やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.151 再び、彼女たちは立ち塞がる

 ブラゴたちが倒した千年前の魔物の魔本を全て燃やし、何とか人一人が通り抜けられそうな穴を見つけた俺たちはやっと城の中へ侵入することができた。城内には誰もおらず、不気味なほどスムーズに頂上手前の広間に辿り着いた。その広間は他の場所と同じように瓦礫が散乱としており、壁際には石像がいくつも並んでいる。そして、何より目を引くのは階段の手前に降り注ぐ淡い光。『月の石』の光だ。その光を見た瞬間、思わずホッとしてしまい、その場に膝を付いてしまい、慌ててガッシュが体を支えてくれた。心の力も底を尽き、『バオウ・ザケルガ』の使用により体はボロボロ。ここまで根性で歩いて来たがさすがに限界が近いらしい。

「ウヌ、『月の石』はこの部屋の上にあるのだな?」

「ああ、あそこに『月の石』の光が漏れた一角がある。あれほど強い光が降り注いでいれば間違いはないだろう……急ごう、あれを浴びれば体力も心の力も回復する。そこで一気にカタを――」

「――あら、これ以上、先には進めなくってよ!」

 『月の石』の光を浴びるために何とか立ち上がったその時、瓦礫の後ろに隠れていたのかパティとカエルが姿を現した。パートナーの姿はないが近くにいるのだろう。

「パ、パ、パパパ、パティなのだああああああ!?」

「お、お前たち逃げのびていたのか?」

 てっきり他の千年前の魔物と共に『バベルガ・グラビドン』で下の階層に落ちたと思っていたが生き残っていたらしい。『月の石』の光を目前にして立ち塞がられたのは痛い。

「フン、戦う前に1つ質問してあげるわ。あ、あの……黒い本のブラゴはもういないのよね? まさかあなたたちの後ろに隠れてるなんてないわよね?」

「ウ、ウヌ、ブラゴはゾフィスを追って行ってしまったのだ」

「そう……」

 ガッシュの言葉を聞いたパティとカエルは明らかに安堵していた。彼女たちにとってブラゴという存在はトラウマになっているらしい。まぁ、あの無双っぷりを間近で見たのならば仕方ないか。

「よくも私の戦士たちをやってくれたわね、こんちくしょおおおおお! もうガッシュちゃんといえど、許してあげないんだからね! ウルル、出てきなさい!」

「アルヴィンも出てくるゲロ!」

 パティとカエルの合図で彼女たちの後ろの瓦礫からウルルとカエルのパートナーである老人――アルヴィンが姿を現した。まずい、俺はもちろんサンビームさんも心の力は残っていない。こんな状況でパティたちをどうにかして『月の石』の光を浴びに行くのはあまりに無謀すぎる。

「『ガンズ・アクル』!」

「ヌゥウ、清麿おおおおおお!」

 パティの手から放たれたいくつもの水弾から庇うようにガッシュが俺に飛びつき、地面に押し倒された。そのおかげで直撃はしなかったものの水弾が地面を抉った拍子に飛び散った地面の破片が当たり、鈍痛が走る。サンビームさんとウマゴンは上手く躱したようで無傷だったが、『バオウ・ザケルガ』の反動でほとんど身動きが取れない俺のせいでガッシュまでダメージを受けてしまった。それを申し訳なく思いながら立ち上がろうと必死に力を込めるが体は言うことを聞いてくれない。

「ゲロッパ! アルヴィン、オイラも攻撃ゲロ!」

 そんな隙だらけの俺を見て好機と捉えたのかカエルがパートナーの老人に指示を出す。それを見てガッシュが俺をいつでも突き飛ばせるように身構えた。カエルの術はまだ一度も見ていない。一体、どんな術が――。

「ヒィファホ、フェルヒゥホおおおおおお!」

「……」

 しかし、老人の口から放たれたのはあまりにも腑抜けた呪文だった。魔本も輝いていないので心の力自体、注がれていない。

(……もしかして、あの老人)

「呪文がちゃんと発音できてないゲロ! 歯医者で入れ歯を直してもらったんじゃないゲロかああああ!?」

 格好つけたにも関わらず術が使えなかったカエルが老人の体をポコポコと叩きながら文句を言う。だが、老人は素知らぬ顔でカエルの言葉を無視していた。あの様子だとカエルは戦力外だと思っていいだろう。でも、パティ1人だけでもかなり厳しい。

「『アクルガ』!」

「わああああああ!」

 彼女の放った水流のような術をガッシュの手を借りて何とか躱す。今はギリギリ凌いでいるがガッシュもパムーンと十数体の魔物と戦ったせいで疲労が溜まっている。このまま逃げ続けるのは難しい。

「バフォー、ブフォー!」

 いや、まぁ、あの老人に戦う気がなくて本当に助かった。もし、カエルも術が使えたのなら俺たちはとっくに倒されていただろう。

「『アクル・キロロ』!」

「ピュルピー、ピュルピー、ピロロロロロロ」

「お前、もう戦う気がないゲロなああああああ!!」

「フフフ、いいわよ、ビョンコ。術も使えないあの子たちは私1人で十分よ」

 だが、もう少しそれを隠す努力をして欲しかった。パティがいくつも放った水の刃を回避しながらそう心の中で文句を言ってしまう。今まで手を抜いていたパティだがカエルが戦力外だとわかれば更に激しい攻撃をしてくるはずだ。もし、大きな術を使われたら逃げることができない。

「ウ……ヌウ、パティ。いい加減に目を覚ますのだ! お主は悪いことをしておるのだぞ!」

「悪いのはあなたなのよ、怨怒霊(『おんどれ』)えええええええええ! 私の愛をふみにじりやがってこんちくしょおおおおおおお! もういいわ、ウルル、やってしまいなさい! 最大呪文よ!」

 確かパティの最大呪文は『バオウ・ザケルガ』のような水竜を放つものだった。あんな大きくてある程度操作できる術を防ぐにはこちらも術を使うしかない。しかし、こちらはもう心の力は残っていない。

「『スオウ・ギ――」

 術を放とうとしたウルルの手から魔本が消え、前に出ようと足を踏み出したパティは突然、転んで地面と熱烈なキスを交わした。唐突な出来事に目を見開き、彼らの姿を見つけて思わず声を荒げてしまう。

「きゃ、キャンチョメ、フォルゴレ! それにナゾナゾ博士も!」

 ウルルから魔本を奪ったフォルゴレと地面に化けてパティの足を掴んだキャンチョメが笑顔を浮かべ、魔本が消えて狼狽している隙に背後からウルルを羽交い絞めにしたナゾナゾ博士。よかった、無事だったのか。いや、キッドの姿がない。どこかに隠れているのだろうか。

「お……おのりぇ~、なめるんじゃないわよおおおおおおお!」

「わああああああああああ!」

 パティの両足を押さえていたキャンチョメだったが彼女が海老反りになって強引に足を振り、キャンチョメがこちらに飛ばされてしまった。魔物1人をあんな恰好で飛ばすとはやはり怒りのパワーは計り知れない。

「本を返すゲロ!」

「あ!?」

 キャンチョメが飛ばされたことに気を取られていたフォルゴレはカエル――ビョンコに舌でパティの魔本を奪われてしまう。それを見てウルルもナゾナゾ博士の拘束を振り払い、ビョンコは舌を使って彼に魔本を返した。

「『アクロウク』!」

「「わああああああああああ!」」

 パティの両手両足に水の爪が現れ、フォルゴレとナゾナゾ博士は悲鳴をあげながらこちらへ駆け寄ってくる。あまりに急いでいたせいか2人はヘッドスライディングしてやっと俺たちと合流することができた。

「みんな!」

「ウム、きっと会えると信じておったぞ!」

 こちらの戦力が増えたことで多少警戒し始めたのか攻撃は仕掛けてくる気配はない。これであいつらを突破して『月の石』の光のところへ行く確率が高くなった。特にキャンチョメの『化ける』力は大いに助かる。

「清麿たち、敵から奪った『月の石』のかけらだよ! 最後の一個だから皆で光をわけて!」

 パティたちをどう攻略するか思考を巡らせようとした時、キャンチョメが瓶から小さな『月の石』のかけらを取り出した。

「助かる!」

 これは嬉しい誤算だ。早速、皆で『月の石』のかけらを囲むように集まり、手をかざす。すると、スッと体の疲労と気怠さが薄まり、ホッと安堵のため息を吐いてしまった。その途中、何故か俺たちを少し離れた場所で眺めていたナゾナゾ博士にガッシュが気付き、首を傾げる。

「ウ、ウヌ? ナゾナゾ博士、キッドは……キッドはどこへ行ったのだ?」

「……」

 ガッシュの問いにナゾナゾ博士は一瞬だけ目を伏せ、そっと言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キッドは魔界に帰った。我々を活かすため、戦士としての役割を果たしたのじゃ……」










今週の一言二言



・アズレンでドイッチュラントとグナイゼナウが出なくて絶望しました。何とかグナイゼナウだけは手に入れようと最終日に周回しましたが、レーベしか落ちなくて絶望しました。

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