Monster Hunter 《children recode 》   作:Gurren-双龍

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おはこんばんちは、Gurren-双龍です。
更新ペース、大体こんなもんかなぁ。まあ早くなったり遅くなったりと安定してませんが。


第8話 強襲する緑黄の水流

8月7日

 

「ぷはぁ!」

「13分18秒。うーん、中々15分行かないね」

 

 真癒さんの弟子になってから大体三週間。【ハンドルマ第一中国地方支部】のプール室。今日も潜水時間を伸ばすために素潜りを続けている。

 水中での動きは及第点らしいが、中々潜水時間が最低ラインに達しないらしい。一応『酸素玉』というアイテムや『イキツギソウ』なる植物で、潜水時間を伸ばすことは出来るが、やはり隙が出来る。潜水時間が短いということは、アイテムを使用する隙や浮上する隙が増えるということだ。それはよろしく無い。……のだが、中々潜水時間が伸びない。いや、始めて一週間や二週間ぐらいは、一気に五分ぐらい伸びたりは出来たのだ。しかしそれ以来、伸び悩むようになった。5秒単位ぐらいでしか伸びてくれなくなった。たまにタイムが縮むこともある。我が師である真癒さんやアニキにも、こんな時期はあったようだが、なら何で真治の奴は既に30分間潜水出来るのか。個人差にしたって倍ぐらいあるって何さそれ。

 

「もしかして雄也、潜ってる時に考え事とかしてる?」

「え? 考え事というか……長く潜れるように意識しなきゃと頭の中でブツブツ言い聞かせてはいますが」

「それ。それが原因だね」

「へ?」

「脳ってのはな、体の中で一番の大飯食らいなんだよ。その食い物には、酸素も含まれてるんだ」

「つまり、脳が酸素を消費しまくって潜水に回す酸素が足りなくなってる、ってこと」

「ま、マジですか……」

「マジです」

 

 競泳水着姿の真癒さんは、腰に両手を当てて『ぷんすか!』といった感じだ。余計な事をしていたのを知って怒っているらしい。

 

「いい、雄也? 意識するのは龍力を持つ者として大事だけど、それ以前に私達は人間。思考すれば酸素を消費するの。だからそんなブツブツ唱えるようにしなくてもいいの。一回意識すればあとは出来るから、もっかい行ってみよ?」

「は、はい!」

 

 俺は長く潜れる! よし行くぞ!! その勢いのまま潜水。体から力を抜く。水と一体化したような感覚がする。

 水中で目を開く。〈ハンター〉であるため、ここで目を開いても塩素ごときにやられる目ではない。なにせ『毒怪鳥 ゲリョス』や『紅彩鳥 クルペッコ亜種』などの閃光でも失明しないほど、〈ハンター〉の眼球や視覚は強靭だ。

 おや、真癒さんやアニキも潜ってきた。アニキはその筋肉を強調するようにマッスルポーズのまま潜水。因みに海パン姿である。真癒さんは自然体。しっかし競泳水着だとスレンダーな体型が強調されるなぁ……あ、また殺気。スレンダーは褒め言葉のつもりなのだが。ん? 人差し指を立てて口元に……あ、『何も考えるな』ってことか。酸素食うしな。よし無心だ。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「ぷはぁ!」

「お、32分! 最低ライン越えたね」

「よぉし!! 次はその状態のまま双剣持って水泳だ!」

「まだ早いよ」

 

 上手くいったようだ。よし、この調子だな。

 

「あら、やっと30分いったの?」

「お、真治。まあな」

「ふーん、海の時あんなほざいてた癖に遅かったわね」

「うぐっ……」

「なんだっけー? 確か『行くぞ真治!! 夏が終わる前に!!』だっけ? ダサいわね、人に行くぞなんて言っておいて私より遅いなんて」

「もうやめろ流石にキツイ」

 

 土下座して頼む。プライドなど投げ捨てるものだ。構わない。

 

「アンタ、土下座とかプライドはそう安売りするもんじゃないわよ? せめて相手を選びなさいよ」

「いや、お前だし別にいいかな、って」

「……ふーん、あっそ」

 

 真治みたいに、信頼できる仲間とかでないと、流石に俺も土下座とかはしない。

 あとなんか妙に間を置いて声が聞こえた。恐る恐る顔を見ると、ジト目の呆れ顔でした。いかにもやる気が失せた、って感じだ。……悪いことしてしまったのか?

 

「……なんかすまん」

「謝んなくていいわよ。信頼してることはいい事だし」

「そ、そうか」

 

 ……気まずい。真癒さんやアニキは肩を竦めてお手上げ、って感じ……いや、自分でなんとかしろ、ってことか。気が重い。取り敢えず着替えるか。と思った矢先に空気の震えを感じた。もちろん真癒さん達も気付いた。

 

ヴィィィィィィィィ!! ヴィィィィィィィィ!!

 

「これは……」

「〈モンスター〉出現警報よ……!」

「行くぞお前らぁ!! 仕事だ仕事!!」

『了解!!』

「でもその前に、コンデション整えていこうか。大丈夫、ハンドルマの人が時間稼ぎならしてくれるし」

「はい!」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「今回の標的は、海竜種の『水獣 ロアルドロス』。水中戦が得意な〈モンスター〉なの」

「……やはり、地上戦に持ち込む方が吉ですかね?」

「それも一つの手だが、ガノトトスと違って、これと言ったおびき寄せる方法がねえからな。基本は水中戦になると思っとけ」

「水中での射撃練習は充分積んだわ。少なくともロアルドロスとやりあえる程度にはね」

「真治、頑張ってたもんね」

「当然よ!」

 

 移動用ヘリの中で、デバイス接続式量子化装備カスタム装置――正式名称A(アームド)カスタマーを使って、装備とアイテムを整える。武器は双剣。しかしツインダガーのままではなく、防具も一新した。二ヶ月前に討伐したドスジャギィとドスランポスの素材を用いた装備にしてあるのだ。武器はジャギィ素材から作った『ジャギットショテル改』。防具は『ランポスシリーズ』だ。こいつを着るのは何気に初めてである。

 アイテムは回復薬や砥石に罠アイテムなどの基本セット。そして呼吸用の酸素玉だ。恐らく俺の連続戦闘時間は15分ほど。思考することなどで食う酸素を考えれば妥当だろう。まあ、真治やアニキはもっと長いだろうがな。真癒さんは言わずもがな。

 

「さて、そろそろ到着だ。飛び降りるぞ!!」

「「飛び降りるの!?」」

「基本だよ? あ、心配いらないよ。余程ドジでない限り骨折しないし、頭から行かない限りは死なないから!」

「そそそそ、そういう問題じゃなくてえ!!」

「流石に怖いわよ!」

「問答無用ださっさと行くぞオラァ!!」

「キャアアアアアアアアア!!??」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

 この浮遊感……! そしてすぐ側で聞こえる真治の悲鳴……! 真治も俺も小脇に担いで飛び降りやがったのかアニキ(この馬鹿野郎)!?

 

「どりゃあ!!」

 

 やっと着地。って砂煙が!!

 

「ゴホゴホゴホォッ!!」

「ゲハゲハゲホォッ!!」

「もう、女の子がそんな声あげないの」

「叱るならアタシじゃなくてこのバカ糸目野郎にして!?」

「流石に同感だコンニャロウ!!」

「バカは酷くねえかお前ら!?」

「「当然の返事じゃこの野郎!!」」

 

 理不尽すぎるだろこれは。流石に上司相手でもこれはキレていいはず。ってかキレる。キレてやる。

 

「はいはいみんな。現地着いたけど作戦会議始めるよ。誠也もいい加減二人を離しなさい」

「おう、分かった」

「落としちゃダメよ?」

「え?」

「「もう遅グハ!?」」

 

 スタートから散々だ。砂まみれになるし砂まみれになった。

 

「改めて確認ね。今回の標的はロアルドロス。火炎や熱気、乾燥に弱いモンスターだけど、場所は見ての通り海。火属性攻撃ぐらいしか効果が見込めないの」

「加えて、強引に地上戦に持ち込むのは大幅なタイムロスにも繋がりうる。しかし奴はたまに上陸する。上がったらラッキーぐらいのつもりでいろ」

『はい!!』

 

 作戦会議を終え、真治は改めて装填の確認をした。当然っちゃあ当然だが、真治も俺と同様に装備を一新した。彼女の武器はランポスの素材を用いた『ショットボウガン・蒼』で、防具は『ジャギィシリーズ』。恐らく、今の俺達ならあの時のランポスとジャギィの乱戦状態を、一度退くこともなく凌げるはずだ。武具の基本性能も上がったし。

 アニキの武器はリオレウス素材を用いた『蒼火竜銃槍【逆鱗】』。防具は『アグナUシリーズ』だ。

 真癒さんは相変わらず『双龍神【黒天白夜】』と謎の白い防具。相変わらず、禍々しくも神々しい。

 このパーティーなら、ロアルドロス相手に負けはないだろう。

 

「今回は雄也と真治、そして誠也の三人で水中戦をお願い」

「理由は?」

「湧いてきたルドロスが市街地を襲ったりしないかの見張り。それと新手の警戒を」

「分かった、水中は任せろ!」

「水中での指揮はお願いね、誠也。こっちの目処が付いたらそっちに行くから」

「あいよ」

 

 ルドロス。確かロアルドロスの雌、及び幼生の個体のはず。んで、ロアルドロスはメスのルドロス10頭ほどでハーレムを築く生態を持つとのこと。……男の敵だ。いつも以上に慈悲なく加減なく行こう。それでいて早く。 言うなれば『迅速かつ確実に』だ。

 

「? どうしたの雄也。なんか妙に気合い入った顔してるけど」

「何でもない。強いて言うなら真の初陣に武者震いしてるだけだ」

「真の初陣、ねえ」

 

 あの時、まだ訓練生であった俺達は、正式に〈ハンター〉であるという扱いでないため、ドスランポスもドスジャギィも記録上は真癒さんとアニキが討伐した事になっている。なので記録上は、これが俺達の初陣だ。

 因みにこれは武者震いだけでなくロアルドロス(男の敵)を屠れるチャンスに打ち震えているのだ。

 

「よし! 行くぞお前ら!!」

「「了解!!」」

『ロアルドロスの現在地を、ナビゲートさせてもらいます』

「頼みます」

『ロアルドロスは現在陸から500m先にいるものと思われます』

「深度は?」

『不明です。現在の探知機では距離の把握が限界です』

「了解だ!」

 

 返事をすると同時、アニキはアグナUヘルムのバイザーを下ろしてガンランスをリロードした。通常型なので五発だ。フルバーストに向いて……いや、確か火竜銃槍は確か旧型だからフルバーストは出来ないか。

 

「できるよ? 改造してもらったらしいし」

「真癒さん、またナチュラルに人の心を読まないでください」

「ごめんって。因みにクイックリロード機構も搭載したから、リオレウス五頭分の給料が飛んだんだって」

「うわあ……ガンランスとかメカニカルな武器は金かかりそうですねえ……」

「その分状況に合わせた調整で有利を取りやすいんだけどね」

「おーい雄也! さっさと行くぞ!!」

「あ、今行くよ!!」

 

 俺が走り出すのを見て、アニキと真治は海に飛び込んだ。俺もさっさと続こう。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 ……みんな、行ったみたいだね。

 

「……こふっ!」

 

 今まで我慢してた血を吐き出す。降りてからずっと吐きたかったんだよね。あーキツかった。

 吐血の件もあるから、可能な限り水中戦は避けたい。取り敢えず頸動脈に注射注射……プシュッ、という空気の抜ける音と共に鎮痛剤と回復薬が流し込まれる。あー、スッキリした。ほとんど痛みがないタイプだからやりやすい。

 

「さてと、ルドロスがそろそろ湧く頃かな?」

 

 察した通り、海中からルドロスが数匹飛び出してきた。それじゃ――お掃除の時間だ。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 澄んだ海は視界良好。ここ瀬戸内海は、前大戦の際でさえも〈モンスター〉が現れなかった唯一の海域だ。なので〈モンスター〉の血で汚れることは無く、むしろ海流の乱れで点在していたゴミが流れて、綺麗になったのだ。今では沖縄やグレートバリアリーフに並ぶ綺麗な海域だ。因みに流れたゴミは暴食的な〈モンスター〉が喰らい尽くしたらしく、そいつは今もどこかの海を遊泳している可能性があるとのこと。

 

閑話休題

 

 そろそろ例のポイントだ。周りを見渡しても見えないということは――

 

コオッ!!

 

 やはり下からか。真治は一気に距離を離し、アニキは真治に注意が向かないよう砲撃をかます。なら俺は、一気に切り刻む!

 

コオッ!!

 

 黄色いタテガミを右の剣で斬り裂く。前情報通り柔らかい。この調子なら!!

 鬼人化して回転切りを叩き込み――ってアニキなぜ前に!? ……あぁなるほど、水ブレスか。 ガードありがとう。気を付けねえとな。

 

コオアァッ!!

 

 今度は突進か。こういう時は……体を捻って……!! よし避けられた!しっかし、距離を離されるとめんどくせえな。動きを止めたい……確かこういう時は黄色の光信号だったな。麻痺を頼む、って意味らしい。

 真治から白の光信号が返ってきた。了解の意味だ。アニキからも来た。それじゃ……真治が安心して麻痺弾撃てるように注意を引いておくかな!!と思って前進し始めると、前を何かが横切った。それは緑色だった……チッ、ルドロスか。しかも3匹も。厄介だよクソ!! ってこっち来るな!!

 

コアッ!?

 

 あ、砲撃された。アニキありがとう。ん? 武器ごと腕を振って……あぁ、ここは任せろ、ってか。わかった。 サムズアップで返しとくか。取り敢えず納刀しよう。奴に追いつかねば。

 

コオアァッ!?

 

 麻痺の影響でロアルドロスが動きを止めた。チャンスだ! 鬼人化して乱舞を決めてやる!

 左で袈裟、右の袈裟と左の払い、両手で右に薙ぎ払い、そして左の逆袈裟と右の袈裟、左をそのまま右に払い、右は逆袈裟に! そして、振り下ろす!!

 最後の振り下ろしが効いたのか、タテガミの一部が剥がれたりひび割れた。上手くいった! そろそろ麻痺が解ける頃だし、鬼人化を解いて一旦離れるか。解いても鬼人強化ならそれなりに機動力のある立ち回りが出来るし。

 

コォォ……!

 

 ロアルドロスの口元から泡が出て来て、しかもトサカが逆立った。つまり怒り状態になったってことか。さっき以上に気を付けないとな。

 しっかし、こいつの呼吸はどうなってやがる。確か肺呼吸だよな。その割によく動きやがるよホント。 って、今度は真治に向いた!? ヤバイ今い――ん? なんか投げ……って閃光玉かよ先に伝えてくれ!

 

コオオッ!?

 

 (あっぶ)ねえ……むしろ俺が隙を晒すところだった。ともかく、今の内に乱舞を――って何か背中に当たった! なんだ!? ん? こいつはルドロスか。でも死んで……あぁ、アニキの砲撃で吹っ飛んで来たのか。あ、アニキもこっちに来た。向こうは片付いたようだ。なら総攻撃だな。

 アニキが盾を後ろに向かって薙ぐ。下がれ、ってことか? 分かった。フンッ、と言わんばかりに口元から出た気泡と共にガンランスを右に薙ぎ、そして左に振るいながらフルバースト。……あんな事も出来たのか。切り付けつつ灼き撃つ。さぞかし効果的だろう。俺も負けてられね――痛え!! 背中に何か当たったぞ!? ってルドロスの水ブレスか!クソ邪魔を――ん? な!? よく見たら……囲まれてるじゃねえか……! しかも7頭ぐらい……しまった! これはもしかしてロアルドロスのハーレムか! だとしたらヤバイ。いくらアニキがいても新人の俺と真治じゃどこまでやれるか……!特に真治はガンナーだ。目を付けられたら大変だ。すぐにでも真治の元に――と思ったら目の前を水ブレスが通り過ぎた。

 

コオアァッ!!

 

 邪魔すんなロアルドロス!! 早く行かねえとマズいんだから!!

 

コアァッ!!

 

 まあ、俺に注意が向く分には問題無いか。ガンナーの真治よりよっぽどいい。こっち来いよいっそのこと!!

 

コオァ!?

 

 こっちに突っ込もうとしたロアルドロスが、突如その動きを止めた。よく見ると、トサカが全て砕けている。そしてそこには、恐らく通常弾であろう物が刺さっていた。これをやったのは――間違いなく、真治だ。アイツ、俺が注意を引こうって時に……!

 

コォ!!

 

 水ブレスが真治に向かって放たれた。あの距離なら避けられるだろう……あ! ルドロスがぶつかりやがった!! マズイ、あのままだと当たっちまう! せめて当たっても追撃受けねえようにアイツの注意を……!

 

コオォ!!

 

 クソ! 見向きもしやがらねえ!! このままじゃ真治が……! って弾かれた! 斬れ味が……ウッ!! 息が……! 酸素玉は……間に合った。

 

コォアァ!!

 

 って、行くなクソォ!! ……ん? 真治のいた所に稲妻が走ったような……まさか、ラギアクルスか?

 行ってみると、そこには真っ二つになったルドロスが浮いていた。もしかしてこれは……と、思考を巡らせていると、辺りが光った。まるで雷光……いや、雷光だった。それの主は考えるまでもない。

 雷光の走った辺りを見ると、真っ二つになったルドロスが数匹浮かんでいる。そして雷光が消えた辺りを見てみると……やっぱりいた。真癒さんだ。いつも通り双剣を……あれ、右手に剣がない。左は……なんか『白夜』の柄尻に『黒天』くっ付いてるし。両刃剣かよ。 あ、後ろには真治もいる。地上にルドロスが来なくなったのだろうか。何にせよ助かった。 お? 真癒さんが何か投げ……だから閃光玉なら先に教えろっての!!

 

コオァ!?

 

 まあいい。今の内に真癒さんと合流だ。真癒さんの元につくと、まずは肩を叩かれた。んで俺と自身の後ろを指さして……後ろって事は真治か。そしてロアルドロスに指が向いた。俺と真治でヤツをやれ、って事か。了解。邪魔さえなければ出来ないわけじゃない。こう伝えたということは……つまり、真癒さんとアニキでルドロスを一掃する、と。分かりましたと頷くと、真癒さんも頷き返してきた。さて、行きますか。

 黄色の光信号を灯し、真治、もっかい麻痺弾を、と頼む。頷いた。通じたか。なら俺は、全力で気を引くとする!!

 

コオォ!!

 

 ロアルドロスが再びこちらに気付いた。が、強走薬を飲んだ俺は、ここから先鬼人化状態だ。早いとこ終わらせてやる。 そんでもって、真癒さんに鍛錬付けてもらうんだよ!!

 当てやすい胴体に麻痺弾が撃ち込まれる。一応辺りを見回してみたが、こちらに向かうルドロスはいない。真癒さん達の方が脅威と判断したのだろう。正しいけど誤った判断かもしれないぞそれ。一掃されちまうからな。

 すると、ルドロス達が殺られていることに対してなのかは分からないが、ロアルドロスがトサカを逆立てて怒りを顕にしている。まあ何にせよ、向こう(真癒さん達の元)には行かせねえけど!

 ん? 真治が赤の光信号を……3回点滅させた? これは確か……『ごめん』の意味……もしかして、麻痺弾切れたのか?し、仕方ねえ! このままやるか!

 

コオァ!

 

 アレ? 俺達にそっぽ向いて泳ぎ出した? あっちの方向は……あ!? 海岸方面!? 急がねえと! 建物などの被害を最小限に留めるためにも早――って誰だ肩を掴むな……真癒さん? 指を上に……一旦浮くのか。了承の意を込めて頷くと、先に浮き始めた。後に続こう。

 

「ぷはぁっ!!」

 

 久しぶりに空気を吸った気がする。いつもと違い潮風混じりではあるが。

 

「さて雄也。私がなんでここに来させたか、分かる?」

「……いえ、分かりません」

 

 正直に答える。後で恥かいたり痛い目見るよりは、正直に答えてここで叱られた方がマシだ。

 

「はぁ……やっぱりね」

「まあ、そう気に病むこたァねえよ姐御。プロとしては初陣なんだからなぁ」

「それはそうだけど……真治、貴女からさっきの雄也のいけないとこ、言ってあげて」

「はーい」

 

 アニキと真治も浮いてきていた。というかルドロスは片付いたのか。あ、なんか真治が不機嫌な顔してる。これはキツイのが来るな。

 

「まずね、前に出すぎ。だから始まって早々、ブレスなんか喰らいかけるのよ」

「うっ」

「次。いくらガンナーで守備が薄いからって、私に気を遣いすぎ。アンタよりは周囲の把握出来てるから」

「おま……それは……!」

「三つ目。深追いしようとしたこと。陸に上がっても、住民は避難済みだし、建物だって最近は壊れても結構簡単、かつ低価で建て直せるんだからそこは気にしなくていいの」

「うぐっ……」

「最後。〈ハンター〉がいない状況で〈モンスター〉が上陸しても、時間稼ぎの迎撃手段はちゃんと用意されてるの。CIWSとかみたいなのがね」

「……」

「全問正解、百点満点だよ真治。帰ったらスイーツ奢ってあげる」

「やったー!」

 

 見事にやられた。しかも思い返せば自分でもダメだと思えるようなものばかり。

 

「ま、そういう事だ雄也。でも、こっから学んで成長していくんだ。気に病むなよ」

「あ、アニキ……」

「大丈夫。私が師匠なんだから!」

「は、はい!」

「んじゃ、行こうか」

『了解!』

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

コオ!!

 

 陸に上がると、ロアルドロスが迎撃装置を水ブレスで破壊していた。 既にいくつか破壊されたモノがあるのを見るに、結構早くここに来ていたようだ。だが、それ以上はさせない。

 

「雄也、私が気を引く。その隙に乱舞を当てて!」

「了解!」

「誠也は、ロアルドロスが雄也に向いた所に爆竜轟砲を!」

「待ってたぜェ!!」

「真治は雄也と同時に通常弾!」

「分かった!」

 

 真癒さんの指示で、それぞれ動き出す。まず真癒さんが投げナイフを片手で三本、投げ放つ。双剣は連結して片手を空けてある。あんなのよく思い付いたな。真癒さんの狙い通り、ロアルドロスは真癒さんに狙いを定めてブレスを撃つ。が、当然当たらない。

 

「隙だらけなんだよぉ!!」

 

 乱舞を後ろ脚に叩き込む。真治の通常弾も尻尾を撃ち抜いている。これだけやれば、奴の気は引ける。

 

コオ!!

 

 こっちに向いた。なら役目は済んだな。俺の後ろでは『爆竜轟砲』の発射態勢に入ったアニキが待ち構えている。『爆竜轟砲』。竜撃砲のチャージ時に砲弾を追加することで威力を跳ね上げる高威力の大砲撃。その威力、実に竜撃砲の()()()()

 

「消し炭になっちまいなァ!!」

 

 瞬間、空気を震わせる轟音が響き、爆風によって巻き上げられた砂煙と共に焦げた肉と硝煙の匂いが漂い始める。

 

「ふぅ……やったか?」

「それ、禁句!」

 

コオ!!

 

 砂煙の向こうで、吠えるように体を振るう影が現れる。フラグ発言は禁止だというのにこのアニキ(バカ野郎)は……

 

「だから言ったのに……!」

「でも瀕死でしょ?」

 

 発砲音が鳴る。あの音は……貫通弾か。

 

コオ、ォォォォ……

 

 晴れた砂煙の向こうで、力尽きて横たえる水獣()()()ものがいた。……任務完了(クエストクリア)だ。

 

「お、終わった……」

 

 緊張の糸が切れ、その場でへたり込む。握っていた抜き身の双剣が砂に刺さる。

 

「やっぱり緊張した?」

「いくら一回経験したって言っても、やっぱり……」

「ま、これから慣れていけばいいんだよ」

「……はい」

 

 へたり込んだ俺に伸ばされた手を掴もうとして――手に付いた砂の隙間に見えた赤いモノが目に付いた。

 

「…………」

 

 俺は……そういえば、生き物を殺してるんだよな。自分達が生きる為に。俺は、自然の生き物が好きだ。小学生の頃は、友達こそいたけど俺と話すことがなくて、図書室で図鑑を読んでたな……そこで、絶滅した生き物なども知った。そんな事をした奴らを愚かとも思った。……でも、俺も、いずれ同じように……いや、やめよう。仕方がない。仕方がないんだから。

 

「……どうかした?」

「いえ、なんでも」

 

 伸ばされた手を掴んで立ち上がった。何でだろうか。この事さえも、真癒さんにはお見通しな気がしてきた。……本格的に悩んで来たら、相談してみるか。

 今ある晴天は、来たる曇天を教えてはくれないけど、陰りが来ることを知っている。だから、その陰りに光を差す方法を、いつか考えよう。

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