されたらキレるはな。
…………あ、いいこと思いついた。
俺もジャージを手に取り、木場くんに続いてーーーー
「イッセー。俺の着替えも覗くなよ」
と言うと、
「な、なに言ってんだよ!お、おおれが覗くわけないだろう!?」
……………なにまじになってんだ。顔赤くして、こいつ一瞬覗こうとか考えたな。
注意しとかないとな。
そう思い、俺はジャージへ着替えに行くのであった。