やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.134 短い休息の中、彼らは情報を共有する

「……」

 アポロが新しく手配したホテルの一室で私はベッドの上で静かに眠っているハチマンの寝顔をジッと観察していた。最初に使っていたホテルでもよかったがハチマンを治療するために病院の近いホテルに移動する方が何かと都合がよかったのだ。

「……お疲れ様」

 医師の診断は私とキヨマロが出した結論と同じように極度の疲労。何日も徹夜して仕事したブラック企業に勤める会社員顔負けの疲れだったらしい。とりあえず点滴を打ちながら安静にしていればいずれ回復するそうだ。予め心の力が回復したメグちゃんが『サイフォジオ』を使ってくれなければもっと酷い診断結果になっていただろう。幸い、体の異常による肉体的ダメージはそこまで酷くなかったのか『サイフォジオ』で完全に治った。

(さすがに無理させ過ぎちゃったか……)

 そっとため息を吐いてハチマンの頭を撫でた後、部屋を後にする。そして、皆が集まっている広い部屋に入るとそこにいた全員が私の方へ視線を向けた。特にメグちゃんはそわそわした様子で私の言葉を待っている。

「大丈夫、よく眠ってるよ。話し合いはどこまで?」

「そうか、それはよかった……自己紹介ぐらいしか済ませてないぞ」

「あれ、待っててくれなくてもよかったのに」

 ホッと安堵のため息を吐いたキヨマロの言葉に首を傾げてしまう。むしろ、自己紹介を後回しにすればよかったのに。別行動していた時間も長かったので状況確認とかそれなりに時間かかると思うし。

「サイ、こちらウォンレイとそのパートナーのリィエンだ。ナゾナゾ博士が連れて来てくれたんだ」

「よろしく頼む」

「よろしくあるよ」

 キヨマロが紹介してくれたのは銀色の長髪でカンフー服を着た男の魔物とシニヨンキャップで団子状に纏めた黒髪が特徴的なチャイナ服を着た女の人間だった。どうやら、前に一緒に戦ったことがあるようでキヨマロとガッシュも彼らを信用しているようだ。とりあえず、頭を下げて挨拶しておく。

「それじゃあ、そろそろ始めよう。まずは――」

 それから私たちはお互いに街で合流する前に何があったのか説明し合った。特に私とハチマンは単独行動していたので色々と問い詰められてしまった。さすがに私の目指す王様の話とかは恥ずかしいので適当に誤魔化したが。メグちゃんは文化祭の時、サガミと会っているのでどこか納得したような表情を浮かべていた。

「それにしても……やはりサイ君は規格外の魔物のようだ。魔物の術には様々な法則性がある。しかし、あの八幡君を――人間を強化する術は聞いたことがない」

 第7の術『サジオ・マ・サグルゼム』。ハチマンに肉体強化と術の余波を無効化する程度の小さな魔力抵抗を付加する術。肉体強化と魔力抵抗、効果の持続時間はハチマンの気力に依存し、白いオーラをコントロールして体の一部に集束させればギリギリ中級レベルの術を凌ぐことも可能だ。因みにそうした場合、白いオーラが剥がされてしまう。実際、薔薇の魔物が放った術からメグちゃんを守った時も術を裏拳で殴って粉砕した後、白いオーラは消えてしまった。白いオーラはハチマンの気力と繋がっているため、あの時は精神的なダメージを受けたはずだ。

「まぁ、私の魔本自体、他の本と違うみたいだし。今に始まったことじゃないでしょ」

「それもそうだが……今回もハチマン君の願いで術が発現したのかね?」

 ナゾナゾ博士の言葉に私は素直に頷いた。別に隠しておくようなことでもない。今、“あれ”について言っても意味はないので黙っておく。そんな私を見て何か言いかけたナゾナゾ博士だったが個人的な疑問だったのか口を閉じて皆を一瞥した後、口を開けた。

「状況確認はこれぐらいにして……実はロードの正体がわかった」

 その言葉を聞いた瞬間、私を含めた部屋にいる全員が息を呑んだ。

 『ロード』。千年前の魔物たちを復活させた魔物で今回の事件の首謀者だ。今までほとんどロードについて情報がなかったためにナゾナゾ博士の発言は意外だったのである。

「ロードとは仮の名……真の名は『ゾフィス』。心を操れる現在の魔王候補じゃ」

「ゾフィス……」

「少しだけ噂を聞いたことがある。確か爆発の術を使えると……」

 首謀者の名前を呟くキヨマロと腕を組みながら話したウォンレイにナゾナゾ博士は頷いた。それにしても爆発の術、か。少し厄介かもしれない。爆発の術がどのようなものかわからないが攻撃範囲が広いことは容易に想像できる。爆炎はもちろん爆風にも注意しなければならないだろう。躱す時は大きく移動しなければならなそうだ。

「私は君たちの他にも共に戦うよう何組かの魔物たちに会ってきた。そして、その魔物のことをここに来る前にある魔物と人間(パートナー)に聞いた」

「ある……魔物?」

「君たちがわかるどうかは知らぬが……サイ君とはまた違った強大な力を持った魔物じゃ。その魔物の名は『ブラゴ』。そして、本の使い手(パートナー)のシェリー」

「ぶッ!?」

 その魔物の名前を聞いた瞬間、私は思わず吹き出してしまった。まさかこんなところでその名前を聞くことになるとは。キヨマロとガッシュも驚いた表情を浮かべているので彼のことを知っているのかもしれない。

「私はここに来る前にフランスの山中で彼らと会っていたのだ」

 驚愕のあまり硬直している私たちを放置してナゾナゾ博士はブラゴたちとの出会いを語り始めた。要約するとブラゴのパートナーであるシェリーはゾフィスを心の底から恨んでおり、自らの手でゾフィスを倒したいそうで協力はおろかゾフィスに手を出すなと言われてしまったらしい。ブラゴもブラゴで協力する気は更々ないようだ。

「そうか……あいつらそんなことを……」

「ん? 清麿君は彼らのことを知っておるのかね?」

「ああ、一度だけ戦ったことがある」

「「「ええええええ!? あのブラゴと!?」」」

 キヨマロの発言にティオ、キャンチョメ、キッドが絶叫した。言葉の話せないウマゴンとウォンレイも唖然とした様子でキヨマロとガッシュを見ている。そんなに有名になったのか、あの子。

「な、なんでガッシュは無事なの!? あのブラゴと戦ったんでしょ!?」

「い、いや、ボロボロにやられたし……負けたけど見逃してもらったというか。でも、なんでそんなこと……」

「魔物の子でブラゴを知らない子はいないわよ! それだけ強いの! 優勝候補なの! 非情で怖くてそれはもう……」

「僕なんか顔見ただけで漏らしちゃうよ!」

「へぇ」

 ガッシュの胸ぐらを掴んだティオは首を傾げていたキヨマロに説明し、キャンチョメが補足するようにうんうんと頷いた。ティオたちの言葉を聞いた私は思わず感嘆の声を漏らしてしまい、それに気付いたのかティオがこっちを見た。

「さ、サイは知らないの? ブラゴのこと」

「え? あー……うん、知らなかったよ」

「でも、さっき名前を聞いた時、反応してたよね?」

「……そんなことよりブラゴの協力は得られないってことでしょ。今はゾフィスのことが先決。今の内に色々考えておかなきゃ」

 これ以上、根掘り葉掘り聞かれるのは困るので話を逸らすついでに本題に戻した。メグちゃんの指摘について皆も多少気になっているようだが私の言っていることが正しいと判断したのかブレイン役であるキヨマロとナゾナゾ博士に視線を向ける。

「そうじゃな……向こうも私たちの存在に気付いているだろう。それを踏まえて作戦を練ろう」

「その前にいいか?」

 ナゾナゾ博士を止めたキヨマロが私に目配せをした。うん、タイミング的にもここが適切だろう。皆の視線が私に集まるのを待って私は静かにその場で頭を下げ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。私とハチマンは明日の作戦に参加できません」

 

 

 

 

 

 

 

 ――途中脱落(リタイア)を宣言した。













今週の一言二言


・FGOのネロ祭超高難易度。先ほどやっとじいじを倒すことができました。正直、アーラシュ戦やじいじ戦はアイリがいないとクリアはかなり厳しいような気がします。まさかアイリがここまで活躍するとは・・・。
 後はカルナ&アルジュナ戦、ダヴィンチちゃん戦、フィナーレを残すのみです。とりあえず、ダヴィンチちゃんを倒して来ます。


・現在、姉が『俺ガッシュ』のイラストを作成中。アナログかついつ完成するかわかりませんがお楽しみに。

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