フォーサイスより愛を込めて(魔法先生ネギま!×EVOLIMIT)   作:瓶缶ペットボトル

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主人公交代のお知らせ
超鈴音 → 明石裕奈


2000年6月22日

 麻帆良学園学園祭の振り替え休日でも、先生方には仕事がある。教授ともなれば休みの日こそ、自分の研究に没頭できる1日になる。平日は学生の指導と事務仕事に時間を取られ、学生が帰宅した後からが自分の仕事と研究に取り組める数少ない時間だった。とはいえ明石教授は魔法先生としての仕事もあり、とりわけ夜の警備シフトによって自分の研究に思う存分取り組む時間がなかなか取れないのが現状であった。だからこそ、学園祭の振り替え休日の今日こそ、自分の研究を進めようと研究室に足を運んでいた。

 しかし世の中は未だに証明されていないながらも豊富な経験から導き出された法則に支配されている。起きて欲しくない事は絶対に起きて欲しくない時に起こる。世の中うまくいかないよ、というマーフィー先生が明文化した世界のルール。

 

 そして明石教授の携帯に電話がかかってきた。携帯画面には『家』の文字。明石教授の娘、明石裕奈からの電話だった。

 

「もしも――」

 

『銃が! 喋る銃が! お母さんの遺品の中から!!』

 

「すぐに帰る。危ないから撃っちゃ駄目だよ?」

 

『う、うん、分かった!』

 

 電話を切った明石教授は最低限の片づけと戸締りだけしてすぐに研究室から飛び出した。

 

 明石教授は裕奈の言葉を聞いてはたと思い出していた。

 裕奈が喋る銃と呼んだもののことを。

 生前、こと銃の扱いに関しては誰にも引けをとらなかった明石夕子が管理していた2挺の拳銃。20年以上前の魔法世界全土を巻き込んだ大戦からさらに遡る8人の英雄を継ぐ者達が中心となった戦争の遺失物。ドラゴニュートのフォルテンマイヤー家で厳重に保管されていた2挺の拳銃が夕子に託され、一度として他人の目――夫と子供にさえも――に触れさせなかった2挺の拳銃が存在した。夕子の遺品の中からも見つからず、7年前に殉死したときにその場にいたであろう何者かに持ち出されたものだと思い込んでいた。持ち出された銃が夕子の死に繋がる唯一残った線だったのだが、銃は何故か裕奈が発見したらしい。誰が探しても見つからなかったはずなのだが。

 

/////*****/////

 

「ん? 誰か喋ってる?」

 

 明石裕奈は学園祭の振り替え休日1日目、父親の教員宿舎の掃除に来ていた。お父さんは私がいないと駄目駄目なんだからー、などと愚痴を言いつつ、鼻歌交じりで掃除機をかけていた。

 掃除機の音にまぎれて人の声が聞こえることに気付いた裕奈は掃除機を止めて声が聞こえてくる方向に向かった。たぶん、点けっぱなしになっているラジオか何かだろうと思いながら。

 ラジオにしてはパーソナリティ同士の仲が悪すぎるような気がした。公共の電波でマジな喧嘩を垂れ流しているなんて、と思わなくもなかったがFM麻帆良とかならあり得ない話でもない。

 声は口の悪い男性と気の強そうな女性の二人だった。

 

「あ、ここだ」

 

 延々と喧嘩をしている声は押し入れの奥から聞こえてきていた。

 裕奈の母親、明石夕子の遺品だった。裕奈は声を頼りに遺品の中を探していたところ、奥深くから声を出している物を発見した。

 

「あれ? じゅ、銃だー!?」

 

 裕奈は2挺の銃を手に取ったが、銃だと気付いた驚きで床に放り投げた。

 

「おう!? 誰だコイツ!?」

 

 2挺の拳銃のうちの片方、黒い銃が喋っていた。

 

「私のセリフだよっ!! なんで銃が喋ってんの!? ていうか本物!? ヤバイヤバイ! お父さん逮捕されちゃうよー!!」

 

「ユウコに似てるわね、娘かしら」

 

 2挺の拳銃のうちのもう一方、白い銃が喋っていた。

 

「言われてみりゃユウコに似てんな」

 

 母親の名前が出されて裕奈は床に転がる2挺の銃に恐る恐る近づいて指でつっついてみた。

 

「……ユウコってお母さんのこと? あと、あんたら目どこに付いてんの?」

 

「――さぁ、契約は既に果たされている」

 

「――そう、我が力を手に握るがいい」

 

「え? やだ!」

 

 さっきまで喧嘩をしていたはずなのにいつの間にか真面目な雰囲気で話し始めた銃を前に裕奈が叫んだ、そして銃から一歩離れた。

 

「なんでだよっ!?」

 

「おかしいわねー。娘を頼むと言われてるんだけど?」

 

「まぁいいや! とりあえず最後までやっとくか。我が力は全ての生者と死者に沈黙を与え」

 

「我が力に全ての死者と生者はひれ伏すだろう」

 

「続けんの!? 嫌だって言ったじゃん!」

 

「さぁ、我を手に取れ」

 

「それがお前の宿命だ」

 

「もー、こいつら全然人の話聞かないよ! はい、取ったよー、続きは?」

 

 裕奈が面倒くさそうに2挺の拳銃を手に取っていた。裕奈は紛うことなき麻帆良の住人であった。喋る銃を前にしても怖がることのない能天気さに麻帆良育ちの片鱗が現れていた。

 

「我が名は『黒禍の口笛(ベイル・ハウター)』」

 

「我が名は『屍に触れし指(ルダ・グレフィンド)』」

 

「黒い方がベイルで白い方がルダね、うん、分かった」

 

「「古の誓約により、我が銃身(からだ)は汝のものとなり」」

 

「「汝。我を手に取り――」」

 

「「汝が怨敵を打ち倒せ!」」

 

「決まったね。つーか、重っ!? 持てない持てない。とりあえずお父さんに電話だー!」

 

 ベイルとルダを雑な扱いで床に放り投げて裕奈が父親に電話をかけた。

 

「なんかすげー空しいぜ」

 

 哀愁漂う男性の声がベイルから聞こえていた。

 

「ユウコもあんな感じだったでしょ? 最後まで私達使わなかったし」

 

 呆れたような女性の声がルダから聞こえていた。

 

「銃が! 喋る銃が! お母さんの遺品の中から!! ……う、うん、分かった! お父さん帰ってきてくれるってさ」

 

「それ俺達に言ってどうするよ?」

 

「壊されないうちに逃げなーってことだよ、ふふん」

 

「私達、足付いてないわよ」

 

「確かに! あっ、私は明石裕奈。あんた達、誰? いや、何? うーん、とにかくあんた達……変!!」

 

「おい、ユーナ。お前何にも分かってねえみたいだからよー、説明してやるぜ! ルダ、説明してやれ」

 

「私に丸投げ? 恥を知りなさいゴキブリみたいな色して」

 

「早くお父さん帰って来ないかなー? ご飯作っておこうかなー」

 

「話聞けよ!!」

 

「間違いなくユウコの娘ね」

 

2挺の拳銃の溜息が重なった。

 

/////*****/////

 

 明石教授が自宅に戻ってきたときに見た光景は道中での暗い予想とはかけ離れたものだった。持つ者に不幸を運ぶ銃という触れ込みだったはずなのだが、なんという長閑さか。麻帆良らしいといえばその通りなのだが。

 

「ふーん、じゃあベイルとルダはエル・アギアスって人のライバルを生き返らせようとしてるわけね」

 

 テーブルに置かれた2挺の拳銃を前に裕奈がうんうん頷きながら相槌を打っていた。

 

「おうよ! だから俺を使ってバンバン殺してくれや!」

 

「やだしー」

 

 裕奈がベイルからそっぽを向いた。顔を向けた先にはルダがあり、ルダは自分達の説明を続けていた。

 

「エル・アギアスは今では――ユウコの話では始祖アマテルという名前で統一されてるんだったかしら? あと、不死の王(ノーライフキング)は全ての文献から削除されてて今じゃ誰も知らないみたいよ」

 

「ふーん。ノーライフキングって確かあんたらの材料なんじゃなかったっけ?」

 

「材料ってお前! ノーライフキングの身体の一部から作られてるのが俺達朽ち果てし神の戦器(エメス・トラブラム)なんだっつーの!」

 

「へー」

 

「ノーライフキングが滅ぼされたのが2600年くらい前だったかしら?」

 

「じゃああんた達2600歳!? じじいとばばあじゃん! つーかさー、2600年もやっててノーライフキングが生き返ってないんだからもう諦めたら?」

 

「なんだとこのやろう! ちったぁ敬おうとは思わねーのか!」

 

「はぁー。前の前のマスターが懐かしいわねえ」

 

「あぁ確かにな。リックとアルフレッドが懐かしいぜ。思えばあいつらからケチが付き始めた気がすんだよなー。あいつらなんだかんだで天寿全うしやがったし!」

 

 ベイルとルダの前のマスターは裕奈の母親だった。その前は、フォルテンマイヤー家の二人の執事だった。それがおよそ600年ほど前の話だ。ハーフエルフだった2人は400年程前に天寿を全うした。それからの400年弱の空白期間はフォルテンマイヤー家の倉庫の中で保管されていた。ベイルのマスターだったリック・アロースミス、ルダのマスターだったアルフレッド・アロースミスの二人は2600年に渡る武器生活の中でも、一際思い出深いマスター達であった。

 

「ほんとよねー。ユウコも最後まで私達使わなかったし。おかしいわね、私達って使わないとマスターの周りを不幸にするんじゃなかったかしら」

 

「おう、そのはずだぜ!」

 

「えーっ、なにそれ、やだあんた達燃えないゴミに捨てとこーっと」

 

「おいやめろ!」

 

「そこのゴキブリだけ捨てておきなさい」

 

「ルダ! てめえ表に出やがれ!」

 

「足ないじゃん! もー喧嘩しないのっ! あっ、お父さんお帰りー!」

 

「…………あー、うん、ただいま」

 

 喧嘩する2挺の拳銃と普通に会話している娘を見て明石教授ががっくりと肩を落とした。

 

「おう! お前がユウコの旦那だな! 俺、黒禍の口笛(ベイル・ハウター)

 

「私は屍に触れし指(ルダ・グレフィンド)

 

「ベイルとルダって呼んでいいみたいだよー」

 

「……あー、うん、ベイルとルダ。娘がお世話になっているようで」

 

「おう! ユーナが新しいマスターになったからよー、説明しといてくれや!」

 

「……ん?」

 

「ユウコの遺言通り、娘は私が守るから安心しなさい」

 

「……えっ?」

 

「俺もいるっつーの!」

 

「あんたはいらないわよ!」

 

「はーい、お父さん、ご飯食べよー!」

 

「裕奈、ちょっと座りなさい。ベイルとルダのマスターになったの?」

 

 緊張感のある父親からの問いかけに裕奈は平然と首を振った。

 

「うんうん、なってないよ」

 

「なってるつーの!」

 

「えっ!? いつ?」

 

「私達に最初に触ったときにね」

 

「……裕奈?」

 

「触っただけだよ?」

 

「ユウコとの約束だからなー」

 

「ユウナ以外はマスターになれないようになってたからね」

 

「僕達がいくら探しても見つからなかったのは?」

 

「そういうことだぜ!」

 

「そういうことね」

 

 裕奈が黒禍の口笛(ベイル・ハウター)屍に触れし指(ルダ・グレフィンド)を発見し、2挺のマスターになっていた事実を認めて、明石教授が長い溜息を吐いた。

 

「ご飯冷めちゃうよ?」

 

「あ、あぁ、いただきます。裕奈、夏休みはイギリスに行こうか」

 

「ぶーーっ! い、イギリス!? 初めての海外旅行だーっ! なんでなんでー?」

 

「日本だと射撃訓練する場所がなかなかないからね。夕子の古い友人に頼んで銃の扱い方を教えてもらわないと」

 

「話の分かる奴で助かったぜ!」

 

「ユウナはユウコに似て私達の話聞かないからねー」

 

 これから先が大変だなぁとぶつぶつ言いながら食事をする父と海外旅行という言葉に舞い上がって大事な部分を聞いてない娘、話を聞かない娘に呆れる2挺の回転式拳銃(リボルバー)。学園祭振り替え休日1日目、教員宿舎の明石教授の部屋は明石裕奈が魔法使いの世界に片足を突っ込んだ日にしては、平和な1日であった。




小説の情報を更新しました。
『Bullet Butlers』『キャラ改変』『原作キャラ魔改造』『明石裕奈魔改造』タグを追加しました。

【明石裕奈】(*°∀°)ノパキャッ
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