Monster Hunter 《children recode 》   作:Gurren-双龍

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第一話書き直す言ってたけどまだ出来てないのでこの後に書き始める感じですねー(白目)

一ヶ月ぶりですね。


第二章〜止まらないカウントダウン〜
第14話 試練到来


2012年 7月20日

 

「フッ!!」

 

円形の的の真横一列真ん中に、俺が投げた三本のナイフが刺さる。

 

「うん。大分上手くなってきたね、ナイフ投げ」

「でもまだ三本です。真癒さんなんか五、六本同時に投げてるじゃないですか」

「こればっかりは慣れだよ、慣れ。実は雄也の方が成長速度は速いんだよ? なにせ雄也、手が小さいから複数投げるの苦労するはずなのに、半年ちょっとでもう三本投げてるんだから。私だってその頃は二本が精一杯だったんだよ?」

「……一本すらまともに投げられなかった頃と比べると、凄いんだな、俺」

 

【ハンドルマ第一中国地方支部】の訓練室。その投擲訓練場にて、俺は真癒さんと投げナイフの特訓を行っていた。この特訓が始まったのは【関東支部】からの出張から帰った後。

実は俺、凄まじいノーコンなのだ。ペイントボールがアニキの盾に当たるわ、閃光玉がすっぽ抜けて真後ろに飛ぶわ、音爆弾が真癒さんの耳元ギリギリに飛ぶわと、散々なピッチングだった。投げナイフも真治の弾丸にぶち当てたりと、何故当てられたのか不思議なことも起こった。もちろん真治に怒られた。言い合いの最中に散弾を装填(リロード)された時は流石に焦ったし全力逃走した。

 

閑話休題。

 

そんな訳で、俺は真癒さんからアイテム投擲の訓練を、半年以上に渡って重点的に受けている。

ん? ジャギィの群れとランポスの群れに囲まれた時&亜種火竜夫妻に襲われた時の閃光玉? よく覚えてないが死力を尽くしたから当てられたんじゃね?いや適当に言っただけだが。

……そういえば、亜種火竜夫妻に襲われてから一年と一ヶ月。そして正式入隊から一年ほどか。早いものだ。あれからも色んな〈モンスター〉に出会った。紫水獣(ロアルドロス亜種)土砂竜(ボルボロス)黒狼鳥(イャンガルルガ)舞雷竜(ベルキュロス)など、その他色々な〈モンスター〉を元の世界(と勝手に俺が思っているナニカ)に送還、もとい狩猟してきた。真癒さんがかつて勧めたきた割り切り方のお陰で、今は特に悩みはない。強いて言うなら、もっと精進したい、といったものだ。

 

「雄也、どうしたの?」

「ああいえ。ここまで色々あったなぁ、って」

「そっか。もう一年だね。となると……そろそろ()()の時期かな」

()()?」

「大丈夫、君なら出来る」

「いや、だから何を……」

 

尋ね返そうとした時、突如アナウンスのチャイムが流れる。

 

「……来たね」

「何が、ですか?」

『上田雄也さん、冬雪真治さん。至急、司令室までお願いします。繰り返します。上田雄也さん……』

「ほら、呼ばれたよ」

「せめて質問に……」

「いいから。行ってきて。そこに答えがあるから」

「……そういう事なら。訓練、ありがとうございました!」

「うん、どういたしまして」

 

様式美の挨拶を済ませ、訓練室を先に出る。呼び出しの理由はなんなのだろうか。ともかく急ぐか。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「来たわね」

「わざわざ待ってたのか?」

「ちょっと少し思い当たる節があるのよ、今回の呼び出し。だから心の準備がてら、ね」

「思い当たる節? 最近のあれこれとなるともう……正式入隊一年目ぐらいしか……」

「間違いなくそれしか無いわよ……」

「……言われてみれば、それもそうか」

「察し悪すぎよ。推理小説でも読んだら?」

「生憎、自分で物語の犯人を推理するより、物語の中でどう推理されて話が進んでいくか、それを楽しむタイプなんでな」

「推理が苦手な言い訳?」

「ほっとけ」

 

軽口を叩き合いながら、俺達は司令室の入り口を前に横に並ぶ。

 

「それじゃ、行くわよ」

「おう」

 

真治がIC入りのライセンスカードを電子ロックのドアのすぐ隣の機械に翳す。ピッ、という短い電子音と共にロックが解除されたという表示が出る。あとはもう一歩進むだけで扉が開く。まあ、すぐ踏み出したが。

 

「「失礼します」」

「ふむ、思ったより早かったのぉ」

 

中に入ると、いつも通り制服の袖を通さず羽織った支部長の爺さん『冬雪 真玄(ふゆき しんげん)』と、『武具課』課長の川尻の爺さん。そして、眼鏡をかけたスーツ姿の、金髪をポニーテールに纏めた妙齢の女性だ。目の色からして外人さんだろうか。なんにせよ、初めて見る人だ。

 

「支部長。上田雄也、冬雪真治、両名参りました」

「いつも通りで良いぞ」

「ねえお爺ちゃん、用ってな――」

「支部長と呼べい! そこまでいつも通りにせんでよい!」

「あだっ!」

 

杖の先が真治の眉間を穿つ。コーン、と小気味良い音が響く。

 

「カッカッカ。真玄も大変じゃのう」

「お主もじゃ!」

「カッカッカ! 参ったのう!」

「……あの、よろしいでしょうか」

「おっと、失礼。どうぞ」

 

金髪の女性の咳払いで一度話が止まる。まあ話にもなってないので良いのだが。

やっと落ち着いた事を女性が認識すると、その女性は俺達の前に出る。そして品定めでもするかのように俺達を見回す。……あまり気分がいいものでは無いな。

 

「彼女は、ドイツのポツダムにある【ハンドルマ本部】から来た査察官じゃよ」

「こ、こんにちは」

「ご紹介にあずかりました、査察官の『リンドヒルト=イネシア』です。早速質問ですが……お二人は、一年前に〈ハンター〉として【龍力組成生命体対策特務機関 ハンドルマ】に正式に入隊した、で間違いないですね?」

「は? な、なに? その【龍力なんたら】って……」

「お前なぁ……【ハンドルマ】の正式名称だよ……」

 

俺とイネシア査察官は共々溜息をつく。なにせ職場の正式名称を知らない奴がいたのだ、呆れたくもなるだろ。

 

「ごほん。と、ともかく、入隊から一年経過した、でよろしいですね?」

「「はい」」

「分かりました。ではこれを」

 

イネシア査察官は脇に挟んだファイルから、一枚のプリント用紙を取り出し、俺達の前に差し出した。見た所書類のようだ。内容は……

 

「『上位昇格試験概要と申し込みについて』?」

「……やっぱりこれね」

「『上位昇格試験』は、正式入隊から一年が経過した〈ハンター〉が受ける試練です」

「……なるほど。真癒さんの含みの入った言い方の原因はこれか」

「もし受けるのであれば、指定した欄に記入してください」

 

書類を受け取り、目を瞑って思考を巡らす。それは今まで狩ってきた〈モンスター〉との戦いの時の記憶。矛盾に苦しんでいた時期。色々乗り越えて、今はここにいる。なら俺はその先に向かうべきだろう。つまり答えは一つ。

 

「受けます。どんな試験であっても」

「アタシも同じよ。負けてられないもの」

「……では、ご記入お願いします。その後、更なる詳細を説明しますので」

「こっちで書け二人とも。ペンぐらいある」

 

支部長に言われるがまま、平たい机に向かい、書き始める。名前、性別、生年月日、入隊日、使用武器種、所属、etc……書き終えた。

 

「これでいいですか」

「どれどれ……ええ。書類記入は以上です」

「アタシも書けたわ」

 

真治のをチェックし始めた。頷いた。オーケーのようだ。

 

「では、手短に説明致します。まず試験の達成条件は、我々が試験の相手に足る力を持っていると判断した〈モンスター〉を捕獲する事です。捕獲は単純に討伐するよりも困難なので」

「その選別は……〈モンスター〉が現れる度にするものですか?」

「はい。事前にどの〈モンスター〉が出るかなど、我々でも分かりませんので」

「では……試験日は不定?」

「そうなりますね。しかし現時点のあなた方の戦績を鑑みるに、試験相手は飛竜種が妥当であると見ています」

「飛竜……」

 

かつて訓練生だった俺達に猛威を振るった、あの(つがい)の竜を思い出す。それだけじゃない、【関東支部】への出張や、『舞雷竜 ベルキュロス』との戦闘でも、その雄々しさ、荒々しさを感じた。それらに負けない、そんな相手を、俺と真治の二人で捕獲……いいぜ、やってやる。一年前とは、違うってとこを見せてやる……!

 

「他に、質問は?」

「俺はありません」

「アタシも」

「そうですか。分からないことがあれば、また司令室まで。私は基本、ここにいますので」

「分かりました」

 

お辞儀をして、俺と真治は司令室を出る。その時査察官がなんか微笑みかけてたような気がした。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「……よく出来た子達ですね」

「光栄ですな。……しかし、あの小僧、気に入ったのですかな?」

「あ! い、いえ。……ちょっと、ある人を思い出しまして」

「面影、などでも感じましたかな?」

「そう、なのかもしれません」

 

もしや、『彼』、なのだろうか。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

地下にある訓練室。今は俺と真治で集まっている。真癒さんはいない。先に休んだのかな?

 

「さてと、雄也」

「連携訓練、だろ?」

「その通りよ。相手は飛竜。でもアタシ達は、今まで遭遇したそのほとんどをお姉ちゃんやアニキが主力となって討伐したのに参加した程度。つまり、まだ強力な飛竜を相手するには経験が足りないわ」

「分かった。んで、何を相手にする?」

「……そうね。フルフルとかは?」

(のろ)すぎるだろ。そんなの試験相手に選ぶはずないし、第一そいつは俺達二人で倒したことがある」

 

再び思考する。唸っていると、また真治が思い付いたようだ。

 

「じゃあ……イャンガルルガとかは?」

「素早い、飛ぶ、ブレスを吐く、毒を持つ、咆哮をする。……いかにも飛竜って感じの敵だ。丁度いいな」

「ガルルガ自体は鳥竜種だけどね」

 

相手が決まるとほぼ同時、訓練室の扉が開く。

 

「お、訓練か。混ぜてくれ」

「アニキ、おはよう。訓練だけど……」

「悪いけど、アタシら二人でやらせて」

「な、なんでだ……!まままさか、反抗期か!?」

「アニキは親か!」

「昇格試験が近いから、二人での連携訓練が必要なの!」

「あ、そういう事か……びっくりしたぜ」

「反抗期と思うその解釈に俺もびっくりだ……」

 

ともかく、アニキはARシミュレータの設定をしてくれるとのこと。その間、俺達は準備を進めよう。

 

「それじゃ、装備するか」

狩猟開始(クエストスタート)

 

腕時計型のA(アームド)C(カスタマー)C(コンパクト)デバイスを起動し、双剣を背負い、防具を着込む。

 

「イャンガルルガにも、アンタにも、遅れは取りたくないわね!」

『狩猟開始』

 

真治もACCデバイスを起動する。……そういえば、一年前のアイツは確か『ハンターシリーズ』から着ろと言われたのにガンナー用の『ブレットシリーズ』着込んで来たんだっけ。かつてはバカだと思ったが、今のこいつは頼れる同期で、かつどこまでも挑戦的な奴だと思える。

 

「さあ、行くわよ」

「当たり前だ」

 

俺が纏うは『リオソウルシリーズ』。これはかつて俺達を襲った、あの蒼火竜の素材から作られた装備だ。真癒さんが最近俺に贈ったものだ。あの時は『少し早めの、弟子になって一周年記念』と言っていたが、正確には俺の正式入隊一周年記念の物であり、この試験のための物だったのだろう。かつての敵が、今は己を守る物になっている。……頼もしいな。

そして装備を纏った両手に握るのは、双剣の『ガノカットラス改』。『水竜 ガノトトス』の素材を用いて作った双剣だ。これは自分の戦いの中で手にしたものだ。強敵だっただけに、これもまた頼もしい。

 

「さてと、まずは水冷弾で行くわ」

「しっかり頼む。あと……」

「『俺ごと撃つ気で来い』、でしょ?一々励まさなくたっていいわよ」

 

俺の一言を先取りした真治の防具は『リオハートシリーズ』。これは俺の『リオソウル』の元となった蒼火竜の番の桜火竜の素材から作られたものだ。彼女の手には、ミニチュア化した『灯魚竜 チャナガブル』そのものに見える軽弩(ライトボウガン)、『チャナガシュート』。サイレンサーを付けているらしく、提灯玉が前面に飛び出したデザインになっている。

 

『準備はいいかぁ!』

「いつでも来い!!」

「ぶち抜いてあげるわよ!」

『よし来たぁ! 行くぞ!』

 

風景が変わる。今回は山林の中だ。目の前には黒紫の鱗と甲殻を持つ竜が立っていた。出たな。『黒狼鳥 イャンガルルガ』。

 

クオォアァ!!

 

「怒ったら!」

「麻痺弾でしょ!」

 

真治の応答を聞きながら、強走薬を飲んで突っ込む。もちろん狙うはその大きなクチバシ。そいつを切り刻むまで!

 

「はあぁ!!」

 

クアァ!

 

回転斬りを叩き込み、すぐさま側面に転がり込む。こいつは間違いなく、突っ込んでくる。

 

「そっちだ!!」

「当たるほどマヌケじゃないわよ! それに……」

 

真治がボウガンを抱えたまま走り出す。だがやろうとしている事は大体予想が付く。

 

「――引き撃ちも出来ないほどのヘタレのつもりも無いわよ!」

 

大きく跳び上がり、そのまま前転方向に回転しながら狙いを付けてボウガンを構え、水冷弾を撃ち出す。弾は――全て頭部にヒットした。

 

クルルォアァ!?

 

狙った獲物が消えたと思ったら横から撃ち抜かれた。ガルルガにとっては混乱モノだろう。

 

クルルアァ!!

 

口から炎が溢れ出し、翼を広げて地団駄を踏み始めた。怒りに我を忘れた証拠だ。

となると、すぐに真治は麻痺弾を撃ち始める。ならば、怪力の種で力を溜めるのがベストだろう。

 

「雄也!」

「ッ! 来たか!」

 

イャンガルルガが顔を振り回しながら走ってきた。突進だ。だがこれは横に飛べば避けられ――ん? 止まった?ってこれは!

 

グオォォォン!!

 

咆哮だ。しかしリオソウルシリーズにはこの咆哮に悩まされることは無い。そう……()()には、な。奴は走るなどの行動の直後に咆哮する際、後ろに飛び退く。その時には風圧を伴う。だがリオソウルには風圧を防ぐ効力は無い。あるのはリオハートだ。つまり――

 

「……くっ!」

 

風に怯んで動けなくなる、という事だ。

 

「ブレスが!!」

「チィッ!」

 

目を逸らしてたせいで反応が遅れる。せめて……体をよじるぐらいは!

 

「どりゃあぁぁぁぁ!!」

 

背後で熱と爆風を感じる。車にはねられた時はこんな感じなのだろうか、タバコを擦りつけられる時はこんなものなのだろうか。ついそう思った。取り敢えず、今は直撃を避けられただけマシと思う。炎熱系に高い耐性を持つリオソウルといえど、直撃などすればたまったものではない。

 

「無事ならさっさと立て直しなさい!すぐに痺れさせてやるから!」

「そいつぁ助かる!」

 

倒れ込んだ姿勢からそのまま前転しつつ起き上がる。回復は……立て直せと言われたし、薬は飲んでおくか。飲み干した回復薬グレートの甘い味と感覚が染み渡る。

 

「真治!」

「今ね!」

 

己に向かって走るイャンガルルガに、真治は麻痺弾を撃つ。チャナガシュートの速射機構で麻痺弾Lv.1は一度に複数放たれる。しかしその間は真治は動けない。狙った方向に全て当てるためだ。アイツのことだ。全て当てれば麻痺に陥れる計算は済んでるのだろう。しかし運は中々機嫌が良くないようで――

 

グオォォォン!!

 

「うわっ!」

「しまった……真治は咆哮を防げねえ……!」

 

咆哮に怯んだ真治は、麻痺弾をあらぬ方向に放ってしまった。好戦的で知性の高いイャンガルルガは、落とし穴を壊してしまうと聞いたが、まさか麻痺弾すら躱すとは……!

 

「だったらさぁ!!」

 

アイテムポーチから三本のナイフを取り出す。刀身には黄色い液体が塗られている。これは〈龍大戦時代〉以降に現れるようになった麻痺毒性を持つキノコから抽出した麻痺液だ。それらは複数種あり、〈ハンター〉及び【ハンドルマ】はこれらを総じて日本語では『マヒダケ』と呼んでいる。

 

閑話休題。

 

麻痺液が塗られた麻痺投げナイフを同時に三本、左手で逆袈裟に振って投げる。ナイフは斜めに並んでイャンガルルガに向かう。

 

クオォアァ!?

 

「よっしゃぁ!!」

「……ッ! た、助かったわ!」

 

見事命中。一本は外したが、それでも真治が麻痺毒を蓄積させたお陰で、なんとか麻痺拘束まで持ち込めた。

 

「たあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「これで! どうよ!! この野郎!!!」

 

双剣の乱舞は尻尾の先に、水冷弾は頭部に、それぞれ深く鋭く突き刺さる。

直後、頭部の方から一際大きい音が響く。これは……頭部のどこかが砕けたか?

 

クオォアァ!!

 

「耳、やったわ」

「ナイス。取り敢えず距離取るぞ!」

 

麻痺拘束が解けた。近くにいては轢き殺されかねない。距離を取り、正面に立たぬよう動き回る。……正直、ガルルガは休む間が余りにも無さすぎて苦手だ。離れれば突進か火球ブレス。近ければ突進か尻尾を叩き込んでくる。近くても突進してくるとか何だこいつ。

 

クオォォ!!

 

「……取り敢えず、俺の方に向かせるか」

 

量子化ポーチから三本、何も塗られていない普通の投げナイフを取り出し、奴の顔と翼にそれぞれ二本と一本に分けて投げつける。

 

クルァ!

 

「いいぜ……そのままこっちだ」

 

己に刺さった刃物の主が俺であることに気付いた奴は、翼を振り上げて威嚇し、そのまま突っ込んで来た。しかし――

 

クルォア!?

 

「当たり、ね」

 

いきなりイャンガルルガが仰け反った。あの怯み方……そして僅かに見えた甲殻の穴……貫通弾か。相変わらず上手いな。

 

「負けて……られないな!」

 

怯んだ隙を見て鬼人化。これは予想だが、奴の尾先をあと一閃すれば尻尾を斬り落とせるだろう。だが仮にも奴は火竜と同じ骨格をした〈モンスター〉。真治の斬裂弾に頼らないようにすれば、チャンスは少ない。アテは投げナイフか、転倒させる、あとは……尻尾を振り回した時に斬り掛かるか。やってみるしかない。

 

クルォァ!

 

俺の近くまで寄って、奴は身体を回した。尻尾がこちらに向く。この後はもう一度振ってくる。つまり奴は動かない。好機!

 

「だりゃあぁぁぁ!!」

「ダメ!」

「なッ――うぐッ!?」

 

横から殴られたような衝撃が走る。咄嗟に双剣の刀身で庇ったが、これは……しなった尾先に引っ掛けられたか。幸い毒棘には刺されてない。迂闊だった。ここなら尻尾は当たらないと思っていたが失敗か。

 

「あぁもう! 暴れられるから使いたくなかったのに!」

 

真治の叫びが響く。何をしようとしているのかすぐ察した俺は目を庇う。

 

クルォァ!?

 

「ほら! 一回引くわよ!」

「おま!? ガルルガに閃光玉使ったのか!?」

「しょうがないじゃない!アンタが尻尾に薙払われたりするもんだから!」

「……すまん」

 

怒鳴られたが、正直近くまで寄ってもらえて助かった。いくら防いだからといって、当たった衝撃と地面に叩き付けられた痛みまで無かった訳では無い。むしろ視界が少し揺れ続けてたぐらいだ。助かる。

 

クルルォォアァ!!

 

「……こっち来ないよな?」

「匂いを頼りにする奴じゃないし、しばらくは手当り次第に暴れるんじゃない?」

「……こっち来んなよ?」

「こればっかりは流石に運次第ね」

 

その場で跳ねたり嘴を突き立てたり、吼えたり走りまくるイャンガルルガを尻目に、俺達は奴の目が届かない場所にまで移動した。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「んぐッ……ぷはぁ……」

「んー、元気ドリンコは身に染みるわー」

 

ARシミュレータのイャンガルルガは、あの後は何事もなく討伐出来た。尻尾の切断は、無理せず真治の斬裂弾に頼ったので難なく済んだ。しかし反省点は多い。いくら一年の付き合いとはいえ、二人だけの戦闘の連携は大して出来てない。これは……もう少し訓練を詰めるべきか?

 

「ふむ、やってるようだな若人よ」

「あ、教官!? お久しぶりです!」

「うえっ!? きょ、教官!?」

「久しいな二人共。……して、何か悩んでるようだが?」

「……実は」

 

上位昇格試験が近いのと、それに向けた連携訓練、そして連携が上手くいかないことを伝えた。

 

「ふむ、連携か」

「この支部、真治以外のガンナーがいないから、いつも手探りなんです」

「でもよ、俺から見たら二人は十分な気がするぜ?」

 

アニキのフォローも、正直今は辛い。何せそのフォローを覆す理由が思い当たる。

 

「……いや、俺がガンナーの危険を減らし切れてないんだ。俺が躱したら真治に当たる、みたいな事が度々あった」

「位置取りか。なるほど、それはいくら戦闘訓練を重ねたところで上手くいかない訳だ」

「……どういう事です?」

「もっと互いを知るべし、という事だ」

「……なるほど、そういう事だな」

「アニキ、分かったの?」

「答えは、日常の中にある、ってことだ」

 

アニキと教官が、目の前に立つ。この二人が並び立つと、何故だか凄く威圧感を感じる。

 

「では早速、真癒君と支部長に掛け合ってくるとしよう」

「俺も行くぜ」

「二人は……まあ後で自由にやるといい」

「は、はあ」

「取り敢えず、お疲れ様でしたー」

「うむ! では!」

 

アニキと教官はそのまま立ち去って行った。『ドス ドス』という効果音が似合いそうな歩き方をしながら。というか走ってる。危ないぞ……

 

「……取り敢えず、訓練の続きするか?」

「……なんか、色々疲れた……」

「ここまでに、しとくか?」

「……えぇ」

 

この日は解散となった。明日どうなるかも知らずに――

 

 

◇◆◇◆◇

 

7月21日

 

「「はぁ!?」」

「最低一週間、俺と真治で同棲!?」

「冗談じゃないわよ!?」

 

翌日。朝礼にやって来た俺と真治を待っていたのは、とんでもない宣告だった。




第一話の書き直しがあるから下手したら次話が二ヶ月後かもしれないなー(白目)
早くやります(土下座)

追記:一話書き直して投稿しました。なので今の時点では何故か第一話(序話)が最新のものになってるという奇妙な状況になってるかと
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