Monster Hunter 《children recode 》   作:Gurren-双龍

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おはこんばんちは、Gurren-双龍です。

リアル事情で時間が取れなかったこととモチベの問題で、ここまで伸びてしまいました。申し訳ありません。しかしまだリアル事情が完全に片付かないため、更新ペースはまだ上げられそうにはありません。
上げられそうな時には活動報告にて告知いたしますので、どうぞよろしくお願いします。

それではどうぞ


第2話 狩人入門

2011年 4月18日

 

 放課後になった。羽崎との話も終え、羽崎から両親と喧嘩した事とこれからの〈ハンター〉としての生活に対して励ましの言葉を貰った後、俺は【ハンドルマ第一中国地方支部】のロビーの入口、つまりは建物のすぐそばに来ていた。理由はもちろん、〈ハンター〉として生き残る力を得るための訓練だ。〈モンスター〉という、時として人智を超える力を発揮するモノを相手にする立場である以上、並大抵の訓練でないことぐらい覚悟している。だけどそれさえも乗り越えるつもりだ。でないと……真癒さんや()()()()()()()()()()のようにはなれないしな。

 しかし真正面からここに入るのが初めてだからなのかな……なんていうか、入るのに思わず二の足を踏んでしまう。どうも初めて来る場所だと、本当に入っていいのか分からなくていつもこうなってしまう。いい加減治さねば。

 

「ええいままよ! さっき覚悟決めたばっかだろうが!」

 

 一人で怒りながら叫んでる俺の様子は、傍から見ればさぞ滑稽だったろうが、気にしないことにする。

 さっきの叫びで思いの外吹っ切れたので、自動ドアに向かって一歩進んだ。中に入ると、思ったより普通のロビーの風景が広がっていた。特に派手な装飾もない、簡素なロビーだ。もちろん受付のカウンターらしき所に受付嬢っぽい人と、カウンターらしき所でなんか騒いでる、見た目俺とあまり年が変わらなさそうな背丈の女子がいた。遠目ではあるが、俺と同い年ぐらいのセーラー姿の女子が、なんか受付嬢に対して突っかかっている様に見える。何かあったのだろうか? 一応俺も受付嬢さんに用があるし、聞いてみるか。

 

「すいません、どうしたんで──」

「何よ!今話しかけないで!」

「……なんかすんません」

「あ、あはは……」

 

 話しかけるなり怒鳴られた。受付嬢さんも苦笑い、というか乾いた笑いをあげている。この感じだとかなり長い時間責められている模様。そしてそんな目に合わせた張本人はケロッとしている。……なんかこのまま引き下がるのも負けた気分になるので、もう少し食い下がるか。

 

「いやいやそうじゃなくて。何してんですか?」

「何してるもなにも、こいつがお姉ちゃんに会わせてくれないのよ!」

 

 年上に対して「こいつ」言うな「こいつ」って。そして指も指すな。

 

「お姉さん、いるんですか」

「ええそうよ! そんじょそこらの〈ハンター〉なんか目じゃない、すっごい強いのがね!」

「そして〈ハンター〉でもある、と」

 

 ……アレ? なんかこの人の言う「お姉ちゃん」に心当たりが……確か聞いた限りでは、【ハンドルマ第一中国地方支部(ここ)】に所属している〈ハンター〉は真癒さん含めても2人だけって……まさか、な。

 

「ですから……身分証明ができる物がないと連絡を付ける訳にも行かないんですよ」

「何よ! 一回学生証忘れたからって、融通効かないわねホント!」

「そりゃ重要な機関ですしねここ」

「誰だか知らないけどアンタは黙ってなさい!」

「断固拒否する」

 

 なんだこいつは……ギャーギャー騒ぎやがって、クレーマーかよ。 まあ、こいつが俺に突っかかっている間に、なんか受付嬢さんがどこかに電話しているし、多分この状況をどうにか出来る人でも呼んだのかもしれない。助かる。あとは耐える他ない。

 

「あんたどこ中よ! 教えなさい!今度殴り込みに行ってやるから!」

「教えないから来なくていい」

「なんですってー!?」

 

 一昔前の不良みたいなこと言うなよ面倒臭い。

 

「いい加減にしないとぶん殴るわよ!?」

「やってみろよ」

「言ったわね!? 遠慮なくズドンと行くから覚悟しなさい!!」

 

 ああもう面倒臭い。誰でもいいから早く来てくれ。

 

「とりゃー!」

 

 とか考えてたらこのセーラー女の拳が迫っていた。もうここは我慢して受けてやるか。拳は既に眼前まで迫り俺の鼻先に直撃──

 

「はーいそこまで」

 

 ──しようとした所で、その拳は止められた。セーラー女の拳を止めるために手首あたりに伸ばされた手の方向を見てみると、そこには真癒さんが立っていた。

 

「お姉ちゃん!?」

「真癒……さん? ……ん?」

「ん?」

 

 アレ? こいつ今なんて言った?もしかしてこいつ……

 

「今お姉ちゃんって言ったか?」

「今お姉ちゃんを名前で呼んだ!?」

 

 ビシッと指を指される。俺は思わず2人を交互に、かつそれぞれ二度見する。

 

「人様に向かって指を指さない!」

「あだっ!? い、(いった)ーい!?」

 

 そしてセーラー女は叩かれる。指摘しようと思っていた事で怒られてるので、少しスッキリした。

 

「あとコイツ、受付嬢さんに向かって『こいつ』って呼んでました」

「何ですって!?」

「アンタも使ってるじゃな……痛!?」

「また指指さない! それと、どういう事かな……?」

 

 その後、真癒さんの妹らしき女子への説教その他諸々は、およそ十分間に及んだ。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「ガッハッハッハ! そうかそうか、みっちり怒られたか真治(まや)君!」

「笑い事じゃないですよ……ホントもう……」

 

 現在、あのロビーから訓練室に移動中である。因みにこの大声で笑う大男は、俺達の訓練監督を担当する教官との事。そう、俺『達』だ。さっき受付嬢さんに突っかかていたあのセーラー女、改め真癒さんの妹である『冬雪 真治(ふゆき まや)』と、俺の教官との事。つまりこの女と俺は同期という事になるらしい。

 

「全く……なんであんなに騒いでたのよ?」

「だって……お姉ちゃんに訓練してもらおうかと思って……」

「最初の内は教官がやってくれるし、昨日もロビーで待ってなさいって言ったでしょ?」

「だってー!」

「だってじゃない!!」

 

 冬雪が騒いでいたのはそういう事らしい。というかそれを叱る真癒さんと叱られている冬雪の様子は、姉妹というより親子である。

 

「ハッハッハ! 仲が良くて結構結構! 楽しくじゃれあってる所悪いが、もう着いたぞ!」

「別にじゃれ合ってた訳では……いえ、教官に何か言っても無駄な気がするのでもういいです」

「ハッハッハ! そういう風に見られてるのは少し悲しいというか悔しいというか! まあいい! 入れ!」

「は、はい!」

「良い返事だ! ハッハッハ!」

 

 教官の最後の一言に思わず反応してしまった。教官には好評のようだが。

 

「それじゃ、私はここまでで」

「え! お姉ちゃん見てくれないの!?」

「真癒さんだって忙しいんだろ。我慢しろよ」

「アンタに聞いてない!」

「……はいはい」

 

 ヤバイ、こいつ死ぬほど面倒臭い。けどキレても面倒な事になるだけだから我慢する他ない。なにより真癒さんの前だ、下手なことはしたくない。

 

「とにかく、私は別のことやらなきゃだから二人のことは見れないの。ごめんね真治、雄也君」

「俺は気にしてませんよ。頑張ってください」

「ありがと。じゃあ二人とも、頑張ってね!」

「はい!」

「う、うん!」

 

 手を振りながら真癒さんはその場を去った。真癒さんは三年前から〈ハンター〉をやっているかなりのベテラン。きっと頼られてるのだろう。いつか追い付いてみせる。そう誓った直後、なんかこっちに向かって猛スピードで走ってくる足音が聞こえてきた。

 

「ごめん言い忘れてた! この後もう一人別の〈ハンター〉が見に来てくれるから、よろしくね!」

「分かりました。因みにどんな人ですか?」

「そうだね……一言で言えば教官二号?」

「……大体どんな人か察しました」

「じゃ、今度こそ行くからね!」

 

 そう言って、真癒さんは戻ってきた時ぐらいのスピードで去っていった。言い忘れてた事ぐらいであんなに慌てるって事は、割と真癒さんはおっちょこちょいなのかもしれない。

 しっかし教官二号って……まだ会って間もないが、室温がハネ上がりそうだと感じた

「さて諸君! 吾輩が君達の教官を務める者だ! 名前はまだ教えん!! 君達が一人前、即ち最前線で生き残る事が出来るほどの者になった時に教えてやろう!!」

「あ、だったらいいです。そこまで行ったら今更名前を気にしないだろうし」

「こればっかりはアタシも……ね」

「ハッハッハッハ!! そうかそうか!それもまた良し、早速訓練に入……む?この気配はもしや……」

 

 奥に向かおうとした教官が、突如足を止めて入口を、というより恐らくその向こうにあるであろう廊下の方を睨み付けた。つられてそっちの方を見てみると、何故か段々と大きくなる足音が耳に響いてきた。〈ハンター〉となったため、聴力も大分上がっているからこそ事前に感知できたが、教官は俺よりも早く感知していた。……この人もやはり〈ハンター〉だったのだろうか。

 

「とぉおおおおおりゃあああああああああ!!!」

「ハッハッハ! 来たか!」

 

 埃を撒き散らしながら、先の足音の主は急ブレーキを掛けてそこに現れた。

 

「ふぅ……教官! 間に合ったか!?」

「心配するな、さっき名乗り上げたばかりだ!!」

「よっしゃ!」

 

 顔を上げて教官に質問したのは、真癒さんと同い年か年上ぐらいの男だった。漫画で見かけそうな糸目にかなり黒く短めの髪の毛、服の上からでも分かる筋骨隆々であろう屈強なガタイ。身長もそれに見合った高身長である。革ジャンとジーパンには埃が掛かっている。

 この人が真癒さんが言っていた人だろうか? 確かに声もでかいし、教官同様に良いガタイと糸目がある。なるほど『教官二号』と言うのも納得がいく。

 冬雪の方も真癒さんの言っていたことに納得がいったようだ。しかしその男性はそんな俺達の疑問をよそに教官の隣に立った。改めて並ばれると確かに似ている。いやホントもう、親子かっ、てぐらいには。

 

「自己紹介が遅れたな!! 俺は『常磐 誠也(ときわ せいや)』! 武器はガンランス!今日は真癒の姉御にお前達を任されたモンの一人だ! よろしく!」

「上田雄也です、よろしくお願いします!!」

「アタシは自己紹介しなくても良いわよね! お互い知ってるし!」

「おう!好きにしていいぜ!」

 

 冬雪はこの人とも知り合いなのか。教官とも普通に話してたし、真癒さんが紹介したのかもしれない。

 

「あぁそうだ……真治はともかく、雄也!!」

「は、はい!!」

「お前にはこれから俺のことを……『アニキ』と呼んでもらおうか!!」

「はい!?」

 

 突然の頼みはまさかの呼び方固定。

 

「理由は——」

「アニキは単純にそう呼ばれたいだけよ。呼んであげたら満足するからそうしなさい」

「は、はあ……それじゃあ……よ、よろしくお願いします!!アニキ!!」

「いよっし!! よろしくな!」

 

 冬雪の言った通り、本当に満足した。何がしたかったんだ?

 

「まあ雄也」

「はい?」

「さっきのが明らかに心が篭ってない、その場凌ぎのモンだってのは分かってる」

「うっ……」

「だが……だからな……」

 

 一拍置いて、俺にビシッ、と指を指してきた。腰に手も当てた、何か決めポーズみたいな感じで。

 

「いつかお前には、素で『アニキ』って呼ばれてえからな! お前の指導、全力を尽くすぜ!!お互い頑張ろうぜ!」

「……っ、はい!!」

 

 結局この人の意図は分からないけど、良い人である事はなんとなく感じた。年上の兄弟がいない身としては、兄のような存在が欲しいとは思っていたし、結構嬉しい。

 俺の返事で今度こそ満足したのか、教官に交代するように誠也さんは一歩下がった。

 

「さて諸君!挨拶も済んだのでこれより訓練に入る! 覚悟はいいな!?」

「勿論です!」

「それぐらい出来てるわよ!」

「良い返事だが、訓練中は吾輩に対しての言葉の最後には必ず、『サー』を付けるように!! 通例というか習わしなのでな!!」

「「サー!」」

 

 〈ハンター〉というより軍人のような感じだが、誠也さんとのやりとりのせいでテンションが高まっていた俺には些末な事だった。

 

「うむ! ではまず……」

 

 教官の用意した最初の訓練とは――

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「なんで最初の訓練が座学なのよー!?」

「知識もなく武器を振るな、ってことなんだろ」

「アンタには聞いてないでしょうが!」

「そのくだりは飽きたから諦めろ」

 

 最初の訓練は基礎知識を蓄えるための座学。座学だけなら平均一ヵ月半で済ませられるらしいが、実技で苦労する例が多いんだとか。なので両方合わせた平均期間は大体3~4ヵ月ほどとのこと。

 

「まあそう言うな! 雄也の言う通り、何も知らない奴が武器なんか持ったら危ねえからな!」

「そういう事だ! 君が勉強嫌いなのは承知だがキッチリやってもらうぞ!」

「そんなー!?」

 

 冬雪は勉強嫌い……覚えたぞ。これでアイツに仕返しできる。

 

「それではまず……」

 

早速教官が口を開き、注意事項の様なものを語り始め、そして〈モンスター〉に関する基本的な事を授業し始めた。

 冬雪の勉強嫌いは納得だが、誠也さんが割と勉強出来る方だというのが意外だった。結構脳筋指向かと思ってたのに。しかもたまに補足を入れてくれるのだが、これがまた分かりやすい。真癒さんではなくこの人が俺達の教官補佐官なのも納得出来る。なので冬雪もさっきからお世話になりまくっている。

 

「全然分かんないわよー!?」

「なんでただ説明聞いて覚える事にそんな労力使ってんだよ」

「アンタには分かんないでしょうね! 知らない単語を延々と聞かされる苦痛ってのが!!」

「俺だって知らねえ単語の方が多いっての。お前が単にバカなだけだろ?」

「バカっつったわねアンタ!?」

 

 またしても俺に殴りかかってくる冬雪。今度こそ当たるかな、と思っていたら今度もその拳は止められた。もちろん誠也さんによって。

 

「アニキ……!?」

「元気がいいのは良いがそろそろ辞めにしとけ」

「はーい」

「雄也、お前も煽るな」

「……っ、はい」

 

 俺まで叱られた。まあ確かに火に油を注いだのは俺だし、仕方ないか。

 

「ごほんっ! 授業を進めるが宜しいか!」

「はい!」

「うぅっ……やってやるわよー!」

 

 授業は再開した。今度は冬雪にも分かりやすいように言葉を選んでいたが、それでもアイツは半分しか飲み込めなかった模様。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「では、本日はここまで! また明日の放課後に会うとしよう!! では!気を付け、礼!」

「「ありがとうございました」」

「うむ! では気を付けて帰りたまえ!」

 

 既に時刻は午後の七時。五時ぐらいから始まり、十五分の休憩を挟んだ授業は終わった。

 

「んーっ! 終わったー!」

「んっ! 終わったな」

 

 長いこと椅子に座っていた俺達は一斉に体を伸ばした。

 

「お疲れさんだ! どうだ二人共!」

「まあ……面白かったですが疲れました」

「もう……勉強なんて学校だけにしてよ〜」

 

 体を伸ばした冬雪はそのまま机に突っ伏した。確かに学校の後にも勉強というのはキツイが、興味のある事柄を学んでいるので大して苦ではない。

 

「もう疲れたし、先帰るね」

「雄也、お前は?」

「俺はここにいますよ。って言うか、今日から俺、ここに住むんで」

「えぇ!?」

 

 まあ驚かれるのも無理はない。何故こうなったのかというと、先日の両親との喧嘩で家に居づらくなったのでどうしたものかと支部長に相談したら――

 

『ここの施設内の職員居住区を使うといい。空きはあるしのぉ』

 

 なんと住む場所を提供してくれたのだ。親切な人だよやっぱり。それだけでなく生活に必要な物は何でも言ってくれ、とまで言われた。少し甘やかされてる気がするが、真癒さん曰く、『子供も孫も男の子が居なかったから、嬉しいのかも』とのこと。可愛がって貰えるのは嬉しいので、素直にその好意は受け取っておこう。

 

「んじゃ、俺もう行くわ」

「おう! また明日な!」

「ふん! 明日はぶん殴ってやるんだから!」

 

 それぞれ言葉を背に受けて、俺は教室を去った。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「ここ……だっけ?」

 

 爺さんに言われた場所まで辿り着いた。ここは【ハンドルマ第一中国地方支部】の地下二階にある職員居住区。普段は夜通し働く用のある人達のための休憩スペースのような扱いなんだとか。俺に用意されたのはそれの内の一つ。しかもどうやら割と広い方のを用意してくれたのだとか。

 

「よし、入ってみるか……おじゃましまーす」

 

 意を決してドアノブを握って回し、そのまま中に入る。既に自室なのにおじゃましますとか言いながら。そして部屋に入った俺の視界に入ったのは――

 

「いや広いってレベルじゃねえぞコレ!?」

 

 思わず叫んでしまった。なにせ中学生一人が使うにはあまりにも広い、というか大人の一人暮らしにしても広すぎる部屋だった。いやもう、広さだけなら高級ホテル並である。

 

「……部屋間違えたかな?」

「残念だけど、ここが君の部屋だよ。ま、残念なんて言ったら『贅沢だ!』って誰かに怒られそうな広さだけどね」

「あ、真癒さん」

「なにか不自由してないかな〜、って。あ、おじゃましまーす」

「は、はあ」

 

 真癒さんがいつの間にか俺の背後に立っており、しかもそのまま俺より先に靴を脱いで部屋に入った。なんか負けた気分だが、取り敢えず俺も部屋に入るとしよう。

 

「で、どうだった?」

「訓練ですか?」

「そうそう」

 

 既に備え付けられていたソファーに座った真癒さんは、そう尋ねてきた。

 

「楽しかったですよ。まだ座学ですけど、今後がますます楽しみです」

「そっか……真治はどうだった?」

「訳が分からない、って言って頭爆発させてました」

「あはは……やっぱりか〜」

 

 こめかみの辺りを掻きながら苦笑いを浮かべてる様子を見るに、どうやら想定内のようだ。とはいえ相当なものだった。多分、事前に聞かされててもあの理解力の低さには絶対驚く。

 

「そう言えば、真癒さんはまだ帰らないんですか? 冬雪はもう帰るって言ってましたけど」

「え?……って、そういえば言ってなかったね。私もここの居住区の一室に住んでるの」

「え? 何でですか?」

 

 再びこめかみの辺りを掻き出すが、今度はバツが悪そうな、そんなふうに感じられた。

 

「えっとね……何て言うか、体質の問題で普通の家に居られなくってね、仕方なく……」

「……真癒さんも苦労してるんですね……」

「ま、まあね……」

 

 そこで何故か会話が止まってしまった。……取り敢えずなんか喋るか。

 

「真癒さ──」

「それじゃあ私、行くね? おやすみ! 何かあったらインターフォンあるから呼んでね!じゃあ!」

「あ、ちょ真癒さん!?」

 

 ドタバタと、嵐のように去って行った。……何だったんだ?何かを誤魔化してるようにも見えたが……まあいいか。とにかく疲れた。さっさと風呂に入って寝よう。俺の〈ハンター〉生活はこれからなのだから。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「まだ、知られる訳には……いかないんだよね……」

 

 そんな独り言はどこにも届かない。届かれたら寧ろ困るのだが。

 

「ッ! ごふっごふっ!?」

 

 喉元を何かが登ってくるような感覚に襲われ、口の中から血が溢れ出た。その血は以前——大体一ヵ月前に出た血よりも少し赤黒くなってる様に感じた。

 

「確か今日の診断だと……もってあと二年ぐらいだっけ? ……それまで雄也君と真治を……私ぐらい、もしくはそれ以上に強くしてあげなきゃ……でないと……」

 

 独り呟いていると、ケータイが震え出した。多分真治からだろう。取り敢えず口の中の血を悟られないように喋らなきゃ。

 

「もしもし……真治?」

『もしもしお姉ちゃん? 今大丈夫?』

「うん、大丈夫だよ」

『ホント!? じゃあ愚痴聞いてくれる?』

「うん、いいよ」

『やったー! それでさ、聞いてよ!アイツがさ……』

 

 こうやって楽しい時間を過ごす事が出来るのもかなり限られてきた。……もし良かったら……私がいなくなった後は雄也君に真治を支えて貰えたら……なんて、ね。

 

『それじゃ、おやすみお姉ちゃん!』

「うん、おやすみ」

 

 今、真治と楽しく話が出来ることを噛み締めながら、私は眠りについた。お風呂は……朝でいいや。吐血したばかりで辛いし。

 

「おやすみ……」

 

 おやすみなさい。どうか明日も、(まや)と、戦友(せいや)と、そして新しい後輩(ゆうやくん)と会えますように。




iphoneで執筆しているのですが、何故か突然普通の四角形が出なくなったので、視点変更、及び時間変更の際の印を「◇◆」に致しました。

次回がいつになるかは不明ですが、なるべく早くを心がけていきます。

それでは、次回をお楽しみに
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