フォーサイスより愛を込めて(魔法先生ネギま!×EVOLIMIT)   作:瓶缶ペットボトル

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期末試験編(1)


2003年3月14日

 表向きには長期出張の増えた高畑の代わりに、噂では心労続きで胃潰瘍になったという高畑の代わりに子供先生ネギ・スプリングフィールドが担任になってから早1ヶ月が経とうとしていた。

 少しずつ春の暖かさが感じられるようになった3月中旬、最初の頃は頼りなかったネギも少しずつ少しずつ、教師らしく成長していた。問題児揃いの2-A担任として、日々の騒動にも慣れつつあった。

 

 ネギが頑張ればクラスの誰かがふざけ出し、ネギが落ち込めば生徒が真面目になる、そんなことを繰り返しながら、1年間の総まとめである学年末試験が迫っていた。

 

 他のクラスが試験前でピリピリすればするほど、2-Aはことさらに明るく騒ぎ、今日に至っては教室内でバカレンジャーがストリップショーを始めだした程だった。

 千雨はやっぱうちのクラスまともじゃねぇなぁと呟きながら、ノートパソコンを開いて途中だったプログラミングの続きを始めていた。授業終了までうんうん唸りながらディスプレイを眺めて、ツナミに相談するか、と溜息を吐いた。千雨も勉強する気などさらさらなかった。3日後には試験が始まると分かっていても放課後はいつものように、エヴァンジェリンに大東流合気柔術の稽古をつけてもらうつもりだった。

 

 その日の夜、千雨がエヴァンジェリンとの稽古から帰ってきた637号室、中にはザジしかいなかった。

 

「ただいまー」

「……おかえり」

 

 コートを脱いでハンガーに掛け、日傘を机の横に引っ掛けてから、千雨がカレンダーに目をやって首を傾げた。カレンダーから同じポーズでちうが千雨に笑顔を向けていた。

 

「あれ? 今日大学じゃないよな。ツナミは?」

 

 ザジがメモ用紙を一枚千雨に見せた。

 

「なにぃ!?」

 

 メモには、ツナミの字で『バカレンジャーと図書館島に行ってくる、遅くなるかもー』と書かれていた。

 千雨が脱いだコートをもう一度羽織り、机に掛けた日傘を手に取った。

 

「ちょっと図書館島に忘れ物したから行ってくる」

 

 出かけようとした千雨の袖をザジが引っ張っていた。

 

「…………ご飯」

 

「……分かった分かった」

 

 つぶらな瞳のザジがお腹をぐぅぐぅ鳴らしていた。

 千雨がまたコートを脱ぎ、日傘を置いて、エプロンを着けた。

 

/////*****/////

 

 一方その頃、ツナミはというと。

 

「罠は走り抜ければ大丈夫なのー」

 

 本棚の上を走り回っていた。

 

「待って欲しいのです!」

「ぎゃーっ! ツナミ、待ちなさいよー!」

「ツナミ殿が起動させた罠が全部拙者達にっ!?」

「いやーん! 本棚倒れてくるよー!」

「まき絵さんっ!? ラス……あっ、駄目なんだ!」

「アイヤー!!」

「くーへ、凄いなぁ」

 

 どこからともなく飛んできた弓矢は楓が全て叩き落とし、倒れてきた本棚は古菲が蹴り飛ばしていた。

 

「生物学的に、すっとろいぞー! 者ども、早くこーい!」

 

 ツナミがはるか先から手をぶんぶん振っていた。

 

「……誰ですか、ツナミさんを呼んだのは?」

 

 夕映が後ろにいる全員の顔を見回した。

 全員の視線が明日菜に集まった。

 

「……だって、あの3人の誰かがいれば大丈夫だって思っちゃうでしょ! ちょうどツナミと会ったから誘ったのよ! 長谷川よりはマシでしょっ! たぶん……そんなことないか、ないわね、ゴメン!!」

 

 明日菜がそっぽ向いて腕を組み、言い訳を始めていたが最後には本気トーンで謝っていた。

 

「なんとなく無敵っぽいけどさー」

 

 まき絵が散らばった本を拾い集め一か所に重ねながら呟いた。

 

「あながち間違ってないでござるよ。これでツナミ殿がいるところまでは安全に行けるでござる」

 

「でも、困るアル!」

 

 楓と古菲がぶつぶつ言いながら歩き始めた。

 

「ネギ君、行くえー?」

 

「あっ、はい!」

 

 木乃香がネギの手を引いて楓と古菲の後ろを歩き始めた。

 

「トラップが発動する前に走り抜けるなんてでたらめです」

「でたらめなのは前からでしょっ」

「だよねー」

 

 溜息を吐きながら、夕映、明日菜、まき絵の3人が最後尾に付いていた。

 

「むー! 遅すぎる! Рататуй Звезда?」

 

 近くの本棚からロシア語の本を取って読み始めたツナミが頬を膨らませていた。ラタトゥイユの星。はるか昔、一皿のラタトゥユを分け合って食べた8人が呪われた、そんな話だった。ツナミは本を読みながら一人で先に進み、ツナミの後ろには発動したトラップに襲われ続ける7人が叫び声を上げていた。

 

/////*****/////

 

 女子寮の637号室では、千雨とザジの二人が夜ご飯を食べ終わり、ほっと一息ついてのんびりしていた。

 

「……行かないの?」

 

 ザジがゆっくりしている千雨を見て不思議そうに言った。

 

「あっ! そうだった、行ってくる!」

 

 千雨がコートと日傘を掴んで部屋を飛び出した。

 

/////*****/////

 

 一方その頃、もう一人図書館島に向かう者がいた。

 

「お嬢様ーっ! 待っていて下さい!」

 

 桜咲刹那が走っていた。

 

/////*****/////

 

 走り続けた千雨がようやく図書館島にたどり着いていた。

 

「ツナミー! 待ってろよーっ!」

 

 日傘を振り回しながら、どこから入るんだこれ、と騒いでいた。

 

「あれっ!? 長谷川!」

 

 ついさっき、バカレンジャー達との連絡が途絶えてパニクっていた早乙女ハルナと宮崎のどかの二人が救いの光を見るような目つきで千雨を見ていた。

 

「おっ!? 早乙女と本屋かっ! ツナミはどこだっ!!」

 

「大変なのよ! バカレンジャー達が、魔法の本を探して行方不明に!」

 

「な、なにぃ!? どこだっ! どこに行ったんだ!」

 

「ここよ、ここで連絡が途絶えて!」

 

 図書館内部の地図を指さしていた。

 

「分かった! ちょっと行ってくる!」

 

 千雨が地図をよく見ずに図書館の中に入ろうとして、ハルナとのどかの二人に肩を掴まれていた。

 

「待ってよ! クーちゃんと楓もいたのに駄目だったんだよ! 一人で行くなんて無茶だから!」

 

「そ、そうか。ちょっと取り乱した。誰か、誰かいねえのか!」

 

「高畑先生呼びますー?」

 

 のどかがおろおろしながらも電話をかけようとしていた。

 そんなのどかの後ろに誰かが飛び降りた。

 

「長谷川さん!」

 

「桜咲かっ! 助かった、ツナミを助けに行くぞっ!」

 

「えっ? あっ、はい!」

 

 お嬢様、待っていてください、と呟きながらも刹那が頷いていた。

 

「いやいや、あんたどこから降ってきたのよ……?」

 

 ハルナがのどかの後ろの木を見上げながら唖然としていた。

 

「じゃ、行ってくる! お前らも来るか?」

 

「えっと、どうしようか?」

 

「うーん、私達も行った方がいいでしょうか?」

 

「足手まといなら来なくていい」

 

「そうですね、一般人では危険かもしれません」

 

「なにぃ!? 私は桜咲が止めても行くからな!」

 

「「「えっ」」」

 

 刹那、ハルナ、のどかの3人が千雨を見つめていた。

 

「いえ、長谷川さんを一般人だとは思いませんが」

 

「長谷川は一般人じゃないでしょーが!」

 

「そ、そうですー」

 

「いや、私は自他とも認める一般人だから」

 

 これだから変人は分かってねえな、と呟きながら図書館の裏口の方へ歩き始めた。

 

「「「…………」」」

 

 3人とも千雨の言葉に若干イラっときていた。

 

「何やってんだ? さっさと行くぞ」

 

「はいっ」

 

「いやちょっと待ってってば! あんた達どこに行くか分かってるの?」

 

 ハルナが呆れた顔で千雨と刹那を見ていた。

 バカレンジャー達が行方不明になったことも実は心配せずとも大丈夫なのではないか、とようやく思い至る。バカレンジャー達にはツナミ・カラニコフがついているではないか、と。

 

「分からない!」

 

「そ、そういえば……すみません、取り乱しました」

 

 刹那がぺこりと頭を下げた。

 

「大丈夫だ! 勘でどうにかなる!」

 

「なるわけない――とも言い切れないんだよなぁ、長谷川は」

 

「ドラ一枚めくるぞ!」

 

「「はぁ」」

「どうぞ」

 

「ツナミがいないと寂しい」

 

 千雨がしょんぼりしていた。

 

「あのー、ここですー。地図、持っていきますか?」

 

 のどかは刹那に図書館内部の地図を見せていた。バカレンジャーが行方不明になった位置にハルナが丸印を書き込んでいた。

 

「遠いですね」

 

「ああ……ん? いや、これなら……」

 

――――バササササッ。

 

 千雨が全ての地図を手早くめくりながら何かに気付いた。

 

「うん、行けるな。これなら5分で行ける」

 

「えっ!? いや、長谷川何言ってんの? ユエ達は2時間かけて行ったんだけど?」

 

「桜咲! 私を信じろ!」

 

「それは無理です」

 

「なんで!?」

 

「いや、長谷川さんを信じろって」

 

「無理よねぇ」

 

「そ、そうですねー……あ、ごめんなさい」

 

「ふーんだ! 私一人で行くからいいよ。桜咲も2時間かけて行けばいいんだっ。私は5分で行くけどなっ!」

 

 誰にも信じてもらえなくて千雨がふて腐れていた。

 

「わ、わかりました! 行きます行きますから、すねないでください!」

 

「いやだから、5分じゃ無理だって」

 

「うん、無理だよー」

 

「行ける! ツナミが今も私を待ってるんだ! 急ぐぞ、桜咲!」

 

「は、はい。あの、トランシーバとか借りてもいいですか?」

 

「うん、どうぞ」

 

「桜咲! ついてこい!」

 

――DAAAASH!

――――DAAAASH!

 

 千雨と刹那が一気に走り出した。刹那は千雨について行ってるだけだが。

 

「「はやっ!」」

 

「あの! 長谷川さん! どこに向かってるんですか!?」

 

「地下11階までショートカットだ! とべっ!」

 

 千雨が地上の吹き抜けから何のためらいもなく飛び降りた。刹那の手を掴みながら。

 

「うそーーーーっ!」

 

 あまりの出来事に刹那の顔が引きつり、未だ誰にも見せたことがない羽を出すべきか出さざるべきか迷っていた。

 

「まじでええぇぇっ!?」

 

「飛び降り自殺!?」

 

 ハルナとのどかが吹き抜けまで走ってきて下を覗き込んだ。そんな二人の間に何かが飛んできた。

 

――BYUUUUN!

――GASHY!

 

 音がしたところを見てみれば、割と見慣れたものが手すりにしっかりと引っかかっている、よくよく見れば千雨がいつも持ち歩いている日傘の柄だった。しかも、柄の中程から釣り針の返しのようなものが飛び出し、手すりにがっちりと突き刺さっていた。そして日傘の柄の先からワイヤーのようなものがずっと下まで伸びていた。

 

「フック銃!? 先に言って下さいよ!」

 

 下の方から刹那の叫び声が響いていた。

 

「ええーっ、ないわー」

「長谷川さんの日傘ってワイヤー銃だったの?」

 

 ハルナとのどかが呆然として手すりの前に座りこんでいた。

 クラスメートの飛び降り自殺の目撃者とならずに済んだことに一安心して。

 

「同じ人間だと思えないんだけど。のどかどう思う? 長谷川っておかしくない?」

「……あの傘かっこいいですー。私も欲しいかも」

「それはちょっと分かるけどさぁ」

 

「早乙女ー! 本屋ー! これから地下11階に入るからーー! オーバー!?」

 

 千雨の叫び声が二人の耳に届いた。

 

「りょーかいーー! オーバー!」

 

 ハルナが吹き抜けの下に向かって叫び返した。

 

「トランシーバーいらなかったみたい」

「でたらめすぎるわ」

「長谷川さんはなんなんだろう?」

「ツナミっちが言ってたけど、2-Aの疫病神だってさ。周りの人間を振り回すだけ振り回して自分は元気っていう、なんかもうね」

「あー、ちょっと納得」

「おかしいわね、長谷川って1年のときはもっとまともじゃなかった?」

「うん、まともだったと思うよ」

 

 手すりに背中を預けたままハルナとのどかが額を押さえながらぶつぶつと話し続けていた。

 

/////*****////

 

 千雨と刹那が飛び降りた頃、地下11階では。

 近衛近右衛門が腰を叩きながら大きく開いた穴を覗き込んでいた。

 

「ふうー、まったく困ったもんじゃい」

 

 近衛近右衛門の隣にローブ姿のうさんくさい優男、アルビレオ・イマが陽炎のように現われた。

 

「楽しんでいるところ申し訳ありませんが……さらに二人ほど向かってきていますよ、コノエモン」

 

「なんじゃと? 早乙女君と宮崎君かのう?」

 

「いいえ、長い竹刀袋を持ったサイドテールの子と、日傘を持って「ツナミー!」と叫んでいる眼鏡の子です」

 

「うーむ、刹那君と長谷川君か。どうしたもんかのう?」

 

 隠れる場所を探していた。

 

「ああ、それと、あと3分ほどでこちらまで着くかと」

 

 フフフ、と笑いながら喋っていた。

 

「えっ? 嘘じゃろ? 早すぎるんじゃないかのう?」

 

「ショートカットをしてきまして、いやはや、驚きました。まさかあのようなルートがあったとは」

 

「ショートカットじゃと? そんなルートないじゃろ」

 

 近衛近右衛門が考え込んでいた。

 

「いえいえ、地上から飛び降りてきましたよ」

 

「……え、嘘じゃろ?」

 

「日傘の子なんですが、あの子の持ってる日傘がフック銃だったようですね」

 

「……だから嘘じゃろ?」

 

「いえ、本当ですよ。タングステンワイヤーで最大距離は50メートルほどだそうです」

 

 ……ナミーー……ツナミーどこだー、ツナミー! 徐々に声が近づき始めていた。

 

「……3分あるんじゃなかったかのう?」

 

「罠の中を走り抜けているようです。おや、柄を取り外した日傘で全ての弓矢を捌き落してますね」

 

「ふうむ。困ったもんじゃのう」

 

 ひげを撫でつけながらアルビレオ・イマに視線を向けた。が、姿を消し始めていた。

 アルビレオ・イマが完全に姿を消すと同時に、二人が走り込んできた。

 

「ツナミはどこだーっ!」

 

「あっ、学園長!」

 

「コラァ! ジジイ! ツナミをどこにやった!?」

 

 千雨が学園長のひげの先を掴みながら詰め寄っていた。

 

「えっ!? 長谷川さん、ちょっと!」

 

「まぁまぁ、二人とも落ち着くんじゃ」

 

「これが! 落ち着いていられるかっ! ツナミはどこだっ!」

 

「ふむ、ツナミ君達なら、あの穴の下じゃよ」

 

 学園長が後ろの穴を指差した。

 

「なにぃ!? 待ってろよ、ツナミ! 今行くぞーっ!」

 

「待つんじゃ! 長谷川君! 話を聞かんか」

 

 せめてひげを離すんじゃ! と学園長が慌てた。

 

「そうですよ、長谷川さん! 落ち着いて!」

 

「そうそう、木乃香も穴の下におるぞ?」

 

「お嬢様っ! 待っていて下さい! 今行きますっ!」

 

 飛び込もうとする刹那の肩を千雨が掴んだ。

 

「お約束じゃが、これこれ! 刹那君も待つんじゃ! 儂の話を聞いてからにせんか?」

 

 だからひげを離せというのに! と学園長が慌てていた。

 

「手短にな」

 

 パッと千雨がひげから手を離した。

 

「穴の下はな、強制勉強部屋じゃ……儂らはタコ部屋と呼んでおるんだがのぅ」

 

「やな名前だな」

 

「ここはな、『読めば頭が良くなる魔法の本』を探しに来た不良学生をとっ捕まえて試験までみっちり勉強させるための部屋なんじゃよ」

 

「な、なんだってー!? いや、ちょっと待って、読めば頭が良くなる魔法の本って何? そんなのあるわけないじゃん」

 

 馬鹿馬鹿しい、と千雨が鼻で笑い飛ばした。

 

「えっ? 長谷川さんは知らないんですか? バカレンジャーの皆さんはその本を探しにここまで来たと言う話ですが」

 

「はぁ? バカかよ? そんなのただのズルじゃん。そもそもあるわけねーだろ」

 

「お、おっしゃる通りですが」

 

 千雨に正論を言われて刹那がばつの悪そうな表情になっていた。

 

「うむ。長谷川君の言う通りじゃ、ズルはいかん。実は、読めば頭が良くなる魔法の本ならあるんじゃがな」

 

「あんのかよっ!」

 

「木乃香達にはそれを読んでもらうんじゃよ。試験日までみっちりと、な。朝6時起床夜10時就寝。50分間の読書と10分間の休憩を1コマとして1日11コマじゃな。試験前日の夕方5時に地上行きのエレベータの電源が入るから日曜日までじゃな」

 

「「…………おう」」

 

 勉強嫌いの千雨と刹那がうんざりした顔になっていた。

 

「その魔法の本って教科書と参考書なんじゃねーの」

 

「その通りじゃよ。全学年全単元、全成績の学生に対応可能な参考書を集めた図書室じゃからな」

 

「……あー、うん、そうか」

 

「あー、あははは」

 

 二人が苦笑いをしつつ顔を見合わせた。

 

「ん? ツナミと近衛はそんなの読まなくても大丈夫だと思うんだけど?」

 

「そ、そうですね」

 

 暗に二人だけでも解放しろ、と目力を込めて学園長を睨みつけた。

 

「そうじゃな。だが、駄目じゃ。まったく、二人は他の者に勉強を教える立場のはずじゃが……悪ノリして魔法の本なぞ探しにきおって! 別に儂らは全員が真面目に勉強しろというわけじゃない。特に今回の子達は勉強以外に打ち込んでいるものがあるからのう。じゃがな! ズルしてテストの点だけ取ろうなんていう悪い子はおしおきじゃ!」

 

「……ま、もっともだな」

 

「……たしかに」

 

「そういえばさぁ、何で今回に限ってそんなことやってんだ? テストでうちのクラスがビリなんていっつもじゃん? 相坂の奴は全教科0点だししょうがないだろ」

 

「えっ? 長谷川さん知らないんですか?」

 

「うん、知らないけど?」

 

「今回のテストで2-Aが最下位を脱出したらネギ君が正式な教師になるからじゃろ?」

 

「そうなのかぁ……私にゃ関係ないな」

 

「えっ? そうなんですか? えーっと、最下位のクラスは解散で成績が悪いと小学生からやり直しなのではなかったのですか?」

 

「桜咲、お前バカだったんだな。そんなことあるわけねーだろ」

「……刹那君はどこからそんな話聞いたんじゃ? そんなことするわけないじゃろ?」

 

 千雨が呆れていた。学園長も呆れていた。

 

「えっ? いや、はい、言われてみれば確かに」

 

 刹那が恥ずかしくなってもじもじしつつ二人から顔を背けていた。。

 

「ん? ちょっと待てよ、普通にネギ先生を教師にしてやればいいだろうが」

 

「その予定じゃが?」

 

「うん?」

「は?」

 

 千雨と刹那がぽかんとした顔で学園長を見ていた。今までの話は一体なんだったんだろう、と思いながら。

 

「何を勘違いしとるか知らんが……特に問題なければ来年度から正式採用の予定じゃよ?」

 

「2-Aが最下位だったらどうなるんだよ」

 

「4月から新田君に担任を代わってもらおうかと思っとるんじゃが、ネギ君は副担任かのう……最下位脱出したら引き続きネギ君に頼もうと思っとるよ」

 

「ふーん、私らにはあんまり関係なかったな」

 

 別に新田なら新田でもいいや、と千雨が呟いていた。

 

「えっ!? そうですか?」

 

「それで、二人ともどうするんじゃ? その穴に入れば勉強部屋に直行じゃよ?」

 

「入るわけねーだろ!」

 

「そ、そうですね。えっ!? 長谷川さん入らないんですか? カラニコフさんは勉強部屋みたいですけど?」

 

 刹那が驚きで千雨を見ていた。

 

「ズルしようとしたんならしょうがないだろ?」

 

「それはそうなんですが」

 

「うーむ、そうか。入っとった方がいいと思うんじゃが」

 

「なんでだよ?」

 

「木乃香から聞いたんじゃが、バカレンジャーというんだったかのう?」

 

「ん?」

 

「はい?」

 

「……何人入れ替わるか楽しみじゃな」

 

 学園長が悪い顔でフォフォフォと笑っていた。

 

「「!?」」

 

 刹那と千雨が顔を見合わせた。

 

「や、やばいぞ!」

「そ、そうですね!」

「桜咲! 絶対入るんじゃねーぞ!」

「なんでですか!?」

「なんでってそりゃ、桜咲が入ったら私がバカレンジャー入りするかもしれないだろ!」

「ハッ!?」

 

「しっかり勉強するんじゃよ?」

 

 二人は学園長の言葉を最後まで聞かずに来た道を戻り始めていた。

 最後は日傘のワイヤーを巻き取りながら吹き抜けを昇っていった。

 

「あっ! 戻ってきた!? えっ? まだ15分しか経ってないけど?」

「本当に5分で行ってきたのかなー?」




図書館島に同行するのは千雨ではなくツナミになりました。
なんとなく。
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