Monster Hunter 《children recode 》   作:Gurren-双龍

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おはこんばんちは、Gurren-双龍です
大遅刻申し訳ないです。歌姫迎撃戦とかベヒーモスとか歴戦王とかしてたらこんなことになってました


第21話 影を裂く黒

1月17日

 

「さあて……山登りになりますね」

「まあ、なんとかなるよ」

 

 雪山麓のベースキャンプ。というかほぼスキー場の休憩所。民間人は避難してる為、ここは実質貸切になるのだ。

 

「ヘリでは登れないと言っても、ここまでなら大丈夫なんですね」

「スキー場辺り、そこそこ高い場所だけど人は普通にいられるからね」

 

 出発する前に少しだけストーブで暖まりながら、ACCデバイスで装備の再確認と、この山の地図を頭に叩き込んでおく。と言ってもそこまで複雑じゃないし、戦えそうな場所など限られてるから、そこまで活かすことは無さそうだが。

 

「もういい?」

「ええ、行きましょう」

 

 ホットドリンクを一気飲みする。ホットドリンク。寒冷地戦闘において重要なアイテムだ。主に凍傷を防ぐために服用する。飲むと血流が活発化し、一種の興奮状態ともいえる状態になる。しかしそれによって血管は広がるため、多少は冷えてしまう。まあ凍傷よりは遥かにマシだし、若干ポカポカするからいいのだが。

 

「よし、とりあえず平地を目指していこうか」

「ええ」

狩猟開始(クエストスタート)

 

 ACCデバイスから機会音声が流れ、龍子化させていた武具の装備を開始。手足の指先、首の部分から徐々に発生する。インナースーツから現れ、そしてその上に防具が重なる。色は紫、鋭い鱗がこの身に連なり、鎧と成す。

 

「……ガルルガX、だね?」

「メルトブレイヴァーには丁度良いと思って」

 

 ガルルガXシリーズ。『黒狼鳥 イャンガルルガ』から作り上げた紫黒の防具。マントと羽飾りが付いた戦国武将のような防具だ。縄帯と黒狼鳥の頭部を模したような兜──因みに被り物(フェイク)ではない──が特徴的だ。武器が持つ毒素などをより活性化させる効果や、ある程度の防音効果に斬れ味保持に向いた効果を発揮してくれる。

 そしてこの背に提げているのは、最近愛用している毒と炎熱の鋸双(きょそう)『メルトブレイヴァー』。この双剣の片割れが持つ毒素と、双剣という手数が多く斬れ味消耗の激しい武器には、もってこいの防具だ。

 

「……あれ?ガルルガXにマフラーなんてあったっけ?」

 

 首元に巻きついた、翠の羽飾りを指指される。首元を一周して後ろに流しているが、それでも腰辺りまで伸びているほど長いそれを。

 

「これですか?元々は(ヘルム)に付いてた羽飾りなんですけど、邪魔になりそうだったんで付け替えて貰ったんです」

「……半分くらい趣味だよね?」

「こっちのがかっこいいかな、と」

 

 翠の長い羽飾りと、背中のマントが風になびく。

 

「……まあいいか。よし、行こうか」

「はい」

 

 目指すは山頂近くの平地。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「……真癒さん」

「爪痕、大きいね」

 

 山頂付近の道中、壁のようになった箇所に、大きな爪痕が刻まれていた。爪は三本。飛竜クラスの大きさだ。

 

「相手は、確定かな」

「……耳栓付きなのが幸いです」

「まあ、衝撃波を伴うからそんなに効果なさそうだけどね」

 

 片割れの黒剣を左に握り、右手は太もものホルダーに付けた投げナイフの柄に伸ばす。

 上位昇格試験より以前から用いている投げナイフ。試験の際、どうにも嵩張る気がした俺は、細く、薄く、鋭くを主軸に、投げナイフを()ち直してもらった。ちょうど、暗殺者が愛用するような投擲用の短剣が近い形状だ。というか最早下敷きより薄い板ってレベルだ。しかもしなる。

 

「感知は任せて。隙はちゃんと作るから」

「頼みます。まあ、こっちでも探しますけど」

 

 背中合わせに剣を構えつつ、麻痺投げナイフの柄に触れる。取り敢えず三本ほど。大抵のモンスターはこれで拘束できる。

 ティガレックスは別段、防御面に強みがあるわけではないが、突進を始めとした肉弾戦に特化した〈モンスター〉だ。故に防いでては負ける。攻め倒すまで。麻痺投げナイフはその足掛かりだ。

 次に取るべき行動が見えた俺は、感覚を全力で研ぎ澄ます。銀世界に目を凝らし、風と呼吸に聞き耳を立て、指先に伝うナイフの柄を鎧越しに感じ、ティガレックスの痕跡を掴もうと世界を睨む。

 故に掴めた。俺の見るべきは──

 

「「上だ!!」」

 

ゴォォアァァァァ!!

 

 青縞混じりの黄色い外殻の、恐竜の王(レックス)の名に違わぬ風貌を持つ飛竜、『轟竜 ティガレックス』が、俺達を喰らわんと飛び降りてきた。

 

「散開!」

 

グルァァオォ!!

 

 真癒さんの一言でティガレックスの左右それぞれに分かれる。俺は左側、真癒さんは右側。俺は麻痺投げナイフ、真癒さんは毒投げナイフの柄に指をかけつつ、ティガレックスを挟み込む。

 

一撃離脱戦法(ヒットアンドアウェイ)、ティガレックスはこの戦法が基本だよ」

「走り回ってきますからね……こいつァ……!」

 

グルル……ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

 雰囲気か何かで、真癒さんをより脅威と感じたのか、地面に爪を突き立て、轟竜は真癒さんに向かって吼え立てた。

 

「麻痺拘束は!」

「興奮状態になってから打ち込みます!!」

 

 真癒さんに向いてる隙に強走薬グレートをすかさず飲み干す。一方ティガレックスは真癒さんに向かって走り出した。多くのモンスターが持ちながらも、この〈モンスター〉の象徴と言える攻撃、『突進』だ。

 無論そんな単調な攻撃に引っかかる真癒さんではない。しかし右は崖、左は壁。普通に考えたなら逃げ場はない。だがな──

 

「大股で走ってくれるの、小柄な私にはありがたいよ」

 

 ティガレックスは前進するために前肢を大きく上げて走る。より速くより力強く獲物を屠るために、絶対強者が本能に従って得た動きだ。

 そして彼の者が好むのは脂肪を蓄えた生物。彼が狙う獲物は例外なく、鈍く、大きく、そして群れているのだ。故にその大股の疾走は、本来なら利点にしかなり得ない。

 人間という極めて小型の生物を狙わないのならばの話だが──

 

「ほらお土産!!」

 

 故に真癒さんは、その大股に振り上げられた前肢と脇の間を縫うように、そのバネのような加速で潜り込んで後ろに回り込んだ。それも通り過ぎ様にペイントボールを当てながら、である。

 

グルルァ!!

 

「獲物を狙う事に関してはほんと鋭いよねこいつ……ちょっと脇から抜けただけなのを見逃してないもん」

「平気であの突進の脇を抜ける事が異常なんすけどね……無論そんなのを見逃さない向こうもイカレてますけど」

 

 次の行動に備え、メルトブレイヴァーを構える。しかし訓練生時代に教わった基礎の構えではなく、それをベースに、俺なりに動きやすい型にしたモノだ。

 足幅をそのままに、グリップを握った拳を太腿に来るまで下ろし、右手は投げナイフを取るために少し緩めて剣を握る。身体の向きは基礎の構え同様に左側を前面に出す。つまり双剣自体は()()()()()()()()()。それが俺のこの構え。言うなれば無形だ。投擲術、双剣術、この二つを最大限に発揮するために、教官や真癒さんに何度も相談をした結果、凄腕試験までに獲得した俺の型だ。どこからでもかかって来やがれ。

 

グガァ!!

 

 ダイブするように突進を急停止させたティガレックスが、こちらに振り向いて飛び込んできた。その距離、目算で15m。ティガレックスほどの巨体と、地上生物の平均的なジャンプ力を考慮すれば破格の飛距離だ。だがその脅威の身体能力は、隙を生むことにもなる。

 

「目を庇ってください!」

 

 左手に両の剣を握って右手で龍子化ポーチから閃光玉を取り出し、そして口で安全紐を抜き取ってすぐさまそれを投げる。奴のジャンプが最高高度に達する位置、発光タイミング、俺の投擲速度、全てを勘で捉えて結果に叩き付ける──!

 

ギャガァァ!?

 

「ダッシュ!」

「はい!!」

 

 空中で視界を潰されたために、ティガレックスはその跳躍の勢いのまま着地に失敗して地に伏した。その際頭部を激しく打ったためか、そのまま痙攣し始めた。脳震盪でも起こしたのかもだろう。好機──!

 

「だぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 鬼人化──からすかさず真・鬼人解放へと昇華させる。狙うは弱点たる頭部。当然二人がかりだ。

 刃を水平に構えながら頭に向かって駆ける。そして乱舞で最初に振るう左腕──ではなく右腕から構える。そしてそれを、右足を踏み込みながら貫くように振り抜く。だがそれで終わりはしない。続いてその手を引っ込めながら右の刃を突き出し、そこから入れ替えるように左の刃を振り抜く。

更に左脚で一歩踏み込み、それを軸にしながら回転して両の刃を一閃する。真癒さんに剣を教えたという男が編み出した双剣の奥義『乱舞・改』。凄腕試験昇格の祝いとして、真癒さんからこの技を伝授された。

 曰く、無間の斬撃であること。

 曰く、無終の連撃であること。

 曰く、無双の乱撃であること。

 まさに奥義。乱舞とは違い、その一つで完結する剣戟ではなく、持ちうる刃全てを構え、繋いで振るう乱舞の最上。

 

「まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

そして乱れ連なる剣は、旋風の如く迷いなく、違いなく、しかして規則的に乱れ、相対するモノを確実に切り裂く。乱舞旋風は最上の乱斬に続いて吹き荒れる。

 更には、風は二つ。俺と真癒さんの双腕が生む二つの旋風が、轟竜の牙を、鱗を、頭殻を斬り砕く。

 

グルルル……!

 

 ちょうどそのタイミングで、ティガレックスが起き上がる。仮にもこんな緩急激しい雪山を闊歩するほどの強靭な四肢を持つ竜だ。高々自分のジャンプから落ちた程度では、手首足首を折り挫く、なんてことは無いようだ。

 

グルォァ!!

 

 顔面や爪先を朱に染め、先程のジャンプ地点よりも更に後ろに飛び退いた。目は見えてないはずだが、躓くことも転げ落ちることもなく見事に着地して見せた。しかしその手つき足つきはどこか乱暴で。当然、怒り狂っていた。

 

グルルァ……ガア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!!!!!

 

 前肢を荒く構え、轟竜はその名の如く天に向かってその憤怒を轟かせた──

 

「怒り状態……雄也」

「麻痺投げナイフ、いつでも行けます」

 

 真・鬼人解放を解き、右の白剣の握りを緩めてナイフの柄に指先を掛ける。ここからのペースは全てこちらが握るつもりで行く。幸い今は視力の事もあって威嚇し続けている。

 さて、今回は一回の麻痺に恐らく麻痺投げナイフ三本を要するだろう。そしてもう一度麻痺拘束を投げナイフのみで行うとなると、俺と真癒さんの手持ち全てを使えば確実に拘束できる。〈モンスター〉の生命力は脅威的、と言わざるを得ないもので、神経性麻痺や催眠性の毒素にすぐ耐性を得てしまう。人間でも、麻薬や覚せい剤に耐性が付いて摂取量が増える現象があるが、〈モンスター〉のそれは段違いのスピードで耐性を獲得する。

 つまりは、主導権を握り続けるには投げナイフを全て確実に当てなければならないということだ。だが心配も不安もない。俺にはここまでで培ってきた技術がある。仮にも今の俺は、真癒さんと同じく凄腕ランク帯の〈ハンター〉。確実にやれる。そう己に言い聞かせながら、投げナイフを抜いた。すると同時、ティガレックスは視力が回復したのか、雄叫びを上げながら首を振る。

 

ガルル……グァ!!

 

「目が戻って早々に……っ!岩来るよ!!」

「また対応しづらいのを……!」

 

 視力が回復したティガレックスは、今は近付くのを危険と感じたのか、ティガレックスはその強靭な前肢で地面を抉り、雪混じりの土塊を投げ飛ばしてきた。それも器用に三つを三方向別々にだ。間を縫って避けるのは容易いが、奴がこの岩飛ばしをする時は、大抵懐に潜り込めないような距離の時だ。力づくで戦う癖にこういう所は頭が回るのが、ティガレックスの特徴だ。だが悪足掻きもここまでだ。ここからは俺の、俺達のターン──

 

グルアァ!!

 

「あ」

「はぁ!?ちょっおま、逃げんなぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 戦闘開始から五分と経たずに、ティガレックスはこの場を去っていった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「全くあのヤロー……無駄な手間を掛けさせやがって……」

 

 ティガレックスの逃走からざっと十分ほど。俺と真癒さんは、緩やかとはいえ吹雪の中でも効果を発揮するペイントボールの匂いを辿りながら雪山道を歩いていた。

 

「……雄也、珍しく荒れてるね?いつもなら『早く終わらせてやらないとな……』とか言うのに」

「そりゃ、今回は凄腕昇格試験の後の最初の仕事ですから……どうにもササッとかっこつけて終わらせたい、って気持ちが……」

「……まあ、そういうスタンスの〈ハンター〉は多いし、咎めたりはしな……ッ!」

「真癒さん?」

 

 会話を遮るように、真癒さんは急に前方を向いた。何かを感じ取ったようだ。ティガレックスを見つけた──視覚的情報によるものではないので不適な表現かもだが──だけならここまで鋭敏な反応はしないだろう。ナニカがそこにあると、俺も否応なしに(わか)らされた。

 

「……慎重に、かつ迅速に見つけるよ。投げナイフも準備して」

「はい」

 

 さっきティガレックスに投げようとした時と同じようにナイフを掴み、臨戦態勢に入る。

 

「……この坂の曲がり角にいるよ……1、2、ゴー、で飛び出すよ」

「投げるのは?」

「こっち向いた時でいいよ。じゃあ……1、2、ゴー!」

 

 合図に合わせ、角を飛び出す。しかし、そこにティガレックスはいなかった。正確には、()()()()()()()()()はいなかった。

 

「……なに、これ……」

「……やられた、っぽいですが……この傷跡……変ですね。赤黒いな……血液とは思えない……いや、灼かれてる?」

「……ッ、触っちゃダメ!」

「え、あ、はい」

 

 そこにいたのは、左爪先から右翼先端まで赤黒い傷に一閃されて倒れ伏したティガレックスだった。しかし血溜まりはなく、むしろ傷口を焼き尽くされて血液の一滴すらも出ていない。異常としか言いようのない状態であった。

 

「……やはり息をしてません。まあ明らかに脊髄ごと焼かれてますからね……」

「…………まさか…………」

「真癒さん?」

「あ、な、なんでもないよ! と、とにかく調査班を呼ぼう!?」

「……?まあ、分かりました」

 

 真癒さんの様子に疑問を抱いたが、野暮な事かもしれないし、弟子の俺如きが知るべきことではないのかもしれん。

 

──後悔するかもしれんぞ

 

「!」

 

 ナニカが聞こえた気がした。感覚は真癒さんに初めて会う前の、謎の俺への指示をした声のようなそれに近い。いや、むしろそれそのものか?

 なんで今更?なんでまた?そんな俺の疑問を他所に、その感覚は雪解けのように消え去った。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「そういえば真癒さん、なんで俺の凄腕試験、あんなに早かったんですか?」

 

 帰りのヘリの中。あの謎の声を疑問に抱き、考えた結果、質問の足がかりとしてかねてからの疑問を投げることにした。

 

「え?なんでその疑問?」

「上位までで一年ほど、そこから半年程度でいきなりその上のランクにもされたら、流石に驚きますよ」

 

 凄腕試験を受ける条件は上位ランクであること以外ないのだが、それにしたって半年は随分早いと思ったのだ。

 

「えっとね……凄腕と上位での仕事量の差が結構大きくてね……」

「仕事量の差?」

「うん。ぶっちゃけると、下位と上位の仕事の差なんて、任される〈モンスター〉の種類だけなの。それに対して凄腕ランクは、より遠くの出張の許可が出るの。無論それは海外出張も含む。そうなれば、雄也と真治の仕事の幅が増えたりスキルアップに繋がるからね」

「……なるほど。それは重大ですね」

 

 思いの外、その理由は大きな事だった。単純に俺たちの腕を上げたわけではなかった。確かに、ランクは当人の戦歴と生存能力を表すものだ。

 

「質問はそれだけ?」

「もう一つだけ……真癒さん、あの黒い傷跡はなんですか?」

「……分からない」

「心当たりがある、って事くらい分かりますよ?俺だって付き合いが長──」

「分からないって言ってるで──なんでもない」

 

 声を荒らげかけたところで、真癒さんはその口を閉じた。……心当たりがあるのは確かだ。だがなんというか、渋ってるというか、伝えていいのかと迷ってるというか。いや──

 

 己の想定を信じたくない、と言った感じに見えた。なら、待つしかあるまい。俺は、真癒さんを信じる他ないのだから。その後は着陸まで無言が続いた。




サブタイの『影』、ティガレックスと関係あるからちょっと思い出してみよう
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