Monster Hunter 《children recode 》   作:Gurren-双龍

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おはこんばんちは、Gurren-双龍です。
書けたんで投稿します。
文字数が多いと読みにくいのでは? と思い、実は話数重ねるごとに文字数減らしてます。まあ減りすぎないようにはしてますが。
では、どうぞ


第5話 青と紫

2011年 6月13日

 

 もうすぐ正午になる。初夏ならではの熱を帯びた日光が俺達の防具を焼き、中の肌を蒸し焼きにする。

 

「暑い……」

「クーラードリンクが用意されてたのはこういうことか」

 

 いかに〈ハンター〉と言えど、熱中症には耐えられない、という事だ。クーラードリンクは熱射病の類を防ぐ為の飲料で、熱帯地域での戦闘において必須のアイテムだ。流石に砂漠地帯や火山地帯ほどで無いと言えど、夏の晴れた日に何も対策をしなければ、〈ハンター〉と言えども倒れてしまうため、こういったアイテムが支給される。因みにスポーツドリンクのような味がする。

 

「さてと……ドスランポスの位置は……」

 

 腰に付けた、中に入った物を龍子化出来る特殊ポーチから、携帯用コンソールを取り出した。起動させると、この辺り一帯の大まかな地図が出てきた。ある位置には矢印が二つ――俺と冬雪――と、また別の位置にはトカゲみたいな形のマーク――これはドスランポスだろう――が記されていた。因みに高低差は記されてない。

 

「……ここから大体3km離れた所にいるみてえだ」

「どの方角?」

「俺が向いている方角が東で、このトカゲ形マークがそれの左後ろ斜め辺りだから……南西、ってとこか?」

 

 納得した様子で、冬雪は己の武器『クロスボウガン』の調子を確かめ直していた。俺も『ツインダガー』を磨いとくか。

 

『こちら司令室。まもなく作戦開始時間12:00(ヒトフタマルマル)です。応答せよ』

「ビギナー1、了解」

「ビギナー2、了解」

 

 司令室からの連絡にコールサイン――初心者を意味するビギナー――を口にして答える。……なんつーか、軍人っぽいな。因みに俺が1で冬雪が2。

 

「指揮は、どっちが取る?」

「アタシが取るわ。ガンナーだから距離があるし、状況を把握しやすいしね」

「そういう理由なら納得だ」

『こちら司令室。作戦開始時間です』

「「了解」」

 

 作戦開始時間になったことを告げられ、俺達はベースキャンプを出た。因みにヘリポートを兼ねているため、この支部の地上ビルの屋上にある。飛び降りれる高さなので問題ないが。

 

「アンタが先頭に出て確かめて来て。アタシからあまり離れすぎないようにしなさいよ」

「分かってる」

 

普段はやかましい冬雪も、初の実戦という事で少し静かだ。緊張しているのだろう。……俺はあまり何とも感じない。妙に冷静な自分がいるが、慌ててるよりマシなので良しとする。問題は冬雪だ。少し、気取ってみるか。

 

「冬雪」

「なによ」

「いつも通りでいい」

「ふ、ふん! 心配しなくてもそうするわよ!」

「いつも通り、()()()()()()()()()

「……そ。言われなくたって、勝てそうならそうするわよ!」

「いつも通りで安心だ」

 

 それが見栄で言っているならの話だが。流石にマジで撃ち抜かれるのは勘弁して欲しいし。

 

「っと。ペイントボールペイントボール、っと」

 

 ペイントボール。〈モンスター〉の位置を確実に把握する為のアイテム。実は【ハンドルマ】のレーダーでは、周囲の龍力の乱れ次第では観測が困難にもなりやすく、しかも建物の中に入り込まれたらレーダーに映らなくなると言う。そこで【ハンドルマ】は、世界一臭い食べ物と言われるシュールストレミングの10倍匂いを取れにくくし、代わりに匂いの継続時間を3時間に短縮した投擲用アイテム、ペイントボールを開発したという。因みに匂い自体は臭くない。むしろトイレの消臭剤よりイイ匂いなのだ。

 

「そう言えば、アンタ強走薬貰った?」

「一応5個。グレートは無かったけど」

「充分じゃない?」

「だといいが」

 

 強走薬とは、息切れの心配を無くすためのアイテムだ。運動すると出てくる乳酸を分解し、疲労蓄積を一時的に解消する。因みに継続時間は30分。

ピピピッ、ピピピッ

 

「ん、近いな」

「構えとくわ」

 

 コンソールからアラートみたいなものが鳴る。あとは肉眼で見つける。壊されないようにポーチにしまっとくか。

 

「ペイントは私がしておくわ。ペイント弾あるし」

「了解。前衛は任せろ」

 

ギアァ! ギアァ!

 

「!」

「来たわね……!」

 

 鳴き声のする方へ向くと、そこには数匹のランポスを引き連れているドスランポスが、こちらを睨んでいた。

 

「撃つわ!」

「強走薬を飲んで前に出る!」

 

 冬雪がペイント弾を当てたのとほぼ同時、俺は強走薬の入ったビンの中身を飲み干し、それを投げ捨てて――後で【ハンドルマ】が事後処理で掃除してくれるからポイ捨て言うな――抜刀し、鬼人化の構えを取る。

 鬼人化をしている間は体内の龍力が活性化する事によって気力が高まる。それによって、極限に近い集中状態を獲得し、多少の痛みを感じなくなったり、俊敏性や動きの精度が高まり、より強力な攻撃を与えられる。

 デメリットとして、スタミナを削り続けられるが、今は強走薬の服用でその心配はない。しかし極限に近い集中状態ゆえ、視界が狭まってしまう。鬼人化に振り回されたような立ち回りをしないように心がける。

 

「目標を切り刻む!」

 

 取り巻きは冬雪に任せ、俺は頭領を叩く。そういう作戦だ。頭を叩かれれば取り巻きは頭を守るために俺に向く。そこを冬雪が撃ち抜く。……俺への負担はデカイが、幸い俺の身体能力は、新人の中ではかなりの高水準との事。龍力との親和性が高い証拠らしい。まずはガラ空きの胴体を!

 

「オラァッ!!」

 

ギアァ!?

ギャア!ギャア!

 

「行かせないわよ!」

 

 頭領の鱗が鮮血と共に飛び散ったのを見て、取り巻き共が俺に襲いかかる。が、冬雪がそれらを通常弾Lv.2で()()撃ち抜く。

 

ギアァ!

 

「食らうかっての!!」

 

 ステップの要領で噛み付きをかわし、返す刀で斬りつける。ドスランポスだけでなく何かに当たった気がしたが、大方飛びかかってきたランポスでも斬ったのだろう。続けて回転斬り。後ろ方向でまた当たった感触が。どうやら、奴らは俺に釘付けらしい。全身真っ赤になれば、奴らの視線をもっと釘付けに出来る気がするが、何か大事なモノを無くす気がしたのでやめよう。

 

閑話休題。

 

 一旦距離を置き、鬼人化を解除して納刀する。その間は、冬雪が散弾Lv.1をばら撒き、気を引いてくれる。勿論それに当たったランポスは怯むため、中々近づけない模様。その間に閃光玉を取り出す。

 閃光玉は中に入っている、ホタルが変異した昆虫『光蟲』が死に際に強い光を放つ特性を利用したもので、それを閃光玉の中で殺すことで、スタングレネードと同様の効果を発揮するアイテムだ。

 

「閃光玉行くぞ!」

 

 意図を伝え、手榴弾のような安全ピンを引き抜いて、ドスランポスの目線の先に投げ付けた。 すかさず俺と冬雪は目を庇う。

 

ギアァ!?

 

「よっしゃ命中!」

 

 閃光玉の光を直視し、目潰しを喰らったドスランポスは、手当り次第に周りに噛み付いたりしている。その隙に、取り巻きであるランポスを叩く!

 

「鬼人強化状態なら! 非鬼人化状態でも!!」

 

 鬼人化の余熱とも言える鬼人強化状態は、鬼人化に準ずる集中力を発揮して攻撃出来る状態だ。流石に鬼人化程の俊敏性は無いが、ランポス程度の〈モンスター〉なら充分倒せる。

 

「せやっ!」

「当たれ!」

 

ギャア!?

 

 最後の一匹を斬り伏せ、または撃ち抜き終えたところで、ドスランポスを見やる。

視界が戻ったようで、こちらを睨んでいた。

 

「冬雪、剣を研ぐ」

「時間なら稼ぐわよ!」

 

 冬雪の後ろ側に回り込み、すぐさま砥石を取り出して双剣に宛てがって擦る。これで血や体液などの付着物を落とし、更に砥石から削れた成分が刀身をコーティングし、斬れ味を回復させることが出来る。

 

「待たせた! 鬼人化で前に出る!」

「了解!」

 

 取り巻きのいない今なら、鬼人化しても捌きやすい!頭部に切りかかろうとした瞬間、悪寒がして手を引くと、さっきまで剣があった所を通常弾Lv.2が通っていった。

 

「危ねぇっての!」

「アンタが『俺ごと殺れ』つったんでしょうが!!」

「緊張をほぐす為のジョークってことぐらい気付けよこのアホ!」

「なんですってー!?」

 

 またしても言い合いになった。しかし訓練時よりは冷静になれてる為、怒りを抑えて少しドスランポスから距離を置いた。すると直感的に隙を悟ったのか、ドスランポスはその場から走り去ろうとした。

 

「逃がさない!」

『待ってください! これは……!』

 

 冬雪がボウガンを構え直すとほぼ同時、司令室から通信が入った。

 

「どうしたんですか?」

『緊急事態です! 想定外の〈モンスター〉が出現! 作戦ポイントに向かっています!』

「えっ!?」

「どんな〈モンスター〉ですか!?」

『それは――ッ! もうすぐそこまで来ています!』

「クソッ!」

 

 位置の確認のためにコンソールを開く暇もなく、俺と冬雪は取り敢えず背中を合わせて死角を減らすことにした。

 

「見えるか? あ、スコープは覗くなよ。見えにくくなるから」

「分かってるわよ! それよりアンタ!またやらかす所だったじゃない!」

「お前なぁ……!」

 

 言いたいことは山ほどあるが、今は抑える。 それより新手だ。耳に付けたインカムのスイッチを押す。

 

「それで、新手の〈モンスター〉ってのは、どんな奴なんですか?」

『は、はい。新手の〈モンスター〉は――』

 

ゴオォ!!

 

「「ッ!!」」

 

 鳴き声のする方へ振り向くと、見覚えのある恐竜型の〈モンスター〉がそこにいた。

 

「アイツは……!」

『ドスジャギィです!! お二人でも充分交戦可能な相手ですが、どうしますか!?』

「冬雪!」

「ここでやるわよ! 気付かれてる以上、このままドスランポスを追っても挟み撃ちにされるわ!」

「了解!」

 

 一本目の強走薬を飲んでから既に20分経過している。重ねがけでもう一本飲み干して抜刀する。

 

「さっきと同じ作戦?」

「そうよ!」

「次は狙う箇所を教えてくれよ!」

「分かったわよ!」

 

 言質は取れたので、ひとまずさっきと同じように鬼人化し、ドスジャギィに向かって走り出す。

 

「はあぁぁぁぁぁ!!」

 

ゴオォ!!ゴオォ!!

 

 ドスジャギィが吠えると同時に、取り巻き共が走り出した。

 

 

◇◆◇◆◇

 

「オラァッ!」

 

ゴア!?

 

 ランポスの時とほぼ同じ流れで、ジャギィ共も一掃した。あとはドスジャギィのみ……。そう思うと同時に、インカムに通信が入った。

 

『東方向より、何かの接近を確認! 数は8! 発している龍力から、ドスランポスの群れと思われます! 合流されるのは危険です! その場を離れてください!』

「なっ!? 嘘でしょ!?」

 

 想定外も想定外な事が起きた事に、見てるこっちが驚くほど冬雪が狼狽していた。いかん。あのままだとマトモな判断が出来ないかもしれねえ……一か八かやってみるか。

 

「挟み撃ち食らっちまう……! 冬雪!ここは下がるぞ!」

「下がるって、どこに!?」

「どこでもいい!ここに居続けるよりよっぽどマシだ!」

「ちょっ!? アンタ!」

 

 納刀して閃光玉を投げ付け、無理矢理冬雪の手を引いて俺達はその場を離れた。幸い、途中でランポスの群れに見つかることは無かった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

「ハァ……ハァ……なんとか、逃げれたか」

「ハァ……ハァ……あ、アンタねぇ……指示はアタシが出すっつってんでしょうが……!」

「ンなこと言ってる場合かよ……!」

 

 俺達は一旦ベースキャンプに戻ってきていた。息こそ切れているが、お互い軽口を叩ける程度には調子が戻った。ともかく、お互い会話は息が整ってから始めることにした。

 

「それにあんなのね!! こやし玉があれば何とでもなったわよ!」

「え!? こやし玉持ってたのか!?」

「……もしかして、持ってないの?」

「あぁ、そうだよ……でも、お前も持ってるなら使えよな……」

「アタシ、持ってないわよ」

「は?」

「え?」

 

 しばしの沈黙があった。……こやし玉とは、主に同じ箇所に固まった〈モンスター〉の分断や、捕食行為を行うためにこちらを拘束してきた際の脱出手段の為のアイテムだ。閃光玉などに使われる特殊なボール『素材玉』に、排泄物――すなわち、モンスターのフンを詰め込んだモノだ。因みに〈ハンター〉が命令違反をした際の罰の一つに、このこやし玉作りがある。そりゃ、誰だって排泄物になんか触りたくないしな。いい罰になるそうだ。

 

閑話休題。

 

 どちらもこやし玉を持っていないという非常事態が発生した。念のために支給品ボックスを覗くが、中は空である。

 

「あの……こやし玉の在庫あります?あるんだったら欲しいんですけど?」

 

 そのままでいる訳にもいかないので、取り敢えず司令室に連絡を取ることにする。少しお待ちください、と言われて5分後。再び通信が入った。

 

『し、支部長から確認を取ったところ……』

「取ったところ?」

『先日、在庫切れを起こしたみたいで……』

「嘘だろ……」

 

 ある意味死刑宣告。新米である俺達に、〈モンスター〉の群れ二つを捌きながら闘うなんて芸当は出来ない。こやし玉による分断が出来ない以上、他の支部に頼る他ないのかもしれない。

 

「冬雪」

「……最寄りの支部に頼ったとして、どれぐらい時間が掛かりますか?」

 

 唐突に、冬雪が質問を始めた。……長くなる予感。

 

『最寄りの支部ですか? 島根と山口の境にある【第二中国地方支部】だと思いますが、それでも一時間は掛かるかと』

「その間に、ドスジャギィやドスランポスの群れが他の場所に向かう可能性は?」

『高いわけではありませんが、低いわけでもありません。その時になってみないと分かりませんが、あの二つの群れが縄張り争いをして、敗れた方が何処かに逃げ去るかもしれません』

「……逃げた先で、市民が被害を被る可能性は?」

『充分有り得ます。支部から離れた場所に逃げ去る際にこちらが見失えば、警告が遅れる可能性もあります』

「そうですか……」

 

 オペレーターさんの返答を聞いて、大方整理がついたのか、何かを決めたように俺に向き直り、インカムと俺に向けてこう言い放った。

 

「このまま続けます。市民の被害を無視するわけにはいきませんから」

「……ッ!!」

 

 予想外の答えだった。 この状況で、彼女はまだ銃を手に取ると言ったのだ。

 

「本気で言ってんのか? 俺達は今回が初任務で、しかも本当ならまだ訓練過程の真っ最中だぞ?」

「今ここでやれる人が居ないんだから、アタシ達がやるしかないじゃない」

「……それはそうだが」

「ウジウジ言ってられないわよ。アンタも〈ハンター〉なら、こんなピンチの一つは二つは乗り越えられるようになってるべきじゃない?」

「……分かったよ。お前の指示に従う」

 

 正直言って、今のままでは勝算が無さすぎるので一旦撤退するべきだと思っているが、こいつは間違いなく譲らない。一人にさせるわけにもいかないし、折れる他ない。……覚悟、決めるか。剣士で前衛だから一番危険なの俺な気がするんだがな……

 

「んで、作戦は?」

「個々の群れなら今まで通りよ」

「んじゃ、合流されたら?」

「そうね……アタシ達に出来る事と言えば……あ、そうだ。アンタ今閃光玉どんだけ持ってる?」

「そうだな……二個か」

「私はまだ五個ある」

「こちらビギナー2。閃光玉、追加で貰えます?」

『こちら司令室。はい。いくら必要ですか?』

「三個ください」

『了解』

「取り敢えず、これで計10個。……うん、上手くいかなかったら撤退モノだけど、取り敢えず一つ浮かんだわ」

「オーケー、何でも言えよ」

「ふん、言ったからには最後まで付き合ってもらうわよ。……それでね……」

 

 俺達の初狩猟(ファースト・クエスト)は予想外のスタートを切った。だったらここは一つ、少なくとも〈モンスター〉側にとっては予想外の作戦で行かせてもらう。そんな気迫が、冬雪から感じ取れた。……さあて、気合入れて行きますか。

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