第1話 駒王学園に行きます!
あの戦いからもう何年もたった。
俺はグレートレッドに負けて以来力をつけるためにオーフィスに毎日次元の狭間で特訓してもらっている。そこでわかったことだが、天使を顕現させなくても天使の能力を使えるらしい。威力は半分以下しか出せないが、これは便利だ。
え?次元の狭間に居てグレートレッドに気づかれないかって?次元の狭間はバカ広いから気づかれても会うことなんて滅多にないし、もし会いそうになったらダッシュで逃げる!
オーフィスとの特訓のおかげでだいぶ力がついたが、まだまだグレートレッドには届かないだろう。
話は変わるが俺は今、冥界では結構な有名人だ。何故ならはぐれ悪魔を狩りまくっているからだ。時々SS級のはぐれ悪魔も狩ったりしていたら、魔王クラスだの神クラスなどと騒がれ、それが今の四大魔王の耳にも入り、魔王様たちに呼ばれてお礼を言われたりと、いろいろあり冥界では、『大剣の守護者』なんて呼ばれて英雄扱いされている。
ついでにはぐれ悪魔には真っ白なコートで戦う姿が神々しく見えたみたいで、『天からの使徒』なんて呼ばれて恐れられているらしい。
四大魔王達には俺がドラゴンだとバレたが、冥界で既に人気のある俺を追い出すことや、殺そうとすることはなかった。っと言うより四大魔王全員のノリが軽すぎる。俺がドラゴンなのにいいのか?と聞くとあいつらこういったんだぜ?
「ははは。ドラゴンであっても君はもう冥界の英雄じゃないか」
「そうだ。冥界の民が君を応援しているんだ。そこにドラゴンなんて関係ないことだ」
「サーゼクスちゃんとアジュカちゃんの言う通り。君のおかげで民は安心してくらせているんだぞ☆」
「え〜、面倒くさいからどうでもいい」
だぞ?おかしくないか?ちょっと前までドラゴンと戦争してたんだぞ?冥界がドラゴンに滅ぼされかけてたんだぞ?こいつら。
あ、俺が謎の白いドラゴンだとは言っていない。言えばいくら冥界で有名でも流石に冥界にはいれなくなるだろうし、タダで帰してもらえるとも思えないからな。
あいつらの事だからもう暴れないでくれよ?とか言って終わりそうだが、まだ言う時期じゃないだろう。
そのおかげでこうしてオーフィスと冥界で暮らすことが出来ているんだけどな、
ちなみにオーフィスのことも言っていない。それを言ってしまえば俺と同様大変なことになるからだ。
そのオーフィスだが、あのキス以来俺はオーフィスを抱きしめて寝ている。オーフィスもそれを受け入れている。が、逆にオーフィスからも抱きついてくることもある。
それが滅茶苦茶可愛いんだよなぁ〜。
♢
それからまた何年も過ぎた頃、オーフィスから話があると言われたので訓練の後、聞くことにした。
俺は訓練が終わった後、シャワーで汗を流し、リビングへ向かう。
「んで?話ってなんだ?」
「我、今日でこの家を出る」
予想外の言葉に俺は一瞬固まった。だが、すぐに我に返り、オーフィスに聞いた。
「家を出るってどういう事だ?ここでの暮らしはもう飽きたか?」
「違う。我の力、必要とする者がいる。だからそこに行く」
「それは……俺も一緒じゃダメなのか?力が必要なら俺もいて損はないと思うが…」
だが、オーフィスは首を横に振った。
「龍夜は、来なくて大丈夫。我、一人で出来る」
「…………そっか」
相変わらず何を考えているかわからないがオーフィスがやると決めたのなら黙って送り出してやるか。
「我、龍夜にまた会いに来る。我と龍夜、家族」
その言葉を聞き、嬉しくてオーフィスを抱きしめた。
「………あぁ。俺とお前は家族だ。だから、いつでも会いに来い」
俺はそう言い、オーフィスを送り出した。
♢
オーフィスが家を出てもう、2年は経つ。あいつのいない生活には慣れたがやっぱり寂しい。
(オーフィスのやつ、元気でやってるかな)
物思いにふけていると、目の前に知っている魔法陣が現れた。そこから出てきたのはメイド服を着て、銀色の髪をした見知った女性だった。
「お久しぶり。グレイフィアさん」
メイド服を着た彼女はグレイフィアさん。サーゼクスの妻であり、最強の女王。
「お久しぶりです。龍夜様」
「それで?グレイフィアさんが来たってことは、サーゼクス達が俺を呼んでるの?」
グレイフィアさんがここに来たってことはそれしか考えられない。
「はい。正確にはサーゼクス様個人ですが」
彼女は仕事のときは、夫のことを様ずけで呼ぶのだ。公私混合はしたくないそうだ。
「サーゼクス個人から?珍しいな。今まで魔王全員からの要件が多かったのに…」
「それは魔王様に直接お聞きしてください」
「ん。わかった。なら、用意ができたらすぐに向かう」
俺は外室用の服に着替え家を出た。
♢
俺は今、サーゼクスの部屋でグレイフィアさんが入れた紅茶飲飲みながら雑談していた。
「で?サーゼクス今回は何を俺に頼みたいんだ?」
このままでは中々本題に入れないと思い、俺から切りだした。
「そうだった。今日は君にお願いがあったんだ。楽しい雑談で忘れるとこだったよ」
最後に、ははは。と笑った。こんなんで大丈夫か?本気で心配してしまう。
「君には学校へ行って欲しいんだ」
ん?サーゼクスが訳の分からんことを言ってきた。学校?俺が?何故?訳が分からずサーゼクスに聞いた。
「何で俺が今更学校に行かなくてはならない?」
それはそうだ俺は学校なんて通う歳じゃない。なのに何故?そう思っていると……
「その学校には妹がいるんだ」
…………………。
「はぁ〜、なるほど。つまり俺は、お前の妹の護衛をしろって事か?」
「いや、少し違う。妹とはもう高校3年だ。そうではなくて、最近堕天使に不穏な動きがあるんだ。それにその堕天使が凶暴な使い魔を持っていると言う情報がある。このまま放置しておくわけにもいかないから君にお願いしたんだ」
「ようは、妹が心配だから、俺が行って片付けて来いってことだろ?」
遠回しに言ってくるサーゼクスに対し俺は結論だけ述べた。
「そういう事だよ」
このシスコンめっ!
俺はそう毒づいた。
「それで、受けてくれるのかい?」
断る。と言ったところで次はグレイフィアさんにお願いされるだろう。俺はグレイフィアさんに昔、お世話になったからお願い事を断ることができない。つまり、もう詰んだのだ。受けるしかない。その事をサーゼクスはわかっててやってるからタチが悪い。
「………わかったよ。受ける」
「受けてくれるか。ありがとう。君ならそう言ってくれると思ってたよ」
なんだよ、ハメといてよく言うぜ。
「で、いつから行けばいい?」
「もう編入の手続きは終わっているから明日から行ってもらうけど、いいかな?」
断らすきなかったんじゃねぇーか!
今頃騒いでももう遅いので大人しく従うことにした。
(はぁ〜、オーフィスごめんな俺人間界行くわ)
オーフィスの事だから会いに来るときは俺の気配を辿って会いに来るだろう。
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おっす!俺は兵藤一誠!両親や、学校の奴らは俺のことを「イッセー」と呼ぶぜ。
俺は学校では、エロくて有名だ。他にも2人エロ奴がいて、そいつらとあわせて変態3人組、なんて呼ばれている。
私立駒王学園。
俺が通っている高校だ。
現在は共学だが、数年前までは女子高だったせいか女子が多い。俺がこの学園を最大の理由だ!女子に囲まれて授業を受けたい。ただそれだけのために俺はこの学園を選び、通っていた。
だが、全くもって彼女はおろか、女友達も出来ない。モテるのはイケメンだけで、他の女子は俺なんて眼中にない。
クソ!なんでだ!俺はただ女の子と仲良くなりたいだけなのにっ!
って言ったものの、それには理由がある。
それも全部自分のせい。
剣道部の着替えを覗いたり、教室で堂々とエロ本や、エロDVDなどを出し、エロトークに燃えたりと、エロ過ぎて誰もが引いていくのだ。
けど………エロくて何が悪いんだよ!って思う。まぁ、俺の場合はエロ過ぎるのがダメなんだろうけど今更直すことなんてできない。
俺はため息をつきながら教室に入るなり、自分の席に腰掛けた。二人の男が声をかけてきた。この二人が変態三人組の残りだ。丸刈り頭の松田。キザ男のように格好つけてるメガネが元浜。俺の悪友二人だ。後は、チャイムが鳴るまで、この二人と話して時間をつぶした。
そしてチャイムが鳴り、教室に先生が入ってくる。皆んなが席に座ったのを見ると、いきなりびっくりすることを言い出した。
「え〜、今日はいきなりですが、このクラスに新しい仲間が増えます」
先生のいきなりの言葉に……
『ええええええええええええええええええええええええええっ!』
クラスの全員が驚いた声を上げた。
そこで男子の一人が聞く。
「先生!女子ですか!美少女ですか!」
おお!ナイスだ!そこは俺も気になっていたぜ!女子達も目を輝かせていた。
「女子の皆んなは期待してていいですよ?男子は残念でしたね。今回は男子です」
先生がそう言うと、女子は騒ぎ出し、男子は俺を含めてテンションがダダ下がりになった。
「それでは、風見くん。入って来なさい」
すると教室のドアが開き1人の男が入って…………お、男?まじで?あれが?
クラスの全員が困惑している。何故なら今入ってきた生徒は、腰まで伸びた白髪に肌は雪のように白く、体はすらっとした、中性的な顔。見た目では完全に美少女だ。しかも超がつくほど。
「今日から、このクラスに転入してきた、風見龍夜です。よろしくお願いします」
と、頭を下げた。するとーーーーー
『きゃああああああああああああああっ!』
女子の連中が黄色い声を上げる。
「すごいキレイな髪!」
「一見美少女に見えるけど、男と知ったら超美少年に見える!」
「肌もキレー!こんな子が男の子なんて信じられない!」
女子が興奮してる中、男子たちは面白くなさそうな顔をしていた。が、ごく一部の男子が「あんなに可愛かったら男でもありじゃね?」とかわけのわからんことを言ってる。
俺は絶対女の子のほうがいい!いくら可愛くても男は男だ!
そう思いながらも、女子に囲まれている、転校生をみているのであった。
う、羨ましいとか思ってないからな!