『ライザー・フェニックスさまの「兵士」三名、リタイヤ』
俺たちがイッセーと木場くんの元へ向かっている途中、グレイフィアさんのアナウンスが入る。
どうやら二人が倒したようだ。
これで残りは九名。
運動場へ走る途中、イッセーと木場くんの気配を察知し、そっちに駆け寄る。
「イッセー、木場くん」
「おう、龍夜。そっちは終わったそうだな!」
イッセーが笑顔で拳を向けてくる。俺もイッセーと同じように拳を作り、当てる。
「ああ、終わったぞ。そっちも『兵士』を倒したようだな」
「うん。そうだけど……これからが大変だよ」
木場くんは運動場へ視線を向ける。
木場くんの話では、ここには『騎士』、『戦車』、『僧侶』が一名ずつらしい。
「私はライザーさまに仕える『騎士』カーラマイン!腹の探り合いをするのも飽きた!リアス・グレモリーの『騎士』よ、いざ、尋常に剣を交えようではないか!」
俺たちがどうするかを考えていた矢先に、ライザーの騎士が名乗りを上げた。
ライザーの『騎士』か、あれは木場くんみたいな根っこからの剣士だな。
「名乗られてしまってら、『騎士』として、剣士として、隠れるわけにもいかないか」
ほら、やっぱり出て行くと思ったよ。
木場くんに続き俺と小猫ちゃん、イッセーが出て行く。
「僕はリアス・グレモリーの眷属、『騎士』木場祐斗」
「俺は『兵士』の兵藤一誠だ!」
「同じく『戦車』の搭城小猫です」
「俺はオカルト研究部の部員、風見龍夜だ」
俺たちが名乗りを上げたあと、木場くんは向こうの剣士と戦い始めた。
「おい、あんたらは出てこなくていいのか?」
近くに隠れている残りの相手を俺は呼び出す。
「あら、気づいておりましたの?人間の割には少しはやりますわね」
そう言って出てきたのはお姫さまみたいなドレスを着た、頭の両端にドリルのような縦ロール型の美少女がいた。その少女の後ろから六人控えている。
『兵士』二名、『僧侶』二名、『騎士』一名、『戦車』一名。六人か。
俺は一旦視線を屋上へ向ける。そこにはライザーと部長がすでに戦っていた。部長が圧倒的に不利だ。それを見て俺は隣にいる小猫ちゃんとイッセーへ声をかける。
「小猫ちゃん、イッセー、ここは俺一人で十分だから、二人は部長の元へ向かってくれ」
「ッ!そんなのダメです。龍夜先輩が残るなら私も残ります」
「小猫ちゃんの言う通りだ!お前一人、置いていけるわけねぇだろ!」
やっぱりと言うか、二人は俺へ詰め寄ってくる。だが、俺は屋上へ指をさし再度言う。
「それでも、あのままじゃ、部長は負ける。だから二人行って助けてやれ。これは『王』が負けたら終わりなんだ。だから絶対に部長がやられるわけには行かない。………小猫ちゃんならわかるだろ?」
俺の言葉に小猫ちゃんは渋々ながらも頭を縦に振りイッセーを引っ張って行った。
「ちょっ!小猫ちゃん!こんなとこに龍夜一人置いてくわけには行かないだろ!」
なおも、イッセーは反抗していたが小猫ちゃんの力に抗えるわけがなく、ズリズリと引きずられて行く。
「あら、残ったのは人間のあなただけですの?神器も持っていない人間なんてただの雑魚ですわ。これならすぐ終わってしまいますわね」
金髪ドリルが、扇子を広げ、悠々とした態度で言う。金髪ドリルの言う通りだ。すぐに終わる。
「そうだな。君の言う通りすぐ終わる」
「あら、わかっていますのね。愚かな人間かと思ったら少しは頭が回るようですのね」
「いや、俺が言ったのは、君たちがすぐ終わるって言ったんだよ」
『なッ!』
俺の言葉に全員が驚く。まさか人間相手にすぐ終わる、などと言われるとは思っていなかっただろう。
「本当、人間は口だけ達者ですのね。少しでもあなたが愚かではないと思った私がバカですわ。………イザベラ、この愚か者に自分の立場を教えて差し上げなさい!」
顔半分に仮面をつけた女性が現れる。
「おいおい、自分では戦わないのか?」
俺の問いにイザベラと呼ばれた女性が答えた。
「あー、別に気にしないでくれ。彼女はいつもこうなんだ」
「なんだそりゃ」
「彼女はーーいやあの方はレイヴェル・フェニックス。ライザーさまの実の妹君だ」
………………ま、まさか。あいつ実の妹を眷属にするなんて……ただの変態じゃないか!
俺はつい、金髪ドリルーーもといレイヴェル・フェニックスを見てしまった。
「なっ、何なんですの、その可哀想な人を見るような目は!や、やめなさい!そんな目で私を見ないでください!」
顔を扇子で隠してしまった。
…………あの子………苦労してるんだな…。
「では、そろそろ行くぞ、人間よ!」
イザベラはひと蹴りで俺との距離を縮め、殴りかかってくる。だが、俺はその場で【叢雲】を抜き、一閃。
「なっ!」
『ライザー・フェニックスさまの『戦車』一名リタイヤ』
アナウンスと同時にイザベラの体が光に包まれ消えていく。
「あなた!いったい今何しましたの!」
慌てた様子で俺へ聞く。だか、
「今のが見えなかったんならあんたらじゃ、勝負にすらならねぇな」
俺がそう言い【叢雲】を構える。
「くッ!あなたたち!全員でかかりなさい!」
残りの『騎士』、『兵士』、『僧侶』が一斉に攻めてくる。
「けど……雑魚が何人こようが、俺は倒せないぞ」
俺はその場から消える。正確には風を使い素早く動いただけだが、彼女らには消えたように見えただろう。
俺は『兵士』の二人、『僧侶』の一人、『騎士』の一人を一瞬でその場に斬り伏せた。
『ライザー・フェニックスさまの「兵士」二名、「騎士」一名、「僧侶」一名、リタイヤ』
「さて、あとはあんただけだけど、戦わないんだったな」
レイヴェル・フェニックスに聞くが、唖然としたまま動かない。ま、いいか。と思い俺は地を蹴り、飛んだ。
来る途中姫島先輩と木場くんがリタイヤした。やったのはライザーの女王だろう。
屋上へ行くとイッセーが、ライザーにボコボコにされている所だった。
俺は空中から一気に加速し、ライザーを地面へ踏みつけた。
「このクソガキ、俺の炎でもえーーへぶら!」
ライザーの悲鳴が聞こえたが、無視だ無視。
「おい、イッセー大丈夫か?」
「……り、りゅ……や、お、おれは……ま、まけない」
イッセーはすでに意識が飛びかけていた。
「アーシア!イッセーの治療を!」
俺はイッセーをアーシアへ渡した。それと同時にライザーも起き上がる。
「こ、この、人間風情がぁぁぁぁあああ!!この俺を踏みつけるどういーーぐあああ!」
ライザーが起き上がり、踏みつけられたことに激昂しかけていたが、そんなことは気にせずライザーを斬った。
「貴様!俺が話しているときにこうげーーグハッ!だから、おれのーーーうっ!く、クソ!あんまりちょうしーーぐぁぁぁああああ!って、俺に話をさせろぉぉぉおおお!!!」
ついにライザーも怒り、特大の炎が俺を囲む。だが、【叢雲】に纏っている風の威力を強くし一振り。それだけで炎はおろか、ライザーもろとも斬り裂いた?
またも悲鳴をあげるライザー。だが、俺はそこで止まらず更に攻撃を加える。普段使う竜巻に水を加える。
「火を消すにはやっぱり水が一番だよなぁ!」
俺は水の竜巻をライザーを中心に発生させた。
「くそぉぉおお!炎が……俺の炎がぁぁぁぁあああっ!!」
例え威力を下げようが、水と風。火を消すには十分すぎる。
ライザーの最大の武器である炎が簡単に消されていく光景を見て部長、小猫ちゃん、アーシアはただ呆気にとられていた。
俺はライザーを斬るのが楽しかった。しかし、そのため部長の後ろにいたユーベルーナに気づくのに少し遅れた。
「ッ……!部長!後ろ!」
俺が即座に言うが遅かった。すでにユーベルーナは攻撃準備が整っていた。俺は瞬時に【叢雲】をユーベルーナへと投げる。間に合うか間に合わないかギリギリのところ。
「……ら、ライザー、さま」
『ライザー・フェニックスさまの「女王」リタイヤ』
ユーベルーナは胸に【叢雲】が刺さりリタイヤ。
なんとか間に合った!
と、ホッと胸を撫で下ろして、もう一度ライザーへ向き合うとそこにはライザーがいなかった。
「ユーベルーナ!く、くそッ……!」
ユーベルーナが倒されたことに怒りを感じながらも俺に勝てないとわかったのか、ユーベルーナに気を取られている隙に、ライザーは部長へ狙いを変えた。
「逃げんじゃねえ!この焼き鳥野郎!」
俺は背を向けているライザーに水と風の斬撃を飛ばす。部長とライザーが煙で包まれる。
そしてーーーーーー
『リアス・グレモリーさまリタイヤ』
『よって、このゲーム、ライザー・フェニックスさまのしょうーーーえ?』
クソ!間に合わなかったか!
……でも、グレイフィアさんがあんな声出すなんて珍しいな。何かあったのか?
俺の疑問はすぐにわかった。煙が消え、そこにはライザーだけが見える。だが、ライザーの体はすぐに光に包まれ、この場から消失した。
『ら、ライザー・フェニックスさまリタイヤ』
あれ?これってどっちが勝ちなんだ!?