フォーサイスより愛を込めて(魔法先生ネギま!×EVOLIMIT) 作:瓶缶ペットボトル
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辞令 ネギ・スプリングフィールド
2003年4月2日を以て
麻帆良学園中等部教諭に任命す。
麻帆良学園学園長 近衛近右衛門
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春休み明け、始業式も終わった午後のこと。
長谷川千雨とエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは週3日間は訪れる道場で汗を流していた。
千雨は未だ空気投げを覚えきれず、多くても週1回、時には月1回程度の頻度で遊びに来るツナミ・カラニコフよりも劣る技量でありながらも、大東流合気柔術を学び続けていた。
3時間程でこの日の稽古は終了になった。
千雨は畳の上で大の字になりながら深呼吸を続けていた。
「最近、貴様の血も不味くなったな」
エヴァンジェリンが扇子で扇ぎながら千雨を見た。責めるような視線で不機嫌そうな呟きだった。
「……それ、私のせいか?」
眼帯を外し、タオルで顔の汗を拭いながら千雨が心外だという声をあげた。汗を拭き取ったあとで再び右目に眼帯を付けてエヴァンジェリンを見つめた。
「これ以上不味くなるようなら……破門だな」
「もうこれ以上伸びないってハッキリ言えよ……はぁ、これで好きなだけ餃子が食べられるようになるわけだ、はっ」
千雨がいじけたようにごろりと転がり、エヴァンジェリンに背を向けた。
「……はぁ、今日はいつもより多めにもらうぞ」
「まっ、いいけどな……明日は身体計測だし、少しは軽くなるだろ」
「フン、伸び悩んでいることなら気にするな」
エヴァンジェリンが溜息を吐いて呆れたように声をかけた。ぱちん、と扇子を閉じた。
「一度もまともに伸びたことないからだろ」
言い終えてから、畳の上をごろごろと壁まで転がり、眼帯を外して壁際に置いていた眼鏡をかけた。
「分かっているではないか。はぁ、それにしても貴様、なぜ諦めない? 偶に顔を出すだけの古菲や超鈴音は愚か、ツナミ・カラニコフにすら負けるというのに」
「諦めたとき、私が死ぬからな。師匠から、死なないために最善を尽くせって言われてる。まぁ死ぬときはあっさり死ぬがな、っても言われてるんだけど。よっと」
千雨が立ち上がり、更衣室に向かって歩き始めた。
「歩みが遅く、人より短い一歩なら立ち止まらないことでしか届かない。届くかどうかも分からないんだけどな……今まで兎には会ったことなくてさ、実はいないんじゃないかと思うんだ」
本当にいるのかよ、才能に胡座をかいて努力しない奴なんて、と頭を掻きながらぶつぶつ呟いて、千雨が更衣室に入っていった。
「……貴様のせいだろ」
だからこそ、今の貴様の血は不味いんだよ、と溜息に乗せたエヴァンジェリンの呟きは当然のように千雨には聞こえなかった。
――そしてこの日、長谷川千雨は寮に戻ることはなかった。
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「3年! A組!!」
鳴滝姉妹と椎名桜子が声を合わせて笑顔で叫んでいた。
『ネギ先生ーっ!!』
これからオープニングが始まり土手でも歩き始めそうな青春の1コマをやっている教室の後ろの席で、ツナミ・カラニコフとザジ・レイニーデイが廊下から窓際までの距離を超えて顔を見合わせて首を傾げていた。綾瀬夕映の隣にぽつんと空いた席を見ながら。
チサメはー?
……サーカスのテントにいたから分からない。
私も研究室で泊まり込みの実験だったから。
……朝ごはんなかった。
身体測定の日は朝食抜きが基本。
ツナミとザジが目線とジェスチャーだけで会話しているうちに、ネギがエヴァンジェリンと睨めっこをして、ふとあることに気が付いた。
「なんだか今日は楽ですね……どうしてでしょう?」
「長谷川さんが来ていないからです」
ちゅーちゅー、麻帆良印の紙パックジュースを飲みながら夕映が隣の席を指差していた。
「長谷川さんはどうしたんですか?」
ネギがきょろきょろと教室を見回した。
クラスメートの視線がツナミとザジに半々分かれて集まったが、ザジが口を開く様子もないためツナミ一人に集まった。
「わかんなーい」
ツナミが腕を組んでそっぽを向いた。ちょうど向いた先はエヴァンジェリンで、クラスメート達の視線が席一つ隣に移った。
「二日酔いじゃないのか? 昨日は貴様ら二人がいないから帰りに花見するってうちの甘酒全部持って帰ったぞ」
――コンコン
控えめなノックの後でドアを開けたしずながネギに向かって手招きをした。
「あのーネギ先生?」
「しずな先生、なんですか?」
トットットとドアに近づきながらネギがしずなを見上げた。
「長谷川さんが桜通りで」
「え、何かあったんですか!?」
「いえ、甘酒の空き缶に囲まれて寝ていたのが見つかって今保健室にいるんですが、身体測定どうしましょう? 起こそうとしたんですが……」
何故か起きないんです、とドアから顔半分のぞかせたまま困り顔になっていた。
しずなの言葉を聞いてクラスメート達が溜息を吐いていた。
「えーと、はい、別に日にしてもらいます。では皆さん、身体測定ですので……今すぐ脱いで、あっいや違う、僕は出ますから皆さん準備してくださいー」
ネギがわたわた腕を振りながら教室を出て行き、千雨の様子を見に保健室に向かって歩き始めた。
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はぁー、もう夜じゃねーか、と頭の後ろで腕を組みながら千雨が溜息を吐きながら小石を蹴飛ばした。
千雨が目を覚ましたのは夕方、保健室で。
養護教諭に聞いてみれば桜通りで居眠りをしているところを見つかって運び込まれて今まで寝続けていたらしい。甘酒の飲み過ぎで、って怒られた。身体測定をすっぽかしたので保健室で全部測って、帰ろうとしたら新田に捕まって怒られたばっかりなのにさらにしこたま怒られた。最後は気を付けなさい、で締めくくられて校舎を出たらもう夜。はぁー、ついてない……でも。
「おかしいよなぁ……」
寝続けた割に身体の調子が悪くない。寝疲れもしてないし、空腹もあんまり感じない。
「つーか甘酒で酔っ払う体質じゃないんだよなぁ」
桜通りか。
昨日の今日で、行かない方がいいんだろうけどなぁ。
遠回りして帰るか……ん?
「……誰か喧嘩でもしてんのか……?」
言い争う声が聞こえたような気がしたけど……って、ネギ先生とマクダウェルかよ。
「こんなとこで何やって――」
「
「うあっ!」
「――んだ……よ」
今、何が起きた?
マクダウェルとネギ先生が喧嘩してた。見る限りでは。
見ようによってはネギ先生の後ろにいる宮崎とマクダウェルがネギ先生を取り合っている修羅場で、ネギ先生は宮崎の味方をしてる、ようにも見える。
そんなことより今のは何だ? 冷凍庫を開けたときに吹く風のような冷気は。零奈さんが人妖能力を使ったときに起こるような温度変化は。
思い出せ。何が起きた?
マクダウェルが試験管とフラスコを投げた、うん、バイオレンスだな。
そうじゃない。見るべきところはそこじゃない。ネギ先生が前に突き出した左手だ。袖がなくなっている、凍り付いて服だけ砕け散り、破れている左手。
取り落としそうになる日傘を意識して握りしめる。
「
「僕と同じ魔法使いなのに何故こんなことを!?」
はぁ、師匠、私はまた巻き込まれたみたいだ。
見てしまった、認めてしまった。桜咲と龍宮、馬鹿にしてごめん。お前らが正しかった。学園長と高畑先生はまぁどうでもいいか。
「へぇ、それじゃあさっさとカエルに変身しろよ」
――所作は何時如何なるときでも優雅たれ。
――闘志に己を焦がせ。それは勇気という名の武器になる。
――思考だけは別領域に置け。半端に燻った憎悪は頭を鈍らせる。
短めですがキリがいいので。
今だとプリキュアがメジャーなんだと思いますが。
佐々木まき絵、巻き込まれないけど出番もない。
エヴァンジェリンのかませっぽさを消したい。かませっぽいところも好きなんですが。