フォーサイスより愛を込めて(魔法先生ネギま!×EVOLIMIT)   作:瓶缶ペットボトル

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2001年7月3日:長瀬楓の回想

 あれは2年前の夏の日のことでござる。

 超殿達の超包子の移動屋台ができて肉まんが有料になってしまったことを残念に思っていた日のことでござる。

 

「ねぇー、パルー」

 

 朝倉殿と早乙女殿が話し始めたのでござる。

 そのとき拙者は真名の席で肉まんの値段について話し合っていたので二人の話も聞こえていたのでござる。1個120円で安いとはいえ、一月前まではただで食べられていたことを懐かしんでいたのでござる。

 

「なによー?」

「最近七不思議増えたの知ってるー?」

「うん、知ってるよー。竹取姫だっけ?」

「そうそう、それよ! 何か知らない? まだ記事出てないからさー。私が一番先に特集組んでやろうかと思ってるんだよねー」

「あー、あれねー。山の下に竹藪あるじゃんー?」

 

 拙者はそのときはもう週末は山で過ごしていたから竹藪のことも知っていて、はて竹取姫とはお目にかかったことがないと考えていたのでござる。

 

「ふむふむ、山の下の竹藪、とメモメモ」

「あそこに出るんだってさ。なんかねー、歩道側からどんどん竹が折られていくらしいよ。私達の腰くらいの高さから」

「ほうほう? それでそれでー?」

 

 ほうほう? と思っていたら半笑いの真名と目が合ったのでござる。

 

 

/////

「え、長瀬さん、目開けてるんですか?」

「失敬な、開けてるでござるよ。しっかりと」

「はぁ、そうですかぁ~?」

「おっと、話の途中でござった」

/////

 

 

 半笑いの真名と目が合ったところまで話したでござる。

 

「楓、気になるのかい?」

「これは失礼。いつも山ごもりしている場所と近いためついつい」

 

 朝倉殿と早乙女殿まで拙者達を見てきたのでござる。

 

「長瀬さん達も気になる? 気になるよねー?」

「私は別にならないが」

「拙者は少々」

「それでさぁ、なんか中等部の制服着てる女の子が折ってるらしいんだよねー。バシーン、バシーン、って音がすると竹が折れるんだってさー」

「なるほどー。つまり竹取姫は女子中等部にいると?」

「でもね……目を離すと消えちゃうんだって。でもまたすぐに現われるのよ、これが」

「ん? なにそれ、どういうこと?」

「いやホントに。それでさー、竹藪の前に看板立ってるの。竹取姫の土地、竹伐採中のため立ち入り禁止って」

 

 早乙女殿がスケッチブックのページにさらさらと看板の絵を描いたのござる。上手いものだと拙者達は関心したのでござる。

 

「ふーん、ってことは看板探せばいいわけね!」

「そうだねー。竹取姫と会えたら教えてよー?」

「いいよー。長瀬さん場所教えてくれない?」

「あいあい、拙者もお供するでござるよ」

「いいの?」

「さんぽ部の活動でござるよ、ニンニン」

 

/////*****/////

 

 朝の話を(クー)にしたら放課後には一緒でござった。竹藪まで遠くてぶつくさ文句を言いながらもちゃんと付いてきたのでござる。

 

「遠かったアル……これなら楓と勝負してたほうが良かたアル」

「まぁまぁ、朝倉殿の用事が済んだら一本手合わせするからそれで勘弁するでござる」

「早く見つけるアル」

 

 クーとそのような話をしていたら朝倉殿が看板を見つけたでござる。歩道の前に立っていて分かりやすかったのでござる。

 

「あっ、本当に看板立ってる。……なによ、これ?」

 

 歩道の端から何列か折られている竹を見たクーがピクリと目を開いて動きを止めたのでござる。実は拙者も片目を開いたのでござるが。

 

 

/////

「やっぱり今は目開けてないんじゃないですか!?」

「そんなことはないでござるよ? 集中すると勝手に目が開いてくるのでござる……少々湯が冷めてきたでござる。沸かし直して」

「あいあい」

 

 ドラム缶風呂の外で分身体の楓が竹筒をフーフーと吹き始めた。

 

「分身って便利ですね~。ボクにも出来るでしょうか?」

「んー……やってみないと分からないでござる。いつもの修業仲間は2年経っても出来ないでござる」

「そうなんですかぁ」

/////

 

 

 話の続きでござるな。

 拙者達3人は看板の前でうろうろしていたのでござるが、竹取姫が来ないので近くの木の裏で隠れたのござる。そうしたら、遠くからバシッ、バシッという音が近づいてきたのでござる。それにざらざらという竹を引きずるような音も。

 そんな音が近づいてくるのを緊張しながら木の裏で待っていたのでござる。そうしたら、なんと――。

 

 

/////

「長谷川さんが来たんですよね?」

「なんと、何故分かったでござる?」

「いや、だって、さっき聞きましたよ?」

「おや? そういえば……そうだったでござる」

/////

 

 

 長谷川殿が日傘の突きで竹を折って、折った竹を肩に担いで歩いて来たのでござる。

 看板の前まできたら担いでいた竹を下ろして、地面に日傘を突き刺して、上から鞄を掛けたのでござる。今度はぺたぺたと竹を触って。

 

「じゃあ始めるか」

 

 そんな独り言を呟いて、竹に掌打を打ち込み、あまりにも簡単に折ったのでござる。踏み込みもなく、動きも少なく、腰を軽く回すだけで打たれた掌打で。それに続いて、折れて落ちてくる竹に振り下ろされた手刀は竹を切っていたのでござる。

 

「あれ、長谷川だよね?」

「そうアル」

「で、ござるなぁ」

 

 拙者達は木の裏で顔を見合わせたのでござる。もっと不可思議なものを期待していた朝倉殿ががっかりしていたのが面白かったでござる。

 では長谷川殿に挨拶に行こうと隠れていた木から出ると、長谷川殿がいなかったのでござる。おやおやと思いながら先ほどまで長谷川殿がいた場所まで行ってみたのでござる。

 

「ホントに消えた!?」

「長谷川、瞬間移動まで覚えたアルか?」

「んー?」

 

「何やってんだ? こんなとこで」

 

 長谷川殿の声が上から聞こえたのでござる。見上げると、数メートルはあろうかという竹のてっぺんにぶら下がる長谷川殿がいたのでござる。

 

「長谷川が言うな! 何やってんのよ、そんなとこで……え、突然消えるって竹に登ってるだけ!? いやおかしいおかしい、どうやって登ったのよ!?」

「どうやってって、手と足で登るしかないだろ」

「竹取姫は長谷川アルか?」

「うん、私だけど……よっと」

 

 長谷川殿が飛び降りてきたのでござる。着地してぶら下がっていた竹をぱんぱんと優しく叩いてから腕を半回転ほど捻った掌打を2発打ち込んで竹を折って、中を覗き込んで言ったのでござる。

 

「いないなぁ」

「何が!?」

「かぐや姫」

「いやいや、いるわけないでしょ」

「いつか出てくるかもしれないだろ……まっ、冗談はこのくらいにして、何の用なんだ? タケノコでも採りにきたのか?」

「竹取姫を探しに来たアル」

「うん、それ私」

「すっげー残念だわ。竹取姫の正体見たりただの変人……記事にならないじゃん!」

「朝倉は分かった。で、そっちは?」

「長谷川! 勝負アル!」

「やだよ、2ヶ月前に負けたばっかりだろ……ったく、弱い者いじめなら他をあたれ。そんで、長瀬は? なんか珍しい組み合わせだな」

「これが長谷川の修行法でござるか?」

「んー、そんなもんだ。九鬼流は捌きが命、つまりは掌が命だからな。捌くことは出来ても掌が痛くないわけじゃない。師匠も昔は無茶苦茶やってたっていう話だし、私もやってみようかと思ってさ。竹を手刀で切断したり」

 

 言葉通りに長谷川殿が手刀で竹を切り、落ちてくる竹を前に腕を構えたのござる。拙者とクーは長谷川殿の動きを見逃さないようにしたのでござる。

 

「しなる竹を掌打で破壊したりな」

 

 注意して見るほどのものではなかったが、長谷川殿の技量が垣間見えたのでござる。5月に一度だけクーと長谷川殿が勝負したのを見ていたため驚くことはなかったが。切られた竹が斜めに落ちてくるのに合わせて移動しながら4発打ち込んで竹を5分割。拙者達は長谷川殿を後ろから見ていたからその正確さに目が開いたのでござる。

 

 

/////

「いえ、あの、何回目を開くんですか?」

「しょうがないのでござる。たかが4発といえど、見事でござった」

/////

 

 

 4発の掌打は完全に同じ姿勢で、それは何百回、何千回では足りぬほど繰り返し続けてようやく身に付くもの。長谷川殿の場合は何万回でも足りないかもしれないでござる。

 

「ここの竹を全部折れたら、少しは上達するんじゃないかって思うんだよ。歩みは遅くともな」

「先は長いアル」

「歩き続ければいつか短くなるさ」

「そうでござるな」

「千里の道も一歩から、って……竹藪全部!? 死ぬまでに終わるの?」

「かぐや姫が見つかったら終わりにする」

「ここの竹って勝手に折っていいの?」

「あぁ、ジジイからもらったからな。将来的には区画整理したいらしいけど、竹藪を更地にするための予算がないんだと」

「長谷川! 勝負するアル!」

「嫌だって言ってるだろ! 何回やっても私の負けだ」

「では拙者と」

「……一体何しに来たんだ、てめえらは」

「竹取姫の記事は残念な感じになりそうだからなしってことで用事は終わり、勝負でもしたら?」

「やらねーよ……つーか、そろそろだと思うんだけどな」

 

 長谷川殿が時計を気にしたところで子供達と保母さんがやってきたのでござる。

 

「あらあら? 今日はお姫様が多いわね」

「よう。どれでも好きなの持って帰っていいからな」

 

 長谷川殿が日傘で折った竹を指差したのでござる。

 保母さんかと思ったら那波殿でござった。

 

「あれ? 那波さん? どうしたの?」

「それは朝倉達の方だから。那波とはちょくちょく会うんだ」

「保育園の散歩コースの1つなのよ。長谷川さんも願い事書きに来てね?」

「世界が平和でありますように、って書いといて」

「あっ、七夕か」

 

 週末が七夕だったことに朝倉殿のつぶやきで気が付いたのでござる。

 

「竹取メガネー、かぐや姫はここにいるぞー! 折ってみろー」

「本当かよ……ちょっと離れてろ」

 

 長谷川殿は保育園の子供がしがみついている竹の前で溜息を吐いて、子供の首根っこを掴んで竹から離れさせ、手刀で竹を切って見せたのでござる。

 

「いねえじゃねーか。あと、メガネじゃなくて姫な」

「竹取メガネー、こっちにいるかもー!」

 

 また別の子供が指差す竹を折って、長谷川殿が遊び始めたのでござる。

 拙者は子供によじ登られていたのでござる。クーはカンフーごっこで遊んでいたし、朝倉殿はカメラで写真を撮って遊んでいて勝負どころの話じゃなくなってしまったのでござる。

 

 子供と同じ数の竹を折って、長谷川殿が掌を押さえて唸っていたのでござる。

 

「い、いてぇ……今日もかぐや姫に会えなかった」

「保育園に帰るわよー」

『はーい!』

 

 一言で子供達をまとめあげてしまう那波殿を尊敬したのでござる。

 

「それでは、また明日。今日はみんなどうもね」

『じゃーなー! 竹取メガネ!』

「姫だ、姫! メガネじゃなくて姫な!」

 

 那波殿と子供達が帰って、拙者達も帰ろうかという雰囲気になっていたときに長谷川殿が軍手とシャベルを取り出したのでござる。

 

「さて、あとはタケノコ採って帰るか」

「タケノコ採ってもいいの?」

「あぁ、自分達で食べる分だけな。ジジイに持っていく分と近所に住んでる山菜取りが趣味のおじいちゃんおばあちゃんの分は残しておくこと。まぁあれだ、今日食べる分だけにしましょうって感じだな」

「拙者達もいいでござるか?」

「当たり前だろ。採って売るのだけ駄目ってくらいだな。古菲も晩御飯で食べる分持って行っていいからな」

「長谷川、良い奴アル! お腹減ったら取りに来るアル!」

「タケノコ探してもいい?」

「いちいち私の許可取らなくていいんだけど」

「竹取メガネの土地アル、許可はいるアル」

「姫だっつってんだろ!」

「七不思議は竹取メガネに変えておくから」

「だから姫だっつってんだろ!」

 

 クーと朝倉殿がタケノコを探しに行ったのでござる。

 

「長谷川殿、もう一度竹を折るのを見せてほしいでござる」

「だから姫……今のなし。聞かなかったことにしといてくれ」

 

 少し恥ずかしそうな顔をした長谷川殿が拙者から背を向けて、竹に向かって掌打を打ち、やはり簡単に折ったのでござる。

 

「こう」

「うーむ……不思議でござるなぁ」

 

 拙者も実際に長谷川殿と同じようにやってみたのでござるが。

 

「拙者では折れないでござる」

「練習だな。まぁでも、長瀬達は普通に殴って折れるだろ?」

「まぁ、そうでござるな」

 

 竹くらいであれば気を込めた手刀で切るのは難しくないから実際に切ってみたのでござる。長谷川殿とは少々やり方が違うが。

 

「不思議だよな。どうやってんだ? おかしいって絶対、人間の力じゃないと思うんだけど」

「長谷川殿は使えないでござるか?」

「うん、気って聞いたけど、そんな超能力みたいなのは使えるわけがない。気なんてドラゴンボールしか知らないんだけど」

「限界まで鍛えたら自然と使えるようになるでござる」

「ふーん、そうか。それって私はまだ伸びしろがあるってことか」

「誤解させてしまったようでござる。限界まで鍛えても使えるとは限らないでござるよ?」

「ん? 誰でも使えるようになるんじゃないのか?」

「長谷川殿にはあまり言いたくないでござるが……」

「才能が必要ってわけだな。まっ、気にするなよ、才能がないのは今に始まったことじゃないからな。強くなれないことは私がよく分かってるさ」

「前向きでござるなぁ。妬むくらいはしてもいいでござるよ」

「羨ましいと思ったからって私が強くなるわけじゃない。妬んだからって私以外の奴が弱くなるわけでもない。人を羨む時間があるなら竹を折ってた方が有意義だろ。人より歩みが遅く一歩が短いなら立ち止まらないことでしか届かないからな。まっ、師匠なら立ち止まらなくても届きはしないって言うんだろうけど、さ」

「拙者も立ち止まらぬようにしないと駄目でござるなぁ」

「長瀬達は元々立ち止まらないだろ。なぁ、あれ何秒くらいで登れる?」

 

 長谷川殿が目につくところでは一番高い竹を指差したのでござる。10メートルくらいはありそうな竹でござった。

 

「うーむ、登るのでござるか?」

「……なに、もしかして、これより高くジャンプできんのか?」

「んー」

「……そっか。いや私の師匠はさ、このくらいの竹なら3秒で登るんだよ。私はできないんだけど、他に出来る奴いるのかと思ってな」

「3秒でござるか……難しいでござるなぁ。飛び越えられるものをわざわざ登ろうとは思わないでござる」

「飛び越えられるって言ってるじゃねーか」

「聞かなかったことにして欲しいでござる」

「ホントてめぇらは同じ人間とは思えねーなぁ」

 

 

/////

「思えばあれから1年半経ったのでござるなぁ……長谷川殿はどのくらい上達したのやら。竹を折る姿はたまに見かけるが、誰かを相手に戦うのを見たのはウルティマホラくらいでござるなぁ。といっても2年続けて一回戦でクーに負けてるのでござるが」

「エヴァンジェリンさんと喧嘩しているのを見てましたけど……強かったと思います。二人とも……ボクが止めに入る隙もないくらい」

「それは、長谷川殿の前では言わない方がいいでござる。長谷川殿は人から強いと言われると機嫌が悪くなるでござる」

「どうしてですか? 誉めてるんですが」

「それは……自分よりはるかに強い人を知っているから、でござるよ。一度でいいから九鬼流の師匠の顔が見てみたいでござる」

/////




これで単独セリフのないクラスメートは、村上夏美だけのはず。
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