Monster Hunter 《children recode 》 作:Gurren-双龍
大学生になりましたが、更新ペースはそこまで変わらなさそうです。つまり不定期です。元々こんな感じだね。
6月13日
「今何時?」
「大体三時頃だと思うが……あ、三時だ」
「日没まで大体……3、4時間ぐらいね」
「出来ればそれまでに決着を着けたいな。夜間戦闘はまだ訓練すらやってねえしな」
緊張を軽く解すための会話をしながら、俺と冬雪はランポス(あるいはジャギィ)の群れに見つからないように建物の陰から陰に隠れるように動いていた。 今の所見つかってはいないし、こちらも奴らの群れを見つけてない。まあ、オペレーターさんがナビゲートしてくれてるので見つかってない訳だが。
「んで、例の場所までもうすぐか?」
『そうですね、あと300mほどです』
「長いんだか短いんだか分からねえ……」
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと行くわよ」
「へいへーい」
冬雪から睨まれた。気の抜けた返事をしたからだろうか。取り敢えず両手を上げて謝罪の意を表すと、意図が通じたのか睨むのをやめて前を向いた。
しかし……アイツ思ったより緊張しているな。冬雪の方が緊張しまくってるお陰むしろ俺は落ち着いていられるのだが、それでもこのまま放っておくわけにもいくまい。仕方ない、また一肌脱ぐか。
「冬雪」
「……なによ」
「さっきも言ったと思うけどな」
「"俺ごと殺る気で来い"でしょ? 分かってるわよ」
「……そうか」
「アンタも……」
「ん?」
「アンタも、いざって時はアタシごと殺る気で行きなさい」
「……了解」
逆に言われてしまった。まあ、この分なら大丈夫か?
『そろそろポイントに着きます』
「ドスジャギィとドスランポスは?」
『ドスジャギィはそのポイントから南東方向1km地点で停止。ドスランポスは北西方向1.5km地点で停……あ、動き始めました! そのポイントに向かっています!』
「!」
「ジャギィの群れの誘導をお願いします! 出来れば10分後に到着するようにしてください!」
そう言いながら量子化ポーチに手を突っ込んだのを見て、俺もポーチに入れているものを取り出す。俺か取り出したのはシビレ罠。ボウルを逆さにして中身を詰めたような形をしており、平らな地面に設置して安全装置を外すとセンサーが起動し、そのセンサー内に踏み込んだ〈モンスター〉に対して高圧電流を流し、拘束するアイテム。
対して冬雪が取り出したのは落とし穴。装置の形はシビレ罠のそれを少し大きくしたような物で、こちらも平らな地面に設置すると、自動で真下の地面を軟化させ、その上にネットを展開する罠アイテムで、中型以上の〈モンスター〉がその上を踏むと重さで足場が崩れ、一時的に〈モンスター〉の身動きを止めるといったものだ。
「アンタは北西方向にシビレ罠を! 私は南東方向に落とし穴仕掛けるから!!」
「了解!」
まずは出鼻を挫く。しかし罠を置いた場所を通るかは分からない。なにせ入り口が六つあるのだ。そこで――
「拡散弾、行くわよ!」
「大タル爆弾置いとくぞ!」
近くの
「ここでいいか!?」
「えぇ! 行くわよ!」
俺が爆弾を置いたすぐ近くの建物の向かいに拡散弾は放たれた。拡散弾の爆弾で狙った建物を倒壊させ、爆風で大タル爆弾も爆破させるつもりのようだ。そしてその目論見は――上手くいった。入り口を一つ潰した。
「次行くぞ!」
「早くして!」
そして、多少急かされたが六つの内三つの入り口を潰した。しかしこれで大タル爆弾と拡散弾は切らしてしまった。
何故こちらをドスジャギィやドスランポスに当てなかったのかというと、俺が爆風にやられる可能性があるからだ。それに大タル爆弾は一度置くと移動させることは不可能。倒れて転がらないようにタルの蓋から接着液が出るように作られているため、地面とくっ付いてしまうからだ。因みになんでタルかと言うと――多少大きくても〈ハンター〉の筋力なら問題無いだろう、というのと、龍力性爆発物を含んだ爆弾で高威力なモノを作ろうとした時、このサイズしか作れなかったらしい。徹甲榴弾や拡散弾も龍力性爆発物を仕込んだ弾丸だが、大タル爆弾と比べると威力がかなり落ちてるらしい。
「これで……全部か?」
「そうね、あとは迎え撃つだけよ」
「……もっかい研いどこ」
作業は済み、後は待つだけ。まあ、半ば一か八かの作戦なので落ち着けるわけもなく。既に研いでおいたはずの双剣をもう一度研ぐことにした。その時だった。
『ドスランポス、到着まであと60!』
「ッ! マジかよ!」
「進行方向、どうですか?」
『順調です!』
「了解!」
取り出した砥石をポーチに戻し、代わりに強走薬を取り出す。これを飲めば残り一つだ。鬼人化して戦うことを前提に考えれば……実質効果時間は30分と少し程度だ。それまでにカタが付くか。いや、付けてみせる。
『来ます!』
ギャア!!ギャ……ギァァァァァァ!?
「よし! 行くわよ!」
「おう!」
鬼人化した俺は胴体を斬り付け、冬雪は頭部を狙い撃つ。双剣の刃と銃弾が当たる度、ドスランポスの鱗は鮮血と共に飛び散る。鱗もかなり飛び散った。あと少し、あと少しだ……!
ギャア!!
「ランポス……冬雪!!」
「閃光玉、行くわよ!」
納刀を面倒と感じたのか、ボウガンを片手で持って口で安全ピンを引き抜いて投げた。直後、閃光が広がる。
ギャア!?
「さっきと同じ!!」
「任せろ!!」
まだ鬼人化は続いている。纏まっていたランポス達に右の剣で袈裟斬り、そして両の剣で逆袈裟に切り上げる。……まだ逝かないか。だったら!
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
双剣の切り札、鬼人乱舞。双剣の手数を最大限に活かした連続攻撃で、左の剣から右の剣を繰り返し動かし、最後には両の剣で叩き付ける、十連斬の技。一度繰り出すと、乱舞を出し切ることに集中して身動きが取れなくなるために隙が出来るが、今は閃光玉で身動きを封じているため、その隙を突かれる心配はない。
ギャア……
これで取り巻きのランポスは全て倒した。あとはドスランポスを……!
『ドスジャギィ、ポイントに到達します! 準備を!!』
ドスランポスに切りかかろうとした所で、通信が入る。……こんなタイミングで……!
「閃光玉構えて。ドスジャギィが来たと同時にランポスに投げといて」
「はいよ」
仕方ない。あともう少し押し込みたかったが、それで倒せる保証も無い以上、打てる手を打つしかない。右の剣を腰に携帯している剥ぎ取りナイフの柄に引っ掛け、アイテムポーチから閃光玉を取り出す。正直な所……今のドスランポスに閃光玉を当てたとしても10秒もつかどうか。少なくとも二、三回も喰らっているので、それだけ視力が回復するのも早くなる。無論、それは冬雪も理解しているだろう。なら俺は、こいつを信じて出来ることをするだけだ……!
『来ます!』
「上田!!」
「行くぜ!」
ギャアァァァァ!?
ゴォォォォ!?
眩い光に驚く吠えと、崩れた足場に戸惑う叫びが響く。狙うは叫びの主、ドスジャギィ。
「オォォォォォォォォォォォ!!」
鬼人化の構えを取り、ドスジャギィへと突っ込み、ドスランポスにも放った乱舞を放つ。
ゴォォ!!
効いている! このまま一気に……!再び乱舞を放つと、そんな鈍い音と共に両手に衝撃が伝わってきた。
「チッ、斬れ味が……」
「下がりなさい! 散弾撒いとくから!」
「助かる!」
斬れ味が落ちては、せっかくの乱舞も効果が見込めない。取り敢えず砥石を……ん? あ、しまった。
「冬雪、ドスランポスが」
「やっぱりそんな頃よね。閃光玉を」
「今度は五秒持つかどうかだがな!」
先に取り出していた砥石を置いて、すぐさま閃光玉の安全ピンを引き抜いて投げ付ける。
ギャア!?
「当たったか……でも」
すぐに効果は消える。急いで研がねば。
「上田、ドスジャギィが」
「出てきたか。つまりここからは……」
「プランBよ」
「無策って意味じゃないプランBとか、滅多に聴けないな」
茶化すと同時に双剣を研ぎ終え、納刀する。プランB。それは――
「走るわよ!」
「おうよ!!」
唯一残した道に逃げ込むことだ。もちろん、ただ逃げるだけで終わらせる気もない。
「来たぞ!」
「閃光玉用意!!」
冬雪は徹甲榴弾を装填し、俺は両手に閃光玉を構える。俺達が通った道を、ドスジャギィとドスランポスが追って来る。……幸い、他の取り巻きは既に全滅済みだ。対応は楽で済みそうだ。
「投げて!」
「喰らってろ!!」
まずは左手に持った閃光玉を、安全ピンを噛んで引き抜いてから投げ付ける。結果は上々。動きは止められた。後は――
「冬雪!」
「言われなくても!」
クロスボウガンから徹甲榴弾が数発放たれる。ただし狙う先はドスジャギィでもドスランポスでもなく――ダミーの建物だ。
「――ビンゴ」
「当たり前よ」
徹甲榴弾が、コンクリートごと爆散する。そして残ったコンクリートの塊は落下する――ドスランポスを下敷きにするように。
ギャアァァァァ!?
「上田!!」
「トドメだァァァァ!!」
鬼人化し、ドスランポスの頭部を思いっきり斬りつける。
ギャぁぁぁ……
「よし!」
「もう一本行くわよ!」
その声を聞いて、すぐさま冬雪の後ろまで飛び退く。ドスジャギィの方を向くと、コンクリートの塊がアスファルトに叩き付けられた音が響いた。――無論、ドスジャギィの断末魔も。
ゴォぉぉぉ……
「終わった……のか?」
「こちらビギナー2。目標の反応は?」
『こちら司令部。目標、完全に沈黙。
「「……」」
『二人共、どうかしました?』
「「……よっしゃぁ!!!!」」
『ひゃあ!?』
「やったわよ!」
「やったぜ!!」
思わず冬雪とハイタッチしてしまった。あとオペレーターさんが変な声上げてたような気がするが、気にしなくていいだろう。
「アタシの作戦のおかげね!!」
「……あぁ、そうだな。その通りだ。ありがとう冬雪」
「……なんか、アンタに素直に褒められると気持ち悪いわね」
「酷ぇ言いようだ。真癒さんに言い付けてやる」
「それだけは辞めて!?」
冗談だ。って痛い痛い。無言でベシベシ叩くな。しかも頭を。
「取り敢えず、この瓦礫どかすか? このままだと後で調査隊の手間になるし」
『あ、大丈夫です。そこまで〈ハンター〉の方々に任せられません』
「そうですか」
『今迎えのヘリを向かわせてます。その場で待っていてくださ――え?』
オペレーターさんの様子が変わった。それに釣られるように、通信機の向こう側と慌ただしくなってきた。
「こちらビギナー1。司令部、応答願う」
『こちら司令部……大変です。ただちにその場を離れて身を隠してください!!』
オペレーターさんからただならぬ反応が返ってきた。何があった?
「な、何があったんですか……!?」
『新手の反応が……それも飛竜種です!』
「んな!?」
「マズイわね……行くわよ!」
「何処にだよ!?」
「取り敢えず拠点目指すわよ!」
『ダメです! 拠点の方向から来ています!』
「そんな……!」
さて、飛竜種と言っても色々いる。『轟竜 ティガレックス』のような地上戦に強いタイプなら、まず廃ビルの物陰に隠れるのは悪手だろう。なにせ突っ込んで壊してくる。まあこれは見つかればの話だ。
『火竜 リオレウス』のような空中戦をするタイプの場合、物陰を上手く使えば何とかやり過ごせるかもしれない。見つかりやすくはあるが。
どちらも閃光玉を使えば何とかなるだろう。少なくとも逃げるぐらいは。
「こちらビギナー1。対象の詳細を知りたい」
『……蒼火竜、及び桜火竜です』
「リオレウス亜種にリオレイア亜種ですって……!?」
「流石に冗談キツイぜ……」
よりにもよって陸空それぞれにスペシャリストみたいなのが来てしまったか……。なんかこんなに思考が回るのはアレか?半ばヤケクソか?
「というか、何で来たんですかそいつら……」
『分かりません。戦闘時に散った龍力に惹かれたのかと』
「フェロモンじゃねえんだぞ……!」
もしそうだとしたら、なんだ。自業自得とでも言いてえのか。ふざけんな。
「とにかく、ここにいるのはマズイわね」
「移動するか」
立ち上がると、ふと、頬に風を感じた。普通ならそれに違和感を感じることは無いはずだ。けどその風は
「雄也!!」
「へ?」
冬雪が俺を突き飛ばした。……痛えなおい。怪我はしてねえけど。
「おいふゆ――」
「キャア!?」
「うおっ!?」
冬雪の方に向き直ると、いきなり突っ込んで来た。何しやがる。というその言葉は、冬雪がいた方向の向こう側にいるモノを見て引っ込んだ。
「嘘……だろ?」
「……はぁ……はぁ……んぁっ……」
冬雪の苦しむ声も、視線の先に見えるモノのせいで耳に入らない。誰だって目を疑いたくなる。だってそこには――
「リオレウス亜種……!」
さっき襲来を知らされたばかりの敵がいるのだから。しかも冬雪はそれにやられた。いや、俺を庇ってこうなった。……完璧に俺のミスだ。
グルルルル……
蒼火竜が無事な俺に気付いた……頼む。どうか取るに足らない相手として見逃してくれ……!
あ、リオレウス亜種が翼を広げて上体を起こした。俺の祈りは届かなかったようだ。途端、二か月前に聴いたモノと同種の轟音が炸裂した。
ゴアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
「くっ……!」
「んっ……!」
凄まじい雄叫びだが……いつまでもうずくまっては居られねえんだよ!
「冬雪、借りるぞ」
動けない冬雪のポーチから、閃光玉を全て取り出す。これで合計六個。少なくともリオレウス亜種は撒けるはずだ。……問題は、リオレイア亜種がいつ来るか……!っ! 蒼火竜が飛び上がった!チャンスだ!
「食らっとけ!」
ガァッ!?
眩い光に視界を潰された蒼火竜は、空中でバランスを崩し、無防備に巨体を地面に叩き付ける。今だ!全力で逃げる!
『桜火竜、蒼火竜との合流まであと120!』
「クソッ、ホント速いな……!」
冬雪のクロスボウガンを量子化し、冬雪を横抱きに──つまりはお姫様抱っこ──して走り出す。
取り敢えず、このまま走りだ――なんか殺気が!!思わず左に飛び退くと、闇雲に放たれた火球がさっきまで俺達がいた場所を焼き尽くした。あ、危ねぇ……
「冬雪、起きても文句言うなよ!」
改めて走り出す。ポーチはすぐに閃光玉を出せるように軽くファスナーを開けてある。物が飛び出さない程度でもある。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
全力疾走。そろそろ蒼火竜の視力が回復するが、構わない。今はこの場を離れることに全力を注ぐ……!!
「こちらビギナー1! ベースキャンプまでの道案内を!!」
『その道を左に!……っ! リオレイア亜種、来ます!』
「もう二分かよ!」
そう叫ぶと同時に、大きな影が俺の真上を通り過ぎた……方向変えないとな。
「こちらビギナー1」
『すぐそこの路地を左です』
「察しが良くて助かります!!」
ガァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
先程進んでいた方向から、けたたましい雄叫びが響いてきた……あっちにも気付かれてたか。取り敢えず閃光玉を持っとくか。
「んぁ……こ、こは……?」
「ッ! 起きたか!!」
気を失っていた冬雪が、弱々しく目を覚ました。今までハッキリ見ていなかったから分からなかったが、蒼火竜の脚の爪が持つ毒で弱っているのが分かるほど、冬雪の顔色は悪かった。
「悪い……解毒薬は今持ってないんだ」
「雄也」
「でも待ってろ! すぐに拠点まで戻るからな!」
「雄也、話を」
「あと悪い! さっきは呆けてて! それでお前に酷い怪我を!」
「だから……命令……」
「今は喋らなくていい!!」
何でだろうな、こいつが言おうとしてる事が何となく分かってしまう。こいつは、初めての
「アタシを置いて……逃げなさい……!」
こんな、ふざけた命令を出して来るだろうことも、想像が付いていた。だから――それに対する俺の答えも当然決まっている。
「ぜっっっっったいに却下だ!!」
チラッと見た冬雪の顔が、驚愕に染まっているのが見えた……まだ納得してもらえて無いようだ。いいだろう、畳み掛けてやる。
「真癒さんや支部長にも言ったことだがな!! 俺の〈ハンター〉としての目標はな!真癒さんみたいに! !背中一つで誰かを安心させられるような! そんな〈ハンター〉になる事だ!! だから、お前を捨てていくなんて事したら、俺は一生!そんなのになれなくなる!!」
「命令には従えって……教官やアニキ、お姉ちゃんだって……」
「そんなふざけた命令で立派になるんなら永遠に半人前扱いで結構だ!!」
「ッ……」
「だから! 後でいくらでも罰すりゃいい! でも今は!! 俺の意地を……通させろ!!」
「……好きに……しなさい……」
「おうよ!!」
言質は取った。全力でやらせてもらう!!……さて、あんな啖呵を切ったが、この状況をどう切り抜けようか。後ろからは通常種よりも強力な亜種の火竜の
グオアァッ!!
「うお!? 」
いつの間に飛んでいたのか、俺の目の前まで蒼火竜は回り込んでいた。ってやべえ。リオレイア亜種もすぐそこまで来てるし……! 閃光玉を投げたいが、下手に動けば突っ込まれかねない……!
「もういいよ。アタシを……」
「まだ言うかお前は。それに、今ここでお前を捨てても捨てなくても、多分このままじゃ二人共お陀仏だ」
飛竜二頭に挟まれては、下手な身動きは取れない。幸い、火竜は比較的警戒心が強いため、動かなければ何もしてこない……はず。今は威嚇してくるだけだが、これがいつ火球ブレスや突進に変わるか、全神経を集中し、意識を半分ずつリオレウス亜種とリオレイア亜種に割いて行動せねば。
さて、どうする?閃光玉を使おうにも取り出す動作だけで突っ込んで来られかねない。しかし他にこの状況を切り抜けられるアイテムがある訳でもない。
仕方ない。突進覚悟で閃光玉を……ん? なんか転がってきた音が。アレは……音爆弾? って事は……!
「行くぞ冬雪!」
「……ふぇっ!?」
転がってきた音爆弾に注意を向けた火竜の亜種達がそっちに気を取られている。お陰でその隙に閃光玉を手に取れた。直後、高周波音が響いた。流石に驚いたのか、逃げ出した俺達には一切目もくれず、辺りをキョロキョ――あ、こっちを見た。やっべ!! しかもリオレウス亜種が滞空して……滑空して来た……! 今度こそやば――
『そのまま走って!!』
「了解!!……へ?」
直後、閃光が炸裂した。
「こっちだ二人共!!」
「どわぁっ!?」
そして突然何かに引かれ、瓦礫の陰まで引っ張られた。
「よぉ、無事か?」
声の方に向き直ると、そこには黒くてゴツゴツした、全身を先端が赤い突起物で覆った防具に身を包む大男がいた。この防具は確か『黒鎧竜 グラビモス亜種』から作られる『グラビドU』シリーズのはずだ。そしてこの声は……
「アニキ……」
「真治はともかく、お前は大丈夫そうだな。ってお前今……」
俺の先輩〈ハンター〉、『
「あ、そうだ! 聞いてくれアニキ! 冬雪が……俺を庇って……!」
「落ち着けよ。どれどれ……毒は既に消えてるな……ただ傷が少し酷いな。ほれ、真治。秘薬だ」
「ん……ん……」
アニキに支えられながら、秘薬――特殊な工程を経て作られた特殊な回復薬。龍力を持たない者には効果が無いらしい――を飲んだ冬雪は、みるみる顔色が良くなっていった。よ、良かった……。
「怪我はない、二人共?」
「真癒さん……!」
兜を外されて自由になった白い長髪を靡かせながら、ウチの最高戦力がやって来た。
「特に雄也君。 敵に不意を突かれたから起こった状況とはいえ、よく凌いだね。偉い偉い」
「そんな。俺のせいで冬雪は……」
「反省会は帰ってから、だよ。いいね?」
「……はい!」
「良い返事。それじゃ、早速作戦を立てるよ……っとその前に」
真癒さんが突如何かを地面に叩き付けた。見ると、辺り一帯に白い煙が漂い出した。けむり玉か。〈モンスター〉に気付かれてない時に使うと、直接触ったりしない限り絶対に見付からないようになる特殊アイテムだ。何でも、発する煙が〈モンスター〉の触覚を除いた五感の認識を阻害する性質を持った龍力を含んでるそうな。
「それじゃ改めて、作戦会議を」
「最優先は雄也と真治の撤退だな。 ハッキリ言って、戦力にならないし何より怪我人がいる」
「飛竜が二頭もいるこの状況じゃ、ヘリも飛ばせないしね」
「ここは、姐御が囮で俺が護衛、ってのがベストか?」
「だよねえ」
「無論、二人が逃げ切れれば俺も参戦する」
話は終わった、と言わんばかりに二人が立ち上がる。
「そろそろ閃光玉の効果が切れる頃かな?」
「だろうな。念のため、俺は武器を出しておくぜ。あ、それと雄也。今度はゆっくり運んでやれ。今は俺達がいるからな」
「はい!」
冬雪を抱え上げて立ち上がると、真癒さんは双剣を構え、誠也さん――いや、アニキは銀色の
「三つ数えたら行くわよ……3、2、1……!」
瞬間、真癒さんがその場から消えた。龍力を放出してブーストを掛けたようだ。お陰で龍力を追って真癒さんの位置を捉えられた。
「見たいか?」
「え? 」
「お前の目標だ。 いつかまた見る事も出来るだろうがな……早いに越したこたぁねえだろ? 」
「でも冬雪が……」
「実は歩けるんだろ、真治?」
「え?」
「よっと」
「うおっ!?」
突如冬雪が跳ねるように起き上がった。……ってか、普通に元気だと!?
「い、いつから……!?」
「作戦が決まったあたりでよ。秘薬はやっぱり効くわね」
「そういう事だ、真癒の姐御の邪魔をしねえように、見させてもらおうぜ」
「ま、まあ問題無いなら良いのかな……」
もしこれで説教されるような事があれば、容赦なくアニキを囮にして逃げよう。
「あ、あのさ上田……」
「ん? どうした冬雪」
俺に話しかけた冬雪は、どうしてか話しかけた癖に顔を逸らしている。しかも耳が赤い。ということは顔も赤くなってるのか。何故だ。
「さっき、助けてくれたじゃん?」
「まあ、一応そうだが」
「……ありがと」
「……どういたしまして」
なるほど。礼を言うのが恥ずかしかったのか。こいつなので納得だ。さてと、真癒さんの技量をしっかりこの目に焼き付けないとな。
◆◇◆◇◆
さてと……時間稼ぎ、もとい新人二人への実演を始めようかな。というか、気付かれないとでも思ってるのだろうか。〈
グルルル……
ゴォォォ……
「って、余計なこと考えてる場合じゃないよね」
私の眼前には、興奮が頂点に達した、いわゆる怒り状態に突入して私を睨みつけているリオレウス亜種とリオレイア亜種がいる。
ガアァッ!
あ、突っ込んで来た。これはまずい。
「よっと」
まあ、食らってなんてあげないけど。いい踏み台だし。お、驚いてる驚いてる。リオレウス亜種がまさに『開いた口が塞がらない』って感じだ。まあ、それじゃ悪いけど──
「――『
倒されてもらうよ。
ガアァァァァァ!?
うんうん。やっぱ逆袈裟に薙いだ方が、私の〈
「ごめんね!」
まだ生きているリオレウス亜種の後ろに回り込むしかないかぁ……幸い、まだ生きてるから踏み台にもしやすいし。
ゴアァ! ゴアァァ!! ゴアァァァ!!!
ふう……危なかった危なかった。それじゃ……そろそろ終わらせないとね。
「――いくよ」
鬼人化完了。巷では、私の鬼人化は死刑宣告らしい。人を死神の類みたいに言わないで欲しい。まあ、決着を付けるつもりなのは事実だけどね。
「ふっ!!」
ゴォォォ……!
三連突きからの回転斬り――『乱舞改』が効いてるようだ。それもそうか。雷属性と龍属性はリオレイア亜種が最も苦手とする二属性なのだから。
おっと炎噛み付き。滑り込むように懐に潜り込む。鬼人回避も上手くいった。今度はサマーソルト……それも広範囲型。なら、今度は受け流してから……!
「頂くよ!!」
ガアァァァァァ!?
先程リオレウス亜種の頭部に叩き込んだモノと同じ〈破龍技〉を、リオレイア亜種の尻尾に撃ち込むと、見事なまでにぶった切れた。バランスを崩したリオレイア亜種は仰向けになって倒れた。――じゃあ、トドメだよ。
「せいっ!!」
ゴォォォ……
頭部に左の白剣『白夜』を叩き付けると、リオレイア亜種はピクリとも動かなくなった。
次はリオレウス亜種。さっき『白光』を頭に撃ち込んだからそんな体力は残ってないだろうけど……私もこれ以上戦うだけの力はあんまり残ってない。これ以上龍力を使うと吐血しかねない。だから――
「後は、お願いね。誠也」
「あいよ!」
リオレウス亜種に背を向けて歩き出した私の背後で、閃光が炸裂した。そして私と入れ違うように、黒い鎧の男が乗り出した。私は――雄也君と真治の所にでも下がろうか。
◆◇◆◇◆
言葉が出ない、とはこういう事なのだと思い知った。
何に対してか。真癒さんが一人で二頭の〈モンスター〉をあしらった事ではない。真癒さんの〈
ただただ――美しかった。その技全てに、魅入られた。同時に、あの
果たして、俺はあの技を習得するのに何年かかるのか。真癒さんの隣に並び立つほどの〈ハンター〉となるのに、どれほどの年月を重ねればよいのか。
まだ、その道の長さも、その道の方向も、分からない。でも――
ガアァァァァァ!?……ゴァァァ……
リオレウス亜種の断末魔が響いた。見ると、アニキのガンランスがリオレウス亜種の喉元を貫いていた。間違いなくトドメを刺したようだ。
「……終わった?」
「あぁ、
でも――今はまだ、分からなくてもいいのかもしれない。今はまだ、進み続ける時期だから。真癒さんなら、きっとそう言う。
「それじゃ、帰ろっか」
「「はい!!」」
「初陣祝いでもするか?」
「いいね」
かくして、俺の
真癒さんがレイア亜種を踏み付けてたりするけど別にエリアルスタイルではない。
後であらすじの作者コメ欄(みたいに書いてるところ)にも書きますが、本作が使用する作品は、(本家なら)MH3Gまでのモンスターや武具を使用します。フロンティアは……適当でいいや。