一話完結の小説なので、よかったら気軽にご覧ください
月夜の浮かぶ空、とある二人が竹林で盛大な喧嘩……否、殺し合いをし続ける。その殺し合いは止まることなく、むしろ、激しさを増して加速して行く。お互いがお互いの身を傷つけるも、何事もなかったかのように治癒されていく。
一人は竹林の案内人であり、不死人の藤原妹紅、もう一人は月夜の姫であり、蓬莱人の蓬莱山輝夜。
二人は弾幕を放ち、炎を撒き散らし、戦いを昇華させて行く。やがて時間が経ち、二人は距離をおきながら互いを見つめる。
「……やれやれ、また決着がつかなそうね。いい加減死んでくれないかしら? 妹紅」
「それはこっちのセリフだね。そろそろいい加減に死んで欲しいんだけども? 輝夜」
お互い皮肉を込めた言い方で相手を見据える。
「ま、なんにしても不死二人じゃ決着なんてつけるの難しいわよね。今度永琳に不死でも殺せる薬でも作ってもらおうかしら」
「おや? お子様の輝夜は誰かの手を借りないと私を殺せないのかい?」
「あんただって慧音にどうすれば私を殺せるか聞き込みしてるんでしょ? くだらないと嫌がる慧音に無理して付き合わせて」
「それを言うなら永琳だって、私を殺す薬なんか作るの嫌がると思うけどね」
二人はそう言い終えると口を閉じ、辺りに静寂が訪れる。
「……やめよやめ。こんなこといくら言ってもキリがないわ。だけど、これだけは言っておくわ」
「……やれやれ、輝夜と話すと疲れることこの上ないね。ただ、これだけ言っておいてあげる」
二人は同時に口を開き、言葉を紡ぐ。
「「あんたは私の手でいつか必ず……殺してあげる」」
そう言い終えると、二人は互いに背を向けて、戦場とも言える廃れた竹林の一部から姿を消した。
二人が別れた帰り道、妹紅は歩きながらブツブツと独り言を呟く。
「あー、くっそー、また輝夜のやつを殺せなかった……とうすれば不死を殺せるのか……また慧音に頼んで歴史とか漁ってもらうか……」
そう言いながら手と手を重ね合わせ、大きく伸びをする。すると
「……ん? なんだこれ?」
手にざらつく違和感を感じ、手を眺めてみる。すると、手に少量だが、白い粉末付着していた。
「これは灰……かな? 戦ってる最中に竹炭でもついたのかな……」
妹紅は大して気に求める様子はなく、家へと歩みを進めて行った。
次の日、妹紅は珍しく体調を崩して寝込んでいた。熱があるわけでは無いようだが、頭痛が起き、軽い吐き気、そして体の怠さを感じた。
「うー……なんだって言うんだ……いったい……」
妹紅は布団に寝転びながら天井を見上げた。藁と木で出来た見慣れた天井すら、軽く霞がかかるように視界がボヤける。
「今日は慧音のところに行く予定だったけど……どうするかな……」
妹紅は怠い上体を起こし、少しぼうっと天井を見上げた。
「……いくか……」
フラつく体を壁に手を着いて支えながら、妹紅は家を出て行った。
「お、おい、妹紅大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
妹紅が慧音の寺子屋に着くと、慧音は心配そうに顔を覗き込んで来た。
「なんだか今朝から体調が悪くてね……それより慧音、今日こそ輝夜に何か致命傷を与えられる方法を」
「そんなことは今はいいだろう。今日のところはとりあえず、ゆっくりと体を休めろ。な?」
妹紅の言葉を遮り、慧音はきっぱりと言い切った。その目は妹紅を心配するような目をしていた。
「……わかったよ。今日は大人しく休ませてもらうことにするよ」
「うむ、一応永遠亭にも行っておくといい。処方箋なんかをくれるだろう」
「えー……なんでわざわざあいつのいるところに行かなきゃいけないのさー……」
「ぐだぐだ言うんじゃない。輝夜に会うんじゃなくて、永琳に診てもらいに行くんだから関係ないだろう」
「……まぁ、早く体を治してあいつを殺すことを優先させないとか……じゃあこのまま永遠亭に向かうとするよ」
「あぁ、そうするといい」
妹紅の様子を見た慧音は、安心したように微笑んだ。
「じゃ、またね、慧音」
「あぁ、また……妹紅? その肩についた白い粉はなんだ? ただのゴミか?」
慧音は妹紅の右肩を指差すと、赤いもんぺに昨日見たものと同じ、白い粉末が付着していた。
「多分昨日、輝夜と戦った時に着いた竹炭のやつだと思うな。洗ったのにまだついてたのか……まぁいいや、私は行くから、またね」
「あ、妹紅……」
妹紅は慧音の言葉を遮り、寺子屋を後にした。慧音の目は、再び不安の色を見せるような目をしながら妹紅がいなくなった部屋に一人、佇んでいた。
「と、いうことなんだけど診てくれるかい?」
「まぁ、患者を診るのが私のの仕事だしね。もちろん構わないわよ」
妹紅は永遠亭に着いてすぐ、永琳の診察室に入り込み、永琳に体の状態を話していた。
「それにしても、珍しいことがあるものね。あなたが治療でここを訪れるなんて。てっきりこんな昼間から姫様に決闘でも申し込みに来たんだと思ったわ」
「まぁ、それもついでかな。ひとまず今はこの怠さをなんとかしないと、勝てるものも勝てなくなるからさ」
「それをこの私の前で言うなんて、なかなか面白いのね、あなた」
敵である輝夜の側近を務める永琳はクスクスと笑みをこぼした。
「あんたには悪いだろうけど、私は輝夜に勝つよ?」
「そうしてくれると助かるわ。あの子には少しお灸を据えておきたいから。さ、診るから服を脱いでくれるかしら?」
「ん、ああ、分かったよ」
妹紅は服を脱ぎ、体を慧音に向ける。慧音は聴診器を妹紅の体の数カ所に当てて行く。すると、永琳はさっきまで微笑んでいた顔を歪め、聴診器を離す頃には真面目な顔を妹紅に向けていた。
「…………妹紅、あなた最近、体に付着してる白い粉末とか見た覚えはあるかしら?」
「え? あ、うん。よくわかったね。昨日から指や服に着いててさ。まぁ、竹炭が付着したんだと思うけど……まだ服に着いてた?」
「妹紅、落ち着いて聞いてくれるかしら。大切な話よ」
永琳は口を開き、とあることを妹紅に告げた。
「あーらあら妹紅、ここに来てるだなんて、もしかして風邪でも引いたのかしら? あんたみたいなやつでも体を壊すのね」
診察室から出てきた妹紅を、たまたま廊下を歩いていた輝夜が見つけ、声を投げかけた。
「このまま体を壊したまま死んでくれないかしらねぇ。そうしてくれるとすごく楽なんだけど」
着物の袖で口元を隠しながら、目だけでニヤついて妹紅を見つめた。
「……………-」
しかし、妹紅は輝夜の顔を見ることなく、顔を伏せていた。
「あら、何も言い返せないほど体調悪いのかしら? いい気分ね」
クスクスと笑う輝夜に大し、表情を変えることのない妹紅。次第に輝夜は笑うのをやめ、真顔で妹紅を見つめた。
「…………何か言いなさいよ、妹紅」
「……別に、大したことない。お前に心配されるほど落ちぶれてなんかないし」
妹紅は顔を上げてニヤリと笑みを返すと、永遠亭のドアを開けて外に出て行った。
「……なんなのよ……いったい……」
輝夜は妹紅が出て行ったドアを見つめ、永琳は診察室の中で目を閉じ、静かに紅茶を啜って居た。
それから一週間が過ぎようとした。何回かの周期であった妹紅と輝夜の殺し合いは起こらず、妹紅は姿を消した。
「……妹紅、来ないわね……どうしたのかしら……」
輝夜は自室で少しそわそわした様に彷徨い、外を眺めた。現在は夜で、綺麗な満月が宵闇に染まる世界をほんのりと明るく照らしている。
「別にあいつが来ないからどうってことじゃ無いけど、ただあいつが来ないとストレスが発散することが出来ないし……」
自分以外誰もいない部屋で、輝夜は誰に聞かせるわけでも無く、独り言をつぶやいていた。
「……鈴仙でもいじって遊ぼうかしら……」
そう思い、部屋を出ようとした瞬間、部屋の外から輝夜の部屋に向かって豪炎が降り注いだ。
「なっ⁉︎ 私の部屋が⁉︎」
輝夜は急いでスペルカードを取り出した、
難題「蓬莱の弾の枝 -虹色の弾幕- 」‼︎
輝夜がそう言いながらスペルを放つと、弾幕が炎をかき消して鎮火していく。火が消えたことを確認すると、輝夜は急いで部屋を飛び出し、火を放った本人の元に駆け出した。
「何すんのよ妹紅‼︎ 私の部屋が燃えたじゃない‼︎ どうしてくれるのよ‼︎」
外に出ると、妹紅が永遠亭の前に悠然と立っていた。
「別に、ただ久しぶりの挨拶がわりってだけだよ。悪いとは思わないね。私とお前の仲だろう?」
ニヤリと妹紅が笑みを浮かべると、輝夜は憤慨し、怒鳴りつけた。
「今日は随分と挑発的ねぇ。いいじゃない、やってやるわ‼︎ 今日こそあんたを殺してあげる‼︎」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ‼︎ お前を殺すのは、この私だ‼︎」
二人の人影が一瞬で消えると、竹林の中で轟音が鳴り響き出した。
時間は同刻、場所は人里の寺子屋。上白沢慧音は一人、部屋の中で思考に耽っていた。
「妹紅……最近姿を見せないが、お前はどこで何をしているんだ……こんなこと初めてだぞ。あの時、お前を永遠亭に行かせたのは私だ……もしそれで何かトラブルがあったのなら……私は……」
慧音は不安の顔を浮かべなから頭を抱えた。すると、玄関のチャイムが鳴り響き、慧音の思考をかき消した。慧音はハッと顔を上げて、急いで玄関に向かい、ドアを開けると同時に声を張り上げた。
「妹紅‼︎」
「あら、ごめんなさいね。思ってる人じゃなくて」
玄関先に立っていた八意永琳は、苦笑しながらその様子を眺めた。
「あ……い、いや。すまない。取り乱した。それで、竹林のお医者様がわざわざこんな時間に何の用だ?」
「いえ、ここに彼女がいると思ったんだけど……あなたのその様子じゃいない様ね。恐らくすれ違い……」
「……な、なぁ、なんの話なんだ……?」
・・・・・・・・・・・・
「……不死人になりきれなかった、可哀想な人間のお話よ」
「なりきれなかった……? いったいどういう……」
「……何も聞かされてないのね、あなた。いや、ある意味それがいいのかしら……」
「おい、答えろ‼︎ どういうことだと聞いているんだ‼︎」
「……藤原妹紅は、死ぬわ。近い内にね。それも、一刻を争うほど早く……もしかすると、もう死んしまっているかもしれないわ」
頭の中が一気に冷えていく。思考が停止する。意識が手放されていく。今、この医者は何を言った? なんて言った? 妹紅が死ぬ? あの妹紅が?
「……はは……あ、ありえないだろう。そんなこと。だって、あの妹紅だぞ? 不死人で、私より遥かに生きていて、これからもずっと生き続ける……」
「そう、本来ならそのはずだった……いや、最初からそうはなれなかったのね、彼女は」
「……ちゃんと……説明しろ……どういうことだ‼︎」
慧音は思わず永琳の胸元を掴み、壁に押し付けた。永琳は特に動揺することもなく、言葉を紡いでいく。
「……あなたは妹紅が不死人になった原因は知ってるわね?」
「あぁ、お前らが開発した「蓬莱の薬」を飲んだから……」
「ええ。その通りよ。「蓬莱の薬」のおかげで妹紅は長い間、あの姿で過ごして来られた。ただ、あれはあくまで私たち、月の住民が開発した薬。地上の人間が服用したらどうなるか……この意味がわかるかしら」
「…………」
「妹紅の結果を見るに、本当に長い間、ずっと不老不死でいられたんだと思うわ。ただ、死んで、蘇り、また死ぬ。私達月の住民ならまだしも、ただの人間が輪廻転生を自分の意思だけでやり続けたら、体がいつか悲鳴をあげるわ。もちろん、それがいつかわからないけど……あの子の体に、白い粉末……炭が着いていたわ」
「……白い……粉末……」
「粉末は始めて見たけど、恐らく、あれは彼女の体の一部。少しずつだけど、炭となって消えてっているのよ」
「う、嘘だ……そんな……バカな……嘘をいうんじゃない‼︎妹紅は、妹紅は……‼︎」
慧音は力の限り胸元を握りしめ、永琳に詰め寄った。永琳はゆっくりと目を閉じ、ポツリと呟いた。
「……医者として、蓬莱の薬の開発者として言わせてもらうわ。藤原妹紅は、もう間も無く死ぬ」
そう言い切られた瞬間、慧音は永琳の胸元から手を離し、地面にへたりこみ、永琳は目を閉じながら壁にもたれかかったままだった。
「……妹紅が来た時、あの子に言ったわ。生きたいのなら、寿命を伸ばす薬を作ってあげられるって」
慧音は思わずハッと顔を上げた。
「あの薬を作ったのは私だし、いきなり死ぬと分かって死んで行かれるのも、気持ちがいいものでは無いしね」
「そ、それじゃあ妹紅は……」
「でも、彼女はそれを断ったわ。自分には必要ないってね」
「な、なんでそんな……」
「……察してあげなさい。今まであの子がどれほど長く、死ぬに死ねない生活を送り、周りからどんな目で見られていたか……あなたが一番わかってるはずよ」
「…………」
沈黙が辺りに漂う。普段なら気にも留めない、部屋に飾ってあった掛時計の針の音が、酷く大きく聞こえる。
「……私は彼女を探しに行って、最後を見守るわ。それが薬を開発した私の義務。そして、私自身に対する罰でもあるから……」
スッと壁から離れ、玄関に向かって永琳は歩みを進める。
「……私も行く。私も、妹紅の最後を見届ける……」
慧音はゆっくりと立ち上がり、永琳を見つめた。その目には先ほどまでの弱い目ではなく、覚悟を決めた、凛とした目をしていた。
「……あの日から一週間。私の見立てでは恐らく、今日が彼女の命日よ。ここにいないとすれば、多分あの子は姫の元に……」
「……行こう。行って、内緒にしてたことを叱ってやるんだ。私は……」
「……ふふっ、そうね……」
そう言いながら慧音と永琳は寺子屋を後にした。
「はぁ……はぁ……」
寺子屋での一件から数刻の時間が経ち、竹林では大きなクレーターや、へし折られた竹林のが辺りの惨状を物語っていた。そして、藤原妹紅は地面に大の字に倒れ、蓬莱山輝夜はその妹紅を見下ろしていた。
「…………」
「……なんで、力なんか抜いたのよ……あんたなら、もっとやれるはずでしょ‼︎ なんでこんな、あんたが倒れる様なことになるのよ‼︎ 妹紅‼︎」
「……やれやれ、私を殺したいとか言いながら、いざ勝ったらそれで文句とか……ワガママな姫だこと……」
輝夜は叫ぶ様に声を張り上げ、妹紅はその様子を苦笑しながら見つめた。
「別に、手を抜いたわけでは無いさ。これが今の私の全力……正真正銘、最後の力を振り絞ったさ」
「そ、そんなはず……」
「……輝夜、私達は長い付き合いだよな。あれからどれくらいの月日が経ったなんて、正直覚えてなんか無いけど、本当に、長い付き合いだった」
「な、なによいきなり……」
「私はさ、最初こそお前を殺してやる。父様の敵だと思ってお前を殺しにかかっていたが……途中から、私は純粋にお前と殺しあうのを楽しんでいた。それなりに、満足していたんだ」
「ち、ちょっと、妹紅……」
「もし仮に、私がお前に勝ったとしても、殺す方法がわかったとしても、殺さずに、お前を生かしてまた殺し合いを楽しんでいたはずだ」
「妹紅‼︎ 話すのをやめなさい‼︎ なんなのよいったい‼︎」
「……ありがとうな……輝夜」
妹紅は倒れたまま輝夜の方に顔を向け目元から涙を零しながらニコリと微笑んだ。顔を向けた瞬間、首筋にヒビが入り、その隙間から白い粉末が地面に流れ出した。
「……も、妹紅……あんた……」
輝夜は目を見開きながらその様子を眺めた。
「……時間切れかー……あーあ……残念、一回ぐらいはお前に勝ちたかった……お前を泣かしてやりたかった……お前と……もっと……もっと……楽しみたかった……」
目元から涙を零しながら妹紅は言葉を重ねる。その涙により、灰が首元から広がった灰が湿っていく。
「な、何バカなこと言ってんのよ‼︎ ほら‼︎ いいから立ちなさい‼︎ 立って、また明日も、明後日も、明々後日も、私と戦うのよ、妹紅‼︎」
輝夜は飛びつく様な勢いで妹紅に近づき、体を揺すった。すると、揺すったことにより、体にヒビが広がり、手や足などからも灰が漏れ出した。
「っ……い、今永琳を呼んでくるから……」
「来ないよ。私が断った」
「な、なら、私が時間を……」
「お前の能力は寿命を伸ばすとか、そういうタイプの能力じゃあないだろう」
「じゃあ……どうしろって言うのよ‼︎」
「何もしなくていい。私を放っておくもいいし、トドメをさすでもいい。自由にしてくれ」
「そんな……バカなこと言うんじゃないわよ‼︎ 私も、あんたとの戦いを楽しかった‼︎ さっきだって、あんたが来なくてずっとそわそわしてた‼︎ あんたが来てくれて、すごく嬉しかった‼︎ あんたを見れて、戦えて、話せて、すごく、すごく楽しかった‼︎ だから……死ぬんじゃないわよ……‼︎」
輝夜の目元からも涙が零れ出し、妹紅の顔に落ちる。その涙により、妹紅の顔の灰は湿っていく。
「……ふふっ、泣かしてやった……どうだ……私の勝ちだ……」
「いいから……勝ちなんて、あんたにあげるから……‼︎ だから……だから……‼︎」
輝夜の目から、涙がとめどなく零れ続け、妹紅を濡らして行く。
「……輝夜……すまなかった……色々と……ありがとう……」
妹紅がそう言うと、それに呼応するかの様に妹紅の体が灰になる速さが上がっていく。どんどんと足元から灰になって行き、下半身は灰になって消えていく
「も、妹紅‼︎ 待ちなさい‼︎ まだ、まだ言いたいことがたくさんあるのよ‼︎ まだ、話したいことがたくさんあるのよ‼︎ だから、待ちなさい……妹紅‼︎」
輝夜が妹紅に手を伸ばすも、一際強い風が吹き、妹紅の体を吹き消した。辺りには手を伸ばしたままの輝夜に、白い粉末が散りばったもんぺがそこに残ったままだった。
「……あぁ……ぅっ……ひぐっ……妹紅……妹紅……っ……あぁああぁあぁっ‼︎ぁああぁあぁっ‼︎」
輝夜は涙を流しながら、そのもんぺを強く抱きしめ、今までに無いぐらい大きく泣いた。その声は、月まで届くかの様に、白い粉末や撒きながら、いつまでもいつまでも鳴り響いた。
「……行くわよ……」
「……あぁ……わかっ……てる……」
竹林から様子を伺っていた永琳は、ボロボロに泣き崩れた慧音に声をかけ、そっとその場を後にした。慧音も声を漏らすことはなく、その場でただただ泣き続けた。
あれから、数百年の時間が過ぎた。博麗の巫女も何代も過ぎ、知り合いの人間はみんな死んでいった。蓬莱山輝夜は、今でも永遠亭の自室で過ごしていた。死は、誰にでも付きまとうもの。しかし、それをわからない彼女は、ただただ無言で虚空を見続けた。
「…………」
輝夜の部屋は焼き焦げた後もすっかりと消えて、変わったことといえば、赤いもんぺの一部が部屋に飾られていることである。
「……なんで……私は生きてるんだろう……」
輝夜はポツリと自室で呟いた。それは誰に向けたわけでもない、自分への問いかけ。もちろん、それに答えられる人も自分だけである。
「……永琳のところ……行こう……」
輝夜は妹紅との殺し合いがなくなった後、いつも永琳のところに行って色々なことを話していた。くだらないことやつまらないこと、とにかく、ただ、なんでもいいから話していたかった。
自分の部屋を出て、永琳の診察室を目指す。そこまで距離は離れておらず、すぐに見つけた。診察室のドアに手をかけ、開こうとした時、玄関から声が上がった。
「師匠、なんか竹林で迷子になってる子供がいましたー。なんだか怪我してるみたいで、少し診てあげてくれませんか?」
そう言いながら、因幡てゐが一人の少女を連れて上がってきた。
その少女を見た瞬間、輝夜は目を見開いた。彼女は白い長髪に、白い服、それに赤いもんぺを着ていた。
「……も……こう……?」
輝夜はおぼつかない足取りでその少女に歩み寄った。
「…………」
「ひ、姫様? そんなわけないうさよ。妹紅はもういないし、妹紅よりも明らかに背が低いうさ」
てゐは少し動揺したように輝夜を見据えた。
「……そう……よね……少し、気が動転してたわ」
輝夜は苦笑しながらその少女を見つめた。
「あなた、お名前は?」
「…………わからない……私、捨てられて……名前もなくて……」
少女はビクビクとしたように震えながら、輝夜を見つめ返した。
「……あなたも、あいつと同じで一人なのね……てゐ、この子、このに住まわせるわよ」
「はい⁉︎ いきなり何言って……」
「いいから‼︎ 永琳のところに行って、このことを伝えて来てちょうだい‼︎」
輝夜に言われ、驚いた様子でてゐは永琳の元へと向かった。
「……あなたも、それでいいかしら?」
輝夜はその少女に問いかけた。
「……なんで……私を……?」
「うーん……まぁ、一言で言えば、昔の知り合いにそっくりだったから……かしら」
輝夜は苦笑した様子で頬をかいた。
「昔の知り合い……どんな人……?」
「そうね……いつも一人でいて、私と事あるごとに喧嘩して、何がなんでも負けず嫌いな……」
そこで輝夜は言葉を切り、ニッコリと微笑みながらこう言葉を紡いだ。
「……私の、一番の親友よ」
はい、というわけで終了でございます♪いやー、本当に長かった。8500字書いちゃいました(苦笑
さて、如何でしたでしょうか?正直この話は、肯定否定がかなり差があるように分かれると思います。妹紅死んじゃいましたし……まぁでも、個人的には楽しくかけたかなぁと思っております。もし気を悪くしてしまった方がいましたらすみませんです……
正直最後の輝夜と妹紅のシーン書いてて、泣きそうになったとかならなかったとか(苦笑
まぁ、これでこの話は完結でございます。ここまで見て下さった方、途中まででも見て下さった方。おりましたら読んでいただきありがとうございました♪他の小説も書いているので、もしよろしければよろしくお願いしますとか言ってみたりしちゃいます(苦笑