フォーサイスより愛を込めて(魔法先生ネギま!×EVOLIMIT) 作:瓶缶ペットボトル
――時は流れて。
長谷川千雨は魔法に関わることもなく、魔法を信じることもなく、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの元で大東流合気柔術を学びながら。ツナミ・カラニコフ、ザジ・レイニーデイとともに自由に生きながら。
明石祐奈は魔法と関わり続け、長期休みの度にメルディアナ魔法学校にいるドネット・マクギネスの元で2挺の拳銃の扱い方を学びながら。その過程でネギ・スプリングフィールドとも親交を持ちながら。
超鈴音は己の目的のための準備を着々と進めながら。地球生活を満喫している他の火星人に日々頭を痛ませながらも。
――時は流れて、彼女達の中学2年の冬がやってきた。
子供先生が麻帆良学園へやってきた。
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麻帆良女子中等部2-A教室
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教室に入るなり数あるトラップに迎えられたネギ・スプリングフィールドが気を取り直し、教卓の前で教室内をぐるっと見回した。
「今日からこの学校でまほ……英語を教えることになりました。ネ――」
「遅刻だー!」
子供先生の自己紹介を止めてしまう声が窓の外から響いた。
「諦めるな! まだ間に合う!」
もう一人の声が窓の外から響いた。
「……とぅ」
窓からくるくる回転しながらザジ・レイニーデイが飛び込んで自分の席に着席した。
次に長谷川千雨が窓から飛び込んできていた。さらに後ろからツナミ・カラニコフが飛び込み、手を組んで待っていた千雨の上でもう一度ジャンプし、自分の席に着席した。千雨は背負っていた鞄を下ろし、コートを脱ぎながら悠々と歩いて自分の席に座った。
「マスター・ツナミ、絶対に間に合ってませんよ、ハイ」
3人が乗ってきた飛行形態のまま教室に入り、通常形態に変形したチャペックがロッカーの前でスタンバイモードに入っていた。
「「セーフ」」
席に座った千雨とツナミが声を合わせた。
「アウトだ、阿呆共!」
ツナミの隣でエヴァンジェリンが叫んでいた。
ネギは口を開けたまま、呆然としていた。
クラスメート達はいつものことで慣れていたが、それでも呆れていた。
「誰だ、そのガキは」
千雨が黒板の前に立っている少年を見咎めて源しずなに顔を向けた。
「あ、新しい先生よ」
「新しい先生だとぉ? 馬鹿なこと言っちゃいけませんよ、しずな先生。このガキが先生? ハッ、認めねえよ、そんなことは」
教卓まで歩いた千雨がフリーズしているネギの首根っこを掴んで廊下にほっぽり出した。
「帰れ!」
ぴしゃりとドアを閉めた。
「ええーっ! 何やってんのよ!?」
「そ、そうですわ! 長谷川さん、あなた一体!?」
神楽坂明日菜と雪広あやかが狼狽えていた。
「……あのねぇ、長谷川さん」
しずなが眼鏡を押さえて盛大な溜息を吐いていた。
「ネギ君、入ってきていいわよ。ネギ君は教員免許もちゃんと持ってるんだから」
おずおずとドアを開けて入ってきたネギは既に泣きそうになっていた。
「そんなことは関係ない」
「長谷川さん! ネギ先生はオックスフォード大学を卒業した天才なんですから!」
「それも関係ない」
「ガキ相手に何やってんのよ!?」
「それも関係ない。ガキだとか天才だとか免許とかそんなことは関係ねーんだ! 私は、教育に命を掛けられない奴は誰だろうと教師だとは認めない」
ガキにそこまで出来るわけがねぇ、と言いながら目の前にいる明日菜とあやかを見ていた。
「……あー、うん。その通りだわ」
「……ひ、否定できませんわ」
「……そ、そうね。私達が間違ってたわ。ネギ君、学園長のところに戻りましょうか」
「……は、はい……すみません、お騒がせしました」
ネギが半分泣きながら申し訳なさそうに頭を下げた。
「ちょっと待つネ! 長谷川サン!」
「ちょっと待て! 長谷川千雨!」
エヴァンジェリンと超鈴音の二人が立ち上がり、千雨に詰め寄っていた。
二人とも鬼気迫る様子を隠すことが出来ない程度には本気だった。そして、最初のうちは目立たないように観察していようと考えていた二人が立ち上がらなければならない程度には一大事だった。
「なんだよ? 私がなんか間違ってるのかよ?」
「間違ってないヨ! でも、勘違いしてるネ!」
「そこの坊やはまだ教育実習生だ!」
「あ!? 教育実習だと? そうなの?」
千雨がネギに目線を合わせながら尋ねた。
「はぁ、はい、そうですけど……?」
ネギが小さく頷いた。
「それならそうと先に言えよ! 教育実習なら別に文句はねえよ。まだ私達と一緒に学ぶ側ってことだろ。そういうことならうちのクラスが一番良いな。変人の集まりだから苦労するだろうけど、頑張れよ少年。私がクラスで一番まともだから何かあったら愚痴くらいは聞いてやるよ」
『えっ!?』
クラスメート達が瞠目した。
「ええーっ、あなたが一番まともなんですかっ!?」
ネギの顔が青ざめていた。目の輝きは既に消えていた。
「違うぞ、坊や! まともな奴なら他に……」
ウェールズにトンボ返りされては困るとフォローしようとしたエヴァンジェリンがクラスを見渡して言葉を濁した。
「……とにかく、コイツが一番まともだということだけはあり得ないから安心しろ!」
エヴァンジェリンがごまかすように叫んだ。
「そうヨ! まともな人……? オーノー……」
エヴァンジェリンと同じ理由でフォローに回ろうとした超鈴音が手のひらで顔を覆って項垂れていた。
「二人とも何言ってるのよ! まともな人くらい……あれ?」
明日菜がエヴァンジェリンと超鈴音の言葉を否定しようとしてクラスを見て首を傾げた。
「そ、そうですわ! まともな……あら?」
あやかも首を傾げていた。
「「私だけ!?」」
同じセリフを叫んだ二人の間で火花が散り始めた。
「ショタコンがまともぉ?」
「おサルさんには言われたくありませんわ!」
いつも通り、明日菜とあやかの喧嘩が始まった。条件反射的に囃し立てるクラスメート達もいつも通りだった。
「見ての通り、大変だと思うけど頑張れよ」
千雨がネギの肩をぽんぽんと叩きながら自分の席へと歩き始めた。
「貴様、何で無関係面してるんだ!? ほとんど貴様のせいだろ!」
エヴァンジェリンが半分くらい切れていた。
「長谷川サン! この坊主はまだ名前すら名乗ってないヨ! どうしてくれるネ!?」
超鈴音も割とマジ気味に切れていた。
「ちょうどいい。教師を目指してるんなら生徒の喧嘩くらい止めろよ」
千雨はそんな二人のことなど気にはしなかった。
「……お姉ちゃん、アーニャ、ボクはとても大変なところに来ちゃったみたいです……」
ネギが肩を落としていた。
しずなが手を叩いて、明日菜とあやかの喧嘩を止めた。手慣れたものだった。その様子を見ていたネギがしずなに尊敬のまなざしを向けていた。
全員が席についたのを確認して、ネギが自己紹介の続きを始めた。
「ボクの名前はネギ・スプリングフィールドです。
ハイライトが消えた目を見て、さっきまで騒いでいたほとんどのクラスメートは子供先生に優しくしようと決意していた。
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放課後の2-A教室にて。
千雨とツナミが壊れた洗濯機を運び込んでいた。さらにもう一台壊れた洗濯機を運び込み、最後に壊れたガスコンロを運び込んでいた。
ネギ・スプリングフィールドの歓迎会の準備中だった。
ザジは天井に掴まりながら折り紙の輪飾りを画鋲で貼り付けていた。
他の者も各々、教室内を飾り付け、子供先生と買い出しに出かけた明日菜が戻ってくるのを待っていた。
「あんた達、今日もやるわけ?」
あきれ顔の釘宮円が千雨とツナミに話しかけていた。
「あぁ、確かお隣さんだろ?」
ノルウェーだったはずだからなぁ、と千雨が呟いた。
「あんた達見てると自信なくすわー、最初に動画見たときなんか麦茶吐いたしさー」
自由って凄いわ、と呟きながら柿崎美砂が壊れたガスコンロをコンコン叩いていた。
「衝撃的だったよねー」
椎名桜子が洗濯機の蓋を開けたり閉めたりしていた。
「ザジー! 準備するよー」
ツナミがザジを呼んでいた。
「朝倉、司会よろしくなー」
掃除用のホウキを3本立てた千雨が朝倉和美を呼んだ。
「任せといて!」
朝倉が笑いながら親指を立てた。朝倉の右肩には相坂さよがぷかぷか浮いていた。
千雨とツナミとザジの3人がジャージに着替え始めた。
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一方その頃、ネギと明日菜は。
「あああ、あんたやっぱり超能力者だったのねー!!」
宮崎のどかを助けるために魔法を使うところを見られたネギが明日菜に首根っこを掴まれ、木陰に連れ込まれていた。
「い、いや、ちがーっ!」
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数分後、教室にネギと明日菜が戻ってきた。
――パンパンパパーン!
大量のクラッカーが二人を迎えた。柿崎だけはクラッカーではなくシャンパンらしきものを開けていた。
『ようこそ! ネギ先生ーッ!』
クラスメートが声を揃えて叫んだ。
「へ……?」
ネギはぽかんとしていた。
明日菜はハッとした顔をしていた。
「あっ、そーだ! 今日あんたの歓迎会するんだっけ……忘れてた!」
そうしてネギの歓迎会が始まった。
始まってすぐにのどかがネギに図書券を渡したり、対抗意識を燃やしたあやかが巨大なネギの胸像を渡したりしていた。そしてまた明日菜とあやかの喧嘩が始まりそうになっていた。
「はいはーい! ネギ先生! ここで一曲演奏してる子達がいるから黒板の方に注目! 朝遅刻してきた2-Aが誇る自由人にしてネットアイドル3人娘、ちう、なみ子、レインでーす!」
ドアが開き、ジャージ姿の3人が入ってきた。千雨はギターを抱えて、向かって一番左のホウキの前に、業務用革手袋を付けてモンキーレンチを持ったザジが真ん中の洗濯機の前、ツナミが工事現場用の巨大なトンカチを肩に抱えながら右のガスコンロの前に立った。
「「世界は私達の登場を待っている!」」
千雨とツナミが叫んだ。ザジが洗濯機の蓋をバンと閉めた。
「ボニー・タイラーの」
千雨がコードをアンプに繋いで弦を弾いた。
「Total Eclipse of the Heart!」
ツナミがガスコンロを蹴っ飛ばした。
ザジが洗濯機の蓋でリズムを取りながらモンキーレンチを何度も叩きつけていた。ツナミはガスコンロの上の空っぽの鍋をかき混ぜていた。
ギターを奏でる千雨は普通に歌っていた。
間奏に入る前にツナミが巨大トンカチを肩に抱えて振り回し、大きく振りかぶった。そして、千雨のギターの音に合わせて、ガスコンロに叩きつけた。何度も何度も、一心不乱に。既に壊れて動かないガスコンロの形が変わるまで殴り続けていた。
ギター、洗濯機、ガスコンロで演奏するHurra Torpedoの完コピだった。
「ネギ先生、これからよろしくな」
「私達が一番常識人だからー!」
ザジは口を開かず小さく頭を下げた。
ネギの顔が絶望感に彩られていた。ベコベコに凹んだ壊れた家電を見ながら。
「気にするな坊や。あいつらは非常識ではないが常識人でもないからな」
「そうヨ。あれもノルウェーのバンドのコピーネ。楽しそうだったからという理由だけでやってるからネ! 肉まん食べるカナ?」
「あっ……はい、ありがとうございます。あなた方は……エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさんと超鈴音さん。朝のこともありがとうございます! タカミチからもらった出席簿に『困ったときは相談しなさい』って書いてあって、本当に助かりました!」
それもまた仕方なし。高畑は千雨達が起こす面倒事をエヴァンジェリンが止める様子を2年近く見続けてきたのだから。
「私か? チッ、面倒なこと書きおって、文句言ってくる」
エヴァンジェリンが高畑の元へと歩いて言った。
「ネギ坊主、彼女たちはただ自由なだけネ。気にすると疲れるヨ?」
「は、はぁ、もう疲れてます」
ネギが疲れたような声を出した。
ガッシャンガッシャンうるさかった衝撃的な演奏のせいで、明日菜から頼まれた読心術のこともすっかり忘れていた。
「長谷川サン達のことで困ったらエヴァンジェリンサンに頼めばいいヨ。嫌がるけどネ! ネギ坊主、肉まん食べて元気出すネ!」
超鈴音がネギの背中をバンバン叩き、肉まんを一個手の上に乗せた。
「はい! ボク、頑張ってみます!」
ネギ達がそんな話している間に、千雨、ツナミ、ザジの3人は台車に壊しに壊した家電を積み込んで教室から運び出していた。
「チャペックー、階段よろしくー!」
「了解しましたー!」
チャペックが台車ごと持ち上げ、バーニアを吹かして一階まで降りていった。
そのまま3人と1台のロボットは粗大ゴミ置き場へ向かい始めた。
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一方その頃、ネギと明日菜は。
「おじいちゃん言ってました。わしらの魔法は万能じゃない。わずかな勇気が本当の魔法だって」
「……」
西日が差し込む階段で青春していた。
・千雨、誰よりも自由に生きている
・ツナミとザジ、自由人
・ネギ・スプリングフィールド、朝のうちにウェールズに帰りたくなっていたが、エヴァンジェリンと超鈴音のフォローでもう少し頑張ってみようと思い始めた
・超鈴音とエヴァンジェリン、千雨のせいで目的が果たせなくなりそうで本気で焦っていた
個人的には、Hurra Torpedoがカバーしたレディ・ガガのPorker Faceが好きです。