私がフランドール・スカーレットになっていた件 (未完) 作:冷水
==フランドール地下私室==
鏡の前で茫然と立ち尽くし、既に半日が経過した。
動く気配の無い少女。
金髪の吸血鬼は、何もせず瞳には何も写さず、まるで呼吸すら忘れたように。
ただ固まっていた。
それから一日が経過した。
そこで少女は目覚めた。
最初に思ったのは、鏡に映る美少女(美幼女?)は誰だろうと言う事。
良く見れば見覚えがあるような・・・。
青年は目覚めた。
あたりを見回せば、簡素なベットと人形がたくさんある部屋だった。
色気の無い、しかしそこが”女の子の部屋”だと思い至るには十分な景色だった。
(あれ?ここどこ?)
再度、鏡を見なおした。
この顔、表情には見覚えがあった。
それは、とあるゲームに登場するキャラクターそのものだった。
(フランドール・スカーレット・・・・・・?)
彼は東方project、そしてその中でも、赤い霧の異変に登場するフランドール・スカーレットの事が好きだった。
登場回数こそ少ないが、なんだか孤独を抱える様子が自分自身に重なったからだった。
しかし今ある現実をかんがみるに、どうにも頭が混乱していた。
(まず、自分は何をしていたか?)
それを考えると、直前までしていたことが2つ頭に思い浮かんだ。
それは、自分は車に轢かれてしまったという、青年の記憶。
鏡に手をかざし”自ら”の能力を使ったという、少女の記憶。
青年は、さらに混乱した。
自分のものではない記憶、
しかし、自分自身の名を思い出そうとすると”フランドール・スカーレット”としか思い浮かばないという事実。
だけど、彼・・・・・・彼女には、この世界がゲームの世界であることを認識している。
主観は、どこまで行っても(名を思い出せないが)青年だった時のもの。
しかし、青年だった時の記憶は断片で、フランドールとしての記憶が大半を占めていた。
しばらく考えた。
しかし、そこで”フランドール”は思考を停止させた。
もう、そのことを考えると、きっと碌な事にならないと折り合いをつけた。
なぜ?なんで?の問いかけに意味は無い。
彼は、彼女として生きることをその瞬間に漠然と認めた。
(ここがもし、幻想郷だったら、明日から外を見て回りたいな)
不思議と少女の体になっても、いかがわしい思考は浮かんでこなかった。
記憶が精神を形作ると言うが、
中途半端に男であった記憶と、
孤独に押しつぶされた吸血鬼の記憶、
その二つが、微妙な塩梅で折り合いをつけた。
それが、今の”フランドール・スカーレット”を形作った。
そして、フランドールの思考は移ろい始める。
どうやって外へ出ようかな?と、
青年の記憶と、世間知らずな吸血鬼の記憶。
それは、適度な冒険心と適度な好奇心が生まれ、
逆に、フランドールの抱える孤独は残滓として消えていった。
なぜ彼女は地下に閉じこもったのか。
それは元からあった自らの精神の不安定さや、破壊の力への恐怖だったのだが、
それすらも残滓として残ることはなかった。
==作者のつぶやき==
もし、アニメやゲームのキャラクターに憑依したら、
どんな感慨を抱くのだろう?
考えても、実際に体験できる訳じゃないので、答えなんてありませんが、
思考停止、するんじゃないかなって思いました。
プロローグで躓いてたらダメなのですが、
なんとなく、私の表現力では、これくらいが限界かなって思います。
次回から、本編へ入ります。