美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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今年最後の投稿。
あの、地雷娘が語り手です。



番外編 地雷系美少女降臨

「去年の騒動を踏まえて今年から『教職員選任枠』を二人に、新たに作った『風紀委員長選任枠』として一人、増員した。と言っても増員は一人だけの予定だったのを……無理矢理もう一人追加しただけなのだがな」

 

 

気に入らない。

私はもうずっと前からあいつが気に入らなかった。

 

 

『全く困った奴だよ。真由美が甘やかし過ぎるからあたしがしっかり言ってやらねば』

 

 

時折、摩利さんとの会話で登場する柴田美月なる人物。私は会ったことがなかったけど、もうこの時から気に入らなかった。

だからだろう。

彼女が入学してくる、ということを、面倒だ、問題児が増える、なんて言いながらも嬉しそうに話す摩利さんに、私は気がついたら、来期は風紀委員になる、と摩利さんに宣言していた。

部活も習い事もあるのに、風紀委員なんて、大変なのは分かっていたけど、なんとなく彼女に負けたくなくて、口から出ていたのだ。

 

 

その彼女が風紀委員に、それも、風紀委員長(摩利さんの)推薦枠で入ってきて、なんというか、そう、ライバル視していた。

それで、風紀委員の当番の度に彼女がいるかどうか探すようにしていたのだけど、まあいない。全然来ない。

 

一週間が経っていよいよ我慢できなくった私は、放課後、彼女の教室に向かった。

ところが彼女はもういなくなった後で、それが逆に私の心に火を着けた。

もう、絶対取っ捕まえてやるんだから!

 

陸上部で鍛えた足を活かして全力疾走、途中、偶然見つけた啓を拐って、校門前へ。

 

友達らしき女の子と一緒に歩いているのを見つけて、私は思わず舌なめずりした。もう逃がさないわよ!

 

 

「ちょっと待ちなさい柴田美月!」

 

「は、はぁ、ま、待つのは花音だ、よ……こんな全力疾走させられて、ちょっと休ませて」

 

 

啓が隣で何か言っているけど、今はそれどころではない。私は啓を引っ張ったまま、校門を塞ぐように立ち、ビシッと柴田美月を指差した。

 

 

「ここで会ったが百年目、今日という今日は言わせてもらうわよ!」

 

 

私がそう言うと、柴田美月は、何故か一緒にいた女子生徒にじとっとした目を向けられてあたふたとし始めた。

 

 

「美月、何やらかしたのよ?」

 

「なんでぼくが何かやらかした前提!?ぼく何もしてないよ!?」

 

 

こそこそと二人で話していて、私の存在は完全無視。良い度胸じゃない。沸々と込み上げてくる怒りのままに私は両手を振り上げて叫ぶ。

 

 

 

「無視すんなー!」

 

 

無理矢理二人の話をぶった斬ると、何故かにやにやとした笑みを浮かべている柴田美月。

そんな顔していられるのも今の内だけなんだから!

 

 

「私は千代田花音、風紀委員よ」

 

 

名前を名乗っただけでちょっと達成感。何せ一週間以上も待たされたんだから!

 

 

 

「ご存知の様ですが、ぼくは柴田美月です。あの、それでお話って何ですか?」

 

「ふふん、それはね、……えっと、ほら、あれよ、うん……なんだっけ?」

 

 

やっと話せると思ったのに、よくよく考えてみると何を言うか全く考えてなかった。

確か、中々風紀委員会に現れないから、気になって教室まで行ったのにもういなくなった後で、それでカーッとなって駆け出した……うん、特に言うこともない気がしてきた。

そんな風に考え込んでいると、柴田美月がやや困った表情で提案をしてきた。

 

 

「えーっと……お話するなら、とりあえずカフェテリアに行きましょうか?」

 

「……うん」

 

 

大人しく頷いた私に、隣で啓が、呆れたようにため息を吐いていたのが分かった。

 

 

 

 

 

「それは確かに会長が過保護過ぎるわね」

 

「そうですよね!そう思いますよね!真由美さんは初対面の時がちょっと特殊だったので、その印象が強いのかもしれませんけど」

 

 

話してみれば美月は良い奴だった。

風紀委員に来なかったのは、会長に謹慎を言い渡されていたからだった様で、そういえば摩利さんが打ち合わせの時、そんなことを言っていた様な気がしないでもない。

 

 

「あ、そういえば柴田さん。中条さんから、柴田さんがセレネ・ゴールドのCADを使ってるって聞いたんだけど本当?」

 

「ええ、武装一体型CAD『輝夜』ですね」

 

 

中条さん程ではないにしても、十分キラキラとした熱意のこもった目で尋ねる啓。普段は大人っぽくて、落ち着いた雰囲気なのに、こうしてたまにキラキラとした目をしているのは、とても可愛いと思う。

 

 

「それって剣のCADだよね?僕は、というより僕の家は刻印魔法に力を入れていて、セレネ・ゴールドは尊敬しているし、憧れもある。だからセレネ・ゴールドの製品カタログは何度も見ているんだけど、そんなCADは無かったと思うんだ」

 

セレネ・ゴールドの話は啓からもう何度も聞いている。まだ世間で話題になっていない頃から啓はセレネ・ゴールドのファンで、カタログなんてそれこそ擦りきれるくらい見ていた。セレネ・ゴールドの最新情報も逐一チェックしていたし、啓が『ない』、というのなら『ない』のだろう。

 

 

「ああ、それはこれがオーダーメイドだからですよ」

 

「オーダーメイド!?」

 

 

啓が滅多に聞かない素っ頓狂な声を上げる。ん?啓の家でもオーダーメイドでCADの依頼を受けることは日常茶飯事だったはず。武装一体型のCADなんて言っちゃなんだけど、使っている魔法師はそう多くはない。そうなると当然、一般販売されている武装一体型CADは取り扱いが少ないし、どうしても武装一体型CADを使いたい人はオーダーメイドで作る事も多い。

 

 

「セレネ・ゴールドは指名依頼を滅多に受けないことで有名なのに、よく引き受けて貰えたね」

 

「ぼ、ぼくは運が良かったみたいですね、別に指名依頼は選り好みしているわけじゃなくて適当に決めてるみたいですし」

 

 

どうやらセレネ・ゴールドという人物は案外適当な人間の様だ。実は指名依頼を滅多に受けないのも、面倒だから、とかそんな理由なのかもしれない。

 

 

「そうだったんだ、ごめんね質問ばかり。実は中条さんから話を聞いたときからずっと気になっていたものだから」

 

「いえいえ、あ、何なら今度『輝夜』持ってきますよ。あれは屋内で使うには向いてないからって、校内に持ってくるのを達也に却下されちゃったから今は持っていないんですけど」

 

「本当に!?わー、嬉しいな。一回現物を見てみたかったんだ」

 

 

確かに、剣の武装一体型なんて持ち運びは不便だし、ある程度広いスペースがないと使いづらいしで普段使いには向いていないのかも。風紀委員としての活動も考えると校内用には出来ないわよね。

それにしても、こんなに嬉しそうな啓は中々見られない。頭を撫でたい衝動に駈られるけど、この場ではぐっと我慢。そういうのは二人きりの時だけ、って決めているもの。

 

 

「でも美月が風紀委員に戻れるのって、確か一週間後よね?」

 

「あ、そっか。その間はCAD預けなきゃいけないですから放課後になっちゃいますね」

 

 

その後、私と啓は美月と連絡先を交換して、後日また三人で会うことになった。美月はセレネ・ゴールドのCADを使うだけあって刻印魔法に興味があるらしく、啓と話が合うみたいだし、本当に良い後輩が出来たと思う。風紀委員に復帰してきたら色々教えてあげよう。

 

あれ、そういえばなんで美月とこうして話しているんだっけ?

 

 

 

「……こいつ、とんでもない人たらしだわ」

 

 

 

隣でエリカが、小さく呟いたのは私の耳には届かなかった。

 




――その後の美月――


( ´・∀・`) 美月「態々お礼に来てくれてありがとうございます、体は大丈夫なんですか?」

(。・ω・。)ヘーキ 紗耶香「ええ、身体的外傷はないわ。今回のことが原因で、魔法が使えなくなってしまうといけないから、しばらくカウンセリングに通うことにはなったけどね」

(`・ω・´)キリッ 美月「それは良かったです、でも無理はしないようにしてくださいね、壬生先輩のカッコいい剣技、また見たいですから」

(//・ω・//)テレテレ 紗耶香「あ、ありがとう、でも、し、柴田さんも格好良かったわよ!じゃ、じゃあ!」






(-。-;)ハァ エリカ「あたしはさっきからずっと何を見せられてるのか……」


気配を消すスキルが上達したエリカであった。




花音の伏線、大分前に張っていたんですが中々回収できそうに無かったので番外編に(汗)
ちなみに、紗耶香のカウンセリングというのは、実はブランシュ関連のために行っていますが、本人には知らされていません。


来年は九校戦に入ったり、伏線回収したり、色々盛り上げていきますので、これからも美月転生をよろしくお願いします!
それでは皆さん、良いお年を!

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