長門有希の異変にキョンが気付くが手遅れに。
SOS団の力でどうにかできるのか?的な話です。

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SOS団団結力がテーマです。
キョン長要素非常に多いです。


無意識の意識

「今度の土曜日も不思議探索するわよ」

 

高らかな声でハルヒが言った。これまでの俺ならば、休日とお金の無駄遣いは勘弁してほしいと思っただろうが、昨年末にハルヒ消失事件が起きてから、こんな非日常に愛着を抱くようになっていた。何にせよ、この世界を選んだのは俺自身なのである。SOS団に対しての仲間意識が芽生えるなんて、俺はかなりの変人になってしまった。いや、成長したと言っておこう。

 

「キョン!聞いてるの?」

 

「土曜、不思議探索するんだろ」

 

「そうよ。絶対遅刻するんじゃないわよ!9時、駅前だから。明日は探索の打ち合わせをしましょう。解散!」

 

こんな勝手に話を進めるヤツを見て安心するなんて、やっぱり俺はどうかしちまったのかもな。

 

何を思いついたのか、ハルヒは嵐のように去っていった。

 

俺は、進路希望のことで岡部に呼び出されているから、ハンドボール部が終わるまで待機しとかないといけない。

 

着替えを終えた朝比奈さんと、妙にニヤニヤしている古泉にも別れを告げ、部室には俺と長門だけになった。そういや今日、長門と話してないな…と思いつつ長門を見ると、、、

 

俺は驚嘆した。

 

あの長門が……嘘だろ?

 

「…………」俺はしばらく声が出なかった。

 

だって長門が、涙を流していたから。

 

一体どうしたっていうんだ?驚いてる暇はねえ。

 

俺は長門のところにかけよった。

 

「なあ、どうしたんだ?何かあったのか?…って何かあったから泣いてるんだよな」

 

泣いているのなら、普通は顔を隠すなり俯いたりするが、こいつは俺をじっと見つめ、落ちてくる涙を手にとって不思議そうに見ていた。

 

「これは……何」

 

「長門……。どうした、何か嫌なことがあったのか?悲しいことでもあるのか?」

 

「……。」

 

「悲しい…こと…?私は感情を持たない。よって悲しいという概念も理解しかねる」

 

「…。最近あったことを言ってみろ。クラスのことでも、生活のことでも、うーんと、そのお前の情報思念体のことでも、ハルヒの観測のことでもいい。何か変わったことはなかったか」

 

「私のクラスに特に変化は見られない。生活に関しては、昨日初めてメーカーの異なるレトルトカレーを食べた。情報統合思念体からは今日……」うるっ

 

「ん?どうした」

 

「……ぐすっ、エラー発生。涙が止まらない。……ぐすん、涼宮ハルヒの観測にふさわしくないとして…私が思念体に帰還することを連絡された」

 

「…は?……ま、待て。それはつまり…」

 

「私の処分が決定した」

 

「馬鹿やろう!なぜ早く言わない!言ったよな、お前が消えたりしたら、俺は暴れるって」

 

長門は僅かにびくっとしたあと小さく頷いた。

 

「お前の親玉と話をさせてくれ」

 

「それはできない。思念体は言語を持たないから」

 

そうだよな。何を言っているんだ俺は。混乱する。まとまらない。俺の威圧的な雰囲気に恐縮(?)している長門がいた。

 

はっ!

 

「取り乱してすまん」

 

「構わない」

 

涙……。そりゃあそうだよな。でもこいつは、感情が芽生えていることなど自覚しちゃいない。でも涙を流している時点で感情があるのは否定できないな。それが何なのか、分からないんだろう。

 

感情のことは少しおいておこう。

 

「長門…お前の親玉はなんでまたお前を消そうとしているんだ?」

 

「私が人間化する可能性があると判断された。インターフェースにとってのエラー」

 

感情=エラーというわけか。ばかやろう!

 

「ハルヒの力でどうにかならないか?あいつだってお前が消えるってことになるとかなりショック受けるぞ。地球にも優しくない」

 

「大丈夫、地球から私がいた記憶・証拠を抹消するから安心して」

 

「!」

 

「安心できるわけないだろう。お前…ひとりで何やろうとしてるんだよっ…」

 

「泣かないで」

 

「すまん。だけど、記憶が消えてもお前がいない世界なんて俺は嫌だ!」

 

俺の涙に同調したのか長門も再び涙を流し始めた。

 

「あのな、お前は違うというかもしれんが、でも、俺の考えを聞いてくれ。お前はこの世界から消えることが嫌なんだよ。辛い、悲しいと感じているんだよ。それが感情なんだ。感情があふれそうになると人は涙が出るんだよ。無意識かもしれんが、お前はどこかで思念体に還ることを拒絶している…」

 

「…………」

 

長門は何も言わずに手で拭った涙を宝物のようにじっくり見つめている。

 

俺は長門に抱きついた。

 

「!」ぐすっ

 

「お前は俺にとって絶対に必要な存在だ。お前がいない世界なんていらない。」

 

なんかすごく恥ずかしいことを言っているような気がするが、この際もうどうでもいい。

 

ええい、どうにでもなれ!

 

「俺は…長門が好きなんだ」

 

「………」戸惑い?驚き?何とも言えない表情をする。

 

「ありがとう」

 

少し間をおいて

 

「これが、有機生命体でいうところの、嬉しいという感情に値するのかもしれない」

 

と付け足した。

 

 

その夜。

 

俺はまるで夢を見ているようだった。SOS団の仲間、そして俺にとって特別な存在である長門がいなくなるかもしれないというショック。俺の中でも、もやもやしていた思いを長門に伝えたこと。そして、長門が嬉しいと言ってくれたこと。絶望と愛おしさでどうにかなっちまいそうだ。

 

どうするか。あいつを頼りたくはないが、頼れるのがあいつしかいない。

 

「もしもし。あなたから電話をいただけるとは珍しいですね。これはあなたにとってよほど緊急事態…」

 

「古泉、今いいか」

 

「ええ」

 

俺は今日の団活終了からの経緯を説明した。

 

「なるほど。それは大問題ですね。長門さん自身の問題もそうですし、涼宮さんにこの話が伝わってしまえば…考えるのも恐ろしいです。長門さんに関しては、感情が芽生え、その上でこの世界から消えてしまうという悲しみはSOS団の仲間として心が痛む限りです。そして、あなたにとって特別な存在ということならば、僕よりもショックは大きいでしょう。涼宮さんに関しては、記憶リセットが行われる前にこの話が伝わってしまえば世界崩壊も遠い話ではないでしょう。

 

只、僕としても今のSOS団に愛着を持っていますから、長門さんがいなくなったSOS団なんて考えたくないです。

 

ひとつだけ、この問題を解決できる方法は思い浮かびますが、世界崩壊をも覚悟した方法になりますね」

 

 

次の日。

 

俺はいつもの席に着く。

 

「キョン、キョンってば!」

 

「ちょっと有希の様子がおかしいの。有希ってさ、あたしが声かけると、すぐ返事してくれるの。でもさっき、おはようって言ったら何か考え事してたみたいで、あたしに気付かなかったわ。そんなこと、これまでなかったわよ」

 

長門のやつ、また独りで抱え込みやがって。

 

「おい、ハルヒ。もしもの話だがな。お前、SOS団の誰かがいなくなったらどう思う?」我ながら唐突すぎる質問に呆れるが、口から出てしまったものはどうしようもない。

 

「あー、悪い。昨日、昔仲間だったやつがいなくなる夢をみて、今、妙なテンションなんだ。気にしないでくれ」

 

ハルヒは一瞬戸惑った顔を見せたが、

 

「SOS団の誰かがいなくなるわけないでしょうが!あんたの夢とSOS団を重ね合わせないでよねバカキョン。あたしは有希の様子がおかしいって言ってんの。あんたに相談したのが間違いだったわね」

 

といつもの調子を戻した。

 

 

放課後、部室に行ってみると、朝比奈さんがいつもの笑顔で「お茶と紅茶どっちがいいですか?」と天使のようなボイスで聞いてくれたので、少し心が落ち着いたが、残り3人の表情を見てみると、何かいつもと違う。長門はもちろんだ。読書をしているように見せているのだろうがページがめくられていない。ハルヒもまた、ネットを見てはいるが上の空って感じだな。古泉はニヤケ面をやめ、何だかソワソワしているってとこか。

 

 

 

そんなときが流れ、各々自分の活動をしているように見せかけ考え事をしていたあるとき。

 

「え?ゆ、有希??ねえ…どうしちゃったの…」

 

ハルヒが震えたような声を出した。

 

見れば長門は昨日のように涙を流していたのだ。

 

「お、おい!長門!」俺はすごい勢いで長門に駆け寄った。「ちょっとこっち来い!」と長門の腕をつかんだ瞬間、「な、何してるのよキョン!何であんたなんかが、こんなになってる有希を連れてくのよ!」ハルヒが怒鳴った。古泉と朝比奈さんも「大丈夫ですか」「なにがあったんですか?」と長門に駆け寄る。そのときだった。四人が長門に駆け寄ったときだった。「もっと喋りたかった」弱々しくそう言い、そして目を瞑り、意識を失った。「長門!?おい!!!!」

 

「ちょっとっ!!!!!有希!!!有希ってば!返事…しなさいよ!ねえ?ねえ?!!」ハルヒの声が響き渡る。……「キョン!!!あんた早く救急車、呼びなさい、今すぐに!」

 

「お、おう…」病院なんぞ行っても解決するわけはないと分かりつつ、俺は携帯を持って部室から駆け出した。長門の傍にいたいー。そう思いつつ…。俺は泣いた。何もできなかったのか?俺は長門を助けることができなかったのか?

 

朝比奈さんも一瞬何が起きたか理解しかねたのか黙っていたが、「長門さん、しっかりしてください」今までに聞いたことのないような大声で叫んでいるのが聞こえた。

 

そのとき、古泉もまた、今までに見たことがない真剣な顔をして短距離走並みのスピードで部室を飛び出して行った。「え?ま、待ってよ、ねえ、古泉くん?」古泉?俺の頭は混乱する。あいつはハルヒの精神面専門であって、長門には一切関わってないはずだ。もしや長門を助けられる力まで覚醒したのか?

 

 

―病院―

 

長門は検査中だ。古泉以外の3人で病院にいる。

 

「古泉くんの親戚まで倒れちゃうなんてね、大丈夫なのかしら。もしかして有希が倒れたことと何か関連してないわよね…」俺には携帯に連絡が入っていたが、古泉の親戚が倒れ、そこに駆けつけたということになっているらしい。きっと、また閉鎖空間で戦ってるんだろうよ、あいつは。

 

俺は一瞬ドキッとしたが、「どう関係があるって言うんだ」冷静を演じる。

 

「そうよね。たまたまよね」

 

「有希が最近考え事をしてるのは何となく分かってたけど、こんなことになるなんて。あたしって本当バカ。すぐ何があったのか聞くべきだったわ。あの子、滅多に感情を出さないから、なんだろう…ちょっと油断してたのかな。有希なら大丈夫って思ってたとゆうか」

 

「有希だって人間だもの。ずっと感情を押し込めていたんだわ」

 

「……ハルヒ、昨日と同じ質問をするぞ。SOS団の誰かがいなくなったら、お前どうする?」

 

「……っ!!!!いなくなるなんて縁起でもないわよ!!ぜっっっっったいに許さないんだから!!!」

 

「有希をね、いなくなさせるような、そんな原因この世からなくなっちゃえばいいのよ」

 

 

そのときー

 

「目が覚めましたか?聞こえますか?」

 

検査室から医者の声が聞こえた。え、長門のやつが目を覚ましたって?!

 

ハルヒは俺と朝比奈さんを引っ張って検査室へとずかずか入っていった。

 

「有希!!!!!!!」

 

長門はいつもの無表情で、でも、何か苦しそうな、嬉しそうな、言葉では言い表せないような表情も交え、三人を見つめた。

 

「長門!」

 

「長門さ~~~~ん…」

 

俺は頭が混乱していたが、長門が目を覚ましたことへの安堵感でその場に倒れこんだ。

 

 

医者によると、最初から特に異常はなく、さっき急に目を覚ましたらしい。まあそうだろうな。

 

念のためにと検査は続けられたが、何ひとつ異常は見つからなかった。

 

 

10分後くらいに古泉が病院にやってきた。ハルヒに見つからないようにしているらしい。バレたら後々厄介なことになるからな。深刻な顔で、俺に話があると無言で言っている。

 

「お話したいことがあります」

 

「分かってる」

 

「ちょっと場所を変えましょうか」

 

「ああ。」

 

 

ということで俺と古泉は病院の屋上にいる。

 

「お疲れだったな」

 

「ええ、ありがとうございます。手短に言いましょう。涼宮さんが長門さんの命を助けたのです。もうひとつ。長門さんは普通の人間になったと言っていいでしょう。詳しくは長門さん本人から」

 

「………」ハルヒが…長門を…。長門が普通の人間…。

 

「驚くのも当然ですね。僕もこんなに驚いたのはあなたと涼宮さんが閉鎖空間に閉じ込められた時以来です。涼宮さんが心から思ったのですよ。長門さんがいなくなるなんて許さないとね。それでは僕は親戚が倒れたことになっていますので、これくらいで」

 

 

俺はしばらく物思いに耽っていた。長門のやつ、助かったんだよな…。俺は助けられなかったが、ハルヒが助けた…と言っていたな。一体どういうことだ。まあ皆が無事なのが一番だ。今俺の頭は回らない。とにかく良かった。本当に良かった。

 

一通り検査が終了した長門が、あのときと同じ雰囲気を漂わせ、屋上に来た。

 

「長門!」ひとつ違ったのは俺が長門に駆け寄って行ったこと。

 

「ごめんなさい」

 

「なんでお前が謝るんだ」

 

「また私が原因で皆を巻き込んだ。申し訳ない。私は涼宮ハルヒに助けられた。彼女は私という存在をこの世界から消したくないと願った。また、古泉一樹の親戚が倒れたことと関係していると無意識的に気付き、その原因を撤去した。だから、この宇宙に情報統合思念体はもういない。私は自由」

 

 

「長門…お前は、人間なのか?」

 

「そう」

 

俺はどれだけ願っただろうか。長門が普通の人間になれることを。

 

「思念体のことも無意識で涼宮ハルヒは気付いていると思われる」

 

「ふう…」嬉しい溜息を吐いた。ハルヒが…そうか。あいつはああ見えて一番団員のことを考えてたりするんだよな。

 

「俺は今、ものすごく嬉しいんだ、長門。俺はお前が好きだから、好きなやつが喜んだり悲しんだりすることをエラーだなんて言う野郎に腹が立っていてよ。」感情はときに厄介だが、それを互いに支え合って成長することが人間の素晴らしいところであると、最近の事件を切欠に考えるようになったりした。我ながら成長したと思う。

 

「だから、お前がエラーと言ってたものは人間にとったら互いの仲を深めるものだ。感情は弱いものだが、俺はお前のそれを分かりたいと思うぞ」長門は特別な存在だが、SOS団もまた、俺にとって、多分5人にとって大切な存在であり、皆と成長したいと思うのであった。

 

「……ありがとう」以前のありがとうとは微妙に違う、もっと温かい声だった。

 

「私も。私もあなたの感情というものを理解していきたい。涼宮ハルヒの感情も」

 

「あなたに大切に思ってもらって、、、、嬉しい。でも、涼宮ハルヒの感情もある。どちらも大切」

 

「あ、ああ」

 

「感情は複雑。でも、あなたがそう言うのなら、きっといいもの」

 

「長門、俺やハルヒやSOS団のこと、どう思っているか?」

 

間をおいて、微笑を見せつつ、元宇宙人はこう言った。

 

「私にとって一番価値あるもの」

 

【完】

 

 

 

 

「今度の土曜日も不思議探索するわよ」

 

高らかな声でハルヒが言った。これまでの俺ならば、休日とお金の無駄遣いは勘弁してほしいと思っただろうが、昨年末にハルヒ消失事件が起きてから、こんな非日常に愛着を抱くようになっていた。何にせよ、この世界を選んだのは俺自身なのである。SOS団に対しての仲間意識が芽生えるなんて、俺はかなりの変人になってしまった。いや、成長したと言っておこう。

 

「キョン!聞いてるの?」

 

「土曜、不思議探索するんだろ」

 

「そうよ。絶対遅刻するんじゃないわよ!9時、駅前だから。明日は探索の打ち合わせをしましょう。解散!」

 

こんな勝手に話を進めるヤツを見て安心するなんて、やっぱり俺はどうかしちまったのかもな。

 

何を思いついたのか、ハルヒは嵐のように去っていった。

 

俺は、進路希望のことで岡部に呼び出されているから、ハンドボール部が終わるまで待機しとかないといけない。

 

着替えを終えた朝比奈さんと、妙にニヤニヤしている古泉にも別れを告げ、部室には俺と長門だけになった。そういや今日、長門と話してないな…と思いつつ長門を見ると、、、

 

俺は驚嘆した。

 

あの長門が……嘘だろ?

 

「…………」俺はしばらく声が出なかった。

 

だって長門が、涙を流していたから。

 

一体どうしたっていうんだ?驚いてる暇はねえ。

 

俺は長門のところにかけよった。

 

「なあ、どうしたんだ?何かあったのか?…って何かあったから泣いてるんだよな」

 

泣いているのなら、普通は顔を隠すなり俯いたりするが、こいつは俺をじっと見つめ、落ちてくる涙を手にとって不思議そうに見ていた。

 

「これは……何」

 

「長門……。どうした、何か嫌なことがあったのか?悲しいことでもあるのか?」

 

「……。」

 

「悲しい…こと…?私は感情を持たない。よって悲しいという概念も理解しかねる」

 

「…。最近あったことを言ってみろ。クラスのことでも、生活のことでも、うーんと、そのお前の情報思念体のことでも、ハルヒの観測のことでもいい。何か変わったことはなかったか」

 

「私のクラスに特に変化は見られない。生活に関しては、昨日初めてメーカーの異なるレトルトカレーを食べた。情報統合思念体からは今日……」うるっ

 

「ん?どうした」

 

「……ぐすっ、エラー発生。涙が止まらない。……ぐすん、涼宮ハルヒの観測にふさわしくないとして…私が思念体に帰還することを連絡された」

 

「…は?……ま、待て。それはつまり…」

 

「私の処分が決定した」

 

「馬鹿やろう!なぜ早く言わない!言ったよな、お前が消えたりしたら、俺は暴れるって」

 

長門は僅かにびくっとしたあと小さく頷いた。

 

「お前の親玉と話をさせてくれ」

 

「それはできない。思念体は言語を持たないから」

 

そうだよな。何を言っているんだ俺は。混乱する。まとまらない。俺の威圧的な雰囲気に恐縮(?)している長門がいた。

 

はっ!

 

「取り乱してすまん」

 

「構わない」

 

涙……。そりゃあそうだよな。でもこいつは、感情が芽生えていることなど自覚しちゃいない。でも涙を流している時点で感情があるのは否定できないな。それが何なのか、分からないんだろう。

 

感情のことは少しおいておこう。

 

「長門…お前の親玉はなんでまたお前を消そうとしているんだ?」

 

「私が人間化する可能性があると判断された。インターフェースにとってのエラー」

 

感情=エラーというわけか。ばかやろう!

 

「ハルヒの力でどうにかならないか?あいつだってお前が消えるってことになるとかなりショック受けるぞ。地球にも優しくない」

 

「大丈夫、地球から私がいた記憶・証拠を抹消するから安心して」

 

「!」

 

「安心できるわけないだろう。お前…ひとりで何やろうとしてるんだよっ…」

 

「泣かないで」

 

「すまん。だけど、記憶が消えてもお前がいない世界なんて俺は嫌だ!」

 

俺の涙に同調したのか長門も再び涙を流し始めた。

 

「あのな、お前は違うというかもしれんが、でも、俺の考えを聞いてくれ。お前はこの世界から消えることが嫌なんだよ。辛い、悲しいと感じているんだよ。それが感情なんだ。感情があふれそうになると人は涙が出るんだよ。無意識かもしれんが、お前はどこかで思念体に還ることを拒絶している…」

 

「…………」

 

長門は何も言わずに手で拭った涙を宝物のようにじっくり見つめている。

 

俺は長門に抱きついた。

 

「!」ぐすっ

 

「お前は俺にとって絶対に必要な存在だ。お前がいない世界なんていらない。」

 

なんかすごく恥ずかしいことを言っているような気がするが、この際もうどうでもいい。

 

ええい、どうにでもなれ!

 

「俺は…長門が好きなんだ」

 

「………」戸惑い?驚き?何とも言えない表情をする。

 

「ありがとう」

 

少し間をおいて

 

「これが、有機生命体でいうところの、嬉しいという感情に値するのかもしれない」

 

と付け足した。

 

 

その夜。

 

俺はまるで夢を見ているようだった。SOS団の仲間、そして俺にとって特別な存在である長門がいなくなるかもしれないというショック。俺の中でも、もやもやしていた思いを長門に伝えたこと。そして、長門が嬉しいと言ってくれたこと。絶望と愛おしさでどうにかなっちまいそうだ。

 

どうするか。あいつを頼りたくはないが、頼れるのがあいつしかいない。

 

「もしもし。あなたから電話をいただけるとは珍しいですね。これはあなたにとってよほど緊急事態…」

 

「古泉、今いいか」

 

「ええ」

 

俺は今日の団活終了からの経緯を説明した。

 

「なるほど。それは大問題ですね。長門さん自身の問題もそうですし、涼宮さんにこの話が伝わってしまえば…考えるのも恐ろしいです。長門さんに関しては、感情が芽生え、その上でこの世界から消えてしまうという悲しみはSOS団の仲間として心が痛む限りです。そして、あなたにとって特別な存在ということならば、僕よりもショックは大きいでしょう。涼宮さんに関しては、記憶リセットが行われる前にこの話が伝わってしまえば世界崩壊も遠い話ではないでしょう。

 

只、僕としても今のSOS団に愛着を持っていますから、長門さんがいなくなったSOS団なんて考えたくないです。

 

ひとつだけ、この問題を解決できる方法は思い浮かびますが、世界崩壊をも覚悟した方法になりますね」

 

 

次の日。

 

俺はいつもの席に着く。

 

「キョン、キョンってば!」

 

「ちょっと有希の様子がおかしいの。有希ってさ、あたしが声かけると、すぐ返事してくれるの。でもさっき、おはようって言ったら何か考え事してたみたいで、あたしに気付かなかったわ。そんなこと、これまでなかったわよ」

 

長門のやつ、また独りで抱え込みやがって。

 

「おい、ハルヒ。もしもの話だがな。お前、SOS団の誰かがいなくなったらどう思う?」我ながら唐突すぎる質問に呆れるが、口から出てしまったものはどうしようもない。

 

「あー、悪い。昨日、昔仲間だったやつがいなくなる夢をみて、今、妙なテンションなんだ。気にしないでくれ」

 

ハルヒは一瞬戸惑った顔を見せたが、

 

「SOS団の誰かがいなくなるわけないでしょうが!あんたの夢とSOS団を重ね合わせないでよねバカキョン。あたしは有希の様子がおかしいって言ってんの。あんたに相談したのが間違いだったわね」

 

といつもの調子を戻した。

 

 

放課後、部室に行ってみると、朝比奈さんがいつもの笑顔で「お茶と紅茶どっちがいいですか?」と天使のようなボイスで聞いてくれたので、少し心が落ち着いたが、残り3人の表情を見てみると、何かいつもと違う。長門はもちろんだ。読書をしているように見せているのだろうがページがめくられていない。ハルヒもまた、ネットを見てはいるが上の空って感じだな。古泉はニヤケ面をやめ、何だかソワソワしているってとこか。

 

 

 

そんなときが流れ、各々自分の活動をしているように見せかけ考え事をしていたあるとき。

 

「え?ゆ、有希??ねえ…どうしちゃったの…」

 

ハルヒが震えたような声を出した。

 

見れば長門は昨日のように涙を流していたのだ。

 

「お、おい!長門!」俺はすごい勢いで長門に駆け寄った。「ちょっとこっち来い!」と長門の腕をつかんだ瞬間、「な、何してるのよキョン!何であんたなんかが、こんなになってる有希を連れてくのよ!」ハルヒが怒鳴った。古泉と朝比奈さんも「大丈夫ですか」「なにがあったんですか?」と長門に駆け寄る。そのときだった。四人が長門に駆け寄ったときだった。「もっと喋りたかった」弱々しくそう言い、そして目を瞑り、意識を失った。「長門!?おい!!!!」

 

「ちょっとっ!!!!!有希!!!有希ってば!返事…しなさいよ!ねえ?ねえ?!!」ハルヒの声が響き渡る。……「キョン!!!あんた早く救急車、呼びなさい、今すぐに!」

 

「お、おう…」病院なんぞ行っても解決するわけはないと分かりつつ、俺は携帯を持って部室から駆け出した。長門の傍にいたいー。そう思いつつ…。俺は泣いた。何もできなかったのか?俺は長門を助けることができなかったのか?

 

朝比奈さんも一瞬何が起きたか理解しかねたのか黙っていたが、「長門さん、しっかりしてください」今までに聞いたことのないような大声で叫んでいるのが聞こえた。

 

そのとき、古泉もまた、今までに見たことがない真剣な顔をして短距離走並みのスピードで部室を飛び出して行った。「え?ま、待ってよ、ねえ、古泉くん?」古泉?俺の頭は混乱する。あいつはハルヒの精神面専門であって、長門には一切関わってないはずだ。もしや長門を助けられる力まで覚醒したのか?

 

 

―病院―

 

長門は検査中だ。古泉以外の3人で病院にいる。

 

「古泉くんの親戚まで倒れちゃうなんてね、大丈夫なのかしら。もしかして有希が倒れたことと何か関連してないわよね…」俺には携帯に連絡が入っていたが、古泉の親戚が倒れ、そこに駆けつけたということになっているらしい。きっと、また閉鎖空間で戦ってるんだろうよ、あいつは。

 

俺は一瞬ドキッとしたが、「どう関係があるって言うんだ」冷静を演じる。

 

「そうよね。たまたまよね」

 

「有希が最近考え事をしてるのは何となく分かってたけど、こんなことになるなんて。あたしって本当バカ。すぐ何があったのか聞くべきだったわ。あの子、滅多に感情を出さないから、なんだろう…ちょっと油断してたのかな。有希なら大丈夫って思ってたとゆうか」

 

「有希だって人間だもの。ずっと感情を押し込めていたんだわ」

 

「……ハルヒ、昨日と同じ質問をするぞ。SOS団の誰かがいなくなったら、お前どうする?」

 

「……っ!!!!いなくなるなんて縁起でもないわよ!!ぜっっっっったいに許さないんだから!!!」

 

「有希をね、いなくなさせるような、そんな原因この世からなくなっちゃえばいいのよ」

 

 

そのときー

 

「目が覚めましたか?聞こえますか?」

 

検査室から医者の声が聞こえた。え、長門のやつが目を覚ましたって?!

 

ハルヒは俺と朝比奈さんを引っ張って検査室へとずかずか入っていった。

 

「有希!!!!!!!」

 

長門はいつもの無表情で、でも、何か苦しそうな、嬉しそうな、言葉では言い表せないような表情も交え、三人を見つめた。

 

「長門!」

 

「長門さ~~~~ん…」

 

俺は頭が混乱していたが、長門が目を覚ましたことへの安堵感でその場に倒れこんだ。

 

 

医者によると、最初から特に異常はなく、さっき急に目を覚ましたらしい。まあそうだろうな。

 

念のためにと検査は続けられたが、何ひとつ異常は見つからなかった。

 

 

10分後くらいに古泉が病院にやってきた。ハルヒに見つからないようにしているらしい。バレたら後々厄介なことになるからな。深刻な顔で、俺に話があると無言で言っている。

 

「お話したいことがあります」

 

「分かってる」

 

「ちょっと場所を変えましょうか」

 

「ああ。」

 

 

ということで俺と古泉は病院の屋上にいる。

 

「お疲れだったな」

 

「ええ、ありがとうございます。手短に言いましょう。涼宮さんが長門さんの命を助けたのです。もうひとつ。長門さんは普通の人間になったと言っていいでしょう。詳しくは長門さん本人から」

 

「………」ハルヒが…長門を…。長門が普通の人間…。

 

「驚くのも当然ですね。僕もこんなに驚いたのはあなたと涼宮さんが閉鎖空間に閉じ込められた時以来です。涼宮さんが心から思ったのですよ。長門さんがいなくなるなんて許さないとね。それでは僕は親戚が倒れたことになっていますので、これくらいで」

 

 

俺はしばらく物思いに耽っていた。長門のやつ、助かったんだよな…。俺は助けられなかったが、ハルヒが助けた…と言っていたな。一体どういうことだ。まあ皆が無事なのが一番だ。今俺の頭は回らない。とにかく良かった。本当に良かった。

 

一通り検査が終了した長門が、あのときと同じ雰囲気を漂わせ、屋上に来た。

 

「長門!」ひとつ違ったのは俺が長門に駆け寄って行ったこと。

 

「ごめんなさい」

 

「なんでお前が謝るんだ」

 

「また私が原因で皆を巻き込んだ。申し訳ない。私は涼宮ハルヒに助けられた。彼女は私という存在をこの世界から消したくないと願った。また、古泉一樹の親戚が倒れたことと関係していると無意識的に気付き、その原因を撤去した。だから、この宇宙に情報統合思念体はもういない。私は自由」

 

 

「長門…お前は、人間なのか?」

 

「そう」

 

俺はどれだけ願っただろうか。長門が普通の人間になれることを。

 

「思念体のことも無意識で涼宮ハルヒは気付いていると思われる」

 

「ふう…」嬉しい溜息を吐いた。ハルヒが…そうか。あいつはああ見えて一番団員のことを考えてたりするんだよな。

 

「俺は今、ものすごく嬉しいんだ、長門。俺はお前が好きだから、好きなやつが喜んだり悲しんだりすることをエラーだなんて言う野郎に腹が立っていてよ。」感情はときに厄介だが、それを互いに支え合って成長することが人間の素晴らしいところであると、最近の事件を切欠に考えるようになったりした。我ながら成長したと思う。

 

「だから、お前がエラーと言ってたものは人間にとったら互いの仲を深めるものだ。感情は弱いものだが、俺はお前のそれを分かりたいと思うぞ」長門は特別な存在だが、SOS団もまた、俺にとって、多分5人にとって大切な存在であり、皆と成長したいと思うのであった。

 

「……ありがとう」以前のありがとうとは微妙に違う、もっと温かい声だった。

 

「私も。私もあなたの感情というものを理解していきたい。涼宮ハルヒの感情も」

 

「あなたに大切に思ってもらって、、、、嬉しい。でも、涼宮ハルヒの感情もある。どちらも大切」

 

「あ、ああ」

 

「感情は複雑。でも、あなたがそう言うのなら、きっといいもの」

 

「長門、俺やハルヒやSOS団のこと、どう思っているか?」

 

間をおいて、微笑を見せつつ、元宇宙人はこう言った。

 

「私にとって一番価値あるもの」

 

【完】

 

 

 

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございました!

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