Monster Hunter 《children recode 》   作:Gurren-双龍

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早く書けたから置いておきます

あと長いけど許して


第19話 黒き風を越えた先

7月24日

 

 

「鬼人化で高めた際の余分な『気』を捨てる……」

「お姉ちゃんが言ってたわね。どういうことなのかしら」

「……本番で試してみる」

「ぶっつけ本番なんて戦いにおいて以ての外だけど、アンタの『真・鬼人解放』の都合上、そうするしかないものね」

 

ペイントの匂いを辿る道すがら、体力の消耗を避けるために走らず歩いてる俺たちは、真癒さんのアドバイスを思い出していた。あの言葉の意味は『真・鬼人解放』と『鬼人化』は実際には()()()()()()ということなのかもしれない。実際、『鬼人化は極限の集中状態』にあたるモノだ。いくら限界に達しても、吐血なんてことは無かった。つまり『真・鬼人解放』は『集中力』そのものと言うよりは、『龍力活性による一種の限界突破』なのだろう。でなければあんな事は起きない。真癒さんが『加減を間違えてる』と言ったのは龍力活性の度合いのことなのだ。加減を知らずアクセル全開で行ったらそりゃすぐガス欠を起こす。もっと長く発動していたら気絶も有り得た。

 

「……龍力活性を元に、か。つまりそれ、実質〈龍血者(ドラグーン)〉専用技じゃない?」

「いや、もしそうなら俺はとっくにくたばってる。さじ加減さえすればなんとかなる範囲なんだ」

「こればかりは、アンタ次第ね。信じて任せるわ」

「頼む」

 

匂いが強く──そして一瞬で弱まった。近くまで来たがもう匂いが切れたか。大きい二体目の方は既に効果切れを起こしているため、今度こそ探さねばならない。

 

「やるか」

「ええ」

 

フルルル……

 

地面に鞭打つ音が聴こえる。既に夕闇が近い現時刻。少なくともこいつだけは迅速に終わらせたい。大丈夫だ、今の俺には真治を信じて背中を預けられる覚悟がある。だから──

 

「ここで一気にカタを付ける!!」

 

鬼人化。だがまだその先に行くべきではない。奥義とは放つべき時があるのだから──!

 

「麻痺は任せて。アンタに奴への殺傷力を任せるわ」

「おうよ」

 

逆手に構える。奴の動き同様、(さか)の刃は時に絶対的な威力を持つ一閃になりうる。ならばそれに倣うまで──!

 

ギャア!

 

紅い残光と共に飛びかかってくる。だがそんな大振りには当たらない。離れ、そして着地に合わせて切りつける。連撃を撃つのが双剣の手だが、今はまだだ。

 

グルル……

 

紅い残光を引きながらこちらに振り向き、構えた。ここで決めるつもりらしい。上等だ。察した真治はより正確に頭部を撃ち続ける。

 

「フゥ──ハッ!」

 

鬼人化を解き、そして真・鬼人解放。真癒さんの言ってた()()()()を実行するには、まだ俺は経験不足。故に確実な手を取るまで──!

 

グルゥ!

 

敵の一閃目。だが距離がある。まだだ。真治は相変わらず撃ち続ける。

 

グリュゥアァ!

 

二閃目。来る──!

 

「でやぁ!!」

 

振るわれた右翼の後ろに飛び込むように切りかかる。上手く抜け、同時に斬り付けた。このまま左翼同様に斬り砕いてやる!

 

ギュルアァ!

 

奴が飛び込みながら後方で振り向く。こっちに来るつもりか。上等!

 

ギュアァァァ!!

 

「この瞬間を待っていたんだよォ!!」

 

ナルガクルガの飛びかかりを見て、すぐさま俺は右の赤剣(リオレウス)を奴の残った眼球目掛けて投擲する。言ったはずだ、俺の狙いは──

 

ギュアァ!?

 

グレート、だってな!!

 

ギュアァァ……!

 

「ならアタシの狙いは、パーフェクトね」

 

ナルガクルガに麻痺拘束が発生している。一度俺の麻痺投げナイフで麻痺していたために耐性がついていたが、ようやく達したようだ。つまりほとんどの麻痺弾Lv.1とLv.2を直撃させたのだ。ならここで決める他はない。

 

「そこだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

左の緑剣(リオレイア)を右手に握る。右が穿つは眉間、左が目指すは右眼に突き刺さった赤剣。狙うは無論──必殺のみ。

 

「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

緑剣が確実に眉間を捉え、左手が赤剣を掴んだ。あとは──

 

「これでぇぇぇぇぇ!!終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

グルルギュアァァッ!?

 

中の頭蓋骨ごと斬り砕いて左右に一閃。恐らく大脳にまで刃が達している。つまりこれで──

 

ギュアァァ……

 

黒き風は、地に伏した。

 

「やっと一頭、片付いたわね」

「……ああ。だが……」

 

双剣を一振りし、血を払う。しかしそこには盛大に刃毀れした『ツインフレイム改』の片割れ──緑剣があった。

 

「……これじゃ、戦えないわね。仕方ないし、撤退(リタイア)を……」

「いいや、まだだ」

 

俺には秘策がある。とっておきのが、な。

 

「そうは言っても、その双剣でどう戦うってのよ」

「うってつけのがある。真治、力を貸してくれ」

「……?」

 

その方法を聞いた真治は、ブチ切れ呆れ、そして笑って手伝いを承諾してくれた。ホント、最高の相棒だよこいつは。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

現場から戻ってざっと三十分経過した。私は万事に備えていつでも出れるようにしつつ、ゆっくり茶菓子を楽しんでいた。落ち着きの時だ。

 

「落ち着こう、って割にカップが震えてる気がするけど気のせいか姐御?」

「き、気のせいだよ」

「セイヤァ。マユは嘘が下手ってェ、知ってるよねェ?」

「だよなぁ!ハッハッハッハ!」

「……」

 

落ち着け、平常心だ。後輩二人にいじられた程度で取り乱してはいけない。何のために鍛えた心だ。

 

『こちら冬雪、一体目のナルガクルガの討伐が完了しました』

『了解、引き続き狩猟に専念せよ』

「っ!!真治!」

「あっちぃ!?紅茶が跳ねたぞ姐御!」

「聞いてなさそォだねェ。ほらほらハンカチ」

 

急いで司令室に行かなきゃ!

 

「おじ──支部長!二人は!?」

「真癒か。ほれ、映像出すから安心せい」

 

慌てて入ると、スクリーンに映像が出ようとしていた。UAVからのものだろう。

 

「どうやら、二人とも無事のようですね」

「……ほっ」

「……待て、雄也の双剣、片割れはあんなに黒かったかの?」

「──え?」

 

目を凝らして雄也を見る。するとツインフレイム改が信じられない姿をしていることに気が付いた。

 

「ななな、なんで!?」

「どれ、聞いてみるかのう……聞こえとるか、二人とも?」

『こちら上田、何かありました?』

「どうしたもなにも!なんで……なんで……!」

 

震えを抑えつつ疑問をしっかり提示する。

なにせ雄也の双剣に──

 

「なんで()()()()()()()()()()()()()()()()の!?」

 

あるハズの無いものがあるのだから。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

真癒さんが思いっ切り突っ込んで来たので、事の経緯を説明した。

要するに、『双剣がやばい』→『そういえばナルガクルガの刃が折れかけ』→『それ使ったら代わりになるんじゃね?』→『出来た。俺天才かよ』という感じだ。

 

「まあ、帰ったらおやっさんに土下座して直してもらうんで」

「今回ばかりはしょうがない、って思ってお姉ちゃん……」

『えぇ……?流石に私もこれは予想外……』

『使える物を全て使ってでも戦う。良い心掛けです。高評価に値します』

「あ、ありがとうございます」

 

しっかし、これ付けるの苦労したよホント。刃翼を縄で括り付けるために、まず縄が通る場所を砥石やこいつの他の刃翼で削って凹ませて、縄を切られないようにするのは難儀した。その過程で砕いたりしたら意味がなくなるからな。しかもそれを二箇所。その間に襲われなくて良かった。

 

「とにかく、これで行きます。大丈夫、俺達なら出来ますから」

「だから心配いらないよ、お姉ちゃん」

『……うん、わかった。ちゃんと帰ってきてね!』

 

通信が切れる。……さて、ここからナルガクルガをどう探すか。

 

「……もう夕方。辺りもだいぶ暗いわ」

「ここからは、向こうの独壇場(ホームグラウンド)か……」

 

時刻はPM18:34。もう夕闇に包まれる時間帯だ。そしてナルガクルガは暗闇に紛れることを好む暗闇の狩人(アサシン)。ただでさえ視界は良好でないこの山林においては奴の方が有利、そしてその優位性は更に加速する。はっきり言えば、夜が明けるのを待ってから戦いところだ。だがそうはいかない。迅速に狩らねば家に戻れない人達が何人も出てきてしまう。それは避けなければならない。

 

「頼むぞ……えぇっと……」

「何よ、名前つけたいの?」

「いやまぁ、せっかくだし?」

「ふぅん……なら、『ツヴァイウイング』、なんてどう?」

「よし、それで行こう。頼むぜ、『ツヴァイウイング』」

 

リオレウスとナルガクルガ、二つの力を合わせた双刃、『ツヴァイウイング』。うん、いい名前だ。

 

「さ、行くわよ」

「おうよ」

 

ツヴァイウイングを納めようとして、今気付いた。

 

「……これ、納刀出来ねえわ」

「サイズオーバー……仕方ないわね」

 

黒翼(ナルガクルガ)だけ出して動くことにした。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

歩き続けてざっと15分。広間に出た。

 

「今回の不幸中の幸いは、今日が晴天で満月な事ね」

「それに、街灯がついてないから月明かりが薄れることもない……夜間にしては絶好の環境だ」

「ええ、だから」

「思ったよりもあっさり見つけられたわけだ」

 

フシュルルルル………!

 

眼前にいるのは二頭目。さっきよりも大きく、そしてこちらを視認するやいなやすぐさま構えた、好戦的なナルガクルガだ。つまりはさっき以上の強敵足りうる存在。闇雲に突っ込めばただでは済まない。だがそうはいかない。

 

「アンタのツヴァイウイングに、アイツの刃翼破壊を賭けるわ。頼むわよ」

「あぁ、任せろ!!」

 

迷うことなく鬼人化とその解除、そして『真・鬼人解放』に繋げる。手順も加減も覚えた。あとは経験値のみ。

 

「火炎弾も残り少ない……全部その眉間にぶち込んであげる!」

 

ゴォア!!

 

狙い撃とうとするのを察したかのよに、ナルガクルガが左側に回り込んできた。しかし──

 

ギェェア!?

 

「──アタシの弾を外させたけりゃ、光の速さを超えてから出直してきなさい」

 

もはや『魔弾の射手』と呼ぶに相応しい腕を持つ真治の前には無意味な行動だ。真治はナルガクルガが回り込もうと力を入れた瞬間を見逃さず、方向転換して引き金を引いていた。

 

「流石だ……なァッ!!」

 

刃翼に回転斬りを当て、確実に削る。こっちも同じ物で斬ってるのだ、向こうにも相当な傷が入る。問題は──既にある程度傷付いた黒翼(こいつ)がもつかどうかだ。その為にも確実に、かつ深く切り込まねばならない。剣術の腕を問われる場面だ。

 

「つまりは──原則一撃勝負」

「双剣で一撃に賭ける、ってのも変な話ね」

「だが危険を取り除く為には止むを得ねえよ」

 

双翼を逆手に持ち変える。手数と一撃、両者をもって切り抜くにはこれしかない。

 

「……切り込む。音爆弾を頼む」

「ええ、任せて」

 

グルルル……

 

奴も刃を構えた。だが今度は正面から挑むわけには行かない。流石に黒翼がもたなくなる。故に取るべき手はただ一つ──

 

「そぉこぉ!!」

 

ギィィエェアァ!?

 

甲高い音が炸裂すると共に迅竜が姿勢を崩した。これはナルガクルガが音に弱いことを利用したやり方。奴にとっては集中を掻き乱された挙句、惨めに隙を晒すという醜態だ。だがその後に今は構っていられない。刃翼──ではなく頭に切り込む。少しでも奴との決着を早めるにはこの手に限る──!

 

「貰ったぁぁ!!」

 

乱舞を叩き込む。左の袈裟、右からの薙ぎ払い、双刃を左に払い、右の逆袈裟──突如、黒翼に衝撃が走り、そのまま弾け飛んだ。

 

「なっ!?」

「ごめん!弾が黒翼に!!」

「ちっ……!リーチの長さがここで仇になるか!」

 

黒翼はナルガクルガの後方へと飛んだ。しかし認識すると同時、ナルガクルガが立ち上がった。そしてその瞳は真紅に輝き始めていた。

 

ギュアァオォ!!

 

紅い残光を引きながら俺の横側に回り込む──のではなくそのまま後方に飛んだ。この野郎、俺の得物が飛ばされたのしっかり見てやがったな。

 

グルル……ギュアァァァァァァァァァ!!!!

 

怒りの咆哮。まずい。このままでは黒翼を拾う隙がない。だが見つけなければ何も出来ない。

 

フシュルル……

 

棘飛ばしだ。まだ軌道を覚えてないため、一気に近付いて懐に潜り込むしかない──!

 

「せめてその眼を貰うぞ……!」

 

赤剣を構えて突っ込む。狙うは眼球。奴の視界を潰せば少しは拾う隙も見えてくるはずだ……!

 

「ダメ!!雄也、下がって!!」

「──なっ!?」

 

シャッ!!

 

「しまっ──!!」

 

奴は俺の急接近を読んでいた。奴は己の眼前に棘を叩き付けてきた。

 

「危ねぇ!!」

 

咄嗟にブレーキを掛け、後方に飛びのこうとする。しかし同時に金属製の物質が散乱する音が聞こえた。

 

「しまった!ナイフホルダーが!」

 

両太腿の脇に付けていたナイフホルダーが、麻痺投げナイフと毒投げナイフを入れたホルダーが、高速で投げつけられた鋭い棘によって破壊され、落とされてしまった。まだ二体目を麻痺にはしていないため、これを落とすのは非常に厳しい。

 

ギィェア!

 

しかしそんな俺にお構い無しに、ナルガクルガは全身ごと尻尾を振り回してきた。

 

「危ねぇ!!」

 

間一髪、伏せて躱すことに成功した。しかし向き直るとそこにはいなかった。

 

「野郎どこに──」

 

瞬間、俺は地に伏せていた。……なにが、起きた?

 

ギュアァァ!!

 

しかしそんな問いを無視するように、ナルガクルガは尻尾を振り付けてきた。

 

「がはっ!?」

 

背中に伝わる鈍い衝撃と共に、閉じ掛けの視界が、ナルガクルガから遠ざかったことを感じ取った。

 

「雄也!しっか……て……てよ……うや……」

 

瞬間、世界が閉じて暗転した──

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

伸ばされた尾に叩きつけられた後、吹き飛ばされた雄也を見て、流石にアタシも焦りを感じる。生きているだろうか。いいや、生きてる。アタシの相棒だ、そう簡単にくたばられては困る。

 

「雄也!!……気絶、しちゃったか……」

 

散弾Lv.1に切り替え、奴が少しでもこっちを見るように誘導している。これで雄也に気が向くことも早々無いはずだ。

 

「……隠した方がいいよね?」

 

決意し、右で構えつつトリガーを引き続け、左でポーチを漁る。たしかまだ残って……あった、閃光玉だ。

 

「食らって!!」

 

ギィアァ!?

 

上手くかかった。すかさず斬裂弾に切り替える。狙いは雄也──がぶつかった木の枝。

着弾。数瞬遅れて弾が炸裂、そこから刃が飛び散り、木の葉と枝は細切れになって雄也の元へ落ちる。これでいい迷彩になったはずだ。

 

「それじゃ、やれる限りやるかな」

 

貫通弾に切り替える。ここからはちまちま当てるのではなく、必殺級を確実に、一つずつ叩き付ける方向でいく。狙うは刃翼ただ一つ。

 

「ま、外すつもりも、食らってやる気も無いんだけどね」

 

……思えば、アタシ一人なんて珍しい気がする。というか飛竜相手に単独戦(ソロ)は初めてだ。……いいわ、見せてあげる。

 

グルルル……

 

目が戻ったのか、刃翼を構えてきた。引き絞ったのは左翼……この距離で当たるとしたら右翼の二撃目……ここでの選択は『一撃目に合わせて発砲』、『一撃目の内に二撃目の範囲外に逃げる』のどちらか。だがアタシには第三の選択がある。それは当然──

 

「全部やるに、限るのよ!」

 

一撃目の着地点の延長線上に、麻痺投げナイフが落ちていたことにアタシは気付いていた。つまりこれと、残った麻痺弾Lv.1四発ならば……!

 

シュッ!!

 

あの体躯が動く事で発生する風圧、アタシが走ることによって起きるブレ、元の風向き……そこ!

左肩から右後ろ脚までを貫いた。狙い通り。そして麻痺投げナイフを拾う。黄色い麻痺液が月明かりに反射していたがために、これが麻痺投げナイフだと分かったのだ。

 

シャッ!!

 

二撃目。さっき通ったとこをナルガクルガが斬り付ける。そこを奴の右側から狙い撃つ。これは右翼から左翼を貫いた。刃翼にもヒビが入った。恐らくあと一撃。

 

シャアッ!

 

三撃目。通り過ぎていく。貫通弾を放つ。今度は左後ろ脚の付け根から通った。徹甲榴弾に切り替え。そして閃光玉を取り出す。

 

グルルル……ギュアァァ!!

 

そのままこちらに向き直りながら地面に飛び込み、そしてこっちに飛びかかってきた。

 

「狙い通りなのよ!」

 

左手から閃光玉を放つ。既に安全紐(セーフティ)は外してある。そしてナルガクルガは宙に浮いている。炸裂すればどうなるかなんて、言うまでもない。

 

ギィアァ!?

 

黒い巨躯が地に落ちる。目が眩み、地に伏して手足を藻掻く。今の内に麻痺投げナイフを!

 

「てやっ!!」

 

投擲が得意でないアタシだが、上手く刺さった。

そのまま徹甲榴弾を右刃翼に放つ。炸裂、そして刃翼の一部が砕け飛んだ。これで少しは楽になる。さあ、あとはアンタが目を覚ますだけよ、雄也。アタシは信じてるから──!

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

再び貫通弾に切り替え、反動を無理矢理押し殺して引き金を連続で引き続ける。火炎弾が尽きたアタシでは決定打に欠ける。早く、起きなさいよ、雄也。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「いだっ!?」

 

今回の目覚ましは、突如顔面に飛び込んできた硬いナニカだった。ヘルムを被ってるとはいえ、割と痛い。

 

「……っと、寝てたのか俺は」

 

自分の状況を確認する。まず俺の容態。まず全身が痛い、特に背中が痛い。確か盛大に食らったはずだ。確かあれはナルガクルガ最大の一撃である尻尾叩きつけ。通称『ビタン』だ。アレを直撃した挙句吹き飛ばされたのだから、気絶してても仕方ないか。

次に周りだ。まず俺のすぐ周りに木の葉や枝が細切れになって落ちている。所々に小さな刃が落ちている。真治の斬裂弾だろう。上手いことやるなあいつ。

今度は俺の双剣の場所だ。吹き飛ばされた時に、赤剣も手を離れた。えっと……あった、赤剣は赤く月明かりを反射し、黒翼は緑剣のパーツが上手く目立ってる。

最後にナルガクルガ。今は真治が相手している。あの迅速な動きを、鍛え上げられた鷹の瞳で捉え、躱し続けている。流石だな。……寝てんのもここまでだ、さあ、行くかな……

 

「うおぉぉぉあぁぁぁ……!!」

 

全身に力を入れて無理矢理立ち上がる。激痛が走るが今は無視だ。さて、まずは強走薬と秘薬を飲もう。

 

「……やっぱり不味い」

 

愚痴りながらも、愚痴が出るならもう大丈夫だと思ってこれ以上は抑えていく。さあ、双剣を取りに行こう。と思って歩き始めると、足になにかが当たる。見てみると黒い物体だ。

 

「なんだこれ……って、どっかで見たことあるような……」

 

それは細く長い刃のようだった。……ん?刃?

もしやと思いナルガクルガの方を見ると、そこには、右翼の刃が欠けたナルガクルガが見えた。つまり真治は、たった一人であの刃翼を叩き割ったというのだ。よくやるもんだ。折れ目が温かいため、恐らく徹甲榴弾を用いたのだろうが、それでもよくやるもんだ。……そうだ、これを使えば──!

 

「すぅぅ……真治ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「──ッ!」

 

こちらに気付いた真治は、俺を一瞥すると何をするか悟ったかのようにこっちに走り出した。ナルガクルガもそれを追うように振り向いた、今だ──!

 

「そぉこだァ!!」

 

ナイフ投げとは少し違い、槍を投げるように刃翼を振るい投げた。狙うは迅竜、その眼球。

 

ギィエアァァ!!??

 

ヒット、見事に刃先から左眼に突き刺さった。痛みに悶え、奴はその場で暴れだした。しばらくはこちらに気が向くことはないだろう。

 

「遅いわよ、雄也」

「すまん、遅刻した。それと、ありがとう。ここまで引き付けといてくれて」

「礼はまだいいわ。それよりアンタ、双剣は?」

「一応見つけた。まだ取ってない」

「なら行ってきなさい」

「背中は預ける」

 

そう聞いて走り出した。まずは赤剣。近くにあるのはこいつだ。しかし今こいつはナルガクルガのすぐ近く。つまり細心の注意を払わねば痛手を負う。だが真治の事だ。その辺も考えているのだろう。故に躊躇わず、突き進む。

 

「まっすぐ行って!」

 

やはり来たか。言われるまでもない。赤剣はすぐそこ。だが暴れるナルガクルガもすぐそこだ。だが──

 

ギエェェアァァ!?

 

銃声と激痛がほぼ同時に聞こえた。そして同時に迅竜が飛び跳ねるように後ずさった。お陰で赤剣を拾えた。……恐らく、刺さった刃翼に弾丸を当てて更に押し込んだのだろう。流石だな。

次は黒翼。その斬れ味を誇示するように、地面に深く突き刺さっていた。

 

「さぁて……抜けてくれよ……!!ふんぬぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

マ〇ター〇ードの如く中々抜けない。片手では厳しいと判断して両手を使っても少ししか動かない。いや、少しでも動いているならまだ希望はある──!

 

「雄也!棘が!!」

「なっ!?うおっ!?」

 

思わず飛び退き、地面に転がる。

 

「いってぇ……だが、思わぬ幸運だなこりゃ」

 

立ち上がりながら、双剣を構える。左手に黒翼(ナルガクルガ)、右手に赤剣(リオレウス)。急造品『双翼(ツヴァイウィング)』が両手に揃う。さっき飛び退いた時に一緒に引っこ抜けたのだ。斬れ味も問題ない。すぐやれる。

 

「さぁ!!行くぞォ!!」

 

再び『真・鬼人解放』。全身に力を入れ、余計なものを削ぎ落として充填させる。狙うは奴の絶命一点のみ。刃翼は既に片翼を折って奴の目を潰したから無視でいい。

 

「雄也、チャンスはアタシが作る。アンタはそれまで引き付けて」

「オーケーだ。全力でやってやる!」

 

散開。しかし動くのは真治のみ。俺は『真・鬼人解放』特有の気迫で無理矢理俺に向かせる。俺に背を向けてみろ、死ぬぞ、と。効果あったのか、奴は俺に釘付けだ。

 

フシュルル……!

 

「来いよ、殺られるぜ?」

 

ギェアァ!

 

俺の右側に回り込むように飛び跳ねる。当然視線は外さない。

 

シャッ!!

 

「危ねぇなぁ!!」

 

刃翼の一撃をバック宙の要領で回避する。銃声二回。

一撃を外したためか、再びナルガクルガは飛び跳ねる。身体の向きは常にナルガクルガ。だが決して見逃しはしない──!

 

シャアァッ!!

 

「見えてんだ!そして俺たちはこの時を……」

「この瞬間を!待っていたのよ!!」

 

フシュ……グルルル……!?

 

銃声が更に二回。ナルガクルガはその場で動くことなく悶えだした。そう──麻痺弾だ。

 

「そして、終わりだ──」

 

双翼を逆手に持ち、迅竜の眉間に深く突き立てる。迅竜の刃翼と、火竜の魂と呼べる刃の一刺しだ。ただでは済まない。

 

…………

 

迅竜は無言で事切れた。脳髄を突き破られたのだから当然だ。

 

「……終わりね」

「……あぁ、終わったよ」

 

双剣を手放し、糸が切れたように思わずへたり込む。真治もその場に崩れた。

 

「……疲れた」

「……えぇ。あ、報告」

「……不要みたいだぜ?」

 

ヘリのローター音が響く。どうやらUAVから状況を絶えず見ていたらしい。ご丁寧なこった。

 

「真治……俺寝るわ」

「……奇遇ね、アタシもよ……」

「そっか……」

 

視界が暗転。ギリギリで倒れ込む真治と、俺自身が倒れ込んでるのを知覚できた。ただ、それだけだ。

 

 

◇◆◇◆◇

 

7月26日

 

「上田雄也。君は肋骨二本をやった。しばらくお休みだ」

「目を覚ますなりいきなりっすね……」

 

昇格試験から二日経った日の朝。医務室──それも、俺が真癒さんに初めて連れてこられた──にて、花音(かのん)さんからしばらくドクターストップを申し渡された。いやまあ、仕方ないけども。

 

「むしろ、ナルガクルガのビタンを受けて肋骨二本で済んでるのが驚きだがね。〈ハンター〉の回復力ならあと二日あれば完治するよ」

「ならなんで『しばらく』なんて使ったんですか?」

「上位〈ハンター〉への昇格に関する審査と書類の関係で、しばらく休暇を出させることになってるのです」

「……イネシア査察官」

 

病室に入ってきたのは、彼女だけでなく冬雪姉妹とアニキ、そして支部長だった。

 

「試験の結果を伝えに来ました」

「真治の得意気な顔がもう物語ってますけど、分かりました」

「では、ゴホン……上田雄也、冬雪真治。両者は上位昇格試験において一定の成績を残しました。よって、今回は『合格』とさせていただきます」

「ありがとうございます」

「お二人の努力の賜物です。おめでとうございます」

 

祝辞を述べると、彼女は手を差し出してきた。

 

「これからも、その可能性を抱いたまま突き進んでください。応援しています」

「……ありがとうございま──いだっ!?」

 

手を伸ばそうとしたら肋骨が響いた。しばらく動けそうにない。

 

「はぁ……君はしばらく安静だ。冬雪姉妹、看病よろしく。美少女二人に挟まれれば彼も悪い気はせんだろ。傷の治りも早まるかもね」

「はーい」

「えぇ……」

「ふふっ。では、私はこれで失礼致します」

「本部に戻るのですかな?お見送りいたしましょう」

 

支部長とイネシア査察官は去っていった。俺の方を向いて一度微笑んだ気がしたが気のせいだろうか。

 

「……さて、合格おめでとう。雄也、真治」

「俺からもおめでとう、だ。あともう行っちまったが、ナナからも祝の言葉来てたぜ。今度会ったらまた礼を言っとけ」

「うん」

「取り敢えず、この後のことは雄也が完治してからだね」

「そうよ、アンタの婆ちゃんの手料理の件、忘れてないわよ」

「わかったよ。また連絡しとく」

「それは楽しみだね。あ、私はちょっと支部長に用事があるから出るね。誠也、ここお願い」

「おうよ」

 

真癒さんが部屋を出る。イネシア査察官とは対照的に、こちらに振り向くまいとしたモノを感じ取った。なんだろうか。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

支部長(おじいちゃん)とイネシア査察官を見送ったあと、私とお爺ちゃんは誰もいない部屋に来た。

 

「……それで、話とは?」

「知ってるよね、私の余命(タイムリミット)

「……あと、一年だったかの」

「うん。だから私が真治と雄也の面倒を見れるのも限りがあるの。そこで、お願いがあるの」

「……言うてみろ。数少ない、孫の頼みじゃ。何でもやってやろう」

「二人を、新年度が来る前に『凄腕』ランクに昇格させたい。その為に力を貸して」

「……いいだろう……任せろ」

「ありがとう、お爺ちゃん」

 

私の礼を聴いたお爺ちゃんは、どこか辛そうにも見えた。……無茶苦茶言ってるのは分かってるけども、私はそれでも……それでも……




評価が黄色になったよ。やったね

あと今回で一章も折り返しです。真癒の余命と共にひとまずの決着が近付いてます。これ……今年中に一章終わらせられるかもですね。頑張ります。
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