やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.148 こうして、この物語の演者が揃う

 数十体の千年前の魔物がズラリと並び、俺たちを睨んでいる。おそらく俺たちがパムーンと戦っている間にこの城にいる残り全ての千年前の魔物が集められたのだろう。ここまで来るのに可能な限り、敵と戦わずに駆け抜けたツケが回ってきたのだ。

「うさ晴らしにはちょうどいいでしょう。遠慮はいりません、なぶってあげなさい」

 ゾフィスの言葉が合図となり、遠距離攻撃を持つ魔物が一斉に術を放ってきた。マズイ、俺はもう心の力が残っていない。それにガッシュも『ペンダラム・ファルガ』を生身で受け止めたせいで限界だ。どうすれば――。

「ヌゥウウウウ!」

 そんな雄叫びと共に俺の前に出たガッシュは右腕を振るい、敵の術を弾き飛ばした。だが、やはり限界が近いのだろう。彼は肩で息をしている。やはりもうガッシュも限界だ。『ラウザルク』なしで数十体の魔物と戦うのは無謀すぎる。

「が、ガッシュ、待っ――」

「――許さぬぞ、ゾフィス!」

「ガッシュ、無茶だ! ガッシュ!」

 しかし、俺の制止の言葉すら聞こえていないのか怒りに身を任せて敵に突っ込んでしまった。パムーンを馬鹿にしたゾフィスを許せないのだ。友達を馬鹿にされて黙っていられるほどガッシュは大人ではない。大人ではないからこそ紡げる真っ直ぐな言葉でパムーンを説得できたが今回はそれが仇になってしまった。今のガッシュは怒りで冷静さを欠いている。このままではすぐにやられてしまう。

「ウマゴン、一緒に戦えるな? まだ呪文を使えるお前がガッシュを助けるんだ!」

「メル!」

「よし、『ゴウ・シュドルク』!」

 サンビームさんの指示に頷いたウマゴンは強化の呪文で体が大きくなり、そのままガッシュの後を追う。ウマゴンが呪文を使える間にどうにかしてこの状況をどうにかしなければ俺たちは終わる。

「『ボギルガ』!」

「『ゴウ・ガイロン』!」

「メルメルメ~!」

 ガッシュが敵に拘束され、身動きが取れないところを狙われたのか敵が術を放った。だが、敵の術をウマゴンが角を使って必死に逸らし、その間に拘束から抜け出したガッシュにタックルされて後ろにいた魔物を巻き込みながら吹き飛んだ。

「清麿! 2人が頑張ってるうちに逃げ道を!」

「ああ、もう考えてる!」

 タックルしたガッシュに攻撃しようとした魔物をウマゴンが横から体当たりする光景を見ながら思考回路を必死に巡らせる。ウマゴンの術を生きている間が勝負だ。ここから逃げるにしてもウマゴンの足が必要になる。問題はどこに逃げるか、だ。パムーンが開けた大穴もあるがそこから逃げても敵に地の利がある。追いつかれることはおろか挟み撃ちにされるかもしれない。

(なら、やっぱり……)

 俺は後ろを振り返り、城と巨大な扉を見る。逃げても追いつかれるのならいっそのこと先に進み、『月の石』本体のところまで行けばいい。そうすれば心の力と体力を回復することができる。この城にいる千年前の魔物はここに集結している今がチャンスだ。『月の石』本体に辿り着けば何とか――。

 

 

 

 

 

 

「――頑張ってるところ、申し訳ありませんが外に出てた者たちも戻ってきたようですね」

 

 

 

 

 

 

 

 そんな俺の考えを遮るようにゾフィスの言葉が聞こえ、空を見上げると2体の飛行型の魔物とその背に乗る数体の千年前の魔物が俺たちを見ていた。更に白い飛行型の魔物の背にはパティが、黒い方にはいつぞやのカエルが乗っている。まさか、ここで増援、だと。

「――、――――。―――――、――」

 遠くて見え辛いがパティが俺たちの方を指さしながら何か言っている。だが、言葉は聞こえなくてもガッシュたちではなく、動けない俺たちを狙っていることぐらいすぐにわかった。

「くっ……」

 ガッシュたちも俺たちが狙われていることに気付いたのか急いでこちらに戻ろうとするがそれを千年前の魔物たちが許さない。『バオウ・ザケルガ』を使って満身創痍な俺はもちろん、サンビームさんもすぐには動けないほどダメージを受けている。城に逃げ込むこともできない。最悪だ、逃げ道がない。完全に詰みである。

「やりなさい!」

 タイミングを合わせるために声を張ったのかパティの合図とともに空から俺とサンビームさんに向かって術が放たれた。魔本だけでも守ろうと咄嗟に魔本を胸に抱いて蹲る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『アイアン・グラビレイ』!」

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、俺たちに向かって放たれた術は何かに押し潰されるように地面に叩きつけられた。そのあまりの威力に耐え切れなかったのか地面の数か所に亀裂が走る。

(この術は、まさか……)

 こんな術――重力を操るような術を使えるのは俺が知る中で一組しかいない。慌てて周囲を見渡し、すぐに城壁に立つ二つの人影を見つけた。

 黒い毛皮に身を包んだ魔物と白いドレスと金色の髪をなびかせる女性。そう、昨日の作戦会議にも名前が出てきた黒い本の魔物ブラゴとそのパートナーのシェリーだ。

「清麿、大丈夫か! 怪我はないか!?」

「メルメルメ~!」

 彼らを見つけて体を硬直させているとガッシュとウマゴンが戻ってきた。俺たちがピンチになったことで冷静になってくれたようだ。

「ああ、大丈夫だ。それよりも」

 その時、俺たちの目の前にブラゴとシェリーが降りてきた。千年前の魔物たちは突然現れたブラゴたちを警戒して様子をみている。やっとガッシュもブラゴたちに気付いたのか嬉しそうに笑みを浮かべた。

「お、お主は……」

「生きてたのね、赤い本の子」

 ガッシュが声をかけるとシェリーはこちらを振り返って微かに微笑んだ。彼女の表情に敵意はない。ゾフィスを心の底から憎んでいる彼女のことだ。俺たちよりもゾフィスや千年前の魔物を倒す方が優先事項なのだろう。

「悪いけど邪魔なの。下がっていてくれるかしら?」

「……え?」

 声をかけようとした刹那、シェリーの持つ黒い魔本が淡く輝き――。

 

 

 

 

 

「『レイス』」

 

 

 

 

 

 ――ブラゴの左手から放たれた黒い力の塊は俺たち4人をまとめて吹き飛ばした。咄嗟に魔本を背中に回して直撃は避けたが地面を滑るように転がされてしまう。どうやらかなり手加減してくれたようで吹き飛ばされた割には痛みがない。混乱したまま体を起こすとパムーンのパートナーだったランスの襟首を掴んでこちらに近づくシェリーとその数歩後ろからついてくるブラゴが目に入った。そのまま俺たちの目の前まで来た彼女はランスを雑に投げ、すぐに先端に宝石のような装飾が付いたロッドを振り上げる。すると、宝石のような装飾がロッドから伸びた。装飾に繋がったワイヤーを見てロッドではなくフレイル(連接棍とも呼ばれ、柄の先に鎖などで打撃部を接合した打撃武器)なのだとどこか他人事のように考えていると彼女はフレイルの打撃部を地面に叩き付けた後、一気に横に振るう。地面に境界線のように一本の線が引かれた。

「生きていたければ……この線よりこちら側には来ないことね」

 ワイヤーを回収して打撃部を回収したシェリーは困惑している俺たちに忠告してまるで俺たちを守るように千年前の魔物たちに向き直る。いや、彼女は千年前の魔物たちを一切見ていない。彼女の視線の先にいるのはゾフィスだけだった。

「くっ……何をしているのです、千年前の戦士たち! 早く、その虫けらどもを倒しなさい!」

 俺たちを倒す直前に邪魔されたからかゾフィスは顔を歪め、千年前の魔物たちに指示を出す。それが合図となり、千年前の魔物たちはシェリーとブラゴに攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身じろぐ音すら聞こえてしまうほど静寂に包まれた部屋で眠る1人の男がいた。夢すら見ないほど深い眠りに着いていた彼だったが遠くの方から届く魔力の波に何度も体を揺らされ、うめき声を漏らす。本来であれば魔力の波は毒となり、彼の体を蝕んでいただろう。だが、魔力の波の発信源があまりにも遠かったこと。彼に向けられたものではなかったこと。近くで己の無力さを悔い、魔力の放出を止められない少女のおかげで彼に届く魔力の波は微かなものだった。

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 そして、魔力の波は気つけ薬となり、頑なに目を覚まさなかった男の瞼がピクリと痙攣し、静かに開かれた。















今週の一言二言


・メリークリスマスです。特に予定もなく、ひたすらこのお話を書いて午前中が潰れました。この小説を書きながらFGOとかきらファンの周回をしていたので結構有意義な時間が過ごせたかなと思います。
・・・いや、クリスマスに小説とソシャゲの周回をしている時点で有意義もくそもないんですけどね。
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