Monster Hunter 《children recode 》   作:Gurren-双龍

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第9話 平穏でのみ知れること

8月21日

 

「……なんとか出られた」

 

上田雄也十二歳。今日、初めて電車に乗った。色々道に迷いかけたが、改札が思いの外単純だったため、苦労少なく抜けられた。俺は田舎者だ。だから自動改札機だけでハイテクを感じている。――まあ、毎日ハンドルマの設備を見てたら段々その感じも薄れてきたが。

 

「えっと……確か東口か」

 

俺の着いた岡山駅は、出入口が東口と西口の二つの、比較的入りやすい構造である。東口側はいかにも繁華街といった様相であり、岡山城や後楽園もこちら側。西口側は直近のホテルとかスポーツアリーナがある方向だ。

余談だが、うちの支部は岡山駅から二駅ほど東側にある。だから運賃は思ったより安く済んだ。

今日俺が電車に乗って繁華街の方まで来たのは、もちろん理由がある。それは――

 

「……見つけた」

 

視線の先には、噴水の前でこっちに向かって大きく手を振る真癒さんと、腰に手を当ててこっちを見つめている――というか睨んでいる――真治がいた。

そう、今日俺がここに来た理由は一つ。真癒さんに誘われたのだ。何故か。因みにアニキはいない。留守番を任されたのだ。可哀想なのでせめてお土産ぐらい買っていってやろう。

 

「遅れましたか?」

「全然。むしろ私達が早く来ちゃったというか」

「というか思ったんですが……真癒さんと俺、出る場所同じなんですから別に待ち合わせしなくても……」

「最近アンタばっかりお姉ちゃんを独占してるじゃない! 今日はアタシのターンよ!」

「へいへい。そういう事かよ」

 

やはりというか、真治のせいだった。まあ別にいいのだが。鍛錬の時間外で、なおかつオフの日まで真癒さんを縛る気はないし。

 

「それじゃ行こうか。まずはお昼ご飯だね。何がいい?」

「肉を所望します。特にハンバーグ」

「子ども舌ねえ」

「子どもだしな」

「アタシは何でもいいわ」

「なら、適当なファミレス行こっか」

「了解」

「はーい」

「……雄也、堅いね?」

 

いつも通りです。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

今回の買い物の目的は、日用品の調達や休暇らしく遊ぶこと……は表向きのモノ。本当の狙いは、オフの雄也、つまり平常時の彼はどういう人間なのか、を探る為のものだ。しばらく忙しくて中々休みも取れなかったし、仕事の時の彼しか見た覚えがない。いや、なる前の彼を見たことこそあれど、アレは平常時とは言い難い。だから今回、平常時の雄也をよく知るため、外出に誘った。

のだが――

 

「なにアンタ、不機嫌なの?」

「……は? 」

「さっきからずっとムスッとしてるし、話しかけてこないからよ」

「……ただ真顔なだけなのと、話すことが無いからだな」

「お姉ちゃんと一緒なのに?」

「移動してるだけなんだからそこまではしゃぐモンでもねえしな。あと話すとなると仕事のことになるから避けた」

「……」

 

真治は唖然としていた。私も驚いた。雄也はあまりにもコミュニケーションが無いのだ。ハンドルマにいる時はかなり饒舌――いや、今思えば〈ハンター〉関連の事しか話してなかった。……そういえば、雄也の趣味はなんだっけ。

 

「……雄也、趣味はなんだっけ?」

「ゲームですね。あとは……最近は鍛錬です」

「もうトレーニングバカになってるわね……」

「学校の課題済んだら、やる事ないからな」

 

趣味に鍛錬を入れてしまうあたり、今の雄也からはあまり余裕を感じられないなぁ……あ、でもゲームか……私じゃなく誠也か真治辺りなら……

 

「それで、どんなゲーム好きなのよ?」

 

あ、聞いてくれた。流石私の妹。

 

「どんな……強いて言うなら『モンスターハンターシリーズ』かな」

「あぁ、アレね。アレのせいでハンドルマと何処ぞのゲーム会社の癒着を疑われたからあんまり好きじゃないのよ」

「え、そうなのか?」

「知らないの?情弱すぎでしょ……」

「ひでぇ言いようだなオイ」

 

……聞いてくれたはいいが、いい結果とは言えないかなこれは。まあ、取り敢えず座って落ち着ける場所まで行こうか。

ん? なんか目的地方向(むこう)が騒がしい。なんだろ?

 

「ひったくりよ! 誰か止めて!!」

 

……また、随分古典的な頼み文句だこと。 しかし見過ごすわけにもいかない。私達が関わった事が分かりにくいよう、せいぜい電撃で動きを鈍らせて他の人に捕まえて――

 

「ちょっ、アンタどこ行くのよ!?」

「……へ?」

 

振り向くと同時、何かが私の前を走り去った。っていうかアレ雄也!?

 

「わ!? 」

「悪いなオッサン」

掌をひったくりの目の前まで突き出し、そのまま顔面を掴む――と思いきやギリギリで胸ぐらを掴み、そのまま自分の脚を引くように蹴り払ってバランスを崩させ、 掴んだ腕はそのまま押して倒した。鮮やかだなぁ……じゃなくて!

 

「ちょっ、雄也何してるの!?」

「何って……ひったくりを捕まえたんですが」

「それはいいよ!? でも目立つような事して欲しくなかったのに……」

「え!? そ、それは先に言ってくださいよ……」

 

ここまでジト目(?)かつ真顔だったのに慌て出す雄也の表情にはどこか愛嬌が……じゃなくて逃げねば!

と思ったら拍手が鳴り出した。ああ、これはいけない。逃げ場が無くなった。仕方がない。全力で逃げよう。

 

「行くよ雄也、離さないでね」

「へ?」

「あと喋らない。舌噛むから」

「は?」

 

雄也の間抜けな声は放っておく。まずは真治も捕まえていこう。逃げ込む先は、裏通りでいいか。――それじゃ、全速力で。

 

「フッ!!」

「――ッ!?」

 

雄也が声になってない驚愕の声を上げる。真治も驚きの表情で固まってる。無視するけど。

 

「ちょっ――おね」

「ま、真癒さんっ、まっ」

 

知らない知らない。二人の言うことなんて知りません。というか聞こえるはずない。時速何kmかは忘れたけど怒り状態のティガレックスから走って逃げきるだけの速度はある。というか途中で見えなくなった事もある。龍力での身体強化はやはり便利だ。

途中壁を蹴るなどして強引に曲がったことなどあったが、順調に逃げきれた。しかし引き換えに雄也と真治はグロッキーだった。これは流石に申し訳ないと思った。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

それからさっきの人達に見つからぬよう、上手く目的のファミレスに着いた。見つからぬよう動いたためか、お昼時にしては遅く、十三時となった。まあ、人が少ないから不幸中の幸いと言ったところだが。

 

「さ、散々な目に遭ったわ……」

「本気ですまん」

「まあまあ。過ぎたことは忘れてご飯食べよ?」

「先にドリンクバー行ってきます……」

「詫びとしてアタシの入れてきなさいよ……烏龍茶で」

「はいよ」

 

因みにこの席、目立たぬ為にドリンクバーからかなり遠い席となっている。つまり雄也がドリンクバーに行っている間はまず話が聞こえない。チャンスだ。

 

「ねえ真治、雄也をどう思う?」

「それどういう意味? まさか好きなのとかそんなんじゃないよね?」

「まさか。いやそれでも面白そうだけど今はそれじゃないの。仕事関係の時の雄也と、今の休日の雄也、比べてみてどう思う?」

「そうねえ……なんていうか、仕事の時より表情が少なすぎる気がする」

「やっぱりかぁ……」

 

帰って誠也にも聞いてみよう。それにしても雄也、こんなに無感情だっけ。両親に啖呵切った時とか、あの場の空気中に漂ってた私の龍力が震えてたほどだったのに。

もしかして、私に「わかりやすい」って言われたの気にしてる? そうだとしてもちょっとやりすぎなレベルで無感情だよ……

 

「何話してるんですか」

「ッ!」

「な、何でもないわよ。って言うか、アンタこそなんで手ぶらで戻ってんのよ」

「自分のを忘れてきてな」

「はぁ……どうせ二つしか持てないでしょうし、持ってってあげるわ。先行ってなさい」

「助かる」

 

真治が雄也と共に席を立った。……まあ、趣味の話なら問題ないようだ。要するに、「無理に話そうとして無駄な労力を割くことを良しとしなかった」だけなのだろう。ご両親との大喧嘩の直後は、まだ私と何か大きな関係があった訳じゃないから話をしてみようとしただけで、実際は話をすること自体が得意ではないのかもしれない。言うなれば「口下手な頑張り屋さん」なのだろう。

でも……仕事の時は結構やかましい、って真治が言ってたっけ。多分、ノリノリな時はそんなに口下手じゃないのかもしれない。

 

「ただいまー」

「カル〇スで良かったですよね?」

「おかえりー。それで良かったよー」

 

まあ、今しばらくはこのままでいいか。先日手を握った時も、なにか悩みを抱えた時特有のもやもや感があったけど、詳しくは分からない。私の読心術(これ)は、あくまで大気中の龍力に宿った表面的感情しか読み取れない。その龍力の発信源、つまり読み取りたい対象に近ければ近いほど明細になってくるけど、トラウマとかのような奥底に渦巻くものはハッキリと感じ取れない。たとえ直に触れてもだ。……だからあの時も。後で知るハメになったし。

 

「真癒さん?」

「お姉ちゃんどうかした?」

「……ううん、何でもないよ。ご飯食べよっか。私の奢りだよ!」

「いや自分で」

「先輩の施しは、受けとくもんだよ」

「……まあ、いつかお返し出来るように努めていきます」

「期待してるよー」

 

今はまだこれでいい。いつか、本気で悩み、一人でどうにもならなくなった時に、手を差し伸べてあげよう。彼が、自分の力で大体のことが出来るその日までは。そして適当に期待しよう。彼の中に宿る、可能性に。




いつもの半分以下の量でございます。

そして主に真癒視点。

あと、チルレコとは別にちょっと書いてみたくなったものがあります。一応オリジナルです。まあ、軽い習作みたいなもんです。書いてみたくなったんだ……日常イチャイチャを……!
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