Monster Hunter 《children recode 》 作:Gurren-双龍
2011年 11月23日
左と右の剣が、袈裟斬りと逆袈裟を繰り返しながら交差する軌道を描く。既に対象は刀傷まみれになっている。最後に両の刃を振り下ろす。対象は程なくして立つ力を無くし、その床に倒れる。倒れたのは――いわゆる案山子だ。
「どうだ坊主! そいつの――『ルドロスツインズ改』の振り心地は!!」
「最高だよおやっさん。 強化前よりスムーズに斬れたよ」
「そいつぁ良かった! 仕事した甲斐があるってもんよ!」
【ハンドルマ第一中国地方支部】のB1階。その技術課区画にある『加工班』の部屋で、俺は新調した『ルドロスツインズ改』を振っていた。過去に討伐したロアルドロス二頭と、ルドロス数頭の素材を用いて作り上げてもらった新作だ。
「それと坊主、向こうに強化した防具置いてっから、着てこい。 感想聞かせろ」
「あいよ」
因みにさっきから俺を『坊主』呼ばわりするこの人は、『加工班』班長であり技術課の副課長を務める、『
さて、明彦爺さんは他の仕事があるから、後は俺に投げたようだ。言われた通り奥に行くと、部屋の壁にランポスシリーズが掛けられていた。
「お、綺麗になってる」
先日、無理な動きをしたせいで腹部とか関節部が割れてしまったため、強化も兼ねて修繕してもらっていたのだ。その間は〈モンスター〉が現れても戦闘には出してもらえないため、少し退屈していた。が、それも今日で終わりだ。
早速改修したランポスシリーズを着込む。
「おぉ……!」
前より着心地が良くなってる。オマケにどこか軽く感じる。そして前より動きやすい。動いた時の窮屈感はない。
「おやっさんおやっさん!!」
「なんだどぉしたぁ!!」
「最高だよこれ!」
「そりゃそうだ。ワシがやったんだからなぁ!!」
爺さんの高笑いが部屋に響く。周りの職員は「またいつものだ」と言わんばかりに無視して作業を続けている。職員さん。お気の毒だが更にやばくなるよ。だって喧しい足音が近付いてるもの。
「よぉ雄也ァ!! 武具の調子はどうだァ!!」
「いい具合だよ。これなら次ロアルドロスとやりあっても上手く立ち回れる自信がある」
喧しい足音の正体は、まあ分かりきってはいたがアニキだ。そして声も喧しい。
「あ、そうだ。雄也には用があったんだ」
「何?」
「お前、このあと暇か?」
「……一応」
訓練を済ませてからここに来たので、後は寝る準備とかぐらいだ。
「そうか。なら良かった」
「何かあるの?」
「おう! 聞いて驚くなよ! 明日から俺とお前で【関東支部】に少し出張だ!」
「……は?」
ちょっと待てちょっと待て。
「このあとって言ったよな!?」
「おう、言ったぞ? 『このあと』が今日の中の『このあと』とは言ってないぞ」
「ちょっと待てよ俺明日も学校が」
「俺もだよ。大丈夫だ、公欠になるし。あとこれ支部長命令なんだよな」
「それ先に言ってくれよ!? ……ったく、いつ出るんだ!? 朝か? 昼か?」
「午前10時にヘリポート集合だ」
「取り敢えず部屋で準備してくる!」
いきなりだが、出張することになった。
◆◇◆◇◆
11月24日
「ふわぁ……」
「遅いぞ
「まだ八時だろ……?」
「
「細けえな……禿げるぞ?」
「父も祖父も禿げてないのでな、禿げはしないさ」
「そういう事じゃあねえんだがなあ」
【ハンドルマ関東支部】の公用ロビー。今日はある行事の為、俺含めた今期生――〈モンスター〉再出現の2008年の一年前からなので第四期生か――三名が集められた。
それは、各支部への出張体験、及び出張に来た他支部の〈ハンター〉の相手だ。因みに俺――『
「では、確認する。鎌倉、貴様は【第一中国地方支部】だ」
「……了解」
「岸野。貴様は――」
「【沖縄支部】ですよね。承知しています」
「……せめてちゃんと言わせてくれ」
「すみません、つい」
「はぁ……全く。そして桐谷、貴様は――」
「居残りだろ? わかってんだよ!」
「最後まで言わせろ貴様ら! あと桐谷! 貴様は言葉遣いを直せ! 支部長にまた言われるぞ!」
「……チッ、分かりましたよ」
「……はぁ」
朝から叩き起された事と、今日からのだるいそれを思うとついつい当たりもキツくなっちまう。後で謝っとくか。
「あぁそうだ。桐谷、お前に言っておくことがある」
「説教なら受け付けんぜ」
「【第一中国地方支部】の『常磐 誠也』が来るそうだ」
「ッ!! あ、アニキがか!?」
「ああそうだ。だから、やらかすなよ?」
「あったりめえよお!!」
「……」
「君って、やはり単純だな」
何か言っているが聞こえない。とにかく気合いを入れねば。俺には約束があるんでな。
◆◇◆◇◆
ヘリに揺られること一時間ほど。【関東支部】のある千葉県にやってきた。因みに〈モンスター〉との遭遇はなし。やはりあの時の真癒さんとアニキはよほど不運だったのだろう。
だが、俺も大概不運らしい。だって――うぇっぷ。吐きそうだ。
「お前……乗り物に弱いのか?」
「うぐ……そう……なのかも……な」
「電車は大丈夫だったのにか?」
「多分……高い所っていう不安も……混ざったから……かな」
「取り敢えず、水を飲め。その後安静にな」
「ありが……とう」
今はヘリポートから屋内に入り、すぐに見つけた椅子に横にならせてもらっている。
落ち着いたところで感想を一つ。正直、今後の空路にヘリは使いたくない。夏に乗ったが、あの時は集中してたし距離も短かった。
つまり俺の場合、要は揺れまくり、高い場所を長時間飛ぶのが堪える。飛行機は高くてもあまり揺れないからまだいい。が、ヘリコプター、てめえはもうダメだ。
「取り敢えず、お前はここで休め。俺が話を付けてくる。あとしっかり休める場所も貰ってくる」
「わ、悪いなアニキ……」
「無理すんなよ」
「お……う」
アニキ、普段はあんなに豪快なのに何故普通にこういう気遣いが出てくるのか。女性ならこのギャップで落ちるのではないか?いや知らんけど。
取り敢えず水だ水……美味い。砂漠で飲むオアシスの水とはまさにこういうものなのだろうか。
よし、少し寝るか。まだ気持ち悪いのが完全に消えた訳じゃあないしな。
「……」
ん? なんか目の前に人がいる? 目を開けてみると、カチューシャを付けた黒い長髪に蒼い瞳を持った、どこか大人しい印象を受ける少女が、こちらを見下ろしていた。この目……なんというかあれだ。散歩してる時に偶然見かけた珍しい小動物にちょっと気を引かれて見つめている、と言った感じの目だ。勝手な感想だけどそう思った。
……にらみ合い……というか見つめ合うのもここまでにして、挨拶しとくか。多分、【
「こんな姿勢で……失礼してます。本日付けで【関東支部】に一時出張として来た、【第一中国地方支部】の『
「……よろしく。……貴方、どうしたんですか?」
「移動用のヘリで酔ってしまいまして……情けない姿で申し訳ない」
「……〈ハンター〉でも乗り物酔いはあるんですね」
「そうみたいです」
「……」
会話が途切れる。……正直、自分でもここまで話せたのは奇跡だ。これ以上話をしなくてもお釣りが帰ってくる程だと思う。が、アニキがいつ戻るかも分からんこの状況、投げるのは今後の自分のためになるのか? 否だろう。俺は『
「あの……名前は?」
「……私の?」
頷いて返す。その後ちょっと考えるような仕草を取った。が、すぐに思考は終わったらしい。
「私の名前は――」
「おぉぉぉぉぉぉい雄也ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「――っ!?」
目の前の彼女が飛び退く。しかもかなりドン引いた表情だ。……アニキめ、間の悪い。ナンパしようとしてた訳じゃないがせっかく一歩歩んでみようとしたのに……冷静になって考えると、割と恥ずかしいこと考えてるな俺。……取り敢えずさっきのは忘れよう。
「うるさいアニキ。頭に響く」
「あ! す、すまん雄也。つい……」
「まあいいよ。……んで、用は何?」
ついつい棘が出る。そりゃ気持ち悪い時に大声出されたら誰だってキレる。
「そうそう。俺達二人分の手続きなら済んだぜ。あと、俺達が寝泊まりする部屋も貰ったから、移動しようぜ」
「……そうか。なら行こっか」
「肩貸すぜ?」
「ううん、大丈夫。出来れば荷物を……」
「おう、任せろ」
取り敢えず立ち上がり、その場をあとにする。
「そういえば、あの人は?」
さっきの黒髪さんは既にいなかった。アニキに驚いて逃げたか、それともアニキに任せればいいか、とどこかに去ったか。どちらにせよ謝罪とお礼が言いたいのだが。
「まあ……ここの人ならまた別の機会に会えるか」
さて、まずは休んで体調を整えよう。その後挨拶回りになるらしい。アニキが気を利かせて少し遅らせてくれたのだろう。ありがたい。
◆◇◆◇◆
「……なんだったんだろう」
嵐のような人が現れ、自己紹介し損ねた。あの倒れてた人……上田さんだっけ。彼はあの人を『アニキ』と呼んでた所から、かなり信頼ある仲のようだし、任せて逃げたが問題ないだろう。
「……乗り物酔いって、あんなに苦しいんだ……」
今度、乗り物酔いしてる人を見たら、優しくしてあげよう。酔ったことがないからわからなかったが、次は変えていこう。
「鎌倉さん、そろそろ出発です。中へ」
「……了解」
ヘリのパイロットが話しかけてくる。事務的なので対応はしやすい。……今度、
日常イチャラブ書きたい、って言ったけど結局やる気とネタが湧かずにチルレコに走る始末。まあこっちがメインだからいいんですけどね!