Monster Hunter 《children recode 》 作:Gurren-双龍
ここからチルレコが本気で動き出す、くらいの場面のつもりです。いつもよりなんか凄いの書けた気がする(魔王感)
1月 18日
「…………マジで何しよう」
『轟竜 ティガレックス』を狩猟した翌日。俺と真癒さんには今日一日の
まあ今の真癒さんの行方は、書き置きからして、またデパートに行ったのだろう。主婦とJKは洋服の買い物が死ぬほど好きらしいし。……これは流石に偏見か?
でも真癒さんいないし仕事無いし、慌ててこっち来たから普段使ってるゲーム機も置いて来てしまったし、通話なんてACCデバイスで済むじゃん、ってスマホとかも持ってないし……帰ったら
そういう契約なら親に頼むべきとは思うが、親とは未だに会ってないしまだ会う気が起きないので、親にお願いして契約とかはぶっちゃけ嫌だ。盛大に喧嘩しておいて、久しぶりに顔合わせていきなり『スマホ契約させろ』とか厚かましいにもほどがある。
取り敢えず今は暇潰しも兼ねて疑問の消化に努めよう。
まずあの赤黒い傷口。とても単なる炎熱や雷撃などで出来たモノとは思えない。血が滲んだり焼けた跡にしては、アレは余りにもそれは黒かった。……俺の知らない〈モンスター〉によるものだろうか。
……先遣隊の方々は何か知ってるだろうか……あわよくば、真癒さんのことも聴いてしまおう。……いくらなんでも、知らないままで居続けるには、これは疑問が絶えなさすぎる事柄だ。
「よし、行くか」
先遣隊がいる別室に向かうべく、部屋を出た。
◆◇◆◇◆
「さぁて……何を買おうかな……」
昨日来たデパートに、今度は私一人で来た。今日の目的は雄也の服ではない。1月21日。この日までに、私は何かを買っておきたいのだ。何せその日は──
『去年逃した、アイツの誕生日のプレゼント選び……お姉ちゃん張り切ってるね……』
「うん、真治なら雄也の趣味嗜好分かるかな、って」
『なるほど……というか、なんで師弟揃ってアタシを頼るんだろ……』
通話先の真治がどこか呆れた声を出してるが、取り敢えず気にしない。
『まあいいわ。それで、雄也が気に入るモノ……お姉ちゃんは、何かアテとかあるの?』
「無いよ!」
『即答か……と言っても、アタシも雄也と仕事以外で絡むこと、あんまり無いのよね』
思い出すように、真治が驚きの事実を述べた。
「……意外。二人は同級生だし、もっと関わりあると思ってた」
『ないんだよねそれが。男女で違うからってのもあるのかもだけど。実のところ、アイツとアタシの関係はホントなんていうか、ビジネスライク?的な、仕事のみの関係って感じね……』
思い返せば、雄也の事を仕事と訓練、そしてご飯やお風呂に向かうところ以外で見かけたことは、あまりない。たまに散歩に出てる、ってぐらいだ。最近は散歩に出てるのすら見てないが。
「ふぅん……じゃあ私が選んでも真治が選んでも同じなのかな……」
『かもね。あ、そうだ。アニキなら少しは分かるかな?』
「仕事中かもだし多分無理かもね……うん、頑張る」
『そうそう、アドバイスが一つだけ。お姉ちゃんなら分かってると思うけど……相手を考えて選ぶ、それだけで意味はあると思うから、固く考えなくてもいいと思うよ』
「ありがとう、真治。ほどほどに考えてみるね」
ん、という返事と共に通話が切れる。……そういえば、雄也とは仕事以外で通話してみたことないなぁ……ちょっと、プレゼントの参考に何か聴いてみようかな……でももう少し考えてからにしようか。
「まあでもダメ元で、誠也に聞いてみようっと」
私は無邪気に、買い物を続けた。
◆◇◆◇◆
「今出来る限りの情報の開示?……申し訳ないですが、確定情報でないと教える訳には……」
「なるほどわかりました。でもこっちこそ申し訳ないですが、〈モンスター〉という未知数の塊のような存在由来の情報に、絶対的な確定情報など無いと思います。なので今の段階の情報でも十分です」
部屋を出て数分、情報の開示を渋る先遣隊のリーダーである
「はぁ……わかりました。少し待っててください」
「無茶を聴いて頂き、ありがとうございます!」
思ったよりあっさり折れてくれた。無論礼を欠くことはしない。真癒さんにその辺は徹底的に叩き込まれたなぁ……
「まあ、とはいえそこまでたくさん掴めてる訳では無いのですが……資料です……っとと」
「ありがとうございます……って、結構ありますね……」
「参考用にぃ……ッ、ある程度……ッ!持ち運んで確認しないとォ……行けないんでぇ……ッ!!」
内海さんがとても重そうに運んできた資料は、段ボールが三箱、縦に積み上げられたモノだった。想像以上に多い。
「……やはり、多いでしょうから、なんの情報が欲しいか次第で資料を絞りますね……我々も全て持ってかれると困ります」
「あ、やはりそうでしたか……何から何までありがとうございます」
全力で迷惑掛けといて何を今更、って所だが、今は考えないでおく。
「なんの情報ですか?」
「……先日のティガレックスの亡骸に刻まれた、あの赤黒い傷跡です」
「……となると、これらの資料でしょうか」
そう言って、二冊の資料を差し出してきた。どちらもハードカバーの分厚い本だ。
「……『属性エネルギー論』と、『〈
「お力になれたようで何よりです」
「いえ、ご迷惑をお掛けしました!必ず相応の成果を出します!!お忙しい中失礼しました!!」
はい、という言葉と共に彼は戸を閉めた。
◇◆◇◆◇
「……属性、ということは……俺の知らない属性エネルギーが存在している……そして凄腕になってもそれが隠されてたってことは……並の〈モンスター〉が持つ力ではないということだよな……」
渡された資料を捲りながら、一つ一つ確かめるように独り言をつぶやく。これは昔からの癖で、独り言をくっちゃべりまくる癖自体は良くないと思いつつも、俺自身が効率的に事を運ぶのに大事なことなので治しようがない。
属性エネルギー。それは〈モンスター〉の放つ炎や雷撃に含まれる龍力由来のエネルギー。
龍力は本来、意思や感情の影響を受けて現象を引き起こす。その為、身体機能であるそれらに龍力が絡むことは不可能であると考えられていた。
しかし龍大戦から研究を続けていた『ゼロス=エガルト』と『
さて、そう考えるとあの傷跡はどういった身体機能から生み出された属性エネルギーなんだろうな。リオレウスかロアルドロスのような袋型器官に溜め込み放つタイプか、それともジンオウガやラギアクルスのように発電するように生み出したか、それともグラビモスやウラガンキンのように排気ガスの一種のような形なのか。
そうしてページをめくっていくと、見知らぬ名前が目に入った。
「……『龍属性』?」
かつて世界に舞い降りた異邦者の名を冠する力が、そこに刻まれていた。
◆◇◆◇◆
デパートの休憩フロアで、炭酸ジュースを飲み干して、プハァ、と息を吐き、さっきの通話を思い出した。
「誠也め……盛大にはぐらかしたなぁ……!?」
誠也に通話したが、誠也は全然質問に答えず、しかしそれをすぐ悟らせない程度に綺麗に話題を躱された。誠也め……脳筋のように見えてかなり頭脳派な事を……!
「……でも、良いことは聴けたや」
誠也曰く、『趣味が分からねえなら仕事の助けになるモンならどうだ!!あと一つで不安なら、何個か買ってもいいと思うぜ!!』とのこと。
……アレ?実ははぐらかされてない?いや、誠也自身のプレゼントを聴いても全く答えてくれてないしやっぱり調弄されてる。
「でも仕事関係か……何がいいのかな……」
雄也が使いそうな新しい物だとしたら、新調したナイフホルダーか、あるいは新デザインのACCデバイスとかだろうか。少し悩む。
「……聴いてみようかな」
落ち着いてベンチに座り、りんごのマークの付いたスマートフォンの通話を起動した。どんな反応するかなー?
◆◇◆◇◆
資料を読み漁ってざっと一時間ほど。龍属性の項から読み取れた情報に、俺は打ち震えていた。
「嘘……だろ……?」
残酷すぎる。その存在は、その力は、その真実は。彼らは……先遣隊の人達や先人の狩人達はこんな恐ろしい代物を知りながら、これらに立ち向かい、時に武器として使っていたというのか……?
「……なるほどこりゃ……すぐ教えてもらえないわけか……」
ついつい、自嘲気味に笑いながら呟いてしまう。だがそう思わずにはいられないほど、龍属性という存在は衝撃的だった。
「……やべぇ……今回の仕事、途端に怖くなってきちまった……」
手が震える。この手は資料を掴んでるが、すぐに零れ落ちてしまいそうだ。恐怖で息も荒くなってきた。部屋が暖かいから視覚的には何も無いが、外だったら間違いなく口元は冷えた息で真っ白になってるだろう。
……何分経ったろうか。息も落ち着いてきた。もう一度読んで整理しよ──
「……ッ!?」
と思ったところで、手首に巻き付けた腕時計型のACCデバイスが震えた。携帯電話のバイブレーションと同じ機能、すなわち通話が入ってきたという事だ。
持っていた本を落ち着いて閉じて机に置く。デバイスを確認すると見慣れた番号が並んでいた。
「……全く、間が悪いなホント……」
少し愚痴りながら、通話を起動する。
「もしもし?」
『あ、雄也?今大丈夫?』
聞き慣れた真癒さんの声だ。いつもの会話……と思いたいが、今発した自分の声が、少し震えてるように感じた。悟られぬよう、一旦深呼吸をした。
「大丈夫です。どうしました?」
『うんとね、今買い物に出てるんだけど、雄也に意見を聴いてみようと思ってね』
「はぁ、どんなものです?」
『うんとね、腕時計なんだけど。雄也はどんなデザインが好き?』
「……中学生には随分やりづらい質問っすね」
デバイスに腕時計型を選んでおいて、って気はするが、持ち運びと使い勝手で選んだだけなので、デザインなどは特に気にしてなかったしな。
「うーん……俺は自分の気に入ってます、としか。だから……派手すぎないのがいいと思います。でも少しこだわりを入れて、みたいなのとか」
『ん、ありがとう!参考にしてみるね!じゃ!』
通話が切れた。自分のなのに俺に聞いて良かったのかいささか疑問だが、まあ本人がいいなら良しとしよう。
「……真癒さん、俺がこれを知ったと聞いたら、どう思うかな……」
壁にもたれるように座りながら、通話前のさっきまでの自分を思い出す。傷跡の原因、龍属性エネルギー。その真実を知った今、俺はこの件に対してどう向き合うべきなのだろうか。
龍属性エネルギーの正体。それは──
「『知性体の血肉を蝕む超速効性ウイルス』、あるいは『龍の殺意が生み出した純殺傷性の龍力の塊』ってさ……なんなんだよ……これじゃあまるで──」
世界を滅ぼす力じゃないか。
改めて真実を知った実感から現実逃避するように、俺は頭上の電灯を眺めることにした。でも、まるで見られてたかのように、現実は俺を逃がさなかった。
ビィィィィ!!ビィィィィ!!
〈モンスター〉出現警報が鳴り響いた。無論、俺のACCデバイスも緊急招集時特有のバイブレーションを起こしていた。
「……はい、上田です」
『
「……了解」
プツン、と通話が切れたことに安堵しつつ、その時が来てしまった事を実感してしまった。
「……クソッタレ」
立ち上がるが、足取りは未だ覚束無い。恐怖なのか単なるショックなのか、とても本調子ではない。だが仕事が仕事だ。他の人に任せるには危険が過ぎる。やらねばなるまい。 そう己に言い聞かせながら、先遣隊の部屋に戻る。
◇◆◇◆◇
「……真癒さんは?」
「彼女なら今急いでこっちに来てますよ。もう少しお待ちください」
部屋に着くと、先遣隊の方々がバタバタ慌てながら情報整理に務めていた。取り敢えず邪魔にならないよう、入口付近で座って待つことにした。
「……さっきの資料、成果は出せそうですか?」
そう声を掛けてきたのは、さっき資料を貸してくれた先遣隊のリーダー、内海さんだ。
「えぇ……嫌という程知れました」
「……そうですか、気負いすぎないでください」
祈るような言葉と共に、内海さんは先遣隊を纏めに向かった。
「出現した〈モンスター〉の詳細、出ます!!」
「っ!!」
内海さんが俺のところを離れてすぐ、情報が舞い込んできた。
「映像は!?」
「もうすぐカメラの調整も……よし、映像、モニターに出します!!」
調査員の声と同時、室内の大型モニターに吹雪舞う雪山の映像が出た。そこに映っていたのは、大きな翼から尻尾のように長く伸びた鉤爪を携え、三本の尻尾を備え、その角は後ろに長く伸びた、白い飛竜だった。
「────」
最悪だ。よりにもよって、
「すみません!!遅れました!!……って、アレ、どうしたんですか?」
思考がフリーズした瞬間に、部屋に真癒さんが飛び込んで来た。……慌てようからして、部屋の中は見てないようだ。
「……来たか、冬雪隊長」
「……作戦をお願い致します」
真癒さんに続き、敬礼をして身を整える。真癒さんも察しているのか、表情は険しい。
「……今回の出張の原因たる謎の波形パターン……その正体は──」
「……冥雷竜、ドラギュロス」
ガアァァァァァァ!!!!
内海さんの声を遮った俺に応えるように、モニターから咆哮が響く。
「待って、なんで雄也がその名を?──まさか」
「……話が早いな。では君達に、この『ドラギュロス剛種特異個体』の討伐作戦を依頼する。健闘を祈る」
「……了解」
より一層、外の吹雪が強くなった気がする。
これが私なりの、龍属性の解釈です