フォーサイスより愛を込めて(魔法先生ネギま!×EVOLIMIT)   作:瓶缶ペットボトル

14 / 28
麻帆良学園聖ウルスラ女子高等学校2-Dとドッヂボール


2003年2月21日

 2003年2月21日昼休み。

 午後一の体育のために2-Aの面々は屋上に向かっていた。

 

 集団からかなり遅れた最後尾では千雨がツナミとザジと話していた。

 

「前から思ってたんだけどさー、バレーを外でやるのおかしくない?」

「うん、おかしい。体育館が少なすぎるせい」

「回転レシーブできないよなー」

「できないねー」

「……できる」

 

 ザジが小さく親指を立てていた。

 

「擦り剥くからダメだ」

 

 一番最後に3人が屋上に着いてみれば、クラスメートは高校生達と一悶着を起こしていた。何やら売り言葉と買い言葉で乱闘騒ぎの一つでも起こしそうな雰囲気になりつつあった。

 

「いい感じに青春してるなー、やっちまえー!」

「私は知ってる。喧嘩はフリョーの華!」

「…………」

 

 ザジが万国旗を振り回していた。

 

「ハクシュン!!」

 

 ネギのくしゃみとともに屋上につむじ風が吹いた。

 

「どんな争いも暴力だけはダメです、アスナさん」

 

 今にも始まりそうになっていた喧嘩をネギが止めていた。

 

「「「ちっ」」」

 

 入り口近くで喧嘩を眺めようとしていた3人が舌打ちしていた。

 

「こうしたらどうでしょう。両クラス対抗でスポーツで勝負を決めるんです」

 

 ネギがちゃんと教師をやっている様子を千雨達はつまらなそうに見ていた。

 

「なぁ、ちょっと爽やかすぎないか?」

「NHKのドラマみたい」

「(こくこく)」

 

 3人がだらだら喋っている間に何が起こったのか、ネギを賭けてドッヂボール勝負をすることに決まっていた。

 

「……なぁ、こいつらバカなんじゃねーか?」

 

 人口密度の高いコートの半分を指差しながら千雨がツナミと話していた。

 

「生物学的に頭に血が昇りすぎてる。俗に言う、トサカに来てる」

 

 ツナミの隣でザジもこくこく頷いていた。

 

「あと一人足りないわ! あんた達! 誰か出なさいよ!」

 

 見学組が集まっている壁の前で明日菜が騒いでいた。

 

「よし! 私が出てやるよ」

 

「チサメもバカ?」

 

 立ち上がる千雨を見て、ツナミが呆れていた。

 

「一度でいいからドッヂボールってやってみたかったんだよなぁー」

 

 楽しそうに肩をぐるぐる回し、屈伸しながら呟いていた。

 

「…………えっ?」

 

 ツナミが信じられない顔で千雨を見た。ザジもツナミと同じような顔で千雨を見ていた。

 よく見れば他のクラスメート達も同じような顔をしていた。ついでに高等部の面々も信じられないような顔つきで千雨を見ていた。

 

「長谷川あんたドッヂボールやったことないの!?」

 

「ないよ」

 

 千雨が首を振りながらコートに入った。

 

「小学校の体育の授業でやったでしょ?」

 

「最初から外野で一度もボールに触ったことない」

 

「うっそでしょ!? 休み時間に友達ともやんなかったの!?」

 

「友達いなかったから誘われたことない」

 

 明日菜がサッと顔を背けた。明日菜だけではなく、コート内の全員が千雨から顔を背けていた。

 

「外から見てると簡単に取れそうに見えるんだよな」

 

「分かったから、もう何も言わなくていいから。とにかく、やるわよ!」

 

 麻帆良学園聖ウルスラ女子高等学校2-D VS 麻帆良学園本校女子中等部2-A、試合開始。

 試合開始に伴い、茶々丸が花火を打ち上げ、チャペックは曲芸飛行をしていた。

 

「チサメー! 頑張ってー!」

 

「うん、頑張る!」

 

 コートの外のツナミと話している間に、早々とネギが頭にボールを受けていた。が、弾かれたボールは明日菜がキャッチし、高等部の一人をアウトするという幸先の良いスタートだった。

 

「よろしいですわ! このケンカ絶対に勝ちますわよ!!」

 

「OK!」

 

「あううー、ケンカじゃないのにー」

 

 気合い十分なあやかと明日菜を見て、ネギが腕をぶんぶん振りながらわたわたしていた。

 

「行くわよ! 子スズメ達! 必殺……それっ」

 

 目つきが変わった高等部女子を前に、相対する中等部2-Aのコートは大騒ぎだった。誰も彼もが背を向けて後ろに逃げようとしていたが、ぎゅうぎゅう詰めでまともに動けない状態だった。

 本気の顔で投げられた優しいボールはいとも簡単に早乙女、風香、那波の3人をアウトにしていた。

 千雨がその様子を見て呆れた溜息を吐いていた。

 

「そこのやる気なさそうなメガネ!」

 

 さらに、高等部の英子がもう一投、溜息を吐いていた千雨に向かってボールを投げた。

 千雨は溜息を吐きながら左右に手を伸ばし、アウトになったのは千雨の右にいた朝倉と左にいた葉加瀬の二人に加えて、跳ね返ったボールが当たった村上と四葉の4人。

 

「えっ? あれ? 長谷川、今……?」

「は、長谷川さん……?」

 

 釈然としない顔で朝倉の葉加瀬の二人が千雨を見ていた。

 

「ん? どうかしたか?」

 

 千雨がなんの気負いもなく二人の顔を見返していた。

 

「あっ、いや……気のせいよね?」

「え、えぇ、おそらくは」

 

 いつもと変わらない顔の千雨を前に何も言えず、朝倉と葉加瀬の二人が顔を見合わせながら外野に出ていった。

 

「あのさー、今の見間違い? あのメガネ」

 

 英子が自分のチームの顔を見て確認した。英子のチームメイトは唖然としながら頷いていた。

 

「もう一回投げてみれば分かるわね……ほれっ」

 

 千雨は向かってきたボールの前に、左にいた春日の肩を掴んで引っ張った。

 

「あ゛!?」

 

 春日に当たって跳ね返ったボールの前に史伽を押し出した。

 

「はうっ!?」

 

「やっぱりそうだー! 長谷川! 私達を壁にしたでしょ!」

「なんて卑劣なことを!」

 

 既に外野に出た朝倉と葉加瀬の二人が叫んでいた。

 

「何するんスか!?」

 

「うぅ、ひどいですー!」

 

 詰め寄ってくる春日と史伽を見返しながら朝倉と葉加瀬を指差した。

 

「アウトになったんだから外野に行け」

 

「こ、こいつ!」

 

 春日が歯ぎしりしていた。

 

「お、覚えてろよー」

 

 史伽がボールの当たった場所を押さえながらコートの外に向かっていった。

 

「長谷川さん! 何やってるんですか!?」

 

 ネギが騒いでいたが千雨は気にせず、後ろを振り返った。

 

「えーと、次は、本屋と綾瀬でいいか。お前らもアウトになっとけよ」

 

「なんでですかー!?」

「ひ、ひどすぎますよー」

 

 千雨の後ろにいた二人がササッと千雨から離れていた。

 

「長谷川! あんた何やってんのよ!?」

 

 明日菜が騒いでいた。そして全員が千雨から距離を取っていた。

 

「お前ら阿呆かよ、人数多すぎてまともに動けねーだろーが」

 

「えっ……あっ!? ドッヂボールで数が多いのは全く有利じゃない……!?」

 

 明日菜が愕然としていた。ついでにネギも愕然としていた。

 

「あとさー、喧嘩売るなら相手を選べよ。なんで関東大会優勝チームと勝負しなきゃいけねーんだよ」

 

「ん? なに? 関東大会優勝って?」

 

「麻帆良ドッヂ部黒百合、関東大会優勝してる人達」

 

 千雨が相手コートを指差していた。

 

「マジで!?」

 

 明日菜が驚きに目を見開いた。

 

「ふっふっふ……バレてしまったようね。私達の正体は……」

 

 高等部の全員が制服を脱ぎ捨てた。

 でも誰も見てはいなかった。中等部2-Aはコートの後ろ半分に集まってしゃがんでいたからだ。

 

「いやちょっと待って。高校生にもなってドッヂボール!?」

「関東大会ってあいつらしか出なかったんと違う?」

「小学生で卒業しろしー」

 

 千雨とネギを除いた全員が集まってひそひそ話をしていた。

 

「麻帆良ドッヂ部『黒百合』! ……って、ちょっとあんたたち! こっち見なさいよ!」

 

 英子が癇癪を起こしながら地団駄踏んでいた。

 

「わーすごいですねー」

 

 唯一ネギだけが尊敬のまなざしでパチパチと拍手。

 

「笑うな! 小学生のときドッヂボールやったことなかったのかもしれないだろ。誰も誘ってくれなかったのかもしれないだろ。まぁ確かに違う校舎まで来て難癖つけてくる子供っぽい人達だけど、いろんな奴とドッヂボールやりたかっただけかもしれないだろ」

 

 千雨が黒百合の肩を持っていたが明らかに余計なお世話だった。

 

「あんたと一緒にしないでくれないかしら?」

 

 英子が頭が痛そうな顔で呟いていた。

 

「そ、そうね! 私たちが間違ってたわ! さぁ、続きよ!」

「そ、そうですわね! 私達が付き合って差し上げますわ!」

「なんてかわいそうな人達……そんなにゆがんじゃうなんて」

 

 明日菜、あやか、まき絵の3人が同情の視線を相手のコートに向けながら立ち上がっていた。

 

「だから違うって言ってるでしょ!」

 

「皆まで言うな。私には分かるから」

 

 再び千雨がフォローしたが逆効果だった。

 

「それが違うのよっ! このメガネ!」

 

 英子の全力投球を前に千雨が手をぶらぶらと振り、飛んでくるボールを下から優しく叩いた。

 

「超! ちゃんと捕れよっ! よっ」

 

「オッ!? 分かったネ!」

 

 山なりにふんわり浮かんだボールを超鈴音がしっかりとキャッチした。

 

「そのまま投げてやれ!」

 

「任せるネ!」

 

 超鈴音の一投で黒百合が一名アウト。

 

「見たかっ! これが私の力だ!」

 

 千雨がドヤ顔で英子を指差した。

 

「いや、長谷川じゃないでしょ」

 

 明日菜が呆れていた。他の面々もうんうんと頷いていた。

 

「今のは私の力ダヨ!」

 

 超鈴音が自分の指差しながら叫んでいた。

 

「……見たかっ! これが2-Aの団結力だ、友情パワーの勝利だっ!」

 

 千雨の言葉に一瞬誰もが言葉を失った。

 そして、一呼吸置いて。

 

「「「ふざけんなっ!」」」

 

 朝倉、春日、史伽が声を揃えた。

 

「私達を犠牲にしておいてよくもまぁぬけぬけとっ!」

 

 葉加瀬がおでこに青筋を立てていた。

 

「こ、このメガネ! すげームカつくわっ!」

 

 英子も額に青筋を立てていた。

 

「……あいつらは尊い犠牲になったんだ。あいつらの死を無駄にするなっ! この勝負絶対に勝つぞ」

 

『…………』

 

 誰も返事などせず、しらけた顔で千雨を見ていた。

 

「返事しろよ!」

 

「黒百合! さっさと長谷川に当てろよー」

 

 春日が黒百合にヤジを飛ばし始めた。

 

「長谷川を狙うですー!」

 

 史伽もそうだった。

 

「柿崎! くぎみー! 桜子!」

 

「「「オッケー!」」」

 

 くぎみーはやめて、と釘宮円が言いつつも、両手にポンポンを持ちながらポーズを取った。

 

「「「フレーフレー! 黒百合!」」」

 

「こっち応援しろよ!」

 

 2-Aチアリーダー3人娘の応援を受け、高等部がさらに一投。

 

「次は古菲」

 

「ム!? 任せるアル!」

 

 千雨が浮かせたボールを古菲がキャッチ、古菲の投球でさらに高等部一人アウト。

 

「黒百合もっと真面目にやるッス!!」

「さっさと長谷川アウトにしてよ!」

 

 春日と朝倉が騒いでいた。

 

「なんなのよ! このメガネ! 性格悪そうな顔してこのっ!」

 

「大河内! 捕れよっ!」

 

「……凄い不本意だけど、はい」

 

「アウトになった奴らの仇を取るんだ!」

 

「……それって、こういうことだよね」

 

 千雨の真後ろから大河内アキラが全力投球、千雨の背中に向かって。

 

「よっと」

 

 それを見ることもなくひらりと一歩横にずれて千雨が躱していた。

 

「あっ」

 

 投げ終えたフォームのままアキラが唖然としていた。

 

「えっ、きゃっ!?」

 

 高等部さらに一人アウト。

 

「やるじゃないか、大河内。私が躱すことまで読んで投げてくれるとは……伊達に2年も同じクラスでやってないな」

 

「あのー、ゴメン」

「いえ、今のはしょうがないと思うわ」

 

 何故か謝るアキラ、それをドンマイとフォローする黒百合の一人。不思議な光景であった。

 

「忘れてたアル! 長谷川は背中に目が付いてるアル!」

 

「ついてねーよ! 勘でどうにかなるだろ」

 

「ドラはめくらせないヨ! ロン、槍槓、1000点ネ!」

 

「むー! スズネーのバカ!」

 

 コートの外からツナミが騒いでいた。

 

「黒百合何やってんのよっ! 長谷川一人くらいさっさとアウトにしてってば!」

「関東大会あんた達しか出てなかったんじゃないッスか!?」

 

「いやそんなことねーよ。麻帆良ドッヂ部黒百合って言えば、威力の高い速球と巧みなパス回しが武器の強豪チームなんだぞ。何よりも勝ちにこだわる姿勢がぶれなくて平気でえげつない作戦も取ることで人気が高い、ヒール役のチームみたいなもんだぞ。まともにやれば絶対勝てるのにわざわざ卑怯な作戦を取って自滅するのが様式美になってるしな」

 

『マジで!?』

 

 千雨の解説に黒百合が一番驚いていた。

 

「ヒール役という部分だけ同意しますわ!」

「長谷川に遊ばれてるじゃん」

 

 あやかも明日菜も最初の気合いはすっかり抜け果てて、ほとんど観客気分で眺めていた。

 

「ビビ! しぃ! 行くわよ! トラ――」

 

「トライアングルアタックかっ! 全員後ろに下がれ!」

 

「……こ、このメガネ女、さっきからなんなのよーっ! もう!」

 

 セリフを取られてイライラの溜まった英子が外野にボールを投げた。

 

「いや、トライアングルアタックって……ぷぷぷ」

「名前ださっ」

「くすくすー」

「ぷーぷぷ」

 

 祐奈、まき絵、アキラ、和泉がコートの後ろの方で笑っていた。

 

「名前のセンスはないが、恐ろしい技なんだ! 速球のパス回しで相手を囲って後ろからボールをぶつけるから躱す方法はない」

 

 そう言いながらもひょいひょいボールを躱し続けていた。

 

「躱してるじゃん!」

「躱してますわねー」

 

「いつトドメのボールが来るか分からないから恐ろしいんだよっと……よっと」

 

 さらにボールの速度は上がるが千雨はのんびり呟きながら躱し続けていた。

 

「パスばっかり回してないでさっさとアウトにしてくれよ」

 

 もう嫌になりつつ千雨はボールをよけ続けていた。

 

「なんで躱せるのよっ!!」

 

 英子の叫び声だった。

 

「ホントに背中に目付いてるんじゃないのっ!」

 

 ビビの叫び声だった。

 

「あーっ、思い出した! 麻帆良の竹取メガネだ!」

 

 しぃがボールを投げながら叫んでいた。

 

「竹取姫だ! 姫!」

 

 千雨の訂正が入っていた。当然ボールを躱しながら。

 

「麻帆良の妖怪メガネもでしょ」

 

 すごいわねー、と呟きながら明日菜が言っていた。

 

「妖怪博士だ!」

 

 再び千雨の訂正が入った。当然、ボールは躱し続けながら。

 

「あと、変形ポンコツロボットも長谷川さん達ですわね」

 

「それチャペックだろ!」

 

「ネットアイドル界の頂点に立つ3人娘もそうネ!」

 

「なんですって!? あいたっ!?」

 

 英子がしぃの投げたボールを捕れずに尻餅をついていた。

 

「自滅してやんの。珍しいミスだな、黒百合がパス回し失敗するなんて」

 

「パスじゃないわよ! おかしいんじゃないの、この妖怪メガネ! あんた達! このメガネはなんなのよもーっ!」

 

「まともに相手すると疲れる人です」

 

 長谷川さんがいるだけで碌なことにならないです、と夕映が呟いていた。

 

「ツナミさんもザジさんもいないから収拾つかないですー」

 

 のどかがわたわたしていた。

 

「ツナミー! ザジー! 見てるかー! どうだ私の活躍はー!」

 

 千雨がツナミとザジに手を振っていた。ツナミとザジも手を振り返していた。

 

「あのー、もういいですー。ボクのために争わないでください」

 

 ネギが疲れたような声を出していた。

 ネギの一言を認められないあやかが騒いでいた。

 

「つーかよー、私以外狙えばいいだけなんじゃねーの?」

 

 千雨が面倒くさそうに呟いた。事実、もう面倒くさくなっていた。

 

『ハッ!?』

 

 黒百合が今気付いたとばかりに目を見開き、ボールを持つ英子がキッと明日菜を見た。

 

「そ、そうね! 神楽坂明日菜! あんたそっちのメガネと似ててムカつくのよっ!」

 

「わ、私っ!? とばっちりじゃないのっ!」

 

 長谷川、あんた何とかしなさいよ! と明日菜が騒いでいた。

 

「しぃ!」

「はーい」

「必殺! 太陽拳!」

 

「――!! しまった、太陽を背にっ!?」

 

「相変わらずノリがいいな」

 

 千雨が呆れた顔で喋っていた。

 英子がアタックしたボールはしっかりと明日菜に当たっていた。

 

「あたっ!?」

 

「もう一発! メガネの恨みよっ!」

 

 明日菜にぶつかって弾かれたボールをもう一度英子がアタックしていた。

 

「ったくしょうがねえなぁ」

 

 明日菜に当たるはずだったボールを千雨が面倒くさそうに捌きおとした。

 

「あっあれ? ボールが来ない……?」

 

「わりい、アウトになっちまった」

 

「長谷川……? あ、ありがと」

 

 千雨の足元に転がるボールと千雨の掌を交互に見ながら明日菜が呟いていた。

 コート内が一瞬だけ静寂に包まれた。

 

『やれば出来るじゃねーか!』

 

 黒百合を応援していた面々が英子を褒め称えていた。

 一際、朝倉、春日、史伽の声が大きかった。

 

「メガネ以外もおかしくない?」

「そうね、全員おかしいわね!」

 

 英子としぃがひそひそと話していた。

 

『ざまあみろ、長谷川!』

 

 春日、朝倉、史伽の三人が輪になって小躍りしていた。途中からは葉加瀬も加わってくるくる回っていた。

 

「おかしいだろっ! 今のは私を褒めるところだろ」

 

 千雨が地団駄を踏んでいた。

 

「明日菜の仇を取るぞー!」

『おー!』

 

 祐奈の掛け声に全員が腕を上げていた。

 

「私もいるだろ」

 

 千雨の言葉は全員から無視されていた。

 

「長谷川さんは尊い犠牲になったんですわ」

 

「みんな、頑張るえー!」

 

「長谷川、外野行きなさい」

 

 アキラがコートの外を指差した。

 

「分かったよ、神楽坂、立てるか?」

 

 千雨が明日菜に手を差し伸べていた。

 

「ありがと……悪い奴じゃないんだけどなぁー、何故かムカつくのよねー」

 

 明日菜は千雨の手を取り、外野に歩いていった。

 

「なんなのよ! このやりきれない感じは!?」

 

 一連の流れを全部見ていた英子が騒いでいた。黒百合全員が疲れ果てたような顔をしていた。

 

「いつものことヨ!」

 

「いつも通りアル!」

 

「これがいつも通りなんですかー!? ボ、ボク、あの怖そうなお姉さん達のクラスにいってもいいですよ?」

 

 長谷川さんがいないだけで十分すぎる、というのがネギの結論だった。

 

「駄目よ! 高畑先生がまた胃潰瘍になっちゃうでしょ!」

 

「ボクが胃潰瘍になっちゃってもいいんですかー!?」

 

「あんた達も苦労してるのねー」

 

 英子がしみじみと呟いていた。

 

「にゃー、ネギ君の代わりに長谷川あげるよー」

 

『いらないわよ!』

 

 黒百合の大合唱が響いた。

 

「ピーッ! 時間切れです。公式ルールにより、5分で試合終了です」

 

 チャペックが喋った。

 

『えっ!?』

 

 コート内の全員がチャペックに注目した。

 

「中等部2-A、11人。高等部2-D、7人。中等部2-Aの勝利です」

 

「なんなんですか、この不完全燃焼感は?」

 

「いつも通りネ……ハァ、長谷川サンが出しゃばってくるといつもこうヨ」

 

「アスナが長谷川をチームに引っ張ってきたせいアル!」

 

「私のせい!?」

 

「私達ボール触ってないんやけど?」

 

 和泉の言葉に数名が頷いていた。というよりも、コート内でボールに触ったのは超鈴音と古菲とアキラ、あとは最初に当てられたネギだけだった。

 

「もう一勝負いたしますか?」

 

「よーし、やってやるか」

 

 千雨がコートの中に入ろうとしていた。

 

「長谷川は出なくていいわよ!」

 

 千雨は明日菜の手でコートの外に出されていた。

 

/////*****/////

 

 11人対11人で2回戦。

 

 千雨のいない2回戦はまっとうなドッヂボールになり、きゃっきゃうふふ和気藹々と勝負は進んでいった。最初だけだったが。

 

「神楽坂明日菜! 投球フォームがなってない! ちゃんと腰を入れなさい!」

「は、はいっ!」

「ボールから目をそらすな! よく見なさい! 今のは捕れるボールだったでしょ! 前髪上げなさい!」

「ひー、怖いですー」

 

 いつの間にか黒百合による熱血的指導が始まっていた。

 

「ていうかー」

 

 祐奈が困ったような顔でボールを投げた。

 

『黒百合めっちゃ強いっ!!』

 

 中等部2-Aが声を揃えて叫んでいた。

 

「当たり前でしょ! 関東大会優勝よ!」

 

「長谷川は簡単そうにやってたのに出来ないッス!」

「トライアングルアタック、躱せませんわ!」

 

 まき絵のリボンも和泉のシュートも、古菲と超鈴音の少林ドッヂボールも出ないまっとうな試合の結果は、黒百合の圧勝だった。

 

 メンバーを変え4セットまで続けて、終わる頃には。

 

「なかなかやるじゃない」

「あんたたちもね!」

 

 英子と明日菜ががっちり握手をしていた。

 他の面々も爽やかに握手を交わしていた。

 

 図らずも、ネギが思い描いた通りに青春していた。

 

 千雨は、というとコートから追い出されてザジの膝枕でふて寝していた。ツナミはエヴァンジェリンと茶々丸とともにお茶会をしていた。

 

/////*****/////

 

 その後、麻帆良ドッヂ部黒百合は、ヒール色を払拭し、正々堂々全国大会で優勝した。

 

 めでたしめでたし。




・千雨、誰よりもはた迷惑
・ネギ、千雨のいないところでは原作通り
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。