やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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まずは様子見です。
俺ガイルの文章を意識して書きましたが、これでいいのか全く分からないままです。
感想、意見よろしくお願いします。


序章 ~出会い編~
LEVEL.1 やはり背後から迫る女は怖い


 人生とは山あり谷ありと言う。

 それは俺もそう思う。しかし、少しだけ言い方が違う。

 人生は山と谷しかない。そして、そんな人生が楽しいという奴はきつい傾斜を笑顔で登るマゾか暗い谷底に微笑みながら落ちるドMだ。

 まぁ、そう言った性癖を持った人を除くとして人は皆、苦しいことは嫌いだ。俺だってそうだ。

 じゃあ、どうすれば苦しまずに済むのか。決まっている。

 歩みを止めればいい。進むことを止めてその場で座り込むのだ。そうすればきつい山を登らずに済むし、暗い谷底に落ちることもない。

 ……だが、決して安全ではない。

「ハチマン、待ってえええええ!」

「来るんじゃねえええええ!!」

 背後から歩いて来る人に蹴られるかもしれないからだ。

 いや、今は後ろから走って追いかけて来てるんだけどね。え、なにこれ。俺の人生って進んでも止まっても危険なことばかりなの? 死ぬの? 小町が嫁に行くまで死ねないんだけど。あ、小町が嫁に行くわけないから俺、不死の存在だわ。

「このっ! 待ってって!」

 そう叫びながら走って追いかけて来るのは小学低学年生ほどの女の子。黒くて真っ直ぐな長い髪。目はとても綺麗な群青色。容姿は可愛らしいと言った方がいいか。将来、可愛くなるだろう。普通にしていれば。

 今は鬼のような形相で追いかけて来ているので恐怖しか湧かないが。

(何で付いて来られるんだよ……こっちは自転車だぞ!)

 何よりすごいのが自転車で逃げている俺に喰いつく……いや、すでに追い付こうとしていることだ。“あの話”は本当なのかもしれない。

「大人しく私のパートナーになって!」

「誰が……なるかああああああ!!」

 彼女は言った。“魔物の王を決める戦い”に参加していると。

 そして――彼女のパートナーに選ばれたのが俺だということ。

(なんでこんなことに……)

 死にそうになりながら俺は少し前のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 平塚先生に言われ、『奉仕部』というよくわからない部活に強制的に入れられた俺は雪の女王こと雪ノ下雪乃と一緒に由比ヶ浜というクラスメイトらしき人の依頼を完了させた。その後、少しトイレに行っている間に部室は閉められ、俺の荷物が廊下に放置されていた時はさすがの俺でも引いたが。え、何これ。そう言う扱い? いや、踏ん張っていた俺も悪いんだけどさすがにこれは泣いちゃうぞ。

 荷物を回収した後、もう誰もいなくなってしまった校内を歩き自転車置き場に到着する。そのまま、自転車を押して校門から出た。

「ん?」

 そろそろ自転車に乗ろうかと思っていると校門に背中を預けて俯いている女の子を見つける。黒くて真っ直ぐな長い髪。背中には青いリュックサック。顔は見えないが見た目はいいところのお嬢さんだ。

(何でこんな時間に?)

 今の時刻はすでに5時を過ぎている。まだ学校に残っている生徒の妹だろうか。

「……」

 まぁ、声でもかけておまわりさんを呼ばれたら洒落にならない。先生ですら普通にしていただけで『生意気だ!』と怒るのにこんな小さな子に声をかけたら最悪、泣かれる。関係ないと言わんばかりに無視して自転車に乗り、ペダルを漕いだ。

「ちょっと」

 さて、家に帰って何をしようか。昨日買った本の続きでも読もう。

「ねぇってば」

 それにしても今日は散々だった。ついこの前に入れられた部活で雪の女王に毒を吐かれ、ビッチの黒焦げクッキーを食べさせられる羽目になる。どうにかしてあの部活から逃げなくては。

「聞いてるの?」

「何だよ。今考え事を……」

 ペダルを漕いでいた足を止めて振り返る。

「あ、やっとこっち見た」

 そこには先ほどの女の子が荷台に座っていた。綺麗な群青色の瞳に俺の呆けた顔が映っている。

「……は?」

「その腐った眼……うん、やっぱり」

 彼女も俺の目を見ていたようでうんうんと頷いて微笑んだ。その笑顔に思わず、ドキッとしてしまう。ボッチの俺には小学生の笑顔でもハートにダイレクトアタックされるのだ。

「これ読んで」

 彼女はリュックサックから取り出した群青色の本を差し出す。意味がわからないまま、それを受け取る。

(何だこの本)

 表紙には不思議なマークが施されており、文字らしき記号が書かれていた。でも、全く読めない。どこか外国の文字だろうか。

「ほら、開いて」

「あ、はい」

 群青の女の子に指図されて本を開く。だが、やはり読めない。ペラペラとページを捲り読める部分を探して――。

 

 

 ――一文節だけ読める箇所があった。その文字は他のページの文字と違って群青色に染まっている。

 

 

(『サルク』?)

 しかし、その読めても文字の意味はわからない。首を傾げていると群青の女の子がよしとガッツポーズを取った。

「読めんだよね?」

「読めたには読めたが……これ、なんて意味だ?」

「今は読めただけでいいよ。あ、でも口に出したら駄目。詳しい話がしたいからどこかのお店に入らない?」

 何だろう。ものすごくぐいぐい来る。

「あー、すまん。今から家に帰って病気の妹の看病をしなくちゃならなくて」

 なので、断る。どうして知り合ったばかり……いや、知り合ってもいない奴の後に付いて行かなきゃならない。怪しさ満点だ。

「嘘吐かないで。コマチ、元気だったじゃない」

「……おい」

「ね? 詳しい話、したくなったでしょ?」

 ニヤリと笑う女の子。それに対して俺の心は冷えていく。仕方ない。詳しい話を聞こう。

「適当なファミレスでいいか?」

「うん、サイゼで」

「……はいはい」

 本を女の子に返し、彼女を荷台に乗せたまま俺たちは近くのサイゼへ向かった。

 


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